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世界の真実編
第36話 洞窟へと至る道
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翌日の朝ユキヒラには別れを告げて、クニオたちキュリオシティーズの面々はアダマンタイトが採取できるという洞窟へと向かっていた。実は、もうクニオには刀の強化はそれほど重要ではなくなっていた。それよりもミナッレトと同じ仕組みで作る物見やぐらの方へ興味が移っていた。アダマンタイトのかけらも、何だったらやぐら用に一つ入手できればいいかなぐらいに思っていた。
しかしクニオの代わりに刀の強化に拘ったのはコウだった。クニオの武器を強化したいというよりは、どうもサダヒデにその仕事をやらせてあげたいと考えている様だ。
洞窟への道のりはキートの街の中心部からは北に歩いて三日ぐらいという事だった。サダヒデの工房とは丁度逆方向に少し長いくらいの距離だろうか。キートの南側にはズワ湖があったが、北側は山岳地帯であった。
サダヒデの工房があったタリヤ島からキートに行く道のりでは、馬車の定期便もあればコウが温泉を掘り当てた宿場町もあった。しかしながら北側は1日も進めば、ほぼ人が生活している気配は見られなくなった。
魔物が少ないという話のキートにも拘わらず、人里を離れた途端それは出現し始めた。基本的にはクニオが1人で戦って、時たまグレゴリーが加勢してくれるぐらいで、コルビーは回復役に徹している。コウは全く関心が無いようで、戦いの最中はどこかで手に入れたハポンの本を読んでいる。今までと同じと言えばそうかもしれない。ただコルビーは1人で戦うクニオの姿を見ては、このあたりに出る魔物は結構なレベルなのに、流石は師匠とほくそえんでいた。
キートの街を出て二日目、辺りが暗くなってくると周囲がやや開けた場所の岩陰で一行は野宿をすることにした。野宿であっても酒は欠かさないのがキュリオシティーズだ。クスからサダヒデの工房に行く道すがら、酒屋の店主からもらった『かめれい』をコウが取り出す。
コウの収納袋は魔道具だ。外から見れば入れ口の大きいズタ袋にしか見えないが、大量に物を入れることができる。そうでなければ、宿屋や酒場以外で飲むための大量の酒を持って歩いて旅をすることはできないだろう。コルビーも同様の物を持っている。武器のコレクションを入れているようだが、そこから酒は出てこない。
洞窟へと続く道は山岳地帯ではあるが、森林地帯ではないのでまわりに薪になりそうな木材は無かった。ただコルビーの収納袋からは酒は出てこなくても、薪は大量に出てきた。彼は成体ではないものの魔王なので、きっと冷える夜でも焚火など必要ないだろう。多分他の三人のために、野宿の度に余った薪をストックしてくれているんだろうなとクニオは思った。できた魔王、いや弟子である。
3人は焚火を囲んで『かめれい』を飲み交わす。ただの荒れ地であっても、キュリオシティーズの面々にかかればそこは宴会場であった。コルビーは人目を気にして普段はアルコールに口をつけないのかと思えばそうでもないらしい。人の目が無い野宿の場であっても酒を口にすることは無かった。聞けば成体になるまでは酒は飲んではいけないという事になっているんだそうだ。なっているという言い方がクニオにはひっかかった。何か彼は自分の意志とは関係ないところで、何者かに縛られているような感が否めない。
もちろん酒が飲めないコルビーに遠慮するほど思慮深い面々ではない。宴が盛り上がるほどに声が大きくなるグレゴリーと悪態をつくコウ。クニオはコルビー以外は全く興味を示さない様なうんちく話を垂れ流している。いや、半分以上はコルビーも興味のない話だ。
しかし、コルビーはバカ話をしながら酒を飲んで騒ぐ三人を眺めているのが好きだった。彼がこのパーティーに参加してからは、まだひと月も経っていない。魔王として転生を繰り返してきた年月に比べれば、それはわずか一瞬の時間に過ぎない。しかしなぜかもう、一緒にかなりの長い時間を過ごしてきたようなそんな錯覚に陥る。
本当はこの洞窟への道のりも、馬車などを使わなくても一瞬のうちに辿り着く方法はいくらでもあった。興味をひく建物も構造物も無くなった今、前のキートへの道のりと違って歩いて移動する必要はどこにもない。ただなぜかこの時間が無くなることが惜しいような気がしていた。
しかしクニオの代わりに刀の強化に拘ったのはコウだった。クニオの武器を強化したいというよりは、どうもサダヒデにその仕事をやらせてあげたいと考えている様だ。
洞窟への道のりはキートの街の中心部からは北に歩いて三日ぐらいという事だった。サダヒデの工房とは丁度逆方向に少し長いくらいの距離だろうか。キートの南側にはズワ湖があったが、北側は山岳地帯であった。
サダヒデの工房があったタリヤ島からキートに行く道のりでは、馬車の定期便もあればコウが温泉を掘り当てた宿場町もあった。しかしながら北側は1日も進めば、ほぼ人が生活している気配は見られなくなった。
魔物が少ないという話のキートにも拘わらず、人里を離れた途端それは出現し始めた。基本的にはクニオが1人で戦って、時たまグレゴリーが加勢してくれるぐらいで、コルビーは回復役に徹している。コウは全く関心が無いようで、戦いの最中はどこかで手に入れたハポンの本を読んでいる。今までと同じと言えばそうかもしれない。ただコルビーは1人で戦うクニオの姿を見ては、このあたりに出る魔物は結構なレベルなのに、流石は師匠とほくそえんでいた。
キートの街を出て二日目、辺りが暗くなってくると周囲がやや開けた場所の岩陰で一行は野宿をすることにした。野宿であっても酒は欠かさないのがキュリオシティーズだ。クスからサダヒデの工房に行く道すがら、酒屋の店主からもらった『かめれい』をコウが取り出す。
コウの収納袋は魔道具だ。外から見れば入れ口の大きいズタ袋にしか見えないが、大量に物を入れることができる。そうでなければ、宿屋や酒場以外で飲むための大量の酒を持って歩いて旅をすることはできないだろう。コルビーも同様の物を持っている。武器のコレクションを入れているようだが、そこから酒は出てこない。
洞窟へと続く道は山岳地帯ではあるが、森林地帯ではないのでまわりに薪になりそうな木材は無かった。ただコルビーの収納袋からは酒は出てこなくても、薪は大量に出てきた。彼は成体ではないものの魔王なので、きっと冷える夜でも焚火など必要ないだろう。多分他の三人のために、野宿の度に余った薪をストックしてくれているんだろうなとクニオは思った。できた魔王、いや弟子である。
3人は焚火を囲んで『かめれい』を飲み交わす。ただの荒れ地であっても、キュリオシティーズの面々にかかればそこは宴会場であった。コルビーは人目を気にして普段はアルコールに口をつけないのかと思えばそうでもないらしい。人の目が無い野宿の場であっても酒を口にすることは無かった。聞けば成体になるまでは酒は飲んではいけないという事になっているんだそうだ。なっているという言い方がクニオにはひっかかった。何か彼は自分の意志とは関係ないところで、何者かに縛られているような感が否めない。
もちろん酒が飲めないコルビーに遠慮するほど思慮深い面々ではない。宴が盛り上がるほどに声が大きくなるグレゴリーと悪態をつくコウ。クニオはコルビー以外は全く興味を示さない様なうんちく話を垂れ流している。いや、半分以上はコルビーも興味のない話だ。
しかし、コルビーはバカ話をしながら酒を飲んで騒ぐ三人を眺めているのが好きだった。彼がこのパーティーに参加してからは、まだひと月も経っていない。魔王として転生を繰り返してきた年月に比べれば、それはわずか一瞬の時間に過ぎない。しかしなぜかもう、一緒にかなりの長い時間を過ごしてきたようなそんな錯覚に陥る。
本当はこの洞窟への道のりも、馬車などを使わなくても一瞬のうちに辿り着く方法はいくらでもあった。興味をひく建物も構造物も無くなった今、前のキートへの道のりと違って歩いて移動する必要はどこにもない。ただなぜかこの時間が無くなることが惜しいような気がしていた。
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