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世界の真実編
第42話 世界の真実
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「えーとね……ちょっと待ってね……」
フェアリーは少し考え事をするようにやや上を見て、そうしてクニオの方へ視線を戻してから続けた。
「クニオは移植する前の三転生前の記憶が蘇ったみたいだね」
このフェアリーの言葉が真実であれば、クニオには他にもいくつかの前世が存在していることになる。それ自体すんなり受け入れられる話ではないが、だとしてもなぜその中からこの記憶だけが蘇ったのだろうか?
「で、アニちゃんは個別に意識を移植しなかった、残りの人たちの意識の集合体みたいなもんなんだよね。だからこの世界はアニちゃんが作ったと言うよりは、みんなで作ったと言った方がいいよね。で、アニちゃんはこっちの世界には直接存在してないから、君らとコンタクトするにはこのフェアリーを通すしかないってわけ」
クニオがフェアリーの意外な言葉にしばし考え込んでいると、今度はコルビーが口を開いた。
「この世界のことわりを知っていると言ったな。ならば問いたい。魔王軍は人間と、いや、魔王が勇者と戦うというのは避けられない仕組みになっているのか?」
メタバース以外の世界はどうなっているのかなどクニオには様々な疑問が沸いてきたが、今コルビーが聞きたいのはその事だろうなというのは納得できた。
「特に縛りは無いよ。ただそれを超えるベターな仕組みが生まれない限りは、最初の設定が繰り返されているだけだよ。だから今までも、やめたければいつでもやめられたし……」
フェアリーは軽い口調で答えた。
今度はコルビーが大きなショックを受けている。いったい今まで繰り返してきた事は何だったのか?運命だと思って繰り返してきたのは自分の意志だったという事なのだろうか?
「なぜメタバースに人々は意識を移植したんでしょうか?」
今度はクニオが聞く。
「フリーエネルギーって分かるかな?クニオにも分かるように言うと……、そうだなー質量はエネルギーに置き換えたら物凄い量になる事は知ってるよね」
その理論についてはクニオの生きた時代でも多くの人が知っていた。フェアリーは続ける。
「だから質量をもつ物質は全て莫大なエネルギーの貯蔵庫ともいえるんだ。確かにクニオも知っているように、核分裂や核融合でもほんの少しだけ取り出せる。でも違うアプローチでこれがうまく使えるようになっちゃったんだよね。そしたらエネルギー問題が全て無くなったんだよ」
そこはクニオが知らない……というか記憶には無い未来の話だった。
「それが無くなったら人類は争う理由も無くしちゃってね。凄く平和で安定した世界が実現してしまった。……でも悲しいかな人間は本能的に闘争を望むんだよ。それでメタバースがその受け皿になったってわけ」
言われてみればこの世界でも魔王という外的脅威がなくなったとたんに、人間同士が争いを始めていた。
「クニオの頃も将棋とかはあったでしょう?ギリギリTVゲームも知ってるかな?それがどんどん進化して、もっと複雑な戦いをバーチャルの世界でするようになっていくんだよ。それが究極に進化したって言えば分かりやすいかな」
確かにクニオの前世だと思っていた世界では、晩年TVゲームというものが世間を席巻していた。あれがどんどん発達していったという事は、ありそうな話ではあった。
「で、魔王軍が人類との戦いをやめて、魔王も勇者と戦わないとして、私はその場合他に何をすればいいんでしょうか?」
今まで気の遠くなるような年月を繰り返してきたことを仮にやめられたとして、その後一体自分はどうすればいいのか?
実はクニオに弟子入りしてから、今までの戦いの輪廻からは、抜け出すことができるような予感は薄々感じていた。しかし本当にそれができたとして、自分の存在をどう考えればいいのかが分からないでいた。
「だから建築なんだろう?」
フェアリーは答えた。
「建物を作るんですか?」
聞き返したコルビーに対して、クニオは後から彼に話そうと思ったことをフェアリーが代わりに答えてくれた。
「建築家は建物を作るんじゃなくて、経験や体験を生み出す装置を作るんだって言ったのは大昔の君じゃなかったかな…よく知らんけど。とにかくここで何を作るのかを楽しみにしてるよ。要するに好きにやればいいって事。じゃあそんな感じでよろしく」
そう言ってフェアリーはまた上に上がって行く。
クニオはそれを引き留めて、もっと聞きたい事があるような気もしたが、話が大きすぎてすぐに考えがまとまらなかった。それはコルビーも同じだった。二人が躊躇している間に光の塊は更に上の方に移動し、ある高さまで行ったところで消えてしまった。
フェアリーの光が消え去っても、二人は動けずにその場に立ち尽くしていた。クニオの灯したあかりの魔法だけが、二人の顔と周囲を薄暗く照らしていた。
そこから、来たルートを戻って洞窟の出口にたどり着くまで、二人は終始無言だった。出口付近でアダマンタイトの破片を二つほど拾って、外から差し込む光の方へと進み、洞窟から外へと出た。そこには楽し気にドラゴンと話すコウとグレゴリーの姿があった。
「あの二人も誰かの意識が転生した存在なんですかね?というかこの世界そのものが偽りの存在なんでしょうか?」
やっとコルビーが口を開いた。
「私の前世……いや、やはり前世だ。そこに存在していた宗教や物理学の考え方で、世界には実体なんてものはないんじゃないかというのが既にあった。でも実体が無くても存在はしているんだから、実体なんかあっても無くてもどっちでもいいという考え方もあった。更にその両方ともが真理で、実体が無いと理解しながらも存在は楽しめばいいっていうのが、自分にはしっくり来たかな。エンシェントアニマが言った、結局は好きにしたらいいっていうのが真理なのかもしれないね」
クニオの話が長かったので、歩いているうちに二人はコウとグレゴリーの所まで来てしまった。
「お、それがアダマンタイトですな」
グレゴリーはクニオとコルビーが、その手にひとつずつ持っているカケラを見てそう言った。
「このドラゴン、私なんかより全然歳上で話が面白いんだよ。やっぱり新酒の季節になったら、またここに来て二人も一緒に一杯やろうぜ。あ、コルは飲めないか」
コウは上機嫌だった。
「知りたかった答えは聞けたかな?」
コルビーはドラゴンにそう尋ねられた。
「自分で探せと言われました」
コルビーはアダマンタイトを持ったまま、両腕を上に上げてお手上げのポーズをした。しかしその表情は洞窟の外の天気と同じぐらい晴れやかだった。
フェアリーは少し考え事をするようにやや上を見て、そうしてクニオの方へ視線を戻してから続けた。
「クニオは移植する前の三転生前の記憶が蘇ったみたいだね」
このフェアリーの言葉が真実であれば、クニオには他にもいくつかの前世が存在していることになる。それ自体すんなり受け入れられる話ではないが、だとしてもなぜその中からこの記憶だけが蘇ったのだろうか?
「で、アニちゃんは個別に意識を移植しなかった、残りの人たちの意識の集合体みたいなもんなんだよね。だからこの世界はアニちゃんが作ったと言うよりは、みんなで作ったと言った方がいいよね。で、アニちゃんはこっちの世界には直接存在してないから、君らとコンタクトするにはこのフェアリーを通すしかないってわけ」
クニオがフェアリーの意外な言葉にしばし考え込んでいると、今度はコルビーが口を開いた。
「この世界のことわりを知っていると言ったな。ならば問いたい。魔王軍は人間と、いや、魔王が勇者と戦うというのは避けられない仕組みになっているのか?」
メタバース以外の世界はどうなっているのかなどクニオには様々な疑問が沸いてきたが、今コルビーが聞きたいのはその事だろうなというのは納得できた。
「特に縛りは無いよ。ただそれを超えるベターな仕組みが生まれない限りは、最初の設定が繰り返されているだけだよ。だから今までも、やめたければいつでもやめられたし……」
フェアリーは軽い口調で答えた。
今度はコルビーが大きなショックを受けている。いったい今まで繰り返してきた事は何だったのか?運命だと思って繰り返してきたのは自分の意志だったという事なのだろうか?
「なぜメタバースに人々は意識を移植したんでしょうか?」
今度はクニオが聞く。
「フリーエネルギーって分かるかな?クニオにも分かるように言うと……、そうだなー質量はエネルギーに置き換えたら物凄い量になる事は知ってるよね」
その理論についてはクニオの生きた時代でも多くの人が知っていた。フェアリーは続ける。
「だから質量をもつ物質は全て莫大なエネルギーの貯蔵庫ともいえるんだ。確かにクニオも知っているように、核分裂や核融合でもほんの少しだけ取り出せる。でも違うアプローチでこれがうまく使えるようになっちゃったんだよね。そしたらエネルギー問題が全て無くなったんだよ」
そこはクニオが知らない……というか記憶には無い未来の話だった。
「それが無くなったら人類は争う理由も無くしちゃってね。凄く平和で安定した世界が実現してしまった。……でも悲しいかな人間は本能的に闘争を望むんだよ。それでメタバースがその受け皿になったってわけ」
言われてみればこの世界でも魔王という外的脅威がなくなったとたんに、人間同士が争いを始めていた。
「クニオの頃も将棋とかはあったでしょう?ギリギリTVゲームも知ってるかな?それがどんどん進化して、もっと複雑な戦いをバーチャルの世界でするようになっていくんだよ。それが究極に進化したって言えば分かりやすいかな」
確かにクニオの前世だと思っていた世界では、晩年TVゲームというものが世間を席巻していた。あれがどんどん発達していったという事は、ありそうな話ではあった。
「で、魔王軍が人類との戦いをやめて、魔王も勇者と戦わないとして、私はその場合他に何をすればいいんでしょうか?」
今まで気の遠くなるような年月を繰り返してきたことを仮にやめられたとして、その後一体自分はどうすればいいのか?
実はクニオに弟子入りしてから、今までの戦いの輪廻からは、抜け出すことができるような予感は薄々感じていた。しかし本当にそれができたとして、自分の存在をどう考えればいいのかが分からないでいた。
「だから建築なんだろう?」
フェアリーは答えた。
「建物を作るんですか?」
聞き返したコルビーに対して、クニオは後から彼に話そうと思ったことをフェアリーが代わりに答えてくれた。
「建築家は建物を作るんじゃなくて、経験や体験を生み出す装置を作るんだって言ったのは大昔の君じゃなかったかな…よく知らんけど。とにかくここで何を作るのかを楽しみにしてるよ。要するに好きにやればいいって事。じゃあそんな感じでよろしく」
そう言ってフェアリーはまた上に上がって行く。
クニオはそれを引き留めて、もっと聞きたい事があるような気もしたが、話が大きすぎてすぐに考えがまとまらなかった。それはコルビーも同じだった。二人が躊躇している間に光の塊は更に上の方に移動し、ある高さまで行ったところで消えてしまった。
フェアリーの光が消え去っても、二人は動けずにその場に立ち尽くしていた。クニオの灯したあかりの魔法だけが、二人の顔と周囲を薄暗く照らしていた。
そこから、来たルートを戻って洞窟の出口にたどり着くまで、二人は終始無言だった。出口付近でアダマンタイトの破片を二つほど拾って、外から差し込む光の方へと進み、洞窟から外へと出た。そこには楽し気にドラゴンと話すコウとグレゴリーの姿があった。
「あの二人も誰かの意識が転生した存在なんですかね?というかこの世界そのものが偽りの存在なんでしょうか?」
やっとコルビーが口を開いた。
「私の前世……いや、やはり前世だ。そこに存在していた宗教や物理学の考え方で、世界には実体なんてものはないんじゃないかというのが既にあった。でも実体が無くても存在はしているんだから、実体なんかあっても無くてもどっちでもいいという考え方もあった。更にその両方ともが真理で、実体が無いと理解しながらも存在は楽しめばいいっていうのが、自分にはしっくり来たかな。エンシェントアニマが言った、結局は好きにしたらいいっていうのが真理なのかもしれないね」
クニオの話が長かったので、歩いているうちに二人はコウとグレゴリーの所まで来てしまった。
「お、それがアダマンタイトですな」
グレゴリーはクニオとコルビーが、その手にひとつずつ持っているカケラを見てそう言った。
「このドラゴン、私なんかより全然歳上で話が面白いんだよ。やっぱり新酒の季節になったら、またここに来て二人も一緒に一杯やろうぜ。あ、コルは飲めないか」
コウは上機嫌だった。
「知りたかった答えは聞けたかな?」
コルビーはドラゴンにそう尋ねられた。
「自分で探せと言われました」
コルビーはアダマンタイトを持ったまま、両腕を上に上げてお手上げのポーズをした。しかしその表情は洞窟の外の天気と同じぐらい晴れやかだった。
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