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悪役は虎視眈々と
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ブラウンと約束をした。
アイザックが本心から好きだと思える相手と結ばれるまで私とは仲の悪い振りをする、そんな馬鹿げた約束だ。
婚約を破棄させるだけで済んだ話がどうこじれたらこうなるのか過去の自分に問いただしたい。仮にも悪役令嬢が幼い子供に言いくるめられてどうする。
「全く上手くいかないことだらけですよ」
ため息をつきながら椅子の背もたれに体を任せる。
ゲーム通りの展開をなぞるだけなら簡単だと思っていたんだけどなぁ。
「お疲れですねお嬢様。もし体調が悪いのでしたらこの後の茶会は中止に」
「私の楽しみを取らんで下さい」
この後はアイザックの部屋で私とクロードを交えた茶会があるのだ。レベッカは先約があるらしく泣く泣く不参加。次会ったらその愚痴で一日潰れそうだ。
「では行きましょうか」
「お嬢様、本当に辛くなったら何なりとお申し付け下さいね?」
サラが妙に心配してくる。私、顔色でも悪いのか?
「大丈夫ですよ」
むしろここ最近は気分がいいくらいだ。
「アイリーン何かご機嫌だね!」
「そうですか?」
「あぁ。顔がニヤけてるな、国を滅ぼす算段でもついたのか?」
「人の事なんだと思ってるのかな!?」
クロードとはこういった気のしれたやり取りが増えた。そんな私たちを見てアイザックが吹き出す。
「駄目だふふっ、二人ともすっかり仲良しになったね」
「こいつ見た目に反して笑いのセンスあるぞ」
「そんなセンスいりません!! すみませんお兄様騒がしくしてしまって」
アイザックが淹れてくれた茶を飲みながら優雅さを取り繕う。
「いいよ全然、アイリーンともクロードとも最近あまり話せていなかったから楽しいよ~」
やっぱりうちの兄は天使だな。この尊さを未来永劫どうか持ち続けて欲しい。
「そういえば剣術の方はどうなんですか?」
「うっ」
アイザックがあからさまに顔を背けた。
「頑張ってはいるぞアイザックも」
「いいんだクロード.......僕は剣術の才がないのかもしれない」
剣術どころか運動神経そのものが悪いのだとは誰も言い出せなかった。
「ですがお兄様が努力なさっているのは伝わりますよ。前より手の甲が厚くなられましたから」
「ほ、本当かい!?」
「ええ」
嘘ではない。彼の手には初期の頃にあった血豆も今では薄くなっている。上達はしているのだろう、僅かでも。
「剣術の基礎は出来つつある。後はその体力の無さをどうにかするんだな」
ベーカー家ってつくづくインドア派なんだな。
「そういうのは魔法で補えないんですか?」
剣術と魔法を別々に考えるより合わせた方が手っ取り早いと思うのだが。
「魔法はそれだけで多くのマナを使う、つまり体力の消費が激しいんだ。剣術も同じで二つ同時になんてやってみろ、ぶった倒れるのが関の山さ」
「なら剣を振るうもののサポートを魔法でするのはどうです? 何も一人で全部しろなんて無茶言いませんよ」
「戦争で一度その手法が取り入れられたらしいが人員不足が著しかったみたいだぞ。結局のところ魔法学の人気がからっきしなのもその性能を無に返すだけ燃費が悪いからだろうなぁ」
「確かに魔法学は極めるのも至難で素質のある人材そのものも非常に少ないと聞きます」
「.......あの、僕を置いていかないでくれる?」
「あっ、すみませんお兄様。お兄様には関係のない物騒事でしたのでつい」
「大丈夫だアイザック、もしこの国が戦争になってもお前だけは戦地に送らない。絶対死ぬしな」
「ひどいよぉ!!」
アイザックには出来ないような話が出来るというのもクロードと関係を深める理由になっているのかもしれない。
「魔法学といえば先日ハワード・ランドルフ先生に聞いたんですが」
「ハワード!? あの天才児かっ!!」
「え、えぇ。ご存知とは」
「実際に会ったことはないが彼は有名だからな。いつか魔法の御教授を願いたい.......」
叶いますよ数年後に。
「魔法か~今から体力つけてれば僕でも使いこなせるかな?」
ハワードに目がかけられる程にはね。
「その天才児がどうしたんだ?」
「何でもベーカー家は魔法学の分野で多額の寄付をしているらしいのですが、お礼を言われても私自身知らない事実でしたので」
「ベーカー家が? 妙だな」
「どうして?」
「お前の家はその、なんというか」
「はっきり言っていいですよ。当主の評判がよろしくないんでしょう?」
「.......アルフレッド公に対してだけ辛辣だな」
「これでも仲はいいんだけどね」
仲良くない、断じて。
「ベーカー家は魔法学を支援するだけの理由があるのか?」
「私も気になって軍事目的かと疑ったんですが」
「魔法は戦争に使えないからな」
「あっ、それでさっきの話か!!」
納得したらしいアイザックが手を打った。
「何か聞いてませんかお兄様?」
「う~んお父様はあまり仕事の話をしないからね.......」
「軍事ではないとすれば家そのものに関係してるのでは?」
「というと?」
「ベーカー家そのものが魔法学の発展を心待ちにしている、みたいな」
そんな話あるか?
アイザックには魔法の素質が十分すぎるほど備わっているがそんな事が分かるのはもっと後。
アルフレッドが魔法学に興味を示す理由が無いのだ。
「お父様が個人的に好きだって可能性は?」
「あの人私より合理主義者ですよ。個人的な情なんて一番面倒くさいものに流されますかね」
「面倒くさいって言ったよこいつ」
「理屈でどうにかならない問題はすべからく面倒ですよ。まぁ私は最近それが気になりませんが」
実際、自分の理屈に当てはまらない人間を何人も知っている。
明らかにおかしい展開へ進んでいるのに、それを選んでくれた彼に何故か感謝をしてしまうのは私が変わってきたからだろうか。
「ブラウン様、今何してるんだろ.......うふっ」
「クロードそれ誰のモノマネですか」
こいつとは一度話をつけなければいけない。
アイザックが本心から好きだと思える相手と結ばれるまで私とは仲の悪い振りをする、そんな馬鹿げた約束だ。
婚約を破棄させるだけで済んだ話がどうこじれたらこうなるのか過去の自分に問いただしたい。仮にも悪役令嬢が幼い子供に言いくるめられてどうする。
「全く上手くいかないことだらけですよ」
ため息をつきながら椅子の背もたれに体を任せる。
ゲーム通りの展開をなぞるだけなら簡単だと思っていたんだけどなぁ。
「お疲れですねお嬢様。もし体調が悪いのでしたらこの後の茶会は中止に」
「私の楽しみを取らんで下さい」
この後はアイザックの部屋で私とクロードを交えた茶会があるのだ。レベッカは先約があるらしく泣く泣く不参加。次会ったらその愚痴で一日潰れそうだ。
「では行きましょうか」
「お嬢様、本当に辛くなったら何なりとお申し付け下さいね?」
サラが妙に心配してくる。私、顔色でも悪いのか?
「大丈夫ですよ」
むしろここ最近は気分がいいくらいだ。
「アイリーン何かご機嫌だね!」
「そうですか?」
「あぁ。顔がニヤけてるな、国を滅ぼす算段でもついたのか?」
「人の事なんだと思ってるのかな!?」
クロードとはこういった気のしれたやり取りが増えた。そんな私たちを見てアイザックが吹き出す。
「駄目だふふっ、二人ともすっかり仲良しになったね」
「こいつ見た目に反して笑いのセンスあるぞ」
「そんなセンスいりません!! すみませんお兄様騒がしくしてしまって」
アイザックが淹れてくれた茶を飲みながら優雅さを取り繕う。
「いいよ全然、アイリーンともクロードとも最近あまり話せていなかったから楽しいよ~」
やっぱりうちの兄は天使だな。この尊さを未来永劫どうか持ち続けて欲しい。
「そういえば剣術の方はどうなんですか?」
「うっ」
アイザックがあからさまに顔を背けた。
「頑張ってはいるぞアイザックも」
「いいんだクロード.......僕は剣術の才がないのかもしれない」
剣術どころか運動神経そのものが悪いのだとは誰も言い出せなかった。
「ですがお兄様が努力なさっているのは伝わりますよ。前より手の甲が厚くなられましたから」
「ほ、本当かい!?」
「ええ」
嘘ではない。彼の手には初期の頃にあった血豆も今では薄くなっている。上達はしているのだろう、僅かでも。
「剣術の基礎は出来つつある。後はその体力の無さをどうにかするんだな」
ベーカー家ってつくづくインドア派なんだな。
「そういうのは魔法で補えないんですか?」
剣術と魔法を別々に考えるより合わせた方が手っ取り早いと思うのだが。
「魔法はそれだけで多くのマナを使う、つまり体力の消費が激しいんだ。剣術も同じで二つ同時になんてやってみろ、ぶった倒れるのが関の山さ」
「なら剣を振るうもののサポートを魔法でするのはどうです? 何も一人で全部しろなんて無茶言いませんよ」
「戦争で一度その手法が取り入れられたらしいが人員不足が著しかったみたいだぞ。結局のところ魔法学の人気がからっきしなのもその性能を無に返すだけ燃費が悪いからだろうなぁ」
「確かに魔法学は極めるのも至難で素質のある人材そのものも非常に少ないと聞きます」
「.......あの、僕を置いていかないでくれる?」
「あっ、すみませんお兄様。お兄様には関係のない物騒事でしたのでつい」
「大丈夫だアイザック、もしこの国が戦争になってもお前だけは戦地に送らない。絶対死ぬしな」
「ひどいよぉ!!」
アイザックには出来ないような話が出来るというのもクロードと関係を深める理由になっているのかもしれない。
「魔法学といえば先日ハワード・ランドルフ先生に聞いたんですが」
「ハワード!? あの天才児かっ!!」
「え、えぇ。ご存知とは」
「実際に会ったことはないが彼は有名だからな。いつか魔法の御教授を願いたい.......」
叶いますよ数年後に。
「魔法か~今から体力つけてれば僕でも使いこなせるかな?」
ハワードに目がかけられる程にはね。
「その天才児がどうしたんだ?」
「何でもベーカー家は魔法学の分野で多額の寄付をしているらしいのですが、お礼を言われても私自身知らない事実でしたので」
「ベーカー家が? 妙だな」
「どうして?」
「お前の家はその、なんというか」
「はっきり言っていいですよ。当主の評判がよろしくないんでしょう?」
「.......アルフレッド公に対してだけ辛辣だな」
「これでも仲はいいんだけどね」
仲良くない、断じて。
「ベーカー家は魔法学を支援するだけの理由があるのか?」
「私も気になって軍事目的かと疑ったんですが」
「魔法は戦争に使えないからな」
「あっ、それでさっきの話か!!」
納得したらしいアイザックが手を打った。
「何か聞いてませんかお兄様?」
「う~んお父様はあまり仕事の話をしないからね.......」
「軍事ではないとすれば家そのものに関係してるのでは?」
「というと?」
「ベーカー家そのものが魔法学の発展を心待ちにしている、みたいな」
そんな話あるか?
アイザックには魔法の素質が十分すぎるほど備わっているがそんな事が分かるのはもっと後。
アルフレッドが魔法学に興味を示す理由が無いのだ。
「お父様が個人的に好きだって可能性は?」
「あの人私より合理主義者ですよ。個人的な情なんて一番面倒くさいものに流されますかね」
「面倒くさいって言ったよこいつ」
「理屈でどうにかならない問題はすべからく面倒ですよ。まぁ私は最近それが気になりませんが」
実際、自分の理屈に当てはまらない人間を何人も知っている。
明らかにおかしい展開へ進んでいるのに、それを選んでくれた彼に何故か感謝をしてしまうのは私が変わってきたからだろうか。
「ブラウン様、今何してるんだろ.......うふっ」
「クロードそれ誰のモノマネですか」
こいつとは一度話をつけなければいけない。
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