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第五章 パラレル
第125話 LUV CONNECTION
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「あらま、どうしたの? この子は」
と、すみれさんがハンカチを出して聖連ちゃんの口を甲斐甲斐しく拭いてあげている。
てかそれ、すみれさんのせいですけどね。どうしたのじゃないですよ、すみれさーん。
「あの……すみれさん?」
「なぁに? 夏葉ちゃん」
すみれさんの口調は極めて呑気な空気を醸している。わたしたちが直面している危急の事態とのギャップが大きすぎて、なんかついていけない。
「あの、わたしたち実は今結構切迫した状況なんですけど……」
「あらあら。それじゃぁ、わたしお邪魔だったかしら。せっかくだから噂の十一夜君にご挨拶しておきたかったのよ。何しろあの十一夜さんの曾孫さんでしょ。主人もお世話になっていることだし」
うぅ。まあそうだけど……。それに今やすみれさんもこの事案にはすでに関わっちゃってるわけだけど。
「分かったわ。はいこれ」
そう言ってすみれさんがテーブルの上に置いたのは、一枚のメモだった。
「これは?」
見ればそこには携帯の電話番号らしい数列が記されている。
「連絡を取ってみるといいわ。わたしの古いコネで色々と話してくれるはずよ。オフレコでなら」
な、何だろうか。これもまたいきなりすぎるんだけど、今日のすみれさんは色々とその……あれだなぁ。
「この番号は?」
十一夜君だ。
「これは、あなたたちの同級生が関係してる機関の人よ。話は通してあるからかけてみるといいわよ」
「すみれさん、そんなコネが……」
ホントこの人は計り知れない何かがあるんだよなぁ……。前に食事に連れて行ってもらった時にもホテルのスタッフに息がかかってたし。
「まぁ、昔ね。ちょっと人助けしたことがあって、もう何年も経ったから結構偉くなっちゃっててね。なかなかいうこと聞いてくれないから、ちょっと別のコネも使いそうになったんだけど、何とか使わずに済んだわ。うふふ」
うわぁ。なんか今背筋がゾゾっとしたわ。
別のコネ気になるぅっ。めっちゃ気になるわぁ~。
「それとこれも。はい」
と、すみれさんがもう一枚のメモをトンとテーブルに置いた。十一夜君がハッとしたようにメモを取り上げて見ている。
「自動車のナンバー……?」
「わたし、目撃しちゃったのよ~、拉致現場」
「えぇっ⁉︎ あの時いらっしゃったんですかぁ?」
「そうなのよぉ~。夏葉ちゃんに会おうと思ってね。ちょっとだけつけてたの。うふふふ」
いや、うふふふって。ちょっとだけつけてたって。
「あははぁ~」
もう愛想笑いしか出て来ない。
十一夜君はスマホを取り出してメモを手に電話をかけようとしている。聖連ちゃんは車のナンバーのメモを見てかちゃかちゃやりだした。
「もぉ~、じゃあすみれさん、最初から知ってたんですね? 早く教えてくれればよかったのにぃ~」
「うふふ。ごめんなさいね。でも慌てなくても大丈夫よ。すぐに手を回してあるから、うちの手の者が追跡しているはずよ」
「うちの手の者? すみれさんのところにもそういう人がいるんですね」
なんか十一夜家にしても、わたしの周りに凄い人たちが多過ぎる気がするんですけど。
「あぁ、それもちょっと昔の知り合いのコネがあったのよ。昔取った杵柄というのかしら、ふふふ」
すみれさんのコネ都合よすぎでしょ。何でもコネで通すなぁ、すみれさん……。
「位置が分かりましたっ」
聖連ちゃんが拉致車の車の位置を突き止めたようだ。十一夜君は電話をかけているようだがまだ相手が出ないようだ。
「あら、電話出ないようね。拉致事件が起こったから今向こうも大わらわなのかもしれないわ。そうねぇ……それじゃ取り敢えずわたしから話せることを話しますから、お茶でも飲みながら報告を待ちましょ。ね」
そう提案するすみれさん。何でこんなにおっとりしていられるんだ、この人は。
これが大人の余裕? それともただ呑気なだけ?
うぅむ。すみれさんの場合どっちの可能性もありなんだよねぇ……。
ともかく、ここはすみれさんの提案に乗って、そのまま話を聞くことにするよりないか。
「どうする、十一夜君……?」
十一夜君も同感だったのか黙って頷いた。
「それじゃ、何からお話ししようかしらねぇ……」
この熟女、唇に指を当てて考え込む様子はまるで少女のようだが、どうしてこれでなかなかのやり手なんだから人って分からないもんだよね。
「兎拂家のことを調べるうちに、先日亡くなった娘さんのことを知ったわ。その秘密と十一夜君との拘わりも。それで十一夜家にチップの情報分析に協力するとこちらから申し出たのよ」
十一夜君は目を少し伏せてそのまましばしの間黙っていたが、口を開いてボソリと言った。
「伺います。続けてください」
「並行世界というの? わたしには難しいことは分からないけれど、こことは違うストーリーの世界というような説明を受けたわ。何だか俄かには信じがたいのだけど、今国家的なレベルで研究されているのがその間を往き来する技術だというのだけど。どうもMSが欲しがっているのがその技術らしいのね」
「あぁ、MSに関しては以前にもそんな話をお聞きしましたけど、まさか国がそんな研究を……」
いきなりまたそんな話を聞かされても、まさか国がそんなことを真面目に研究しているとはなかなか信じられないんだけどなぁ。日本大丈夫か?
「そうなのよ~。それでね。噂じゃどうもさっき拐われた子が別の世界から来たのじゃないかって話なのよ」
「は?」
わたしも、十一夜君も聖連ちゃんも、あまりに突拍子のない話にポカーンと口を開けて驚くよりなかった。
と、すみれさんがハンカチを出して聖連ちゃんの口を甲斐甲斐しく拭いてあげている。
てかそれ、すみれさんのせいですけどね。どうしたのじゃないですよ、すみれさーん。
「あの……すみれさん?」
「なぁに? 夏葉ちゃん」
すみれさんの口調は極めて呑気な空気を醸している。わたしたちが直面している危急の事態とのギャップが大きすぎて、なんかついていけない。
「あの、わたしたち実は今結構切迫した状況なんですけど……」
「あらあら。それじゃぁ、わたしお邪魔だったかしら。せっかくだから噂の十一夜君にご挨拶しておきたかったのよ。何しろあの十一夜さんの曾孫さんでしょ。主人もお世話になっていることだし」
うぅ。まあそうだけど……。それに今やすみれさんもこの事案にはすでに関わっちゃってるわけだけど。
「分かったわ。はいこれ」
そう言ってすみれさんがテーブルの上に置いたのは、一枚のメモだった。
「これは?」
見ればそこには携帯の電話番号らしい数列が記されている。
「連絡を取ってみるといいわ。わたしの古いコネで色々と話してくれるはずよ。オフレコでなら」
な、何だろうか。これもまたいきなりすぎるんだけど、今日のすみれさんは色々とその……あれだなぁ。
「この番号は?」
十一夜君だ。
「これは、あなたたちの同級生が関係してる機関の人よ。話は通してあるからかけてみるといいわよ」
「すみれさん、そんなコネが……」
ホントこの人は計り知れない何かがあるんだよなぁ……。前に食事に連れて行ってもらった時にもホテルのスタッフに息がかかってたし。
「まぁ、昔ね。ちょっと人助けしたことがあって、もう何年も経ったから結構偉くなっちゃっててね。なかなかいうこと聞いてくれないから、ちょっと別のコネも使いそうになったんだけど、何とか使わずに済んだわ。うふふ」
うわぁ。なんか今背筋がゾゾっとしたわ。
別のコネ気になるぅっ。めっちゃ気になるわぁ~。
「それとこれも。はい」
と、すみれさんがもう一枚のメモをトンとテーブルに置いた。十一夜君がハッとしたようにメモを取り上げて見ている。
「自動車のナンバー……?」
「わたし、目撃しちゃったのよ~、拉致現場」
「えぇっ⁉︎ あの時いらっしゃったんですかぁ?」
「そうなのよぉ~。夏葉ちゃんに会おうと思ってね。ちょっとだけつけてたの。うふふふ」
いや、うふふふって。ちょっとだけつけてたって。
「あははぁ~」
もう愛想笑いしか出て来ない。
十一夜君はスマホを取り出してメモを手に電話をかけようとしている。聖連ちゃんは車のナンバーのメモを見てかちゃかちゃやりだした。
「もぉ~、じゃあすみれさん、最初から知ってたんですね? 早く教えてくれればよかったのにぃ~」
「うふふ。ごめんなさいね。でも慌てなくても大丈夫よ。すぐに手を回してあるから、うちの手の者が追跡しているはずよ」
「うちの手の者? すみれさんのところにもそういう人がいるんですね」
なんか十一夜家にしても、わたしの周りに凄い人たちが多過ぎる気がするんですけど。
「あぁ、それもちょっと昔の知り合いのコネがあったのよ。昔取った杵柄というのかしら、ふふふ」
すみれさんのコネ都合よすぎでしょ。何でもコネで通すなぁ、すみれさん……。
「位置が分かりましたっ」
聖連ちゃんが拉致車の車の位置を突き止めたようだ。十一夜君は電話をかけているようだがまだ相手が出ないようだ。
「あら、電話出ないようね。拉致事件が起こったから今向こうも大わらわなのかもしれないわ。そうねぇ……それじゃ取り敢えずわたしから話せることを話しますから、お茶でも飲みながら報告を待ちましょ。ね」
そう提案するすみれさん。何でこんなにおっとりしていられるんだ、この人は。
これが大人の余裕? それともただ呑気なだけ?
うぅむ。すみれさんの場合どっちの可能性もありなんだよねぇ……。
ともかく、ここはすみれさんの提案に乗って、そのまま話を聞くことにするよりないか。
「どうする、十一夜君……?」
十一夜君も同感だったのか黙って頷いた。
「それじゃ、何からお話ししようかしらねぇ……」
この熟女、唇に指を当てて考え込む様子はまるで少女のようだが、どうしてこれでなかなかのやり手なんだから人って分からないもんだよね。
「兎拂家のことを調べるうちに、先日亡くなった娘さんのことを知ったわ。その秘密と十一夜君との拘わりも。それで十一夜家にチップの情報分析に協力するとこちらから申し出たのよ」
十一夜君は目を少し伏せてそのまましばしの間黙っていたが、口を開いてボソリと言った。
「伺います。続けてください」
「並行世界というの? わたしには難しいことは分からないけれど、こことは違うストーリーの世界というような説明を受けたわ。何だか俄かには信じがたいのだけど、今国家的なレベルで研究されているのがその間を往き来する技術だというのだけど。どうもMSが欲しがっているのがその技術らしいのね」
「あぁ、MSに関しては以前にもそんな話をお聞きしましたけど、まさか国がそんな研究を……」
いきなりまたそんな話を聞かされても、まさか国がそんなことを真面目に研究しているとはなかなか信じられないんだけどなぁ。日本大丈夫か?
「そうなのよ~。それでね。噂じゃどうもさっき拐われた子が別の世界から来たのじゃないかって話なのよ」
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