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本編
第9話 ノームイケメン化計画
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「ねえ時田。四大精霊とかは出さないの?」
「うーん」
デロデロデロン。
時田は手を頭に回して唸る。
デデデン。
「確かにカノブレイズ王国の設定から進んでいないので、アリっすね」
ドガバキ。
「アリもなにも絶対に取り入れるべきでしょ。設定を練るための参考が圧倒的に足りていないのよアンタ。なにより知識をこねくりまわして、アイデアを閃こうとする根気が足りない」
「まあ、そうっすねぇ。自分でも分かってるんですが、こだわりというか⋯⋯自分のセンスに合わないというか⋯⋯オリジナリティを出したいというか」
「⋯⋯」
ボロンボロン。
時田の煮え切らない態度に巻原は苛立ちを覚える。もっと言ってやろうと考えたが、思いとどまる。人にはそれぞれのプライドと考えがある。他人の正解を押し付けたところで響くわけもない。失敗して、成功して、失敗して。そうやって己で気付いていくしかないのだ。
「そんなことより」
「さっきからなんなんだこの耳障りな音は」
巻原が言うよりも早く、鷲津が音をあげた。
「す、すみません! どうやっても良い音が鳴らなくて⋯⋯! この音をヘッドホンで聴いていると、頭がおかしくなってしまいそうで⋯⋯直接音を鳴らしてましたっ!」
金星はそう言って、パソコンをぱたりと閉じた。時田がお茶を啜ってから金星を見る。
「DTMだっけ? なんだか大変そうだな」
「そ、そうなんです⋯⋯。ピアノを長い間やっていたので正直余裕かと思っていたんですが、まずソフトの細かい操作がよく分からなくって」
今度は鷲津が金星に訊ねる。
「ちなみになんのSEを作っていたんだ?」
「た、宝箱の音を⋯⋯」
鷲津は黙って金星の肩に手を置いた。
「金星。今日はもう休め」
「べ、別に疲れてないです!」
「まあまあ。金星ちゃんも今日のところは制作を終わりにして、気分転換しなよ。ちょうど四大精霊の話をしてたところだから」
もう片方の肩に巻原の手が乗る。
「⋯⋯わかりました。仕方ないですね」
「気分転換だとか仕方ないで話に加わられるのも複雑なんですが」
「アンタがいつまで経っても続きを書かないから、手伝ってあげてるんじゃない。泣いて感謝してほしいくらいよ」
「まあ⋯⋯はい。ありがとうございます」
そう時田は口を尖らせて言った。楽観的な時田も最近の筆の進み具合に焦りと自己嫌悪を覚えていた。どうにかしたいのに、適当に取り繕った物語では妥協したくない。そのプライドに邪魔されて、時田は身動きが取れなくなりつつあった。
九十九に勝つためには、ゲームを進めるほどに目が醒めていくような極上のストーリーと、心が躍るようなシナリオが不可欠だ。それを考えるのがオレの役目。そう思えば思うほどに、自分の今書いている物語がくすんで見えてくる。
——これではダメだ。九十九に勝つことは出来ない。
自分の中にいる九十九という存在が段々と膨らんでいき⋯⋯禍々しい気をまとって自分に覆いかぶさろうとしてくる。そのような想像をしてしまうほどに、時田は追い詰められ始めていた。
「うーん」
デロデロデロン。
時田は手を頭に回して唸る。
デデデン。
「確かにカノブレイズ王国の設定から進んでいないので、アリっすね」
ドガバキ。
「アリもなにも絶対に取り入れるべきでしょ。設定を練るための参考が圧倒的に足りていないのよアンタ。なにより知識をこねくりまわして、アイデアを閃こうとする根気が足りない」
「まあ、そうっすねぇ。自分でも分かってるんですが、こだわりというか⋯⋯自分のセンスに合わないというか⋯⋯オリジナリティを出したいというか」
「⋯⋯」
ボロンボロン。
時田の煮え切らない態度に巻原は苛立ちを覚える。もっと言ってやろうと考えたが、思いとどまる。人にはそれぞれのプライドと考えがある。他人の正解を押し付けたところで響くわけもない。失敗して、成功して、失敗して。そうやって己で気付いていくしかないのだ。
「そんなことより」
「さっきからなんなんだこの耳障りな音は」
巻原が言うよりも早く、鷲津が音をあげた。
「す、すみません! どうやっても良い音が鳴らなくて⋯⋯! この音をヘッドホンで聴いていると、頭がおかしくなってしまいそうで⋯⋯直接音を鳴らしてましたっ!」
金星はそう言って、パソコンをぱたりと閉じた。時田がお茶を啜ってから金星を見る。
「DTMだっけ? なんだか大変そうだな」
「そ、そうなんです⋯⋯。ピアノを長い間やっていたので正直余裕かと思っていたんですが、まずソフトの細かい操作がよく分からなくって」
今度は鷲津が金星に訊ねる。
「ちなみになんのSEを作っていたんだ?」
「た、宝箱の音を⋯⋯」
鷲津は黙って金星の肩に手を置いた。
「金星。今日はもう休め」
「べ、別に疲れてないです!」
「まあまあ。金星ちゃんも今日のところは制作を終わりにして、気分転換しなよ。ちょうど四大精霊の話をしてたところだから」
もう片方の肩に巻原の手が乗る。
「⋯⋯わかりました。仕方ないですね」
「気分転換だとか仕方ないで話に加わられるのも複雑なんですが」
「アンタがいつまで経っても続きを書かないから、手伝ってあげてるんじゃない。泣いて感謝してほしいくらいよ」
「まあ⋯⋯はい。ありがとうございます」
そう時田は口を尖らせて言った。楽観的な時田も最近の筆の進み具合に焦りと自己嫌悪を覚えていた。どうにかしたいのに、適当に取り繕った物語では妥協したくない。そのプライドに邪魔されて、時田は身動きが取れなくなりつつあった。
九十九に勝つためには、ゲームを進めるほどに目が醒めていくような極上のストーリーと、心が躍るようなシナリオが不可欠だ。それを考えるのがオレの役目。そう思えば思うほどに、自分の今書いている物語がくすんで見えてくる。
——これではダメだ。九十九に勝つことは出来ない。
自分の中にいる九十九という存在が段々と膨らんでいき⋯⋯禍々しい気をまとって自分に覆いかぶさろうとしてくる。そのような想像をしてしまうほどに、時田は追い詰められ始めていた。
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