27 / 63
トンで跳んで飛んでゆく! それゆけ玉ねぎ温泉郷!
玉ねぎ温泉郷の真実
しおりを挟む
「私の目論見通りだったわけだね! はははのは!」
おどけて笑うアマネの肩に、野沢が手を置く。
「いいからとっととネタバラシしてくれ」
「ええー、アッキーのいけず! 私がもったいぶるの大好きなの知ってるクセに。……まあしょうがないか。時間も限られているしな」
再び声色が真面目モードに入るアマネ。
「それぞれの詳しい説明は省くが、現世という『チャンネル』の外――というより、その先にはいくつもの別世界が存在しているんだ。妖霊界、精霊界、天界、魔界、エトセトラ。……で、その中には認知されていない世界も沢山ある」
「そのうちの一つが、この『時界』だ」
ドワーフがアマネの説明を引き継ぐ。
「ちなみに、この時界は全ての世界線から等しく接触できる。私も元々は精霊界から迷い込んだ一学者だ。精霊界と時界を行き来して、この世界の研究をしている。さらに言っておくが、世界線というのは地球ではない星々も込みだ。これを見ろ」
ドワーフは分厚い日記帳のようなものを投げつけてきた。バサリという音とともに、秋義の胸元に飛び込んでくる。随分と使い古しているようだ。中を開くと、奇怪な文字からどこかで見たことがあるような文字がびっしりと並んでいた。
「十ページ目を見てみろ」
言われた通り十ページ目を開いてみると、そこには普段見慣れている「英語」が記されていた。
「この本は、私がこれまで出逢ってきた者が住まう星々の、主流の言語をまとめた物だ。ここに迷い込んできたヤツにはこれを渡して、知っている語群を見つけてもらう。その言語に合わせて、私が会話をしてこの世界の内容を説明するわけだ」
学者らしく非常に説明が長い。ミカンがくぁあと短くあくびを欠いた。
「ここまでで、察しの良い者は気付いただろう。なぜ私が日本語を話しているのか。その辞書には英語しか載っていないのに、だ」
ここでアマネが顔の横でピンと指を立てる。
「そう。近頃この時界に、日本人ばかりがやってきているということだ」
ドワーフはちらりとアマネを見やる。
「そういうことだ」
彼は彼女のポーズを見習い、同じく指をピンと立てた。真面目な顔をしている二人が同じポーズをするというのは、どうしてこうもシュールなのだろう。滑稽なものが好きなアズサが、必死に両腕で顔を隠しながらくっくと笑い始める。
ふう。と、唸りながらドワーフは腕を組む。
「大方、この『時界』へ訪れるための方法を見つけたのだろう。ここにやってくる者は、これまで私以外において、迷い込んできた者達ばかりであった。というのも、『時界』へ移動する方法は場所によって違うからだ。天気、気温、風量、湿気、特定の成分、時間……エトセトラ。複雑に絡み合う様々な条件を全て満たした時にのみ『時界』の門は開く」
要が顔を上げて「ああ」と声を漏らした。
「きっと玉ねぎに含まれている何らかの成分が関係しているのでしょう。そうでなければ悪趣味な玉ねぎのモチーフも、ネギ臭いだけの玉ねぎをあれだけ浮かべている理由が見つからない」
と、そこで小室が片手を上げた。
「そろそろ本題を聞いても良いか」
「時間がないんだろ」
野沢も痺れを切らして、先を急ぐ。
「そうだな。簡潔に言おう。この時界では、君達それぞれの魂に強く刻まれた過去のどれかを選んで戻ることが出来る。魂だけが過去の自分に戻るため、同一人物が同じ時間軸に存在してしまうという問題は発生しない。……そうだな。試しにそこのお前、何か強く記憶に残る思い出を頭に浮かべてみろ」
ドワーフが秋義を指差す。
「あ? お、おう」
すると、秋義の周囲にシャボン玉のような球体が三つ浮かび始めた。アズサの風呂を覗いている秋義、パンツを被っている秋義、悪ガキからアズサを守っている秋義が球体一つにつき、一つ浮かびあがっている。
「これがお前の戻れる過去だ。他にも強く刻まれている想い出で、頭に浮かべられるものがあれば、それだけ玉も増える」
「マジかぁ」
と、ホクホク顔の秋義に軽蔑の視線が至るところから突き刺さる。
「戻るか戻らないかは、お前らの自由だ。ただし、この時間軸でこれまで生きてきた記憶を引き継いで戻れるかどうかは推定……約半分だ。これまでに複数回やってきた同じ者の統計だから、サンプルは少ないがな。
要するに。記憶の継承に失敗すれば、お前たちは赤の他人になる。覚えていなければ再会しようもないからな。また幸いにも記憶が残っていて、やっとこさ相手を捜し当てても、その片割れの記憶まで残っているかは分からない。自分が憶えていて、相手は忘れているというのは、想像を絶する苦しみだろう。
世界は広い。お前らが今、目の前にいる奴らと互いの名前を呼び合い、笑顔で言葉を交わせるのは一つの奇跡に等しい。それを失う確率は五十パーセント。それだけは胸に留めておくように。戻りたいやつは、もう一度私に声をかけろ。元の世界に戻してやろう」
ドワーフのやけに長い説明に皆は顔を見合わせた。
おどけて笑うアマネの肩に、野沢が手を置く。
「いいからとっととネタバラシしてくれ」
「ええー、アッキーのいけず! 私がもったいぶるの大好きなの知ってるクセに。……まあしょうがないか。時間も限られているしな」
再び声色が真面目モードに入るアマネ。
「それぞれの詳しい説明は省くが、現世という『チャンネル』の外――というより、その先にはいくつもの別世界が存在しているんだ。妖霊界、精霊界、天界、魔界、エトセトラ。……で、その中には認知されていない世界も沢山ある」
「そのうちの一つが、この『時界』だ」
ドワーフがアマネの説明を引き継ぐ。
「ちなみに、この時界は全ての世界線から等しく接触できる。私も元々は精霊界から迷い込んだ一学者だ。精霊界と時界を行き来して、この世界の研究をしている。さらに言っておくが、世界線というのは地球ではない星々も込みだ。これを見ろ」
ドワーフは分厚い日記帳のようなものを投げつけてきた。バサリという音とともに、秋義の胸元に飛び込んでくる。随分と使い古しているようだ。中を開くと、奇怪な文字からどこかで見たことがあるような文字がびっしりと並んでいた。
「十ページ目を見てみろ」
言われた通り十ページ目を開いてみると、そこには普段見慣れている「英語」が記されていた。
「この本は、私がこれまで出逢ってきた者が住まう星々の、主流の言語をまとめた物だ。ここに迷い込んできたヤツにはこれを渡して、知っている語群を見つけてもらう。その言語に合わせて、私が会話をしてこの世界の内容を説明するわけだ」
学者らしく非常に説明が長い。ミカンがくぁあと短くあくびを欠いた。
「ここまでで、察しの良い者は気付いただろう。なぜ私が日本語を話しているのか。その辞書には英語しか載っていないのに、だ」
ここでアマネが顔の横でピンと指を立てる。
「そう。近頃この時界に、日本人ばかりがやってきているということだ」
ドワーフはちらりとアマネを見やる。
「そういうことだ」
彼は彼女のポーズを見習い、同じく指をピンと立てた。真面目な顔をしている二人が同じポーズをするというのは、どうしてこうもシュールなのだろう。滑稽なものが好きなアズサが、必死に両腕で顔を隠しながらくっくと笑い始める。
ふう。と、唸りながらドワーフは腕を組む。
「大方、この『時界』へ訪れるための方法を見つけたのだろう。ここにやってくる者は、これまで私以外において、迷い込んできた者達ばかりであった。というのも、『時界』へ移動する方法は場所によって違うからだ。天気、気温、風量、湿気、特定の成分、時間……エトセトラ。複雑に絡み合う様々な条件を全て満たした時にのみ『時界』の門は開く」
要が顔を上げて「ああ」と声を漏らした。
「きっと玉ねぎに含まれている何らかの成分が関係しているのでしょう。そうでなければ悪趣味な玉ねぎのモチーフも、ネギ臭いだけの玉ねぎをあれだけ浮かべている理由が見つからない」
と、そこで小室が片手を上げた。
「そろそろ本題を聞いても良いか」
「時間がないんだろ」
野沢も痺れを切らして、先を急ぐ。
「そうだな。簡潔に言おう。この時界では、君達それぞれの魂に強く刻まれた過去のどれかを選んで戻ることが出来る。魂だけが過去の自分に戻るため、同一人物が同じ時間軸に存在してしまうという問題は発生しない。……そうだな。試しにそこのお前、何か強く記憶に残る思い出を頭に浮かべてみろ」
ドワーフが秋義を指差す。
「あ? お、おう」
すると、秋義の周囲にシャボン玉のような球体が三つ浮かび始めた。アズサの風呂を覗いている秋義、パンツを被っている秋義、悪ガキからアズサを守っている秋義が球体一つにつき、一つ浮かびあがっている。
「これがお前の戻れる過去だ。他にも強く刻まれている想い出で、頭に浮かべられるものがあれば、それだけ玉も増える」
「マジかぁ」
と、ホクホク顔の秋義に軽蔑の視線が至るところから突き刺さる。
「戻るか戻らないかは、お前らの自由だ。ただし、この時間軸でこれまで生きてきた記憶を引き継いで戻れるかどうかは推定……約半分だ。これまでに複数回やってきた同じ者の統計だから、サンプルは少ないがな。
要するに。記憶の継承に失敗すれば、お前たちは赤の他人になる。覚えていなければ再会しようもないからな。また幸いにも記憶が残っていて、やっとこさ相手を捜し当てても、その片割れの記憶まで残っているかは分からない。自分が憶えていて、相手は忘れているというのは、想像を絶する苦しみだろう。
世界は広い。お前らが今、目の前にいる奴らと互いの名前を呼び合い、笑顔で言葉を交わせるのは一つの奇跡に等しい。それを失う確率は五十パーセント。それだけは胸に留めておくように。戻りたいやつは、もう一度私に声をかけろ。元の世界に戻してやろう」
ドワーフのやけに長い説明に皆は顔を見合わせた。
0
あなたにおすすめの小説
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる