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65話:袋詰めの地獄
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カルディナの町へ来て数日が経過した。
コーネルの資料は未だ来ず、統括者からもこれといった連絡は来ていない。俺も俺で町に訪れる行商人から夜王の遺物に関係していそうな噂を集めていたが、こちらも手がかりと呼べるようなものは得られていない。
なかなかままならないものだが、とは言えこれといった焦りもない。もとより、何十年とかけて探し回る計画なのだ。果報は寝て待てとも言うし、こういうのは焦ったところで得られるものでもない。
というわけで、気長に統括者からの連絡を待ちつつ、今日も今日とて俺たちは新人冒険者として適当にFランクの依頼をこなしていく。
「覚悟はいいか? だいぶ気持ち悪いことになると思うが、頼むから逃げるようなことすんなよ?」
一抱えある大きさの丈夫な袋を入り口近くの床に置いてから、俺は後ろに控えるフィリアに確認を取る。
「大丈夫だって。魔物相手ならまだしも、ただのネズミ退治じゃない。早いところやっちゃって」
俺の心配を笑うように軽い調子で応えたフィリアだが、本当に大丈夫だろうか? これから行うのは、俺ならではのネズミ捕りだと説明したのに……。
ちなみにリアナとは少し前から別行動をしている。代わりというわけではないが、俺たちから少し離れた所に、男の従業員がひとり俺たちの仕事ぶりを見張っている。
今回の依頼は酒場からの討伐依頼で、内容は食糧庫に潜むネズミ退治の依頼だ。なんでも保管していた食料が齧られて、いくつもの食料が駄目になったのだとか。
コイツがなかなか狡賢いようで、設置した罠にかからず困り果てたため、冒険者協会に依頼を出したらしい。
冒険者協会はこんな依頼も扱っているのかとか、これを討伐と言っていいのかとか、いろいろ疑問に感じることもあるが、まあ実際に張り出されていてそうなっているのだからそういうものかと納得するしかない。
「なら、始めるぞ」
フィリアの態度に一抹の不安を抱きながらも、俺は袋に意識を向ける。
ネズミ捕りというのは地味に面倒臭い作業だ。
普通は罠を設置して捕まえるか、毒餌を設置して駆除するか、嫌な臭いの煙を焚いて追い出すかするものだ。ただこれらの方法では、ネズミの活動時間まで待つ必要があるうえ効果もまちまちだ。煙なんか焚けば、食材や壁に臭いもついてしまうため依頼主からは好まれない。
しかし俺には、この手の獲物に対してこの上なく効果を発揮するあの魔術がある。
「――【飢魔招香】」
袋の中に入れた血染布に魔術をかけると、とたんに袋の口から臭気を帯びた魔力が漂い始める。すると、一分もしない内にネズミが蔵のどこからか出てき始めた。
「出てきた! 何度も見せてもらったけど、本当に動物には効果覿面ね」
フィリアが感心している間にも、出てきたネズミは香りに誘われ自ら袋の中へ入っていく。上から見ているだけでは袋の中に入ったネズミの様子はわからないが、確実に空腹を誘う香りを放つ血染布を食べ物と認識し食らいつこうとしているだろう。
だが果たして、ネズミ如きがその布に歯を立てることができるかな?
「――チュイッ⁉」
袋が一瞬膨らむと同時に中からくぐもった鳴き声が聞こえ、次の瞬間には静かになった。
わざわざ見るようなことはしないが、袋の中ではネズミがいくつもの針が生えた血染布に貫かれていることだろう。ネズミを貫いたら針はすぐに引っ込ませて、次の獲物が入って来るまでじっと待つ。
Aランクの魔物すら誘導して見せた俺の魔術。たかがネズミが抗える誘惑ではない。たとえ目の前に流れる川があろうと、一度この香りに囚われれば気付くことなく飛び込んでしまうだろう。
食欲旺盛なネズミを【飢魔招香】で誘い出し、袋の中で始末する。駆除が袋の中で完結するので、掃除の必要もない。これが俺の考えたネズミ捕り方だ。
しかし……むう。
「やはり魔力の通りが悪くなっている。そろそろ換え時か」
【飢魔招香】も【血織刃】も、発動時に使用する魔力が数日前よりも僅かに多くなっていた。これが意味するのは、布に染み込ませた血の状態が悪くなっているということだ。
俺の魔力には血の腐敗を防ぐ能力があるとは言え、それでも魔力が抜けていくにつれて腐敗は進んでいく。完全に腐敗してしまえば血は血としての性質を完全に失い、【血濡魔術】の影響下から外れてしまう。また魔力の通りが悪くなるのは戦闘においても隙に繋がるため、定期的に血を新しく取り換える必要があるのだ。
「最近は町の外に出ていないし、今日か明日にでも森に行くか」
そんなことを考えながら俺は、さらに魔力を込めて【飢魔招香】の効果を高める。すると先ほどよりも多くなって、新たなネズミが現れては袋の中へ吸い込まれていく。このままの調子で進めば、三十分もせずにこの蔵のネズミは駆逐できるだろう。
俺はのんびりと待ちながら、適当なタイミングで繰り返し【血織刃】を放つだけ――などと考えていたのだが……。
「ちょ、ちょっとアゼル? なんか変じゃない?」
フィリアが少し焦ったような声を発する。一瞬疑問に感じながらもフィリアに促されてネズミたちに向き直り、彼女が焦った理由を理解する。
出てくるネズミの増加が止まらないのだ。先ほどまでは三から六匹が纏まって出てくる程度だったのが十、二十匹と数が増えていく。
「……しまった。魔力を入れ過ぎたか」
「お、おい! 大丈夫なのか、コレ⁉」
この様子にはたまらず従業員の男からも不安そうな言葉が飛び出る。
その間にも棚の裏から、天上に空いた穴から大量のネズミが這い出し、気が付いたころにはネズミは群れを成し津波となって倉庫の床は埋め尽くし、凄まじい勢いで袋の中に突撃してくる。
袋はみるみると膨れていき、中ではネズミたちが血染布に群がり齧りついているのか、不気味にモゾモゾと蠢いている。
更には奪い合いでも起こっているのか、時折「ギュイッ」「ギィィ」といったくぐもった鳴き声までも聞こえてくる。【血濡魔術】によって強度を上げられた布を噛みちぎれるはずもないが、【飢魔招香】によって増幅させられた空腹感――飢餓感を抱いたネズミたちには関係のない事だろう。
これだけでもなかなかに凄惨だが、事態はさらに悪化していく。
「ひぃっ⁉」
フィリアから息を飲むような悲鳴が漏れ出る。
ネズミの群れに紛れて、ゴキブリやムカデといった害虫までも臭いに釣られて現れ、それらも同様に袋の中へと入っていったのだ。
流石にこれには俺もマズイと思い魔術を一時的に解くことを考えたが、既に袋はパンパンに膨れ上がり溢れたネズミまで出始める。溢れたネズミはなおも袋の奥にある血染布を欲して、入り口付近で詰まっている仲間に飛びかかり、邪魔者を排除せんとその背中に爪と歯を立て始め――――そこで俺は、そっと食糧庫の扉を閉め背後に居る二人の視線を遮った。
「――【血織刃】」
俺が小さく唱えると、扉の向こうから「ヂュッ――」という幾重にも重なった鳴き声がかすかに聞こえた。それでもまだネズミの鳴き声が聞こえたため、もう何回か繰り返し魔術を使ってやると、やがて扉の向こうは完全に静かになる。
俺は扉を少し開け顔だけを出し食糧庫の中を確認してから、ゆっくりと振り変えり二人に告げた。
「…………終わったぞ」
それを聞いた二人は、なんとも言えない表情を浮かべるのだった。
その後は、ネズミが残っていないかを軽く調べてから、依頼主である酒場の主人にネズミ(その他)入りの袋を見せて、特に揉めることなく報酬を受け取って帰路についた。
終わるまでにかかった時間があまりにも早かったことから、主人から疑いの目を向けられたが、そこは従業員がきちんと証言してくれた。
また報酬に関してだが、駆除したネズミの数によって依頼主の店主と相談して決める形になっていたのだが、袋の大きさから考えてざっくりと百匹くらいだろうということで、そこそこの金額を支払われて依頼書にサインを貰った。もしかしたら百より多いか、逆に少ないかもしれなかったが、誰も袋を開いてネズミの数を調べる気はなかったため、この決定に異を唱える者は出なかった。
「うう……ちょっと怖かったわ」
「だから最初に気持ち悪いって警告してやっただろ。まあ、俺もあんなに出てくるとは思わなかったが」
冒険者協会への帰り道。軽く呻くフィリアに呆れた口調で返しながらも同意を示す。
駆除したネズミは討伐の証拠として一度協会へ持って帰り、その後協会側で焼却処分してくれるらしい。
魔物と違ってネズミは動物だから、死体は討伐証明以上の用途はない。俺にとっては別で利用価値があるのだが、提出する以上今回は自重する。生真面目な職員が袋の中身を確認する可能性を考えたら、下手に血を吸収するわけにもいかないからな。袋の底にある血染布も、この際一緒に処分してもらおう。
「そういえば、作業中に魔力がどうとか言っていたけど、何かあったの?」
「ああ、実はだな――」
町中ということもあり、少し声を潜めて説明する。するとフィリアは納得したように頷く。
「さっきの異常はそういうことね。そのせいで魔術の制御を誤ったんだ?」
「失敬な。あれはあれで正常に働いた結果だ。断じて暴走なんかじゃない」
そもそも【飢魔招香】という魔術は、魔力を注いだ分だけ香りと幻惑作用が強くなるように術式を設計してある。その幻惑作用も鼻孔を通じて脳の空腹を司る部位のみを刺激するだけの攻撃性皆無の効果しかなく、その分制御も楽で魔術の影響範囲も対象も幅が広いのだ。
まあ逆を言えば、使った魔力量によってその都度効果にムラが出るということなのだが。そもそもの開発目的が狩りを楽にするためというものだったのだから、これくらい大雑把なのは見逃してほしいところである。
「はいはい。なら協会に戻ったら新しく魔物討伐の依頼でも受ける? いちおう今朝受けた依頼はほとんど消化できているけど……」
「まだお前が選んだ、飼い猫探しの依頼が残っているだろ?」
「でもこれくらいなら私ひとりでも出来るだろうし。それよりも、アゼルの魔術が使えなくなることの方が大変じゃない?」
「そいつは気にしなくていい。まだ魔力の通りが若干悪くなった程度だ。戦闘になったとしても気にする程のものじゃないし、完全に使い物にならなくなるまでまだ数日は猶予がある」
「そう? アゼルがそう言うならいいけど……」
ほんのりと懸念を醸しつつも、俺を言葉を信じて納得を示すフィリア。属性魔術と固有魔術という違いはあれど、同じ魔術師として魔術道具の不調は気になるのだろう。魔力の通りの良し悪しは、剣の切れ味のようなものだからな。
「コイツを受付に渡して残りの依頼を片付けたら、何か適当に外に出る依頼を探すよ。ついでに魔術の訓練でもつけてやるよ」
「うえぇ……またあんな訓練するの? あれ怖いんだけど」
「今度は【飢魔招香】は使わんよ。あん時は、あれだ、お前の実力を測る意図があったからな……あわよくば怖気づいて村に帰ってくれればとも思っていたが」
「今小声で腹黒いことを呟いたわね」
まだ諦めてなかったのかと言わんばかりに溜息を吐くが、俺としては今も帰って欲しい気持ちは変わらない。
出来ればカルディナにいる間に心変わりして欲しいんだがなあ。村から離れれば離れる程に、ひとりで帰すのが難しくなるからな。まあフィリアの性格を考えると、それはないか。
「そんなことより、次の依頼のことでも考えろ。逃げた猫を見つける方法なんて、お前の魔術が頼りなんだからな――あ?」
協会の入り口をくぐるや否や、強烈な敵意が正面から浴びせられた。正面を見ると、そこには武装した冒険者のパーティーが居た。
「よお」
「お前は……確か、ゴルドだったか?」
一瞬誰だったかと疑問符を浮かべるところだったが、その敵意と背中に背負った戦斧を見て思い出した。喧嘩がつい数日前のことだったこともあってか、思いの外すんなり名前が出てきたのは幸いだった。
「はんっ。今日もくだらねえ雑用でもしてたか? 低ランクにはお似合いの仕事だな」
「……ふん」
なんだか今日はいくらか機嫌が良いみたいだな。身体についた汚れと仄かに香る血の臭いを見るに、討伐依頼が上手くいったと見える。
しかし、俺を見るなり嫌味を言いに来たところを考えると……上手くはいったが満足はしていない、といったところだろうか?
まったく。我ながら面倒な奴に目を付けられたものだ。こういう時は無視するにかぎるな。
「おい待てや。先輩が話しかけてやってんだろうが」
回り込んで避けようとしたが、ゴルドは俺の歩みを阻むように鋭い声をぶつける。辟易する心を押さえつけながら仕方なしに足を止め、されどそちらを極力見ないように対話に応じる。
「何か用か? 見ての通り仕事の報告しなきゃならんのだが」
「変わらず生意気なガキだぜ。リアナの奴はどうした? パーティー組んでんだろ?」
「リアナ? それにパーティーって……あー、そう言えばそんなこと言ってたな」
あれはリアナが咄嗟についた嘘だったが、誤解を解かずに去ったから勘違いさせたままだったのか。
「生憎とここ最近は別行動をしていてな。それからひとつ訂正を。リアナと俺たちはパーティーを組んでいない。ありゃあリアナが吐いた嘘だ」
「……なんだと?」
「町からは離れていないから、しばらくここで張っていれば会えるんじゃないか?」
目的がリアナならなすりつけられるかと考えて言ってみたが、ゴルドは一瞬眉をひそめた後すぐに口角を釣り上げていやらしい笑みを浮かべる。
「へえ。てことは、あいつの邪魔が入ることはないってことか」
……これが因果応報というものだろうか。人に厄介ごとを押し付けようとしたツケが早速回ってきたようだ。
ゴルドの発言を受けてフィリアも背後で色めき立ったのがわかる。もともとコイツも辛抱強い性格ではないからな。
このままでは数日前の二の舞になりそうなので、早急に説得してこの場を収めなければならなければ。
「なあもう止めにしようぜ? あん時は強めに殴って悪かったよ。俺も依頼品を駄目にされて気が立ってたんだ」
「ああん?」
「お前らも酒も入っていたことだし、本調子でもなかったろ? それにほら、見ての通りデカい荷物もあることだし、前回のことは水に流そうぜ、な?」
「…………」
あれ? なんかさっきよりも敵意が強くなったような気が……。
「アゼル? 説得しようとしているんだと思うけど、それ逆効果よ?」
フィリアが背後から小声で言う。その言葉を証明するように、ゴルドの額に青筋が浮かび上がる。
「てめえ……俺たちをなめてんのか?」
「いやいや、誤解だ。俺はただ、お前が酔っぱらっていたから負けただけだと言いたかったわけで。そんな状態なら新人に負けるのも仕方ないよなってことをだな……」
そこまで言ったところでゴルドの敵意がまた膨れ上がったのを感じ取る。どこに怒る要素があったのか解せないが、どうやら俺の説得は失敗に終わったようだ。
「このガキが! お望み通り相手してやらあ!」
激高したゴルドが右拳を大きく振り上げ殴りかかってくる。ふむ、素面であるためか前回と比べて拳を突き出す動作にキレがあるな。
流石に昼間から問題を起こすのはまずいと思ったのか、ゴルドの仲間が慌ててゴルドを止めようと手を伸ばすのが見えた。視界の端ではフィリアも、俺を魔術で守ろうと杖の先端をゴルドに向けているのが見える。
しかし腐ってもCランク冒険者と言うべきか、不意を衝くように動いたゴルドの拳は鋭く、それを止めることは両者ともできそうになかった。
対する俺はと言うと、ゴルドが拳を振り上げる前には既に迎え撃つ準備を行っていた。
ゴルドの怒りが爆発する気配を察知した俺は、肩に担いだ袋の中に魔力を流しその中に【血濡魔術】の発動条件を満たしたモノの存在を確認し終えていた。
そしてゴルドの拳が前へ突き出されるのに合わせて、俺も袋の口を開いて前方へと押し出した。
「なっ、てめ!」
素面でも猪突猛進的な攻撃は変わらないのか、狙い通りゴルドの拳は袋の中へと吸い込まれ、その中身によって完全に受け止められる。
袋に詰まったモノが何であるかを認識したゴルドは、一拍の間を置いたのち気持ち悪そうな顔で怯む。
しかし、それだけでは終わらないのが俺のやり方でなあ?
「キィーー!」
「うわ! なんだコイツら⁉」
ゴルドが拳を引き抜くと同時に、袋から血塗れのネズミが何匹も飛び出しゴルドの身体にまとわりつく。
これにはたまらずゴルドも慌てて、ネズミを払い落とそうと腕を振り回す。
「おっと悪い。どうやらさっきの仕事で駆除したネズミの中に生き残りが居たみたいだ」
「な、何だそりゃあ⁉」
これには仲間たちもヤバいと感じたのか、ゴルドの身体を叩いてネズミを落とす手伝いをする。だが――
「このっ、しっしっ!」
「なんだこのネズミ! 落としても落としても、全然離れないぞ⁉」
仲間の困惑し叫びが響く。ネズミたちは何かに取り憑かれたように、地面に叩き落とされてはゴルドの脚を伝って身体中を駆け回る。何度も何度も。
「う、うおおあああああ‼」
「お、おい、待てよゴルド!」
妄執に駆られたように這い上がる血塗れのネズミたちに恐怖を感じたのか、ゴルドはたまらず建物の外へと逃げて行った。その後ろをゴルドの仲間が追いかけ、続いてネズミが追いかけて行く。
そして後には、奇妙な静寂が残った。
「……大丈夫かしら、あれ?」
「くくっ、罰が当たったんだろうよ。まあ、大丈夫なんじゃないか?」
大の男が小さなネズミに追いかけられる姿が滑稽で、思わず小さな笑みが零れた。
ゴルドを襲ったネズミの正体は当然、俺の【血濡魔術】によって操られた【血骸操】だ。
ネズミを袋の中で処理したのが功を奏したのか、思ったよりも【血濡魔術】の発動条件を満たす死体が多くあった。その数ははっきりとはしていないが、全体の三分の一はいたんじゃないだろうか。
流石にすべてを放出するのはやりすぎと考え数匹だけにとどめたが、その分ネズミをリアルに動かすことに集中できた。
流石にいつぞやのように自立行動させるにはいろいろな入念な下準備が必要だが、操り人形のように手動で動かすのなら簡単だ。
しばらく追いかけさせたら、適当にばらけさせて魔術を解こう。建物の壁際といった人の目に届か似合所に転がしておけば、野生の猫が処理してくれるだろう。
僅かな懸念としてはネズミの死体が減ってしまったことで仕事の評価が下がってしまわないかという点だが、今回は既に依頼主からは報酬を受け取っているし依頼書にも依頼達成のサインを貰っている。だから問題はほぼゼロと言える。
「さあ。気を取り直して報告に行こうぜ」
未だ外の方を見ているフィリアに声をかけてから、窓口の方へ向かった。しかし、今回で完全にゴルドに目を付けられた可能性が高いな。
これからしばらくは、本格的に警戒が必要かもしれんなあ。
コーネルの資料は未だ来ず、統括者からもこれといった連絡は来ていない。俺も俺で町に訪れる行商人から夜王の遺物に関係していそうな噂を集めていたが、こちらも手がかりと呼べるようなものは得られていない。
なかなかままならないものだが、とは言えこれといった焦りもない。もとより、何十年とかけて探し回る計画なのだ。果報は寝て待てとも言うし、こういうのは焦ったところで得られるものでもない。
というわけで、気長に統括者からの連絡を待ちつつ、今日も今日とて俺たちは新人冒険者として適当にFランクの依頼をこなしていく。
「覚悟はいいか? だいぶ気持ち悪いことになると思うが、頼むから逃げるようなことすんなよ?」
一抱えある大きさの丈夫な袋を入り口近くの床に置いてから、俺は後ろに控えるフィリアに確認を取る。
「大丈夫だって。魔物相手ならまだしも、ただのネズミ退治じゃない。早いところやっちゃって」
俺の心配を笑うように軽い調子で応えたフィリアだが、本当に大丈夫だろうか? これから行うのは、俺ならではのネズミ捕りだと説明したのに……。
ちなみにリアナとは少し前から別行動をしている。代わりというわけではないが、俺たちから少し離れた所に、男の従業員がひとり俺たちの仕事ぶりを見張っている。
今回の依頼は酒場からの討伐依頼で、内容は食糧庫に潜むネズミ退治の依頼だ。なんでも保管していた食料が齧られて、いくつもの食料が駄目になったのだとか。
コイツがなかなか狡賢いようで、設置した罠にかからず困り果てたため、冒険者協会に依頼を出したらしい。
冒険者協会はこんな依頼も扱っているのかとか、これを討伐と言っていいのかとか、いろいろ疑問に感じることもあるが、まあ実際に張り出されていてそうなっているのだからそういうものかと納得するしかない。
「なら、始めるぞ」
フィリアの態度に一抹の不安を抱きながらも、俺は袋に意識を向ける。
ネズミ捕りというのは地味に面倒臭い作業だ。
普通は罠を設置して捕まえるか、毒餌を設置して駆除するか、嫌な臭いの煙を焚いて追い出すかするものだ。ただこれらの方法では、ネズミの活動時間まで待つ必要があるうえ効果もまちまちだ。煙なんか焚けば、食材や壁に臭いもついてしまうため依頼主からは好まれない。
しかし俺には、この手の獲物に対してこの上なく効果を発揮するあの魔術がある。
「――【飢魔招香】」
袋の中に入れた血染布に魔術をかけると、とたんに袋の口から臭気を帯びた魔力が漂い始める。すると、一分もしない内にネズミが蔵のどこからか出てき始めた。
「出てきた! 何度も見せてもらったけど、本当に動物には効果覿面ね」
フィリアが感心している間にも、出てきたネズミは香りに誘われ自ら袋の中へ入っていく。上から見ているだけでは袋の中に入ったネズミの様子はわからないが、確実に空腹を誘う香りを放つ血染布を食べ物と認識し食らいつこうとしているだろう。
だが果たして、ネズミ如きがその布に歯を立てることができるかな?
「――チュイッ⁉」
袋が一瞬膨らむと同時に中からくぐもった鳴き声が聞こえ、次の瞬間には静かになった。
わざわざ見るようなことはしないが、袋の中ではネズミがいくつもの針が生えた血染布に貫かれていることだろう。ネズミを貫いたら針はすぐに引っ込ませて、次の獲物が入って来るまでじっと待つ。
Aランクの魔物すら誘導して見せた俺の魔術。たかがネズミが抗える誘惑ではない。たとえ目の前に流れる川があろうと、一度この香りに囚われれば気付くことなく飛び込んでしまうだろう。
食欲旺盛なネズミを【飢魔招香】で誘い出し、袋の中で始末する。駆除が袋の中で完結するので、掃除の必要もない。これが俺の考えたネズミ捕り方だ。
しかし……むう。
「やはり魔力の通りが悪くなっている。そろそろ換え時か」
【飢魔招香】も【血織刃】も、発動時に使用する魔力が数日前よりも僅かに多くなっていた。これが意味するのは、布に染み込ませた血の状態が悪くなっているということだ。
俺の魔力には血の腐敗を防ぐ能力があるとは言え、それでも魔力が抜けていくにつれて腐敗は進んでいく。完全に腐敗してしまえば血は血としての性質を完全に失い、【血濡魔術】の影響下から外れてしまう。また魔力の通りが悪くなるのは戦闘においても隙に繋がるため、定期的に血を新しく取り換える必要があるのだ。
「最近は町の外に出ていないし、今日か明日にでも森に行くか」
そんなことを考えながら俺は、さらに魔力を込めて【飢魔招香】の効果を高める。すると先ほどよりも多くなって、新たなネズミが現れては袋の中へ吸い込まれていく。このままの調子で進めば、三十分もせずにこの蔵のネズミは駆逐できるだろう。
俺はのんびりと待ちながら、適当なタイミングで繰り返し【血織刃】を放つだけ――などと考えていたのだが……。
「ちょ、ちょっとアゼル? なんか変じゃない?」
フィリアが少し焦ったような声を発する。一瞬疑問に感じながらもフィリアに促されてネズミたちに向き直り、彼女が焦った理由を理解する。
出てくるネズミの増加が止まらないのだ。先ほどまでは三から六匹が纏まって出てくる程度だったのが十、二十匹と数が増えていく。
「……しまった。魔力を入れ過ぎたか」
「お、おい! 大丈夫なのか、コレ⁉」
この様子にはたまらず従業員の男からも不安そうな言葉が飛び出る。
その間にも棚の裏から、天上に空いた穴から大量のネズミが這い出し、気が付いたころにはネズミは群れを成し津波となって倉庫の床は埋め尽くし、凄まじい勢いで袋の中に突撃してくる。
袋はみるみると膨れていき、中ではネズミたちが血染布に群がり齧りついているのか、不気味にモゾモゾと蠢いている。
更には奪い合いでも起こっているのか、時折「ギュイッ」「ギィィ」といったくぐもった鳴き声までも聞こえてくる。【血濡魔術】によって強度を上げられた布を噛みちぎれるはずもないが、【飢魔招香】によって増幅させられた空腹感――飢餓感を抱いたネズミたちには関係のない事だろう。
これだけでもなかなかに凄惨だが、事態はさらに悪化していく。
「ひぃっ⁉」
フィリアから息を飲むような悲鳴が漏れ出る。
ネズミの群れに紛れて、ゴキブリやムカデといった害虫までも臭いに釣られて現れ、それらも同様に袋の中へと入っていったのだ。
流石にこれには俺もマズイと思い魔術を一時的に解くことを考えたが、既に袋はパンパンに膨れ上がり溢れたネズミまで出始める。溢れたネズミはなおも袋の奥にある血染布を欲して、入り口付近で詰まっている仲間に飛びかかり、邪魔者を排除せんとその背中に爪と歯を立て始め――――そこで俺は、そっと食糧庫の扉を閉め背後に居る二人の視線を遮った。
「――【血織刃】」
俺が小さく唱えると、扉の向こうから「ヂュッ――」という幾重にも重なった鳴き声がかすかに聞こえた。それでもまだネズミの鳴き声が聞こえたため、もう何回か繰り返し魔術を使ってやると、やがて扉の向こうは完全に静かになる。
俺は扉を少し開け顔だけを出し食糧庫の中を確認してから、ゆっくりと振り変えり二人に告げた。
「…………終わったぞ」
それを聞いた二人は、なんとも言えない表情を浮かべるのだった。
その後は、ネズミが残っていないかを軽く調べてから、依頼主である酒場の主人にネズミ(その他)入りの袋を見せて、特に揉めることなく報酬を受け取って帰路についた。
終わるまでにかかった時間があまりにも早かったことから、主人から疑いの目を向けられたが、そこは従業員がきちんと証言してくれた。
また報酬に関してだが、駆除したネズミの数によって依頼主の店主と相談して決める形になっていたのだが、袋の大きさから考えてざっくりと百匹くらいだろうということで、そこそこの金額を支払われて依頼書にサインを貰った。もしかしたら百より多いか、逆に少ないかもしれなかったが、誰も袋を開いてネズミの数を調べる気はなかったため、この決定に異を唱える者は出なかった。
「うう……ちょっと怖かったわ」
「だから最初に気持ち悪いって警告してやっただろ。まあ、俺もあんなに出てくるとは思わなかったが」
冒険者協会への帰り道。軽く呻くフィリアに呆れた口調で返しながらも同意を示す。
駆除したネズミは討伐の証拠として一度協会へ持って帰り、その後協会側で焼却処分してくれるらしい。
魔物と違ってネズミは動物だから、死体は討伐証明以上の用途はない。俺にとっては別で利用価値があるのだが、提出する以上今回は自重する。生真面目な職員が袋の中身を確認する可能性を考えたら、下手に血を吸収するわけにもいかないからな。袋の底にある血染布も、この際一緒に処分してもらおう。
「そういえば、作業中に魔力がどうとか言っていたけど、何かあったの?」
「ああ、実はだな――」
町中ということもあり、少し声を潜めて説明する。するとフィリアは納得したように頷く。
「さっきの異常はそういうことね。そのせいで魔術の制御を誤ったんだ?」
「失敬な。あれはあれで正常に働いた結果だ。断じて暴走なんかじゃない」
そもそも【飢魔招香】という魔術は、魔力を注いだ分だけ香りと幻惑作用が強くなるように術式を設計してある。その幻惑作用も鼻孔を通じて脳の空腹を司る部位のみを刺激するだけの攻撃性皆無の効果しかなく、その分制御も楽で魔術の影響範囲も対象も幅が広いのだ。
まあ逆を言えば、使った魔力量によってその都度効果にムラが出るということなのだが。そもそもの開発目的が狩りを楽にするためというものだったのだから、これくらい大雑把なのは見逃してほしいところである。
「はいはい。なら協会に戻ったら新しく魔物討伐の依頼でも受ける? いちおう今朝受けた依頼はほとんど消化できているけど……」
「まだお前が選んだ、飼い猫探しの依頼が残っているだろ?」
「でもこれくらいなら私ひとりでも出来るだろうし。それよりも、アゼルの魔術が使えなくなることの方が大変じゃない?」
「そいつは気にしなくていい。まだ魔力の通りが若干悪くなった程度だ。戦闘になったとしても気にする程のものじゃないし、完全に使い物にならなくなるまでまだ数日は猶予がある」
「そう? アゼルがそう言うならいいけど……」
ほんのりと懸念を醸しつつも、俺を言葉を信じて納得を示すフィリア。属性魔術と固有魔術という違いはあれど、同じ魔術師として魔術道具の不調は気になるのだろう。魔力の通りの良し悪しは、剣の切れ味のようなものだからな。
「コイツを受付に渡して残りの依頼を片付けたら、何か適当に外に出る依頼を探すよ。ついでに魔術の訓練でもつけてやるよ」
「うえぇ……またあんな訓練するの? あれ怖いんだけど」
「今度は【飢魔招香】は使わんよ。あん時は、あれだ、お前の実力を測る意図があったからな……あわよくば怖気づいて村に帰ってくれればとも思っていたが」
「今小声で腹黒いことを呟いたわね」
まだ諦めてなかったのかと言わんばかりに溜息を吐くが、俺としては今も帰って欲しい気持ちは変わらない。
出来ればカルディナにいる間に心変わりして欲しいんだがなあ。村から離れれば離れる程に、ひとりで帰すのが難しくなるからな。まあフィリアの性格を考えると、それはないか。
「そんなことより、次の依頼のことでも考えろ。逃げた猫を見つける方法なんて、お前の魔術が頼りなんだからな――あ?」
協会の入り口をくぐるや否や、強烈な敵意が正面から浴びせられた。正面を見ると、そこには武装した冒険者のパーティーが居た。
「よお」
「お前は……確か、ゴルドだったか?」
一瞬誰だったかと疑問符を浮かべるところだったが、その敵意と背中に背負った戦斧を見て思い出した。喧嘩がつい数日前のことだったこともあってか、思いの外すんなり名前が出てきたのは幸いだった。
「はんっ。今日もくだらねえ雑用でもしてたか? 低ランクにはお似合いの仕事だな」
「……ふん」
なんだか今日はいくらか機嫌が良いみたいだな。身体についた汚れと仄かに香る血の臭いを見るに、討伐依頼が上手くいったと見える。
しかし、俺を見るなり嫌味を言いに来たところを考えると……上手くはいったが満足はしていない、といったところだろうか?
まったく。我ながら面倒な奴に目を付けられたものだ。こういう時は無視するにかぎるな。
「おい待てや。先輩が話しかけてやってんだろうが」
回り込んで避けようとしたが、ゴルドは俺の歩みを阻むように鋭い声をぶつける。辟易する心を押さえつけながら仕方なしに足を止め、されどそちらを極力見ないように対話に応じる。
「何か用か? 見ての通り仕事の報告しなきゃならんのだが」
「変わらず生意気なガキだぜ。リアナの奴はどうした? パーティー組んでんだろ?」
「リアナ? それにパーティーって……あー、そう言えばそんなこと言ってたな」
あれはリアナが咄嗟についた嘘だったが、誤解を解かずに去ったから勘違いさせたままだったのか。
「生憎とここ最近は別行動をしていてな。それからひとつ訂正を。リアナと俺たちはパーティーを組んでいない。ありゃあリアナが吐いた嘘だ」
「……なんだと?」
「町からは離れていないから、しばらくここで張っていれば会えるんじゃないか?」
目的がリアナならなすりつけられるかと考えて言ってみたが、ゴルドは一瞬眉をひそめた後すぐに口角を釣り上げていやらしい笑みを浮かべる。
「へえ。てことは、あいつの邪魔が入ることはないってことか」
……これが因果応報というものだろうか。人に厄介ごとを押し付けようとしたツケが早速回ってきたようだ。
ゴルドの発言を受けてフィリアも背後で色めき立ったのがわかる。もともとコイツも辛抱強い性格ではないからな。
このままでは数日前の二の舞になりそうなので、早急に説得してこの場を収めなければならなければ。
「なあもう止めにしようぜ? あん時は強めに殴って悪かったよ。俺も依頼品を駄目にされて気が立ってたんだ」
「ああん?」
「お前らも酒も入っていたことだし、本調子でもなかったろ? それにほら、見ての通りデカい荷物もあることだし、前回のことは水に流そうぜ、な?」
「…………」
あれ? なんかさっきよりも敵意が強くなったような気が……。
「アゼル? 説得しようとしているんだと思うけど、それ逆効果よ?」
フィリアが背後から小声で言う。その言葉を証明するように、ゴルドの額に青筋が浮かび上がる。
「てめえ……俺たちをなめてんのか?」
「いやいや、誤解だ。俺はただ、お前が酔っぱらっていたから負けただけだと言いたかったわけで。そんな状態なら新人に負けるのも仕方ないよなってことをだな……」
そこまで言ったところでゴルドの敵意がまた膨れ上がったのを感じ取る。どこに怒る要素があったのか解せないが、どうやら俺の説得は失敗に終わったようだ。
「このガキが! お望み通り相手してやらあ!」
激高したゴルドが右拳を大きく振り上げ殴りかかってくる。ふむ、素面であるためか前回と比べて拳を突き出す動作にキレがあるな。
流石に昼間から問題を起こすのはまずいと思ったのか、ゴルドの仲間が慌ててゴルドを止めようと手を伸ばすのが見えた。視界の端ではフィリアも、俺を魔術で守ろうと杖の先端をゴルドに向けているのが見える。
しかし腐ってもCランク冒険者と言うべきか、不意を衝くように動いたゴルドの拳は鋭く、それを止めることは両者ともできそうになかった。
対する俺はと言うと、ゴルドが拳を振り上げる前には既に迎え撃つ準備を行っていた。
ゴルドの怒りが爆発する気配を察知した俺は、肩に担いだ袋の中に魔力を流しその中に【血濡魔術】の発動条件を満たしたモノの存在を確認し終えていた。
そしてゴルドの拳が前へ突き出されるのに合わせて、俺も袋の口を開いて前方へと押し出した。
「なっ、てめ!」
素面でも猪突猛進的な攻撃は変わらないのか、狙い通りゴルドの拳は袋の中へと吸い込まれ、その中身によって完全に受け止められる。
袋に詰まったモノが何であるかを認識したゴルドは、一拍の間を置いたのち気持ち悪そうな顔で怯む。
しかし、それだけでは終わらないのが俺のやり方でなあ?
「キィーー!」
「うわ! なんだコイツら⁉」
ゴルドが拳を引き抜くと同時に、袋から血塗れのネズミが何匹も飛び出しゴルドの身体にまとわりつく。
これにはたまらずゴルドも慌てて、ネズミを払い落とそうと腕を振り回す。
「おっと悪い。どうやらさっきの仕事で駆除したネズミの中に生き残りが居たみたいだ」
「な、何だそりゃあ⁉」
これには仲間たちもヤバいと感じたのか、ゴルドの身体を叩いてネズミを落とす手伝いをする。だが――
「このっ、しっしっ!」
「なんだこのネズミ! 落としても落としても、全然離れないぞ⁉」
仲間の困惑し叫びが響く。ネズミたちは何かに取り憑かれたように、地面に叩き落とされてはゴルドの脚を伝って身体中を駆け回る。何度も何度も。
「う、うおおあああああ‼」
「お、おい、待てよゴルド!」
妄執に駆られたように這い上がる血塗れのネズミたちに恐怖を感じたのか、ゴルドはたまらず建物の外へと逃げて行った。その後ろをゴルドの仲間が追いかけ、続いてネズミが追いかけて行く。
そして後には、奇妙な静寂が残った。
「……大丈夫かしら、あれ?」
「くくっ、罰が当たったんだろうよ。まあ、大丈夫なんじゃないか?」
大の男が小さなネズミに追いかけられる姿が滑稽で、思わず小さな笑みが零れた。
ゴルドを襲ったネズミの正体は当然、俺の【血濡魔術】によって操られた【血骸操】だ。
ネズミを袋の中で処理したのが功を奏したのか、思ったよりも【血濡魔術】の発動条件を満たす死体が多くあった。その数ははっきりとはしていないが、全体の三分の一はいたんじゃないだろうか。
流石にすべてを放出するのはやりすぎと考え数匹だけにとどめたが、その分ネズミをリアルに動かすことに集中できた。
流石にいつぞやのように自立行動させるにはいろいろな入念な下準備が必要だが、操り人形のように手動で動かすのなら簡単だ。
しばらく追いかけさせたら、適当にばらけさせて魔術を解こう。建物の壁際といった人の目に届か似合所に転がしておけば、野生の猫が処理してくれるだろう。
僅かな懸念としてはネズミの死体が減ってしまったことで仕事の評価が下がってしまわないかという点だが、今回は既に依頼主からは報酬を受け取っているし依頼書にも依頼達成のサインを貰っている。だから問題はほぼゼロと言える。
「さあ。気を取り直して報告に行こうぜ」
未だ外の方を見ているフィリアに声をかけてから、窓口の方へ向かった。しかし、今回で完全にゴルドに目を付けられた可能性が高いな。
これからしばらくは、本格的に警戒が必要かもしれんなあ。
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