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【1】
かつて人類の文明が火と石に頼っていた遥か昔―――。
大いなる闇により世界が破滅へと向かい、人々が史実に残されることのない脅威にさらされていた遠い遠い過去の話―――。
魔は突如として世界を覆い、村を滅ぼし、生きとし生けるもの全てに恐れを抱かせた。草木は枯れ果て、動物は衰退し、自然全てが朽ちていく世界に人々は悲観し絶望していった。しかし、そんな暗闇の時代に差し込む一筋の光。魔を祓うべく立ち上がった一人の巫女が絶望で染められつつある世界に希望という名の光を携え、迫り来る闇の力を払い除けた。
『あぁ!我が身に授かりしは高潔なる九十九御大神の力!暗黒を滅ぼす聖なる力!みな集え!我が元に!今一度世界を安寧なる光で照らすのです!』
彼女は共に闇の力を退ける有志を各地で呼びかけ、古今東西から彼女の元に集まった十二人の猛者たちと共十余年の月日をかけて完全に魔を世界から消し去ることに成功した。
『皆、よくぞここまで私と共に戦ってくれました。心より感謝致します』
『何を言いますか!我ら十二勇士!貴殿の心意気に惹かれて集まったのです!』
『応とも!これも世のため人のため、感謝は我らこそがあなた様に望むこと!』
『我ら一同、どこまでも巫女殿に付き従いますぞ!』
十二人の勇士たちは巫女と共に世界中の民たちから讃えられ、現代に至るまでに一族の繁栄が成された。時代の移り変わりにより名声という名の影響力こそ衰えつつあるものの、その半数以上が未だ社会にとって権力の象徴とでも言わんばかりにその名を世界中に轟かせている。
巫女の末裔は後に九十九折坂という性を、また十二の勇士たちはそれぞれ春夏秋冬・姫小路・白宮・煌坂・獅子堂・冴島・稲葉・明堂院・蝶々原・瀬尾崎・柊・霧屋敷という性が与えられた。
世界を救済へと導いた巫女を含める十三の血族は後に“抗魔十三家”と呼ばれ、血族に連なる序列社会の中でも特に才ある者を輩出し財を成すことに成功した九十九折坂は、現代社会において「森羅万象、九十九折坂が関与していない事などありえない」などと揶揄される程の影響力を持った、曰く“最強の一族”。しかし、現在その当主である九十九折坂天童は齢52歳にして未だ現役バリバリの一族の長。完璧主義かつ厳格な彼は当然財閥の頭取の座に組みしており、あらゆるビジネスに着手しては成功を収めてきたのだが、そんな彼にも一つ、大きな懸念があった。
「おい父上、こいつは一体どういうことだ」
天童の息子、九十九折坂秋斗は目の前の光景に眉をひそめた。いや、普通ならもっと驚くような光景なのかもしれないが、秋斗も自分が異質な家柄に生まれたことは自覚している。これまでだっていくらでも「普通じゃない」ようなシーンは目の当たりにしてきた。だからこそ、まだ眉をひそめる程度で済んだのかもしれない。
「息子よ。貴様は今年で齢幾つだったか」
「今年で二十だな」
「そうか、ならば立派な大人だな」
「答えになっていないが」
寝起きのためセットもろくにされていないボサボサの頭を掻く秋斗。まだ覚醒仕立てておぼろげな記憶を辿るも、昨日は確かに自室のマンションで眠りについたはずだ。二十歳そこらとはいえ秋斗はすでに社会人。大学など飛び級に次ぐ飛び級でとうの昔に卒業してしまった。自分が生を受けた一族が特殊なのは理解しているし納得もしている。ならばさっさと社会のトップに君臨すべく帝王学やら経済学やらを学び抜いた挙句に身を持って社会に出て一庶民の暮らしなんぞを謳歌していたところだったのだが。
「俺が聞きたいのはだな父上。一体ここはどこで、このどえらい屋敷はなんだってことだ」
シャツに短パンという完全に部屋着姿の秋斗の前には現代日本に大変不釣り合いな「城」があった。そらもうドデカイ城が佇んでいた。屋敷と呼ぶよりも城と呼んだほうがしっくりくるようなお城。某夢の国でも有名なあの城よりもさすがに高さは劣るものの、その分横に長い西洋の城が秋斗の目の前にそびえ立っていた。
「お前の家だ」
秋斗から見て九十九折坂天童という人間は月と太陽が混ざり合ったような存在だと認知していた。それは時に太陽のように荒々しく豪快であり、時に月のように儚く静か。決して荒ぶる姿を目の当たりにしたことがあるわけではないが、しれっとした顔で、やることがとにかく極端な印象だった。だからこそだろう。父親の突飛な言葉にも、秋斗は「何言ってんのパパ?」よりも「またかよ」といった感想の方が前に出た。
「その心は?」
「そろそろ自立しろ」
「してるだろ!?わりと立派にしてるだろ俺!?」
「違う。そういう意味で言っているんじゃあない」
「じゃあどういう意味だ」
「お前もそろそろ上に立つ側に回れということだ」
今更なことを言うものだ。秋斗は九十九折坂家に生を受けてからというもの、常に上に立つ側の準備というものをされてきた。勉強にしてもそうだが、仕事でも私生活でも人をどのように扱えば最善を尽くすことができるのかと学ばされてきたのだ。それを今更―――
「仕事ならきちんとこなしているぞ。毎週5日、すでに部下もいる」
「コンビニエンスストアはもう辞めろ」
「バカな。来月からヤマグチ春のパン祭りが始まる。パンセールで忙しいんだ」
「安心しろ。代わりに退職届は提出してきた」
「おい!!何を勝手に人の職を奪っている!?それでも父親か!?」
「お前はコンビニの店長で収まる器ではない」
「足掛けに決まってるだろ!社会勉強しろと言ったのはそっちだぞ!?」
「ふっ、秋斗よ。貴様まさか反抗期か?」
「父親が息子の反抗期を鼻で笑うな!『ふっ』じゃねぇよ!いや反抗期でもないがな!」
いきなり見ず知らずの場所に連れてこられたかと思えば、早々に店長まで昇りつめた職まで奪われた秋斗。過保護といえば可愛げがあるが、この両親に限って言えばその度合いと価値観が歪んでいる。何事もまず結果を突きつけられるのだ、本人の意思は無視して。
「私が言っているのは仕事についてのことだけではない。一族についてのことも含めてだ」
「一族だと?」
「左様。我が一族は―――」
「みなまで言わずとも結構だ。十三家の話か」
天堂は小さく頷くと、運転手をその場に待たせ秋斗と共に大きな鉄製の扉を開き中へと入ってゆく。外からは扉に阻まれて屋敷の様子がわからなかったが、扉を抜けた先にはさらに大きな庭が広がっていた。敷地さえ整えることができればそのままスポーツの祭典でも開けそうなほどの広い庭を歩む天童と秋斗。
「それで十三家がなんだ。逸話は子供の頃から耳タコだが、今となっては付き合いはさほどだろう」
「ああ。年に一度の集会以外、顔を合わせることはほぼ無いに等しい」
「没落した家もあると聞く。旧家とはいえ、所詮はカビの生えた先人の名残だな」
「そう言うな。我らは同志であり苦楽を共にした戦友だ。助け合わねばならない」
「ふん、その割には目の敵にされすぎてやしないか」
秋斗の言葉に肩を落とす天童。ご先祖様である神聖なる巫女と共に大いなる闇を討ち滅ぼした十二勇士の血脈は、その後時代の流れに漂いながら色を変え、姿を変え、土地を変え、その価値観までも変質していった。抗魔十三家などと称されるようになった頃から、自然と十三の血族の中に序列が組み込まれ、本来であれば不要なはずの上下関係という軋轢を生み始めたのだ。
「誰が優位か、また誰が劣っているのか。そんなことは無用の長物なはずなのだがな」
「生まれたものは仕方がない。父上、あなたがこの世に生を受けた時点でそこはもう変わることはできなかったはずだ」
「それこそカビの生えた先人の名残というものだ、秋斗」
序列などというシステムが十三家の中に組み込まれてしまったことにより、一族間に広がるのは親交や協力心ではなく、妬みや嫉み、また己こそが頂点なのだと誇張する自己顕示欲。野心、闘争心、それら全てを含んだ危険な思想だ。特に九十九折坂は長年の繁栄が功を奏し、幸か不幸かその名だけで誰もが知る旧家の家柄となった。確立された不動の地位。絶対的な王者の立場。それは下から見上げる者たちにとってどれほど眩しい存在なのだろうか。
「私はな、秋斗。序列争いなど無意味なものに興味はない」
「同感だな。競争心や一族間での格差は仕様のない事とはいえ、無益な争いなど労力の無駄だ」
「ああ。最近では一族の繁栄のためだとかこつけて、危険な人体実験まがいのことをしている家もあると聞く」
「は、まるで悪の組織だな。大方の検討は付くが?」
「ともあれ。これ以上の争いは無意味。次世代のお前たちに後を継がせる際は、後腐れのない綺麗な状態で継がせてやるのが私の願望だ」
「ならば春夏秋冬や姫小路の奴らと会食でもして思いの丈を話せばいい。とても聞くとは思えんが」
他の一族はどうかはわからないが、特に二位の春夏秋冬家。四位の姫小路家とは仲が悪い。何を持って一番とするかなど、子供でもあるまいに下らん決め事だと鼻で笑っていたものだが。
「そこでだ秋斗。お前に頼みがある」
庭の半分ほど来たところ。天度は後ろを歩く息子へと首だけでわずかに振り向き彼との視線を交錯させた。「まずい」秋斗は直感的にそう思った。曲がりなりにも社会の頂点に立とうという父が自分に対して頼みごとなど、厄介事でないはずがない。聞く前に退避するか、と考えたところでもう遅い。秋斗が頭を振るうよりも早く、天童は少しだけ意地悪そうな笑みを口元に浮かべ、愛すべき我が子へ向けてこう告げた。
「一族の娘を全員娶れ」
・・・
【2】
それから3ヶ月が経った―――
「娶る」というのはつまりはあれだ。女性を自分に妻として迎え入れろということだ。親から早く結婚しろと言われること自体はさして珍しいことではないが、まさか実の父親からエロゲーのように「ヒロイン全員と結婚しちゃえよ」と言われるとは夢にも思って見なかった秋斗だが、むしろ夢であって欲しかった。何の冗談かと目を丸くしていた秋斗に対して、天堂は本気で一夫多妻計画を打ち上げたのだ。
『お前が十三家の娘全員を娶ることができれば、一族間の溝が埋まると思わんか』
『思わんわ!!政略結婚ってレベルじゃねーよ!!』
天童曰く『次世代を担う序列第一の九十九折坂の息子が他の一族の娘全員と結ばれてしまえば、その後に続く後継者たちにとって無駄な隔たりが無くなり円滑な交友関係を結べるんじゃないか』ということだった。我が父ながら「なんてアホな考え方なんだろう」と秋斗は愕然としたが。
『いや、いける』
何の根拠かわらかんが、数秒間の脳内整理の後に出た答えがそれだった。どうも上に立つ云々の話は「女どもをまとめあげる力を手に入れろ」ということだったらしい。そしてこの馬鹿でかい屋敷、改めて確認したが都内のはずれもはずれ。ギリギリ関東と言えなくもない場所に建立されたこのお屋敷は、自分が働くための場所であり、女たちを囲うスウィートホームなのだという。父はあれでファンタジックな映画やドラマを観るのが好きな人だったので、そういった何かに感化されたのかもしれないが、いつの時代の誰を参考にしているのかはさっぱりわからなかった。
「くっそ、あいつら・・・!!」
秋斗が屋敷に住み始めて3ヶ月目の朝。だだっ広く一人じゃ持て余しすぎる敷地内も少しづつ慣れてきた。子供の頃は似たような屋敷に住んでいたとはいえ、あの頃はまだ家族や住み込みの使用人たちも一緒だっただけに人気の賑やかさというものはあったものだ。しかしここにいるのは主である自分と―――
「おい!!お前ら!!」
秋斗が雇った6人のメイドたち。
「ふぁぁぁ、な~によご主人様・・・まだ朝の8時なのよ?」
「もう8時だ!!なぜ起こさん!!」
「でも今日は日曜だし~・・・」
「月曜だ!!」
金髪の長髪を両サイドで結わえた少女が、パジャマ姿のままリビングの机に突っ伏したまま眠そうに秋斗の方を見やる。抗魔十三家・第十位“獅子堂”の娘、獅子堂芽亜。芽亜は秋斗の言葉に首をかしげながら、カレンダーと時計の置かれた棚を交互に見つめる。
「え?・・・って、うっわぁ!もう8時じゃない!!何やってんのよ!?」
「こっちのセリフだ!!メイドが寝坊とは何事だ!」
「いっやぁ~たはは・・・」
左右で色の違う眼が特徴的な芽亜は、バツが悪そうに視線を逸らす。そんな彼女に構うことなく秋斗はモップを持ったままゆらゆらと左右に揺れている長身の少女に声をかける。
「貴様らのせいで取引の時間に遅刻だ!!乙女!!車を回せ!!」
「ほえ~・・・お姉ちゃんはジェット機よりもジャム派だよぉ~・・・?」
「あぁ!?寝ぼけるな!!おい起きろ!!」
「んへへへへへ~・・・ご主人様ダメだよぉ・・・お姉ちゃんはカレーじゃないよぉ~・・・?」
「どんな夢ださっきから!!起きろ駄乳メイド!!」
腰まで伸ばした桃色の髪をサイドで輪っかに括り、同色のメイド服に身を包んだ少女。抗魔十三家・第七位“瀬尾崎”の娘、瀬尾崎乙女。そのたわわに実っている大きな乳房はメイド服の胸元から今にもこぼれ落ちそうになりながらなんとか重力に抗っているようで。
「ええい使えんやつめ・・・!!」
「なんよご主人様、そない慌てて」
激怒する秋斗を前に、ひょっこりと入口から顔を覗かせる青髪の少女。
「あれ?今朝は早ぉから仕事に行くんやなかったかな?」
「その早ぉの時間に間に合いそうもないからこうしてブチギレているんだ!」
「あららぁ・・・やっぱうちが起こしに行くべきやったなぁ・・・」
「霞、覚えていたんならなんでお前が起こさんのだ!」
「あぁいや、それはぁ・・・」
霞と呼ばれた京都弁の少女もまたバツの悪そうな態度で視線を反らせる。と、そんな彼女の背後からさらに別の少女が手にお盆を持って現れる。
「あ、ごしゅじさまー。起きたー?おはー?」
「あ!あかん乖離ちゃん!それ見せたら・・・!」
乖離と呼ばれた白髪の少女の手には、黒い何か(※モザイク処理)が盛られたお皿と紫色の何か(※モザイク処理)が入った器と、茶色い何か(※モザイク処理)が盛られたお椀と、唯一綺麗な透明の水が注がれたコップの乗ったお盆があった。でろ~んという効果音がピッタリな程に禍々しい朝食という名の何か。
「・・・なんだ、そのゴミは」
「ひど!ゴミちゃうよ!?ご主人様の朝ごはんやんか!」
「乖離、がんばってかすみと一緒に作ったよー」
「朝食!?これがか!?無修正にしちゃいけないような状態になっている生ゴミにも劣るこの何かがか!?一周回ってやっと汚物と言えるような未知の物質のこれがか!?人類の食物として認めるには5世紀早いぞ!?」
「言いすぎやろ!?」
ショックを受ける青髪のショートヘアの少女。抗魔十三家・第六位“蝶々原”の娘、蝶々原霞。そして伸びきった前髪で片目が見え隠れしている白髪をツインテールにしている少女。抗魔十三家・第三位“白宮”の娘、白宮乖離。ご主人様のためにと3時間も早く起きて朝食を作ろうとした二人だったが、あえなく撃沈。
「はは、霞と乖離の料理スキルは壊滅的だからね・・・」
テーブルに座っている芽亜がご愁傷様と手を合わせて食材に黙祷を捧げる。
「卵が片手で割れないの。握りつぶしちゃう・・・」
「そんなレベルじゃないだろこれは!?悪魔的な化学実験でもこなしたか!?」
「おかしいなぁ、頭の中では綺麗なリゾットになっとるはずなんやけど・・・」
「料理下手なやつが脳内だけでレシピを作るな!!」
「ご主人様、乖離が作ったごはん、食べてみる?」
「食べれるかぁ!!」
「食べてー」
原型はパンなのか米なのか、はたまたスープなのかもんじゃ焼きなのか、よくわからない何かに変異している秋斗の朝食に対する論争が激化する中、特に誰とも接することなく牛乳とフレーク、そしてオレンジジュースの入ったコップを手にテーブルの椅子に着く紫髪のメイド。
「いただきます。・・・あむ」
「いや、おい綺更、貴様。何しれっと入ってきて自分ひとりだけ朝食を食べているんだ」
「コーンフレークを食べているだけだけど」
「献立を聞いているんじゃない」
「今朝のご主人様の食事は霞と乖離が担当だもの。朝食はメイド各自で好きなように食べる、そういうルールでしょ?何か問題でも?」
「問題大アリだからこのざまだ!!見ろ!!そして食ってみろ!!」
「いやよ、こんなう●こみたいなもの」
「そのう●こみたいなものを食わされそうになっているんだぞ俺は!」
「さすがにう●こを食べたら引くわよ?」
「う●こ食べるわけないだろ!!」
「う●こう●こて!二人ともさっきから酷すぎちゃう!?」
肩より少し長く伸ばした紫色の髪には特徴的なピンク色のメッシュ。少し冷淡そうなツリ目が性格の強さを表しているものの、その整った顔立ちは芽亜たちよりも少し大人の雰囲気を醸し出している。抗魔十三家・第十二位“冴島”の娘、冴島綺更。
「だいたい朝から騒々しのよ。仕事に行くなら早く行きなさいよ」
「それが主人に言う言葉か!」
「お世話しないとまともに生活できないなんて、情けないご主人様ね」
「貴様、言わせておけば・・・!」
「なによ。手をあげるつもり?」
「いや、胸を揉ませろ!」
むにっ♡
「ちょ!?な、あっ、ひゃんっ」
無駄に早い手つきで背後から綺更の胸を一掴みする秋斗に、見かけによらず可愛い声をあげて仰け反る綺更。セクハラ以外の何者でもない攻撃に、綺更は顔を真っ赤にしながら声を荒らげて。
「にゃにゃっ、にゃにしゅ、なにするのよぉ!?」
「ふん、処女風情が俺に逆らうからそうなる!これは罰だ!」
「セ、セクハラで訴えるわよ!?この変態っ!」
「ふはは!やってみるがいい!権力で握りつぶしてやる!!」
「「「(外道だ・・・)」」」
こんな大きな屋敷に住まう以上、その主である秋斗は超の付く金持ち。この場にいる誰もが相当な旧家の生まれながら、そんな彼女たちでさえも幼い頃より昔話のように言い伝えられ続けてきた「九十九折坂」という名前。秋斗は冗談で言っているのかもしれないが、彼が左を右と言えば右に。黒を白だと言えば白になってしまうのは実際のところなのだろう。
「ごごご、ごめんなさぁぁぁぁぁ~い!!」
このまま秋斗と綺更の言い合いがヒートアップしようかと言うところで、さらなる乱入者がリビングへと駆け込んでくると、そのまま勢い余って秋斗の元までごろごろと転げまわってくる。
「あたたたたぁ・・・」
「お、おい狐々郎。大丈夫か?」
「はいぃ・・・だ、大丈夫ですぅ・・・」
生い茂る草木のような明るい緑色の長髪に小柄な体躯。その場にいる誰よりも華奢に見えるメイドの“彼”は、そのあどけない顔立ちもさる事ながら、一番に目を引くのは頭からぴょこんと生えた獣の耳と感情に応じるかのようにパタパタと振るわれるふさふさの尻尾。
「ご、ごめんなさいご主人様!ボクが寝坊したばっかりに!」
抗魔十三家・第五位“稲葉”の息子、稲葉狐々郎。愛らしい見た目はメイド服も相まって十代半ばの少女に見えるが、正真正銘―――“男”である。
「気にするな狐々郎、本来の働きを全うしないこのブスどもが悪い」
「で、でもボクがもっと早起きしてれば芽亜さんが寝坊したことにも気づいたのに・・・!」
「狐々郎よ、お前はなんていいやつなんだ。帰ったら愛でてやろう」
「え!?えへへ・・・ほ、本当ですか・・・?」
見た目は女とはいえ中身が男同士で通じるところもあるのか、他の誰よりも気兼ねしないでいられる存在として狐々郎を重宝してる秋斗。しかし傍から見ている芽亜たちは全く面白くないようで。
「まーたご主人様は狐々郎にばっかり甘いんだから!!」
「こころばっかりずるいー」
「そーやよご主人様。愛人作るんはええけど、本妻のうちのことやって構ってぇな?」
「ホモくさいわ・・・」
「むにゃむにゃ、お姉ちゃんはマシュマロより焼きそばの方が合うよぉ~・・・」
いまだ舟を漕いでいる乙女はさておき、それぞれ不平不満を漏らしながら白い目で二人を見つめる四人。男同士だからといって、傍目にはいちゃついているようにしか見えない秋斗と狐々郎にヤキモキしてしまう芽亜たち。それもそのはず、秋斗自身は狐々郎に対して友情のようなものしか感じてしないのかもしれないが、狐々郎の秋斗に対する視線がまるで恋する乙女かのような潤いを帯びている。そもそも家事も人並みにできるし、多少のドジは踏むものの全体的にそつのない性格だ。むしろ総合的な女子力は芽亜たち以上に備わっているのではないかとさえ思えた。
「って、しまった!こんなにくっちゃべってる時間はない!もう行く!」
「お、送ります!」
「いや構わん!おい綺更!お前バイク持ってたろう!?貸せ!!」
「嫌よ。汚れるじゃない」
「貸せよ!!」
鞄を持とうとする狐々郎を手で制し、秋斗は綺更の愛車を借りようとする。滅茶苦茶嫌そうな顔をされたものの、渋々綺更はバイクのキーを渡すと、秋斗はすぐさまリビングを後にした。
「いってらっしゃーい」
「気ぃつけてな~?」
芽亜と霞の呼びかけを背に受けつつ、振り返ることなく扉を開き表に出てゆく秋斗。客との待ち合わせまで残り一時間を切っている。取引に当たって何よりも重要なのは信用と信頼だ。例えネームバリューというアドバンテージを持っていようとも、時間に遅刻するような若輩では相手からの信用を得られるわけがない。
「資料は持った!携帯持った!ハンカチ持った!財布も持った!キシリトールも持った!よぉし今日も完璧だ俺!」
前の日にしっかり準備していて良かったと心から自分を褒めてやりたい秋斗。他のメイドどもに任せていたら絶対に何か入れ忘れるに違いない。この三ヶ月であいつらのポンコツっぷりは身に染みて理解した。贅沢を言えばしっかりと顔を洗い歯磨きをしたかったが、仕方がない。ろくに洗っていない顔を軽く手で拭いながら、バイクの置かれている車庫へと向かった。
「まったく父上は・・・!これが望むことか!!」
父である天童は、息子に嫁を取れと言った。それも複数人。日本の法律では一夫多妻制度は採用されていなかったはずだが、我が家の力があればそれすらもあるいは覆してしまうのかもしれない。だがそもそもの問題として、当の本人である秋斗自身に彼女たちを本当に嫁に迎える気があるのかどうかというところが大きい。秋斗の容姿は悪いものではなく、むしろどちらかというとイケメンと称されるくらいには整っている。その家柄があまりにも大きすぎるため、一般的な女性との付き合いにはこれまで恵まれてこなかったものの、それでも女性経験のなんたるかくらいは熟知していた。
「親が息子の嫁を決めるなど、それこそ時代錯誤もいいところだ!」
車庫に置かれた250ccのバイクは、自転車にエンジンが乗っかっただけのようにも見える年季の入ったもの。シートの横に取り付けられたオリジナルのケースに鞄を差し込み、バイクにキーを挿してエンジンを鳴らす。
「十三家の溝を俺が埋める?はっ、くだらん序列争いにかまけている連中など知ったことか。そもそもよく手塩にかけて育てた娘を差し出したもんだ。まるで生贄だな、ははっ、娘よりも家柄が大事か。反吐が出ると言うんだ」
初めこそ嫁候補としてリストアップされた中の一人だった彼女たち。しかし秋斗が芽亜たちを選んだのは、あくまでも活用できる使用人としての価値を見出したからだ。「九十九折坂たるもの幾人であろうと使いこなす」それが先人たちの教え。父親の手前、彼女たちを傍に置かないわけにはいかなかったが、彼女たちを全員娶るかと聞かれると答えはNOだ。自分の嫁くらい自分で決める。
「ああそうだ。俺の女は俺が選ぶ!それが例えメイドだろうともな!」
そしてバイクは秋斗を乗せて走り出す。帰りは夕方になるだろうか、帰ってくる頃にどれだけのトラブルを抱えているかわかったものではないが、屋敷のメイドたちの協力があれば多少なりは仕事も捗るだろう。普段のメイドとしての仕事はかなりアレだが、いざとなれば頼りになる連中だ。
『九十九折坂総合商会』
合法、非合法問わず、ありとあらゆる仕事を請け負う便利屋。その業務内容は多岐にわたり、ペットの捜索から子供のお守り、さらには非合法取引の護衛から警察では扱えないような裏の案件まで様々。武力行使が必要となること場合も少なくはなく、時には命の危険にも晒されるような仕事だが、これまでもメイドたちの持つ特殊スキルを用いて任務を遂行してこれた。まだまだ起業したての会社だが、秋斗は社長として前線に立ち、やっていける自信がもあった。
「さて、今日の客たち如何程なものか」
そして今日、彼の元に舞い込んでくる新たな依頼とは――――
To be continued...
かつて人類の文明が火と石に頼っていた遥か昔―――。
大いなる闇により世界が破滅へと向かい、人々が史実に残されることのない脅威にさらされていた遠い遠い過去の話―――。
魔は突如として世界を覆い、村を滅ぼし、生きとし生けるもの全てに恐れを抱かせた。草木は枯れ果て、動物は衰退し、自然全てが朽ちていく世界に人々は悲観し絶望していった。しかし、そんな暗闇の時代に差し込む一筋の光。魔を祓うべく立ち上がった一人の巫女が絶望で染められつつある世界に希望という名の光を携え、迫り来る闇の力を払い除けた。
『あぁ!我が身に授かりしは高潔なる九十九御大神の力!暗黒を滅ぼす聖なる力!みな集え!我が元に!今一度世界を安寧なる光で照らすのです!』
彼女は共に闇の力を退ける有志を各地で呼びかけ、古今東西から彼女の元に集まった十二人の猛者たちと共十余年の月日をかけて完全に魔を世界から消し去ることに成功した。
『皆、よくぞここまで私と共に戦ってくれました。心より感謝致します』
『何を言いますか!我ら十二勇士!貴殿の心意気に惹かれて集まったのです!』
『応とも!これも世のため人のため、感謝は我らこそがあなた様に望むこと!』
『我ら一同、どこまでも巫女殿に付き従いますぞ!』
十二人の勇士たちは巫女と共に世界中の民たちから讃えられ、現代に至るまでに一族の繁栄が成された。時代の移り変わりにより名声という名の影響力こそ衰えつつあるものの、その半数以上が未だ社会にとって権力の象徴とでも言わんばかりにその名を世界中に轟かせている。
巫女の末裔は後に九十九折坂という性を、また十二の勇士たちはそれぞれ春夏秋冬・姫小路・白宮・煌坂・獅子堂・冴島・稲葉・明堂院・蝶々原・瀬尾崎・柊・霧屋敷という性が与えられた。
世界を救済へと導いた巫女を含める十三の血族は後に“抗魔十三家”と呼ばれ、血族に連なる序列社会の中でも特に才ある者を輩出し財を成すことに成功した九十九折坂は、現代社会において「森羅万象、九十九折坂が関与していない事などありえない」などと揶揄される程の影響力を持った、曰く“最強の一族”。しかし、現在その当主である九十九折坂天童は齢52歳にして未だ現役バリバリの一族の長。完璧主義かつ厳格な彼は当然財閥の頭取の座に組みしており、あらゆるビジネスに着手しては成功を収めてきたのだが、そんな彼にも一つ、大きな懸念があった。
「おい父上、こいつは一体どういうことだ」
天童の息子、九十九折坂秋斗は目の前の光景に眉をひそめた。いや、普通ならもっと驚くような光景なのかもしれないが、秋斗も自分が異質な家柄に生まれたことは自覚している。これまでだっていくらでも「普通じゃない」ようなシーンは目の当たりにしてきた。だからこそ、まだ眉をひそめる程度で済んだのかもしれない。
「息子よ。貴様は今年で齢幾つだったか」
「今年で二十だな」
「そうか、ならば立派な大人だな」
「答えになっていないが」
寝起きのためセットもろくにされていないボサボサの頭を掻く秋斗。まだ覚醒仕立てておぼろげな記憶を辿るも、昨日は確かに自室のマンションで眠りについたはずだ。二十歳そこらとはいえ秋斗はすでに社会人。大学など飛び級に次ぐ飛び級でとうの昔に卒業してしまった。自分が生を受けた一族が特殊なのは理解しているし納得もしている。ならばさっさと社会のトップに君臨すべく帝王学やら経済学やらを学び抜いた挙句に身を持って社会に出て一庶民の暮らしなんぞを謳歌していたところだったのだが。
「俺が聞きたいのはだな父上。一体ここはどこで、このどえらい屋敷はなんだってことだ」
シャツに短パンという完全に部屋着姿の秋斗の前には現代日本に大変不釣り合いな「城」があった。そらもうドデカイ城が佇んでいた。屋敷と呼ぶよりも城と呼んだほうがしっくりくるようなお城。某夢の国でも有名なあの城よりもさすがに高さは劣るものの、その分横に長い西洋の城が秋斗の目の前にそびえ立っていた。
「お前の家だ」
秋斗から見て九十九折坂天童という人間は月と太陽が混ざり合ったような存在だと認知していた。それは時に太陽のように荒々しく豪快であり、時に月のように儚く静か。決して荒ぶる姿を目の当たりにしたことがあるわけではないが、しれっとした顔で、やることがとにかく極端な印象だった。だからこそだろう。父親の突飛な言葉にも、秋斗は「何言ってんのパパ?」よりも「またかよ」といった感想の方が前に出た。
「その心は?」
「そろそろ自立しろ」
「してるだろ!?わりと立派にしてるだろ俺!?」
「違う。そういう意味で言っているんじゃあない」
「じゃあどういう意味だ」
「お前もそろそろ上に立つ側に回れということだ」
今更なことを言うものだ。秋斗は九十九折坂家に生を受けてからというもの、常に上に立つ側の準備というものをされてきた。勉強にしてもそうだが、仕事でも私生活でも人をどのように扱えば最善を尽くすことができるのかと学ばされてきたのだ。それを今更―――
「仕事ならきちんとこなしているぞ。毎週5日、すでに部下もいる」
「コンビニエンスストアはもう辞めろ」
「バカな。来月からヤマグチ春のパン祭りが始まる。パンセールで忙しいんだ」
「安心しろ。代わりに退職届は提出してきた」
「おい!!何を勝手に人の職を奪っている!?それでも父親か!?」
「お前はコンビニの店長で収まる器ではない」
「足掛けに決まってるだろ!社会勉強しろと言ったのはそっちだぞ!?」
「ふっ、秋斗よ。貴様まさか反抗期か?」
「父親が息子の反抗期を鼻で笑うな!『ふっ』じゃねぇよ!いや反抗期でもないがな!」
いきなり見ず知らずの場所に連れてこられたかと思えば、早々に店長まで昇りつめた職まで奪われた秋斗。過保護といえば可愛げがあるが、この両親に限って言えばその度合いと価値観が歪んでいる。何事もまず結果を突きつけられるのだ、本人の意思は無視して。
「私が言っているのは仕事についてのことだけではない。一族についてのことも含めてだ」
「一族だと?」
「左様。我が一族は―――」
「みなまで言わずとも結構だ。十三家の話か」
天堂は小さく頷くと、運転手をその場に待たせ秋斗と共に大きな鉄製の扉を開き中へと入ってゆく。外からは扉に阻まれて屋敷の様子がわからなかったが、扉を抜けた先にはさらに大きな庭が広がっていた。敷地さえ整えることができればそのままスポーツの祭典でも開けそうなほどの広い庭を歩む天童と秋斗。
「それで十三家がなんだ。逸話は子供の頃から耳タコだが、今となっては付き合いはさほどだろう」
「ああ。年に一度の集会以外、顔を合わせることはほぼ無いに等しい」
「没落した家もあると聞く。旧家とはいえ、所詮はカビの生えた先人の名残だな」
「そう言うな。我らは同志であり苦楽を共にした戦友だ。助け合わねばならない」
「ふん、その割には目の敵にされすぎてやしないか」
秋斗の言葉に肩を落とす天童。ご先祖様である神聖なる巫女と共に大いなる闇を討ち滅ぼした十二勇士の血脈は、その後時代の流れに漂いながら色を変え、姿を変え、土地を変え、その価値観までも変質していった。抗魔十三家などと称されるようになった頃から、自然と十三の血族の中に序列が組み込まれ、本来であれば不要なはずの上下関係という軋轢を生み始めたのだ。
「誰が優位か、また誰が劣っているのか。そんなことは無用の長物なはずなのだがな」
「生まれたものは仕方がない。父上、あなたがこの世に生を受けた時点でそこはもう変わることはできなかったはずだ」
「それこそカビの生えた先人の名残というものだ、秋斗」
序列などというシステムが十三家の中に組み込まれてしまったことにより、一族間に広がるのは親交や協力心ではなく、妬みや嫉み、また己こそが頂点なのだと誇張する自己顕示欲。野心、闘争心、それら全てを含んだ危険な思想だ。特に九十九折坂は長年の繁栄が功を奏し、幸か不幸かその名だけで誰もが知る旧家の家柄となった。確立された不動の地位。絶対的な王者の立場。それは下から見上げる者たちにとってどれほど眩しい存在なのだろうか。
「私はな、秋斗。序列争いなど無意味なものに興味はない」
「同感だな。競争心や一族間での格差は仕様のない事とはいえ、無益な争いなど労力の無駄だ」
「ああ。最近では一族の繁栄のためだとかこつけて、危険な人体実験まがいのことをしている家もあると聞く」
「は、まるで悪の組織だな。大方の検討は付くが?」
「ともあれ。これ以上の争いは無意味。次世代のお前たちに後を継がせる際は、後腐れのない綺麗な状態で継がせてやるのが私の願望だ」
「ならば春夏秋冬や姫小路の奴らと会食でもして思いの丈を話せばいい。とても聞くとは思えんが」
他の一族はどうかはわからないが、特に二位の春夏秋冬家。四位の姫小路家とは仲が悪い。何を持って一番とするかなど、子供でもあるまいに下らん決め事だと鼻で笑っていたものだが。
「そこでだ秋斗。お前に頼みがある」
庭の半分ほど来たところ。天度は後ろを歩く息子へと首だけでわずかに振り向き彼との視線を交錯させた。「まずい」秋斗は直感的にそう思った。曲がりなりにも社会の頂点に立とうという父が自分に対して頼みごとなど、厄介事でないはずがない。聞く前に退避するか、と考えたところでもう遅い。秋斗が頭を振るうよりも早く、天童は少しだけ意地悪そうな笑みを口元に浮かべ、愛すべき我が子へ向けてこう告げた。
「一族の娘を全員娶れ」
・・・
【2】
それから3ヶ月が経った―――
「娶る」というのはつまりはあれだ。女性を自分に妻として迎え入れろということだ。親から早く結婚しろと言われること自体はさして珍しいことではないが、まさか実の父親からエロゲーのように「ヒロイン全員と結婚しちゃえよ」と言われるとは夢にも思って見なかった秋斗だが、むしろ夢であって欲しかった。何の冗談かと目を丸くしていた秋斗に対して、天堂は本気で一夫多妻計画を打ち上げたのだ。
『お前が十三家の娘全員を娶ることができれば、一族間の溝が埋まると思わんか』
『思わんわ!!政略結婚ってレベルじゃねーよ!!』
天童曰く『次世代を担う序列第一の九十九折坂の息子が他の一族の娘全員と結ばれてしまえば、その後に続く後継者たちにとって無駄な隔たりが無くなり円滑な交友関係を結べるんじゃないか』ということだった。我が父ながら「なんてアホな考え方なんだろう」と秋斗は愕然としたが。
『いや、いける』
何の根拠かわらかんが、数秒間の脳内整理の後に出た答えがそれだった。どうも上に立つ云々の話は「女どもをまとめあげる力を手に入れろ」ということだったらしい。そしてこの馬鹿でかい屋敷、改めて確認したが都内のはずれもはずれ。ギリギリ関東と言えなくもない場所に建立されたこのお屋敷は、自分が働くための場所であり、女たちを囲うスウィートホームなのだという。父はあれでファンタジックな映画やドラマを観るのが好きな人だったので、そういった何かに感化されたのかもしれないが、いつの時代の誰を参考にしているのかはさっぱりわからなかった。
「くっそ、あいつら・・・!!」
秋斗が屋敷に住み始めて3ヶ月目の朝。だだっ広く一人じゃ持て余しすぎる敷地内も少しづつ慣れてきた。子供の頃は似たような屋敷に住んでいたとはいえ、あの頃はまだ家族や住み込みの使用人たちも一緒だっただけに人気の賑やかさというものはあったものだ。しかしここにいるのは主である自分と―――
「おい!!お前ら!!」
秋斗が雇った6人のメイドたち。
「ふぁぁぁ、な~によご主人様・・・まだ朝の8時なのよ?」
「もう8時だ!!なぜ起こさん!!」
「でも今日は日曜だし~・・・」
「月曜だ!!」
金髪の長髪を両サイドで結わえた少女が、パジャマ姿のままリビングの机に突っ伏したまま眠そうに秋斗の方を見やる。抗魔十三家・第十位“獅子堂”の娘、獅子堂芽亜。芽亜は秋斗の言葉に首をかしげながら、カレンダーと時計の置かれた棚を交互に見つめる。
「え?・・・って、うっわぁ!もう8時じゃない!!何やってんのよ!?」
「こっちのセリフだ!!メイドが寝坊とは何事だ!」
「いっやぁ~たはは・・・」
左右で色の違う眼が特徴的な芽亜は、バツが悪そうに視線を逸らす。そんな彼女に構うことなく秋斗はモップを持ったままゆらゆらと左右に揺れている長身の少女に声をかける。
「貴様らのせいで取引の時間に遅刻だ!!乙女!!車を回せ!!」
「ほえ~・・・お姉ちゃんはジェット機よりもジャム派だよぉ~・・・?」
「あぁ!?寝ぼけるな!!おい起きろ!!」
「んへへへへへ~・・・ご主人様ダメだよぉ・・・お姉ちゃんはカレーじゃないよぉ~・・・?」
「どんな夢ださっきから!!起きろ駄乳メイド!!」
腰まで伸ばした桃色の髪をサイドで輪っかに括り、同色のメイド服に身を包んだ少女。抗魔十三家・第七位“瀬尾崎”の娘、瀬尾崎乙女。そのたわわに実っている大きな乳房はメイド服の胸元から今にもこぼれ落ちそうになりながらなんとか重力に抗っているようで。
「ええい使えんやつめ・・・!!」
「なんよご主人様、そない慌てて」
激怒する秋斗を前に、ひょっこりと入口から顔を覗かせる青髪の少女。
「あれ?今朝は早ぉから仕事に行くんやなかったかな?」
「その早ぉの時間に間に合いそうもないからこうしてブチギレているんだ!」
「あららぁ・・・やっぱうちが起こしに行くべきやったなぁ・・・」
「霞、覚えていたんならなんでお前が起こさんのだ!」
「あぁいや、それはぁ・・・」
霞と呼ばれた京都弁の少女もまたバツの悪そうな態度で視線を反らせる。と、そんな彼女の背後からさらに別の少女が手にお盆を持って現れる。
「あ、ごしゅじさまー。起きたー?おはー?」
「あ!あかん乖離ちゃん!それ見せたら・・・!」
乖離と呼ばれた白髪の少女の手には、黒い何か(※モザイク処理)が盛られたお皿と紫色の何か(※モザイク処理)が入った器と、茶色い何か(※モザイク処理)が盛られたお椀と、唯一綺麗な透明の水が注がれたコップの乗ったお盆があった。でろ~んという効果音がピッタリな程に禍々しい朝食という名の何か。
「・・・なんだ、そのゴミは」
「ひど!ゴミちゃうよ!?ご主人様の朝ごはんやんか!」
「乖離、がんばってかすみと一緒に作ったよー」
「朝食!?これがか!?無修正にしちゃいけないような状態になっている生ゴミにも劣るこの何かがか!?一周回ってやっと汚物と言えるような未知の物質のこれがか!?人類の食物として認めるには5世紀早いぞ!?」
「言いすぎやろ!?」
ショックを受ける青髪のショートヘアの少女。抗魔十三家・第六位“蝶々原”の娘、蝶々原霞。そして伸びきった前髪で片目が見え隠れしている白髪をツインテールにしている少女。抗魔十三家・第三位“白宮”の娘、白宮乖離。ご主人様のためにと3時間も早く起きて朝食を作ろうとした二人だったが、あえなく撃沈。
「はは、霞と乖離の料理スキルは壊滅的だからね・・・」
テーブルに座っている芽亜がご愁傷様と手を合わせて食材に黙祷を捧げる。
「卵が片手で割れないの。握りつぶしちゃう・・・」
「そんなレベルじゃないだろこれは!?悪魔的な化学実験でもこなしたか!?」
「おかしいなぁ、頭の中では綺麗なリゾットになっとるはずなんやけど・・・」
「料理下手なやつが脳内だけでレシピを作るな!!」
「ご主人様、乖離が作ったごはん、食べてみる?」
「食べれるかぁ!!」
「食べてー」
原型はパンなのか米なのか、はたまたスープなのかもんじゃ焼きなのか、よくわからない何かに変異している秋斗の朝食に対する論争が激化する中、特に誰とも接することなく牛乳とフレーク、そしてオレンジジュースの入ったコップを手にテーブルの椅子に着く紫髪のメイド。
「いただきます。・・・あむ」
「いや、おい綺更、貴様。何しれっと入ってきて自分ひとりだけ朝食を食べているんだ」
「コーンフレークを食べているだけだけど」
「献立を聞いているんじゃない」
「今朝のご主人様の食事は霞と乖離が担当だもの。朝食はメイド各自で好きなように食べる、そういうルールでしょ?何か問題でも?」
「問題大アリだからこのざまだ!!見ろ!!そして食ってみろ!!」
「いやよ、こんなう●こみたいなもの」
「そのう●こみたいなものを食わされそうになっているんだぞ俺は!」
「さすがにう●こを食べたら引くわよ?」
「う●こ食べるわけないだろ!!」
「う●こう●こて!二人ともさっきから酷すぎちゃう!?」
肩より少し長く伸ばした紫色の髪には特徴的なピンク色のメッシュ。少し冷淡そうなツリ目が性格の強さを表しているものの、その整った顔立ちは芽亜たちよりも少し大人の雰囲気を醸し出している。抗魔十三家・第十二位“冴島”の娘、冴島綺更。
「だいたい朝から騒々しのよ。仕事に行くなら早く行きなさいよ」
「それが主人に言う言葉か!」
「お世話しないとまともに生活できないなんて、情けないご主人様ね」
「貴様、言わせておけば・・・!」
「なによ。手をあげるつもり?」
「いや、胸を揉ませろ!」
むにっ♡
「ちょ!?な、あっ、ひゃんっ」
無駄に早い手つきで背後から綺更の胸を一掴みする秋斗に、見かけによらず可愛い声をあげて仰け反る綺更。セクハラ以外の何者でもない攻撃に、綺更は顔を真っ赤にしながら声を荒らげて。
「にゃにゃっ、にゃにしゅ、なにするのよぉ!?」
「ふん、処女風情が俺に逆らうからそうなる!これは罰だ!」
「セ、セクハラで訴えるわよ!?この変態っ!」
「ふはは!やってみるがいい!権力で握りつぶしてやる!!」
「「「(外道だ・・・)」」」
こんな大きな屋敷に住まう以上、その主である秋斗は超の付く金持ち。この場にいる誰もが相当な旧家の生まれながら、そんな彼女たちでさえも幼い頃より昔話のように言い伝えられ続けてきた「九十九折坂」という名前。秋斗は冗談で言っているのかもしれないが、彼が左を右と言えば右に。黒を白だと言えば白になってしまうのは実際のところなのだろう。
「ごごご、ごめんなさぁぁぁぁぁ~い!!」
このまま秋斗と綺更の言い合いがヒートアップしようかと言うところで、さらなる乱入者がリビングへと駆け込んでくると、そのまま勢い余って秋斗の元までごろごろと転げまわってくる。
「あたたたたぁ・・・」
「お、おい狐々郎。大丈夫か?」
「はいぃ・・・だ、大丈夫ですぅ・・・」
生い茂る草木のような明るい緑色の長髪に小柄な体躯。その場にいる誰よりも華奢に見えるメイドの“彼”は、そのあどけない顔立ちもさる事ながら、一番に目を引くのは頭からぴょこんと生えた獣の耳と感情に応じるかのようにパタパタと振るわれるふさふさの尻尾。
「ご、ごめんなさいご主人様!ボクが寝坊したばっかりに!」
抗魔十三家・第五位“稲葉”の息子、稲葉狐々郎。愛らしい見た目はメイド服も相まって十代半ばの少女に見えるが、正真正銘―――“男”である。
「気にするな狐々郎、本来の働きを全うしないこのブスどもが悪い」
「で、でもボクがもっと早起きしてれば芽亜さんが寝坊したことにも気づいたのに・・・!」
「狐々郎よ、お前はなんていいやつなんだ。帰ったら愛でてやろう」
「え!?えへへ・・・ほ、本当ですか・・・?」
見た目は女とはいえ中身が男同士で通じるところもあるのか、他の誰よりも気兼ねしないでいられる存在として狐々郎を重宝してる秋斗。しかし傍から見ている芽亜たちは全く面白くないようで。
「まーたご主人様は狐々郎にばっかり甘いんだから!!」
「こころばっかりずるいー」
「そーやよご主人様。愛人作るんはええけど、本妻のうちのことやって構ってぇな?」
「ホモくさいわ・・・」
「むにゃむにゃ、お姉ちゃんはマシュマロより焼きそばの方が合うよぉ~・・・」
いまだ舟を漕いでいる乙女はさておき、それぞれ不平不満を漏らしながら白い目で二人を見つめる四人。男同士だからといって、傍目にはいちゃついているようにしか見えない秋斗と狐々郎にヤキモキしてしまう芽亜たち。それもそのはず、秋斗自身は狐々郎に対して友情のようなものしか感じてしないのかもしれないが、狐々郎の秋斗に対する視線がまるで恋する乙女かのような潤いを帯びている。そもそも家事も人並みにできるし、多少のドジは踏むものの全体的にそつのない性格だ。むしろ総合的な女子力は芽亜たち以上に備わっているのではないかとさえ思えた。
「って、しまった!こんなにくっちゃべってる時間はない!もう行く!」
「お、送ります!」
「いや構わん!おい綺更!お前バイク持ってたろう!?貸せ!!」
「嫌よ。汚れるじゃない」
「貸せよ!!」
鞄を持とうとする狐々郎を手で制し、秋斗は綺更の愛車を借りようとする。滅茶苦茶嫌そうな顔をされたものの、渋々綺更はバイクのキーを渡すと、秋斗はすぐさまリビングを後にした。
「いってらっしゃーい」
「気ぃつけてな~?」
芽亜と霞の呼びかけを背に受けつつ、振り返ることなく扉を開き表に出てゆく秋斗。客との待ち合わせまで残り一時間を切っている。取引に当たって何よりも重要なのは信用と信頼だ。例えネームバリューというアドバンテージを持っていようとも、時間に遅刻するような若輩では相手からの信用を得られるわけがない。
「資料は持った!携帯持った!ハンカチ持った!財布も持った!キシリトールも持った!よぉし今日も完璧だ俺!」
前の日にしっかり準備していて良かったと心から自分を褒めてやりたい秋斗。他のメイドどもに任せていたら絶対に何か入れ忘れるに違いない。この三ヶ月であいつらのポンコツっぷりは身に染みて理解した。贅沢を言えばしっかりと顔を洗い歯磨きをしたかったが、仕方がない。ろくに洗っていない顔を軽く手で拭いながら、バイクの置かれている車庫へと向かった。
「まったく父上は・・・!これが望むことか!!」
父である天童は、息子に嫁を取れと言った。それも複数人。日本の法律では一夫多妻制度は採用されていなかったはずだが、我が家の力があればそれすらもあるいは覆してしまうのかもしれない。だがそもそもの問題として、当の本人である秋斗自身に彼女たちを本当に嫁に迎える気があるのかどうかというところが大きい。秋斗の容姿は悪いものではなく、むしろどちらかというとイケメンと称されるくらいには整っている。その家柄があまりにも大きすぎるため、一般的な女性との付き合いにはこれまで恵まれてこなかったものの、それでも女性経験のなんたるかくらいは熟知していた。
「親が息子の嫁を決めるなど、それこそ時代錯誤もいいところだ!」
車庫に置かれた250ccのバイクは、自転車にエンジンが乗っかっただけのようにも見える年季の入ったもの。シートの横に取り付けられたオリジナルのケースに鞄を差し込み、バイクにキーを挿してエンジンを鳴らす。
「十三家の溝を俺が埋める?はっ、くだらん序列争いにかまけている連中など知ったことか。そもそもよく手塩にかけて育てた娘を差し出したもんだ。まるで生贄だな、ははっ、娘よりも家柄が大事か。反吐が出ると言うんだ」
初めこそ嫁候補としてリストアップされた中の一人だった彼女たち。しかし秋斗が芽亜たちを選んだのは、あくまでも活用できる使用人としての価値を見出したからだ。「九十九折坂たるもの幾人であろうと使いこなす」それが先人たちの教え。父親の手前、彼女たちを傍に置かないわけにはいかなかったが、彼女たちを全員娶るかと聞かれると答えはNOだ。自分の嫁くらい自分で決める。
「ああそうだ。俺の女は俺が選ぶ!それが例えメイドだろうともな!」
そしてバイクは秋斗を乗せて走り出す。帰りは夕方になるだろうか、帰ってくる頃にどれだけのトラブルを抱えているかわかったものではないが、屋敷のメイドたちの協力があれば多少なりは仕事も捗るだろう。普段のメイドとしての仕事はかなりアレだが、いざとなれば頼りになる連中だ。
『九十九折坂総合商会』
合法、非合法問わず、ありとあらゆる仕事を請け負う便利屋。その業務内容は多岐にわたり、ペットの捜索から子供のお守り、さらには非合法取引の護衛から警察では扱えないような裏の案件まで様々。武力行使が必要となること場合も少なくはなく、時には命の危険にも晒されるような仕事だが、これまでもメイドたちの持つ特殊スキルを用いて任務を遂行してこれた。まだまだ起業したての会社だが、秋斗は社長として前線に立ち、やっていける自信がもあった。
「さて、今日の客たち如何程なものか」
そして今日、彼の元に舞い込んでくる新たな依頼とは――――
To be continued...
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