《SSTG》『セハザ《no1》-(3)-』

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第2章 - Sec 2

Sec 2 - 第12話

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 どちらかというと、ロヌマがいぶかしげな目で見ている。
そのとなりのゴドーさんは、『ふぇっ、へっへぇぃ』と余韻よいんを引きずって笑っていて、そのそばの大きな体格のシンさんは無表情むひょうじょうの様でいて、ずっと憮然ぶぜんとしているようでもあった。
ミリアも、そんな彼らの様子を見ていて、ちょっとまたたいたかもしれないけれど。
その視線に気が付いてるのか、いないのか、ゴドーさんがくだけた調子ちょうしでミリアに話しかけてきた。

「よぉ、俺は『こいつ』と同じ、バーク隊のもんでゴドウってんだ。こいつはシン、まあ悪いヤツじゃあない、無口むくちだがな、」
『こいつ』と軽く親指で示されるのはロヌマと、それから彼の名前は正しくは『ゴドウ』らしくて、そして隣の大きな彼は『シン』さんで間違いないようだ。
「私はファミリネァ・・、ミリアです。」
「ミリアだな、知ってる知ってる。初めましてか。お前らの事はよく聞くぜ、」
ってなんか、最近そう言われることが多い気がする・・・。
「ん?」
私を見ているゴドーさんがちょっと、なにかを気になったようで。
えっと・・。
「どんなですか?」
ガイが、素直に聞いてたけど。
「あん?みんなが知ってるような話をな。ちょっと前に『外』で大活躍だいかつやくしただとか。他にもいろいろあるか。1番若い『A』のルーキー、あとは・・、まああれだよ。最近にぎわすニュースによく出くわす期待のルーキー新人か大物か?って感じだろ?」
って、口端《こうたん》の片方を上げて言われたけど・・『大物か』って、大袈裟おおげさな言い方は揶揄やゆなのか皮肉ひにくなのか・・・。
「そんな目立ったつもりは無いんですけどね」
そう言ってチラッとこっちを見るガイには、小さく肩をすくめておいたミリアだ。
「噂に出やすい体質ってことか?けはっはっは、今朝もミーティングに顔出さなかったんだろ、話に少し出てたぜ」
やっぱり、噂に尾ひれでもたくさんついていそうな口ぶりだ。
「事情があったもんで。行きたかったんですけどね、『A』を中心に集まる機会なんてなかなか貴重きちょうそうだし。な、ミリア?」
「そうだね。」
「知り合いも少なさそうだな、機会があったら紹介してやるよ」
「どうもっす、」
ガイはほがらかに会話してるし、お礼も言ってるけど。
「いま『向こう』に行ったら何があったとか質問しつもんめにされるかもしれないけどな」
「はは、それはちょっと困りますね」
「活躍したんだろ?自慢じまんしちまえよ、」
別に、大した事なんてしてないと思うんだけど、自慢じまんって。
否定ひていした方がいいんだろうか・・?でも、補外区ほがいくの事件などは機密きみつだし、ブルーレイクの事をくわししく話すわけにもいかないから。
それに・・・。
―――――それに私は・・・―――――――ブルーレイクで、戦いがあったとき――――活躍かつやくなんか・・していない―――――あのとき・・暗闇くらやみしか見えないやみの中で、異質いしつな・・緊張感きんちょうかんの・・・硝煙《しょうえん》の匂いと・・人が、たくさん・・・血を―――――――
――――――俺はガイ、って呼んでください。あっちのモノ食ってるのがケイジで、ぁぁ・・、」
って、・・ガイが自己紹介じこしょうかいを始めていた。

・・振り返れば・・・ケイジの次のリースは、あそこのソファでずっとリラックスしているので、ガイは紹介しょうかいあきらめたようだけど。
「で、こいつがガーニィ、」
「どうも、」
「あ?メンバー変わったのか?」
「いや、そこにいるんですけどね、」
「ぁあ、あいつか。」
こっちを見もしないリースを目で確認するゴドーさんは、私たちの顔は知っているようだ。
そういえば、ロヌマも出会ってすぐに私の名前を呼んでいた。

ふむ・・・そんなロヌマは、さっきからゴドーさんのそばいぶかしげに、ジト目でゴドーさんをじぃっー・・・と見ているのが、なんだか気になるけど。
「まあ、今日は仲良くやろうや、」
ゴドーさんはそう、私にも言ってくれるけど・・・。
・・なんか気になる・・・――――――って、ミリアがロヌマと目が、バチっと合ってた。
「あ!」
今気が付いたような『その子』、というか『ロヌマ』が。
「あたしはっ!『ロヌマ』どぁっ!」
って、お腹の底からの宣言せんげんして、とても覇気はきがあって、やっぱり『ロヌマ』らしい。

「ぁ、よろしく、」
一応、ミリアも返事を。
「ロヌマちゃんか、よろしくな、」
ガイがにこやかな笑顔みたいで。
「うん!」
「あん?自己紹介してなかったのか?」
ゴドーさんが、ちょっとおどろいてた。
まあ、確かに、自己紹介もしていないってのは非常識ひじょうしきと言えば、そうだとは思う。
「ヌマドァ?変な名前だな?」
って、つっかかり屋のケイジが後ろから来てた。
「ロ・ヌ・マ、だァ!」
ロヌマが大声でおこってるけど。
「ドンマドンマ?だ?」
「ロ・ヌ・マ!!」
変なからかい方を見つけてしまったようだ、ケイジは。
「バークって・・、」
って、ガーニィが。
「どうした?」
「ああいや、バークってあの『Class - A』のバークかなぁって・・、」
「ん、あいつの事を知ってんのか?お前は・・『A』じゃ見ない顔だな?」
「ああ、俺は『B』で。よろしくっす。まぁ、話はいろいろ、」
「知ってんのか?」
「ぁぁ・・、」
「なんだ?」
ガーニィがちょっとめずらしく、もじっとしたような。
遠慮えんりょする事ないぜ?」
「・・いや、ものすっごい、トレーニングに来て、迷惑めいわくな酔っ払いがいたって・・・」
「なんだそりゃ」
「なんだそれ」
ゴドーさんとガイが同じような声を出してた。
「かっかっかか、」
って、ゴドーさんは笑ってるけど。
二日酔ふつかよいが残ってたのか?まあやりそうだな、バークなら。」
二日酔ふつかよいって・・。
「他にも変な噂を聞いてんだろ?」
「いやあ、」
「まあいいや。だが、言っておくぞ。俺は、あのチームの中じゃ一番『マトモ』な方だ」
って・・宣言せんげんしてる、『マトモな方』・・・本人が言う事じゃない気もする。
「うっす、」
でも素直すなおうなずいたガーニィだ。
「けっはっはっは、」
って、ゴドーさんが笑ってる。

でも、『バーク』・・という名前は聞いた事がある。
たしか以前、『Class - A』のリーダーの会合かいごうに大きな声で目立っていた人がいて。
そのときに『バーク』って名前を聞いたような、そこでにぎやかにワーワーやっていたような。
このゴドーさんがその『バーク』さんのチームメンバーということなら、・・もちろんこの子もその『Class - A』のメンバーということなのか―――――。
「ぁん?ヌマーダ?」
「ロ・ヌ・マ・だぁっ!」
―――――・・ケイジと、ロヌマはまだやってるけど。
「ヌマヌヌマヌ・・・、」
「ロ・ヌ・マぁっ!!」
子供っぽい意地悪いじわるをするケイジに、ずっと怒《おこ》ってるロヌマなわけで・・・。
・・・本当に『この子たち』は『Class - A』なんだろうか・・・?・・いや、ケイジは絶対ぜったいにそうなんだけれど・・・チームメンバーなんだから・・なんだかずかしいけど。

「ケイジ、」
いい加減かげんにからかってるケイジに、ちょっと、にらみつけるつもりで、仕方なく、ミリアは窘《たしな》めておいた。
「そう聞こえたんだよ、聞こえたろ?」
「そういうことじゃなくて。」
「あん?」
「ロヌマ、遊んでんなよ?」
「遊んでないワい!」
注意ちゅういしたゴドーさんがニヤニヤしてる、なんか、やっぱりちょっと、その笑みも胡散臭うさんくさいかもしれない。

「こいつなんなんだよ?」
って、ケイジのクレームはゴドーさんへ向けられてた。
「こういうヤツなんだよな、別に大してがいがあるわけじゃなし、俺らがひまじゃなかったらおりに来るわけでもねぇし、なぁ?シン、」
「・・・」
「おモりってナンダぁあ!」
って、言うロヌマに、ケイジがペチンとロヌマの頭を軽くはたいてた。
「ちょっと、ケイジ・・・」
頭をさえるロヌマが、ケイジを見て、止まっていた。
「お?つい。」
ミリアが口を開くのと同時に、ケイジと。
「おいおい・・、」
って、彼女の仲間のゴドーさんが急に、少しトーンの低い声になってた、怒ったのか、ケイジがからかい過ぎたかもしれない・・――――――。
「がつんとやっちまえよ、ロヌマぁあ、負けてっぞ、おいー、」
「ぬガぁっ!!」
ロヌマが怒った。
―――――ちょっと大きな声なので、びくっとするけど、周りの人もこっちを見るし。
って、後ろからガッシって、シンさんが大きな手でロヌマの腕を掴んで、くさりやくになったようだ。
「ほれ、今だぞ、なんか言い返せ、なんか、」
というか、ゴドーさんは楽しんでるのか・・・。
止める気も全然ないみたいだし。
「ウざう!」
ロヌマが自由に動けないままゴドーさんに怒ってた、にぎりこぶしを振りかぶってるし。
「いいから連れて帰れよ、」
そう、ケイジが一番まともな事を言ってる、気がしてくる、積極的せっきょくてきにからかってたのはケイジなんだけど。
「ぬぁ゛ーあ゛ーっ!」
ロヌマはケイジにも、彼、ゴドーさんにもおこってるようだ。
両方を威嚇いかくしていて、怒り倍増ばいぞうの様だ、まあ、気持ちはわかるけど。
「お前、態度たいどでけぇな、」
って、ゴドーさんがケイジへ。
「へはっはぁ、まあ訓練で当たったらよろしくな、」
ゴドーさんはサムズアップし親指上げて、ケイジに『いいね』ってしてた。
「うっせぇ、」
ケイジがいい加減、口が悪いとかきに、うざったくなっているようだ。
まあ、ケイジには最初から礼儀れいぎも何もないんだけれど。
「ぬ゛ぁー!態度《たいど》でかいゾ!」
ロヌマが正直でまっすぐだ。
「うッせぇ、」
そんな一連《いちれん》の様子を見てて、ミリアはちょっと、ため息を吐きたくなる気持ちになったけれど。
とりあえず、きびすを返して、テーブルの方へ、なんだかのどかわいたのであまってる飲み物と、サンドイッチかなにかを物色ぶっしょくしようと思った。
「おまえら、食い過ぎるとゲー吐《は》くぞ」
「・・・」
って、ゴドーさんは、ケイジを見て言ったようだったけど。
いつの間にかケイジが、パンをまた手に持ってたみたいだ。
私が見たので3つ目だ、確かに食べ過ぎか。

「んじゃあ、こいつは連れて行く。どうしてもクレームを入れたいってんならバークの方に頼《たの》むぜー、」

「パン、くれ!」
って、ロヌマが早速、ケイジの目の前にいるけど。
「あれ?おい、ロヌマぁ・・・」
ゴドーさんもまいってるようだけど、ロヌマはいつの間にかシンさんの手からすり抜けたようだ。
「オレんだ。」
「手をはなすんじゃねぇよ、シン。おい、お前はゲーしても知らねぇぜ?」
「そいつだっていろいろ食ってんじゃねぇの?」
「こいつは、言っても聞かないからな。」
「きいてたまっカ!」
ロヌマは、ゴドーさんに対してはけっこう反抗的はんこうてきみたいだ。
「言うコと聞かなせタきゃ・・、『オニギリ』もってこいヨー?」
さっきの、食べられなかったオニギリの事だ、ロヌマは覚えていたようだ、というかちょっと挑発ちょうはつ的だ。
「バークの真似《まね》か?つうかなんだよオニギリって」
ロヌマが急に言葉遣《ことばづか》いが変わったし、横れのリズムを取っていたりで、誰かのモノマネでもしてるのかもしれない。
というか、言うとおりにオニギリを持ってきたら、ロヌマは食べるに決まってると思うんだけど。

「んジゃ、クれ!」
って、ケイジのパンを堂々どうどうと欲しがるロヌマで。
「・・・。やるくらいなら、俺が喰《く》う!」
ケイジが、っぱぁんっと袋を開けてた。
「ぬがぁあー!」
「んだこら・・っ」
ロヌマとケイジ、2人がまた、何に張《は》り合ってるかはわからないけども・・・。

「ケイジ・・・」
ちょっと呆《あき》れてるミリアが名前を呼んだら、ケイジが一応は一瞥いちべつしてきたけど。
ロヌマにまだちょっかいを出したい様子なのは見て取れる。
またロヌマを見ているし。

「がぁーっ」
牙《きば》をむくようなロヌマだし。
「そっちから吹《ふ》っ掛《か》けてきたんだぞ、」
って、ケイジがまだ余計な事を。
「んダってンだーっ?」
もう、めんどくさくなってきたな・・・。
「オラ行くぞロヌマ、」
ゴドーさんが手をばして、もう首根っこをつかまれたロヌマが引きずられていく。
「お前はあたしがボっコボコーっ!にっぃー!してやんよ!あたしが話してんだローっ!」
「オニギリな、」
って、ケイジがロヌマへ。
「ぬっ?」
「自分で探せよ、」

「がぁー!」
ロヌマがさすがにまた怒《おこ》ってた。
「おい、服《ふく》びるぞ」
って、ゴドーさんに言われてる、抵抗《ていこう》しているロヌマの運動着うんどうぎうしえり伸縮性しんしゅくせいが高い。
「ケイジ、」
すぐに怒らせることができるケイジもすごいというか、アレだけど。
「やめな、」
「なんだよ、」
意地悪いじわるしちゃダメでしょ」
ミリアはもう、ケイジをしっかり窘《たしな》めるしかない。
「あっちに言えよ、」
「まったく・・、」
・・見てて思ったけど、ケイジがなんだか生き生きしているような・・・、あるしゅ、ロヌマと波長はちょうが合うのかもしれない・・・とか思ってもみたミリアだけども。

というか、ロヌマがこっちをむずかしい顔して、じぃっと見てた。
ちょっと、またたいたミリアだけど。
なんだかそのロヌマの姿も見慣みなれてきた、くりくりしたロヌマの目は大きくてキレイだとは思うけど。

「早く連れてけよ、」
って、ケイジが。
「あいつガー!ーアーイつーがーっ・・!・・!」
「なあ。あんまりこいつをからかわない方がいいぜ・・?」
って、おこってるロヌマを引っ張っているゴドーさんが、ちょっと声を低くして、こっちへ言っていた。
さすがに仲間をからかい過ぎたのか・・。
「なんだよ?」
「こいつにからまれると・・、すっげぇめんどくせぇ、次からな・・・、」
・・まあ、そうなんだろうな、ってミリアもおもったけども。
「あん?」
ケイジは変な声を出してた。
「まあ、こいつの気がんだらもう無害むがいだ。気にすんな、」
って、どっちだ。
「もうとっくにめんどくせぇよ、」
ってケイジは。
「んだロ!」
って、言い返すロヌマが、なぜか元気で。
甲高かんだか威嚇いかくか、胸を張って得意げなのか、もしくはその両方みたいだった。
「・・・」
珍しくケイジが、そんなロヌマにだまってて、何も言えなかったのかもしれない。
憮然ぶぜんとしてたけど。

―――――――って、急に、ロヌマの後ろ、ゴドーさんの背後から、現れたと思った、大きな男の人、さっきからたたずんでいたシンさんが、その頭一つ分は高い彼が、ロヌマを見下ろしていた・・・。
真上を見上げるロヌマが、その大きな影になった彼を見つけて。
「あ、シン!」
って、ロヌマのその後ろから大きな手が、むんず、とロヌマの首根っこを、しっかり捕《つか》まえて。
そのまま引きずる、のかと思ったら、足も持って両手で軽々かるがるとひょんと持ち上げてた。
その大きな肩に担《かつ》いだロヌマを、ちゃんとしっかり持って帰るようだ。
「ぬぁああぁ、シンーっ、まだ話してんのぉー!?」
気が付いたロヌマがジタバタしているけど、既に遅くて、無言の彼はびくともしないし、手慣れているような。
暴《あば》れようとするロヌマを気にすることなく、ひっくり返したりかつぎ直したりして、微調整びちょうせいして背中を向けて歩き出してた。
「へっはっは、まるで引っ越し屋だな、」
ゴドーさんがニヤニヤ笑ってついてくけど。
「ンガァっ!」
ロヌマは怒ってるようだった。

無言の彼、シンさんは、彼はちらりとこっちを見たような。
・・でも、一瞥《いちべつ》しただけで向こうへ歩き出した。

「暴れ過ぎだっての、全然いびれてねーじゃんか、かっはっはは、」
「――――――ナぁっ、・・っーーーー!――――――――」
――――――・・・って、まだなにか言ってるロヌマたちの、というか、ロヌマの声のはしっこがまだ聞こえているけれど。
向こうの人込みに元気な声も掻《か》き消されて・・いかないけど、はなれてだいぶ遠くなっていった。

ミリアは、あのロヌマって子が肩にかつがれているのを、ずっと見送っていたけど・・・。
「なんか・・、」
ミリアが、そう・・。
「・・すごいな、」
ガイが続きを言ってた。
同じ気持ちだったようだ。
「うん。」
ミリアはうなずいて。
「なんであんなヤベぇのがいんだ?」
ケイジがそう、言ったので・・・ミリアはちょっと横目にジト目で見てたけど。
ケイジは暢気《のんき》にそのパンを最後まで口に入れていた。

「お前も大概たいがいだぞ、」
って、ガーニィがはっきり言ってくれた、けど、ケイジは意味が分からないといった顔で、きょとんとしているようだった、・・モグモグしながら。

まあ、あの子、訓練始まる前からあんなに元気でいいのかな、ってちょっと、逆に心配になるけど。

・・・・。
「たくさん食べ過ぎないでよ?」
「ぁん?これで終わりだよ、」
「ゲーくぞ、」
かねぇえよ、」
って、ガイがからかってるみたいだけど。

『――――あっ、あれ、あったー!』
って、そんな、大きくて元気な声の一部も、まだこっちまでとどいてて。
『オニギリー!』
向こうで、気が付いた誰かが、パッケージに入っている黒くて丸いそれを放り投げて、ロヌマが肩の上の高い所で、それを両手でキャッチしたようだ。
『ぉー・・!』
『ナイス、』
『よぉー』
って、ちょっと周りの人たちが湧《わ》いてた。
「ダーっ!」
キャッチしたのを、ロヌマは掲《かか》げてた。

えっと・・・。
うん。
とりあえず、解決したみたいだ。
あと、ノリがいい人たちがいっぱいだと思う。

あの子はどこにいても目立つみたいだ。
前にもどこかで見た事がある気がするんだけれど・・・まあ、それは別に良いんだけど。

・・『特能力者とくのうりょくしゃは変わり者が多い』、っていう流言りゅうげんがあるけど。
科学的かがくてき根拠こんきょは無いし、私自身もそれは迷信めいしんに近いとは思っている。
個性は様々だから、けど、ふと思い出したのも本当で、不思議ふしぎな彼らを見てたら。
口には出さないけど。
この言葉は、特能力者には否定的ひていてきっぽいような、侮蔑ぶべつてき印象いんしょうでもあるようだから。
ガイたちに聞こえても、あまり良くないし。
・・あ、彼女が特能力者なのかはわからないけど。

あと、ゴドーさんから『いびる』とかの単語もさっき聞こえて来てたけど、冗談じょうだんだろうか。
あんまり、いびられた実感じっかんも無いし。
ロヌマは、ただ知らない子が、暇《ひま》だから、ちょっかいかけに来たって感じ・・うん、あながち間違ってないと思う。

というか、周りから注目されているみたいなのには気が付いてたけれど。
いまだにこっちをチラチラ見てくるような人達もいるし、あのロヌマって子はすごいパワーだ。
ロヌマが大きな声を出すたびにこっちを見られていた気がする。

『シンーっ、自分で歩ケ、んだゾ!!?』
って、向こうで大きな声でジタバタして、ようやくゆかにおろされたロヌマが解放かいほうされてる後ろ姿に。
「マージューっ!」
ぴゅーっと、け去っていくロヌマは誰かの名前を呼びながら、元気みたいだ。

「賑《にぎ》やかだな、あのロヌマちゃんって、」
って、ガイの声に、ハっとした気分になったミリアは、いつの間にか目で追っていたみたいだ。

振り返れば、ガイは面白かったのか、ほがらかに笑ってるけれど。
楽しそうなガイは面白い事が好きなんだろうな、とやっぱり思う。

・・ふとテーブルに目をやったら、パックされてるタマゴサンドイッチが目に入った。
「これ食べて良いの?」
「おう、」
だからミリアは、2つの内から1つ、適当てきとうに取った。
ロヌマを見ていたからか、なんだか食べたくなったのだ。

袋を開けて、口に運んでぱくっと、やわらかい不思議なタマゴの美味しいハーモニーを味わって―――――

『―――――あぁ、聞こえるな・・?準備が整った。今から集合しゅうごうをかける。大人しく集まってくれよ』
「――――・・おぉし、集合だー!」
「集合だぞー」
向こうから上がる声も、まだ大きい喧騒けんそうの中でもようやく次への声がかかったので。

ミリアは、左手に持ったタマゴサンドイッチをモグモグしながら、みんなの顔を見回して。
「もうやんなくていいんじゃねぇか?」
って、ケイジが、ジェリポンに口を付けながらぼやいてた。

ごくん、と一口目を飲み込んだミリアは、息を吸う、そして、みんなへ。
「行くよ、」
強めの声を、みんなの切り替えのために伝えた。

「へい、リース、こっち来い、」
「飲み物持ってっていいんだろ?」
「あいつらどこ行ったかな、集合しないとまずいよな?」
話しながら動き始めるみんなもすぐに移動いどうできるだろう。
振り返るミリアは、向こうで集まり始めて行く彼らの方を向き直り、歩き出した。
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