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第2章 騎士の夢 BLADE RUNNER
第60話 疑惑(3)
しおりを挟む<AWACSアオサギ2からヤシマ中隊へ、フリークス、タイプはスモルバード、速度0・9。敵数120、方位275、瀬戸内海方面に向け進行中―――後方にビッグバード…数は5、爆撃タイプの模様、速度0・5>
<ヤシマリーダー了解、全機、対空ミサイル用意、敵射程外より攻撃する。目標、スモルバード…照準連動…ファイア>
<―――命中、21体撃墜…残りのスモルバードが迎撃体勢、来るぞ>
<ヤシマリーダーよりアオサギ2、スモルバードはこちらで対処可能、だがビッグバードは無理かもしれない。何処かに頼めないか?>
<アオサギ2了解…アオサギ2から坂出基地司令部、迎撃展開中の105thTWCより援護要請、現在迎撃中のフリークス集団後方を進行中のタイプビッグバードに対する攻撃要請>
<坂出基地よりアオサギへ、要請を受諾。南のミサイル陣地から巡航ミサイルを発射する>
<アオサギ2了解―――アオサギ2からヤシマリーダー…>
「…これはまた、一体どういう」
暗い部屋だった。部屋の正面にはスクリーンがあり、そこには極東の地図が表示されている。
今は日本でいう四国の南側に赤い円が表示されている。世界中のいたる所にその赤円はあったが。しかし四国の赤い円は他とは違い、点滅している。
「総司令部の地下に何かあることは知っていたけど…これは何、レオス?」
メアリー戦略機動隊副司令はスクリーンを眺めているレオス・オブライエンに聞いた。それにレオス・オブライエンは答えた。
「何って、現在TX-01が収集している事象だよ」
「事象…これは、現在展開中の戦闘じゃない」
「分かるのか」
「ええ」
メアリー副司令は端末を開き、見る。
「四国の早期警戒管制機アオサギ2がフリークス群を発見。現在坂出第四のスクランブル機が迎撃中…スクリーンと一致しているわ」
「やはり戦闘を観測しているのか」
「でもそんなの、上の総司令部でもやっているでしょう。予測システムのリアルタイムでのデータ採取」
「ああ、だが…」
レオスがコンソールを操作する。画面が分割され、今度は文字の列が現れる。
<105TH-TWC YASHIMA・COMPANY(YC) W-13A ALL UNIT ENGAGE>
<ST-FuG TYPE Sbird×100 TYPE Bbird×5>
<YC304 SD UA-Mk15・MC>
<YC102 HT D13%>
<YC104 FoL YC102>
<YC403 SD UA-Mk13・AAM>
<TMB407 FR Mk5・CM>
<YC501 SD UA-Mk11・LB>
<ST-FuG CHENGE VECTOR to V17>
<AWACS AOSAGI2 COPY>
「フリークス侵攻予測の情報採取よりもっと多くの情報をとっている…こいつは味方の情報も採取しているよ」
「味方の情報も? というか、これはTX-01が自動的にやっているの?」
「さあ? 俺もこれに気づいたのは一週間前だ。どうもそれ以前からこれは行われているらしい…ただ、こいつは戦闘情報をリアルタイムで把握しているだけではなく…」
地図上の山城基地に、赤い点がある。そこにはこう表示されていた。
FEU・SMF・MB-Y101 Pr‐A FB-21-3 『TOUSATU NO HEYA』 Dr
Leos O`brien Marshal FEUA-SMF Total Commander
Mary Blood General FEUA-SMF Deputy Total Commander
VIDEO RECORD NOW
「他にも色々、記録しているようだ」
近江山城を降り、基地を出てレバリスク市に向かう。途中、ジープを借りて行く。
基地からレバリスク市の距離は、歩いていくには遠い。
「…きれいだな」
丁度、西の方角で太陽が姿を消そうとしていた。日の入りだ。
「ん?」
道の向こうに人影が見えた。俺はジープを止める。
「イータじゃないか、どうしてここに?」
「リナイ様がユフォンが欲しいとおっしゃったのでな、それで」
「ああ、レバリスク名物の」
ユフォンとは、砂糖をドップリつっこんだクリームを薄くのばして焼いた生地に、これまた未加工で食べると死ぬほど甘いと言われるレバンナという実を砕いてつくるシロップを大量に塗りたくって完成する。
甘い、とてつもなく甘い。舌が蕩けるほど、甘い。
一度、暇な時にみんなで食べた結果リナイとイータ以外全員卒倒。試験が一時中断にまで追い込まれた。
一週間連続で食べたら歯医者のお世話になること間違いない。
「あんな甘いもの、よく食べられるな・・・糖尿病になるぞ」
「トーニョービョー? ああ、人間界における疾患で、血液中、あるいは血漿中のブドウ糖が持続的に上昇する病気か」
「うん、そうそれ」
やけに詳しいなオイ。
「いや、大丈夫だ。リナイ様はギガル皇国の神であらせれれる。人間の病気などにはかからん」
「なるほど」
リナイ・イナクはギガル皇国の鉄神だ。そりゃかかるまい。そういえば、
「リナイって甘い物を摂らなきゃ駄目なのか?」
「え?」
イータがちょっと驚いた目をした。
「なぜそう思う?」
「いや、いつも食事の時、アイスクリームやらチョコレートやら食べているしさ」
レバリスクに来てから、リナイは食事の際いつも甘い物を必ず摂っていた。
いくら何でも食べすぎだから不審に思ったが、しかし俺には一日三回必ず甘い物をを食べないと精神的に深刻なダメージを受けるほど甘い物が好きな奴を知っていたため、そいつの同じように甘い物が大好きなんだと解釈し、俺は納得していた。
「何か特定の食物を食べてはいけない病気は知っているんだが、食べなければいけない病気は知らなくて・・・だからただただ甘い物好きかと思っていたんだがもしかして」
「いや、そんな事は無い」
と、イータは否定した。
「リナイ様は甘い物好きなのだ。それも過度の。私も諌めてはいるのだが」
「いくら神様といっても、さすがにまずくないかそれは?」
「いや、全然問題ない」
そこでイータははっとして腕時計を見た。
「まずい、もうこんな時間か。光男、すまない急いでいるんだ。また後で」
「ああ。すまないな呼び止めて。じゃあまた」
基地の方に行くイータを見て、俺はジープを出発させた。
違和感に気づいたのは町の内外を繋ぐ城門だった。いや、違和感というかいつもと違っていた。
「そこの車、止まれ!!」
城門にはバリゲートが施され、両側に重装備の剣士や弓兵が十数人ほど居た。
アルマニア語でそのような事を重装備の弓兵に言われ、俺は素直にその指示に従った。
検問が行われていた。
「お前は何者だ」
「・・・ワタシ、アルマニア語、ハナス、ムズカシイ。コレ、ワタシノ身分証明書。ワタシ、コウイウモノデス」
アルマニア語は日常会話程度に習得していたが、ここは敢えて、『ワタシアルマニア語マッタクデキマセーン』のような人の感じで話し、大人しく、山城基地を出発する際に貰った身分証明書を出した。
「極東連合軍・・・戦略機動部隊!?」
弓兵は慌てて敬礼。
「も、申し訳ありませんでした!! どうぞお通りください」
「アリガトウゴザイマース」
俺はアクセルを踏もうとしたが、なぜ検問が行われているのか疑問に思い。それとなく尋ねる。
片言のアルマニア語で。
「ナニカ、アッタンデスカ? アナタガタ、イッタイ何者」
「これは申し遅れました。我々はHAK騎士協会監査部執行部隊であります・・・実は、ある騎士が国家転覆を働いて疑いがあり、その騎士とシンパがレバリスク市に居ることが分かり、現在そのものらを逮捕するための作戦が実行されているのです」
「フムン・・・ナルホド、ソウデシタカ。仕事、ガンバッテクダサイ」
「ありがとうございます」
弓兵の敬礼にラフな敬礼を返し、俺はアクセルを踏んだ。
路上駐車でもしていたら盗まれそうな気がしたので。アラストリア王立学園の敷地内に駐車した。
そういえばこのレバリスク市を離れるに当たって学園長に挨拶せねば、そろそろ暗くなってきたが、まあリディアの家学園からそう遠くない。後から言ってもよいだろうと思い、校舎に入った。
「静かだな・・・」
放課後だからだろうか、不安になって用務員さんに聞けば、どうも学園は夏休みらしい、なるほど問題は無い。
教えられた道を正しく・・・は行かず色んな所を見てから学園長室に向かった。
「んあ?」
しかし、その途中、階段の踊り場で。話し声が聞こえた。しかも声はこっちに向かってくる。
このまま行けば、話し合っている奴らに対面するだろう。
しかし、それは俺の性に合わない。
俺は、人の話を清く正しく(?)盗み聞きするのが大好きなのだ。
俺は近くにあったダンボールに一秒で潜り込み周囲と一体化。カモフラ率100パーセント。
ダンボールで隠れる事に関してBIGBOSS並みだと自負している。絶対ばれない。
穴から外を覗く。
「・・・ですから学園長、理由を教えてください。私が何故、逃げなければならないのですか?」
「理由は説明できません。なんと言おうと・・・あなたは逃げなければいけない」
学園長とリディスだった。だが尋常でない。特に学園長の方は明らかに焦っていた。
2人は階段を上り、丁度俺の目の前で立ち止まった。
「リディス。あなたの性格は、立派な騎士そのものです。しかし、あなたの今の技術では『彼ら』から逃げられない」
「監察部からなぜ逃げなければならないのです? なぜ?」
「言えません。それはあなたが知ること。とにかく、今、あなたがするべき事は、逃げる事です」
そう言うと、学園長は最新式の立体投影型情報端末を開き。操作した。
「まさか、あの人の想定していた最悪のシナリオになるとは・・・しかし、手は打たれている」
「どういう意味ですか?」
「まず『デッカード』と合流なさい。コレが彼の外見。合流コードは『ブレード・ランナー』。」
学園長はリディスに何かを見せた。リディスの息を呑む。
「どういうことですか? 彼は」
「彼は『デッカード』。そう言いなさい。絶対に。リディス。今からあなたは『ゾーラ』と名乗るのよ。いいわね」
端末を閉じて、学園長はリディスに優しく語りかけた。
「リディス。今はまだ訳が分からないでしょう。逃げなければならない理由が―――あなたは恐らく、尊敬するあなたのお父様の事を、あなた自身の事を、その他にも色々なつらい事を知ることになるでしょう。でも、間違っても死のうなんて思わないで、それだけは、駄目」
「学園長、何を言って」
「あなたのお父様は、あなたに生きてもらいたかった」
「?」
「その願いを、無下にしてはいけない、無下にしないで――礼拝堂の下に古い地下通路があるわ。それを使えば地下水道。それを辿ればこのレバリスク市から出れるはずさあ、行きなさい」
「・・・・・・」
「行きなさい!!」
学園長の気迫に押されたのか、リディスは下に走っていった。
それを学園長は見て、足音が去るのを聞いて、
「あなたに早く会えたのは運がいい。出なさい」
「・・・・・・」
「ダンボールを被って敵をやるのはレオスだけで十分・・・人間界で流行ってるの? 何かの儀式?」
「・・・儀式というのはお猿の面を被って松明を振り回す事です」
レオス総司令は多分MGSをやっているなと思い、俺はダンボールから出た。
「何のご用件で?」
「あなたこそなぜここに」
「別に。リディスに借りた本を返すために」
「あらそう。ところでお願いがあるのだけど」
「はいなんでしょう」
「ちょっと『デッカード』と名乗ってあの子の逃走を手伝って欲しいのだけれども」
「ですよね」
俺はハリ○ン・フォードではないのだが・・・
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