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1.欲望に忠実な
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新しい話始めました。
怠惰な皇子様のワガママ恋愛話にお付き合いください。
*∽*∽*∽*∽*
怠惰、陰気、愚かなど、侮蔑の言葉を陰で言われているが、婚約者の前では違う顔を見せる。それを知っているのは、彼に近しい人だけ。
「やりたくないなあ。リオ、お願ぁい。代わりにやってぇ?」
淡い水色の髪が、サラリと揺れた。可愛らしく小首を傾げる彼、この国の第四皇子、カダージュ・アス・ヒオニア。怠惰であることは、誰の前でも変わらないのかもしれないが。
「殿下の仕事です。わたくしに出来るはずがないでしょう」
淡々と答えるその婚約者、ティシモ伯爵家長女、メリオラーザ。
「ねえ、リオ」
皇家の色と言われる金色の瞳が、真剣な色を帯びた。メリオラーザはカダージュのその瞳を真っ直ぐに見つめ返す。
「実は、今ダラダラしないと大変なことが起こるかもしれないと思っているんだ」
「かもしれない、でしょう。お試しなさいませ」
キリリと真顔のカダージュに、無表情のままのメリオラーザはやはり淡々と答える。
「万が一大変な目に遭ったらどうするの」
変わらずキリリと質問する。
「万が一でそのような目に遭うのでしたら、余程運が悪いか余程運が良いかのどちらかでしょう」
「運がいいって?」
「万が一に当たるのです。もの凄く幸運かもしれませんね」
カダージュの顔が、ふにゃりと崩れた。
「そういう考えをするキミが好きだよ」
「そのような言葉で騙されると思わないでくださいませ」
呆れたような溜め息を零すメリオラーザに、カダージュの眉が下がり、潤んだ瞳でメリオラーザを見た。
「あのね、リオ。本当はね、右手が痛いんだ。ペンが握れない」
「左利きで良かったですね」
「書類を見たら秒で眠れるよ」
「夜が眠れなくなりますわ。今はその特技を発揮するときではありません」
少しの間、無言で見つめ合う二人。
「ねえ、リオ」
「何ですか」
「眠いぃ。膝枕してぇ?」
「ですから今眠ったら夜が眠れなくなりますわ。紅茶をご用意いたします」
欲望に忠実なカダージュにも動じることなくバッサリのメリオラーザ。
「ねえ、リオ」
「何ですか」
「仕事やりたくないから、やる気になるためにデートしよう」
「無理に今やらなくても構いませんよ」
しゅんとするカダージュだったが、何かを思い出したのか、机の引き出しを開けた。
「リーオちゃん」
「何ですか」
「これ、さっき僕の側近が渡してくれたメモなんだけど」
席を立っていそいそとメリオラーザの側に行き、すい、とメモを差し出す。メリオラーザは首を傾げながら受け取り、目を走らせる。
「これ、お受け取りになったのは一時間以上前でしたわね?」
「うん。そうだよ」
にこにことするカダージュに、悪びれた様子はない。
「皇妃陛下がわたくしをお呼びになっているようですわね」
「リオは、僕といるより母上の方がいいの?」
ギラリと向けられた視線に、カダージュは涙目でそう言う。
「殿下」
「なあに、リオ」
微笑むメリオラーザに、カダージュも嬉しそうに笑う。
「次に同じことをしたら、この婚約は白紙にさせていただきます」
無表情で告げられた。
「絶対やらないよ。だから、怒らないで、リオ」
キリリと頷くカダージュに、何度目かわからない溜め息を零す。
「すぐに向かいます」
「待ってぇ。僕も行くよぉ」
あわあわと追いかけるカダージュを、メリオラーザは少し言葉を強くして止める。
「殿下は!大人しく待っていてくださいませ」
メリオラーザに、強く真っ直ぐに見つめられたカダージュは、渋々と頷いた。
「むぅ。わかったよぅ」
しおしおと小さく肩を落として、メリオラーザがいない淋しさを紛らわせるために、机に置かれた書類の一枚を、やっと手に取った。
「ねえリオ」
退室しかけたメリオラーザを、淋しそうな声でカダージュは呼んだ。
「何ですか」
「早く戻ってきてね」
弱々しく手を振るカダージュに、メリオラーザは少し視線を彷徨わせると、
「わたくしが戻るまでに、今手に取った書類を終わらせておりましたら、ええと、明日は一日、その、殿下の、お望みを、叶えますわ」
そう、恥ずかしそうに言った。
「本当っ?リオ、大好きだ!」
弾ける笑顔に、メリオラーザは少し頬を赤くしながら扉を閉めた。
緊張すると表情がなくなる愛しの婚約者。登城すると未だに緊張しているようだが、会話を重ねると、少しずつほぐれる。それでも、いつも優しいメリオラーザ。
見送ったカダージュは、人が変わったようにペンを走らせたのだった。
*つづく*
怠惰な皇子様のワガママ恋愛話にお付き合いください。
*∽*∽*∽*∽*
怠惰、陰気、愚かなど、侮蔑の言葉を陰で言われているが、婚約者の前では違う顔を見せる。それを知っているのは、彼に近しい人だけ。
「やりたくないなあ。リオ、お願ぁい。代わりにやってぇ?」
淡い水色の髪が、サラリと揺れた。可愛らしく小首を傾げる彼、この国の第四皇子、カダージュ・アス・ヒオニア。怠惰であることは、誰の前でも変わらないのかもしれないが。
「殿下の仕事です。わたくしに出来るはずがないでしょう」
淡々と答えるその婚約者、ティシモ伯爵家長女、メリオラーザ。
「ねえ、リオ」
皇家の色と言われる金色の瞳が、真剣な色を帯びた。メリオラーザはカダージュのその瞳を真っ直ぐに見つめ返す。
「実は、今ダラダラしないと大変なことが起こるかもしれないと思っているんだ」
「かもしれない、でしょう。お試しなさいませ」
キリリと真顔のカダージュに、無表情のままのメリオラーザはやはり淡々と答える。
「万が一大変な目に遭ったらどうするの」
変わらずキリリと質問する。
「万が一でそのような目に遭うのでしたら、余程運が悪いか余程運が良いかのどちらかでしょう」
「運がいいって?」
「万が一に当たるのです。もの凄く幸運かもしれませんね」
カダージュの顔が、ふにゃりと崩れた。
「そういう考えをするキミが好きだよ」
「そのような言葉で騙されると思わないでくださいませ」
呆れたような溜め息を零すメリオラーザに、カダージュの眉が下がり、潤んだ瞳でメリオラーザを見た。
「あのね、リオ。本当はね、右手が痛いんだ。ペンが握れない」
「左利きで良かったですね」
「書類を見たら秒で眠れるよ」
「夜が眠れなくなりますわ。今はその特技を発揮するときではありません」
少しの間、無言で見つめ合う二人。
「ねえ、リオ」
「何ですか」
「眠いぃ。膝枕してぇ?」
「ですから今眠ったら夜が眠れなくなりますわ。紅茶をご用意いたします」
欲望に忠実なカダージュにも動じることなくバッサリのメリオラーザ。
「ねえ、リオ」
「何ですか」
「仕事やりたくないから、やる気になるためにデートしよう」
「無理に今やらなくても構いませんよ」
しゅんとするカダージュだったが、何かを思い出したのか、机の引き出しを開けた。
「リーオちゃん」
「何ですか」
「これ、さっき僕の側近が渡してくれたメモなんだけど」
席を立っていそいそとメリオラーザの側に行き、すい、とメモを差し出す。メリオラーザは首を傾げながら受け取り、目を走らせる。
「これ、お受け取りになったのは一時間以上前でしたわね?」
「うん。そうだよ」
にこにことするカダージュに、悪びれた様子はない。
「皇妃陛下がわたくしをお呼びになっているようですわね」
「リオは、僕といるより母上の方がいいの?」
ギラリと向けられた視線に、カダージュは涙目でそう言う。
「殿下」
「なあに、リオ」
微笑むメリオラーザに、カダージュも嬉しそうに笑う。
「次に同じことをしたら、この婚約は白紙にさせていただきます」
無表情で告げられた。
「絶対やらないよ。だから、怒らないで、リオ」
キリリと頷くカダージュに、何度目かわからない溜め息を零す。
「すぐに向かいます」
「待ってぇ。僕も行くよぉ」
あわあわと追いかけるカダージュを、メリオラーザは少し言葉を強くして止める。
「殿下は!大人しく待っていてくださいませ」
メリオラーザに、強く真っ直ぐに見つめられたカダージュは、渋々と頷いた。
「むぅ。わかったよぅ」
しおしおと小さく肩を落として、メリオラーザがいない淋しさを紛らわせるために、机に置かれた書類の一枚を、やっと手に取った。
「ねえリオ」
退室しかけたメリオラーザを、淋しそうな声でカダージュは呼んだ。
「何ですか」
「早く戻ってきてね」
弱々しく手を振るカダージュに、メリオラーザは少し視線を彷徨わせると、
「わたくしが戻るまでに、今手に取った書類を終わらせておりましたら、ええと、明日は一日、その、殿下の、お望みを、叶えますわ」
そう、恥ずかしそうに言った。
「本当っ?リオ、大好きだ!」
弾ける笑顔に、メリオラーザは少し頬を赤くしながら扉を閉めた。
緊張すると表情がなくなる愛しの婚約者。登城すると未だに緊張しているようだが、会話を重ねると、少しずつほぐれる。それでも、いつも優しいメリオラーザ。
見送ったカダージュは、人が変わったようにペンを走らせたのだった。
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