では、復讐するか

らがまふぃん

文字の大きさ
2 / 33

2 素敵な人たちとの日常 スウィーディーside

しおりを挟む
「リスラン様!」

名前を呼ぶと、ゆっくり振り返る。
太陽のように燃えさかる赤い髪はゆるく波打ち、美しく冷たい緑の双眸があたしを認めると、僅かに細められる。

あたし、スウィーディー・オプト。伯爵家の次女。
蜂蜜のような金の髪に、夏の空のような青い瞳。ちょっと小柄だけど、女の子だから気にしない。フワフワとまとまらないクセッ毛を悩みに持つ、元気が取り柄の十六歳。まあ、この髪を相手に、いつも侍女が苦労してるのはご愛嬌。ストレートヘアに憧れていたけど、リスラン様もゆるいクセッ毛だから、このままでもいいかって思えるようになったの。

リスラン様は、この国の王太子。そのお立場から、常に側には人がいる。
お父様を宰相に持つ、ひとつ上のアサト・ヴィーダ公爵令息様。
お母様が隣国の元第二王女、お父様が外交官の、やっぱりひとつ上、シュリ・コスモラナ侯爵令息様。
お父様が騎士団長で同い年の、ガイアス・ソネス伯爵令息様。

みんな、リスラン様の側近候補なんですって。
王太子の側近に選ばれるなんて、本当に凄いと思う。家柄だけで選ばれるはずがないもの。本人たちの努力の成果だわ。

それなのに。

みんな、婚約者がいるの。こんなに素敵な人たちだもの。いないわけないでしょ?いないわけないんだけど、ね。

相応しく、ないなあって、思っちゃうの。

みんな、本当に素敵なんだよ?それなのに、どうしてあんな人たちが、みんなの、婚約者、なのかな。
あ、表向きの評判はすっごくいいの。みんなに選ばれるだけあるなあって納得!なんだけど。
「何か考え事か」
リスラン様の気遣う言葉にハッとする。いけないいけない。心配させちゃう。
あたし、誰にでも分け隔てなく話しかけちゃう性格で、それを良く思わない人がいるみたい。その筆頭が、リスラン様の――、ううん、証拠がないもの。この話になると、みんな眉をひそめるの。いろいろ聞いてこようとするけど、あたしは上手くはぐらかす。だって、みんなの隣に立つ人たちがそんな人だなんて思いたくないでしょ?だから、あたしは証拠がないことで騒ぎ立てたりしない。みんなを悲しませたくないから。

「いえいえ、何でもないですよー。あ、そうだ。来週の観劇、楽しみです!ずうっと観たかったんです!本当に嬉しい!」
楽しい話題にしないとね。みんなといる時は、笑顔でいて欲しいもの。だから、満面の笑みでそう言った。
「そうか」
リスラン様が、顔を逸らしてそう言った。ふふ、照れてる照れてる。リスラン様、あたしが笑うといつも顔を逸らすの。きっとリスラン様も笑ってくれているんだと思う。でも笑顔を見せるの恥ずかしいみたいなのよね。それがなんだか可愛くて、ついその腕に抱きついちゃう。

「オプト嬢、無闇に異性の体に触れてはいけませんよ」
柔らかな口調ではあるけれど、あたしとリスラン様をくっつけないように体を割り込ませてくるシュリ様。いつも穏やかなシュリ様だけど、あたしが誰かとくっついたり親しく話していると、必ずと言っていいほど注意をしてくる。体ごと割って入ってくるのはリスラン様の時だけだけど。だからそのままシュリ様に抱きつく形になることが多いの。もう。一歳しか違わないけどお父様みたい。お父様も、あたしがパーティーとかで男性とお話ししていると割り込むの。ウチの娘に何か、とか言って。そんなお父様を、お母様は呆れた顔で見ているわ。

「殿下、そろそろ」
生徒会室に着く頃、アサト様がリスラン様にそう声をかけた。生徒会室に用があったみたい。あ、リスラン様もみんなも、生徒会役員ではないわよ。王族としてのお仕事がお忙しいから、とても学園のことまで手は回らない。けれど、時々意見を求められる。
「リスラン様、皆さまも、無理はしないで下さいね?何か私に出来ることがあればいつでも仰って下さい。それではまた」

四人に手を振って離れると、四人ともジッとあたしを見つめていた。
ホント、すっごくカッコイイわ。
あたしもがんばって、みんなみたいに優しくてカッコイイ人見つけるぞーっ。

気合いを入れるあたしは、運命を大きく変える出会いがあることなど、この時は知る由もなかった。



*つづく*
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

【完結】私に可愛げが無くなったから、離縁して使用人として雇いたい? 王妃修行で自立した私は離縁だけさせてもらいます。

西東友一
恋愛
私も始めは世間知らずの無垢な少女でした。 それをレオナード王子は可愛いと言って大層可愛がってくださいました。 大した家柄でもない貴族の私を娶っていただいた時には天にも昇る想いでした。 だから、貴方様をお慕いしていた私は王妃としてこの国をよくしようと礼儀作法から始まり、国政に関わることまで勉強し、全てを把握するよう努めてまいりました。それも、貴方様と私の未来のため。 ・・・なのに。 貴方様は、愛人と床を一緒にするようになりました。 貴方様に理由を聞いたら、「可愛げが無くなったのが悪い」ですって? 愛がない結婚生活などいりませんので、離縁させていただきます。 そう、申し上げたら貴方様は―――

【完結】私が重すぎ?軽い方だと思いますが、そう仰るなら婚約破棄を受け入れます。 それなのに、あなたはなぜ私に付きまとうのですか?

西東友一
恋愛
「お前、重すぎんだよ」  婚約したら将来の話をするのは当然だと思っていたジャンヌは、婚約者のジェダインに婚約破棄を言い渡されてしまう。しかし、しばらくしてジェダインが寄りを戻そうと行ってきて――― ※※ 元サヤが嫌いな方、女主人公がハーレムっぽくなるのが嫌いな方、恋愛は王道以外は認めない方はご遠慮ください。 最後のオチに「えーーっ」となるかもしれませんし、「ふっ」となるかもしれません。 気楽にお読みください。 この作品に関して率直な感想を言いたくなったら、否定的な意見でも気軽に感想を書いてください。 感想に関して返信すると、気を遣って自由に言いたいことを言えなくなるかもしれないので、この作品の感想の返信は一律でしませんので、ご容赦ください。

【完結】なんで、あなたが王様になろうとしているのです?そんな方とはこっちから婚約破棄です。

西東友一
恋愛
現国王である私のお父様が病に伏せられました。 「はっはっはっ。いよいよ俺の出番だな。みなさま、心配なさるなっ!! ヴィクトリアと婚約関係にある、俺に任せろっ!!」  わたくしと婚約関係にあった貴族のネロ。 「婚約破棄ですわ」 「なっ!?」 「はぁ・・・っ」  わたくしの言いたいことが全くわからないようですね。  では、順を追ってご説明致しましょうか。 ★★★ 1万字をわずかに切るぐらいの量です。 R3.10.9に完結予定です。 ヴィクトリア女王やエリザベス女王とか好きです。 そして、主夫が大好きです!! 婚約破棄ざまぁの発展系かもしれませんし、後退系かもしれません。 婚約破棄の王道が好きな方は「箸休め」にお読みください。

【26話完結】日照りだから帰ってこい?泣きつかれても、貴方のために流す涙はございません。婚約破棄された私は砂漠の王と結婚します。

西東友一
恋愛
「やっぱり、お前といると辛気臭くなるから婚約破棄な?あと、お前がいると雨ばっかで気が滅入るからこの国から出てってくんない?」 雨乞いの巫女で、涙と共に雨を降らせる能力があると言われている主人公のミシェルは、緑豊かな国エバーガーデニアの王子ジェイドにそう言われて、婚約破棄されてしまう。大人しい彼女はそのままジェイドの言葉を受け入れて一人涙を流していた。  するとその日に滝のような雨がエバーガーデニアに降り続いた。そんな雨の中、ミシェルが泣いていると、一人の男がハンカチを渡してくれた。 ミシェルはその男マハラジャと共に砂漠の国ガラハラを目指すことに決めた。 すると、不思議なことにエバーガーデニアの雨雲に異変が・・・  ミシェルの運命は?エバーガーデニアとガラハラはどうなっていくのか?

【完結】両親が亡くなったら、婚約破棄されて追放されました。他国に亡命します。

西東友一
恋愛
両親が亡くなった途端、私の家の資産を奪った挙句、婚約破棄をしたエドワード王子。 路頭に迷う中、以前から懇意にしていた隣国のリチャード王子に拾われた私。 実はリチャード王子は私のことが好きだったらしく――― ※※ 皆様に助けられ、応援され、読んでいただき、令和3年7月17日に完結することができました。 本当にありがとうございました。

わたくし、悪女呼ばわりされているのですが……全力で反省しておりますの。

月白ヤトヒコ
恋愛
本日、なんの集まりかはわかりませんが、王城へ召集されておりますの。 まあ、わたくしこれでも現王太子の婚約者なので、その関連だと思うのですが…… 「父上! 僕は、こんな傲慢で鼻持ちならない冷酷非道な悪女と結婚なんかしたくありません! この女は、こともあろうに権力を使って彼女を脅し、相思相愛な僕と彼女を引き離そうとしたんですよっ!? 王妃になるなら、側妃や愛妾くらいで煩く言うのは間違っているでしょうっ!?」 と、王太子が宣いました。 「どうやら、わたくし悪女にされているようですわね。でも、わたくしも反省しておりますわ」 「ハッ! やっぱりな! お前は僕のことを愛してるからな!」 「ああ、人語を解するからと人並の知性と理性を豚に求めたわたくしが悪かったのです。ごめんなさいね? もっと早く、わたくしが決断を下していれば……豚は豚同士で娶うことができたというのに」 設定はふわっと。

【完結済】25年目の厄災

恋愛
生まれてこの方、ずっと陽もささない地下牢に繋がれて、魔力を吸い出されている。どうやら生まれながらの罪人らしいが、自分に罪の記憶はない。 だが、明日……25歳の誕生日の朝には斬首されるのだそうだ。もう何もかもに疲れ果てた彼女に届いたのは…… 25周年記念に、サクッと思い付きで書いた短編なので、これまで以上に拙いものですが、お暇潰しにでも読んで頂けたら嬉しいです。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

処理中です...