これはひとつの愛の形

らがまふぃん

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アクア連合国編 *見守り?*

前編

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 新しい話始めました。
 今回は、ひとつの世界観の元、各国でひっそり育まれた?愛にスポットをあてています。
 最初に世界観をお読みいただきましたら、あとはどの章からお読みいただいても差し支えありません。
 どのような内容かは、章の横にサブタイトルのようについたタグでご判断ください。


*~*~*~*~*


 「こんなところに子どもがひとり。何をしているんだ」
 尋ねているのではなく、ただ口にしただけ。そんな風に感じられる口調だった。
 「お父さんとお母さんと素材の採集に来てはぐれちゃった。あなたは?月からの使者?」
 月からの使者は目を丸くした後、ニッと口の端を上げた。
 「月?何故そう思う」
 少女は臆することなく答える。
 「雰囲気が月みたい」
 少女は続ける。
 「冬の、凍えるような、凜とした月」
 月からの使者は、口に手を当てた。
 ああ、悪いムシが疼き出した。
 「月の使者さん、お名前は?あたしはレイ」
 赤茶色の瞳が好奇心でいっぱいだ。
 「私に名はない。好きに呼ぶといい」
 その言葉に、驚くように目を丸くした。
 「やっぱり!使者だから!」
 レイは大きく頷いた。
 「じゃあルナ!どこかの国で、月のことをルナって呼ぶって聞いたよ!」
 ルナはロックオンした。物怖じせず、適応力の高い少女レイ。
 ねぇレイ。キミが死ぬまで、キミは私のものだ。


*~*~*~*~*


 レイは冒険者として成長していた。一流と言われるランク、Bランクで活躍し、Aに届くのではないかと言われている、大注目のパーティーだ。リーダーで盾役のゼダ、剣士のガルヴァ、白魔法使いシファ、黒魔法使いロファ、そして戦士のレイの五人パーティー。ちなみにシファとロファは双子の姉弟だ。
 「レイ、無理だ、いいから、行け!」
 リーダーのゼダが必死に抑えているのは、マンティコアの亜種。通常のマンティコアであれば、そこまで苦戦はしない。油断をしなければ、確実に倒せる。マンティコアには魔法が効かない。直接的な攻撃なら通る。だが、今対峙しているマンティコア、魔法はもちろん、物理攻撃も効き辛い。通るには通るが、倒しきるには至らない。相手の体力よりも先に、こちらの体力が尽きる。シファの回復魔法も、もう後一回が限界だろう。圧倒的な物理攻撃耐性と絶望的な魔法耐性を持つ相手に、打つ手がなかった。
 「いやだ!仲間を見捨てて逃げるなんてありえない!」
 「ばか、やろう!次に、繋げないで、どうすんだ!情報は、命だ!コイツの、情報、ギルドに、届けろ!」
 レイは唇を噛んだ。こぶしを握り締め、震える。ロファは魔力切れで動けない。シファも魔力切れ一歩手前。ガルヴァも満身創痍だ。シファの最後の回復魔法は、ゼダにかけるべきと回復を拒み、そのダメージと失血のため、山を下りることが精一杯だろう。ゼダが抑えていられる間に、ここから離れなくては。一刻の猶予もない。頭ではわかっている。一番元気な自分がロファを抱えて、後の二人は自力でついて来てもらう。少しでも離れるために、今すぐに行くべきだ。
 「ゼダ、回復、させるわ」
 最後の回復魔法をかけようと、シファが杖を構える。
 レイはグッと足に力を入れた時だ。
 「おや、レイ。なぜ泣いているんだい」
 弾かれたように、レイは振り返った。
 「ルナ!」
 月の使者がいた。


*~*~*~*~*


 ルナは不機嫌だった。
 悪友の一人、精霊神セレスティナにお使いを頼まれていた。白龍の逆鱗と月光の雫を持って来いと言う。そのせいで、レイを観察出来ないでいたが、その見返りを思って溜飲を下げた。
 「ほらセレス、頼まれたモノ」
 瓶に入れた月光の雫を投げると、セレスティナは慌てて受け取る。
 「ちょおっとお!落としたらどうするのよ!」
 「で、白龍の逆鱗な」
 ルナは白龍に乗ってセレスティナを訪れていた。
 「え、ちょ、まさか」
 ルナは白龍に手を伸ばすと、躊躇いもなく逆鱗をむしり取った。白龍はオロロロロと滂沱の涙を流しながら、それに耐えた。何があった。
 「わーん!あんたのやり方怖いのよ!if!」
 ルナは神々から、ifと呼ばれる存在だった。
 「うるさい。ほら、お使い済んだよ」
 そう言って手を出すルナに、セレスティナは涙目であるモノを渡した。
 「確かに。また何か手に入ったらお使いくらいなら頼まれてやらなくもないかもしれないかも知れないような気がしないでもない」
 「わかりづらい!」


 *中編につづく*
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