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エリアストとアリスの形編
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「やあ、お二人とも。元気にしてる?」
ノックの後に顔を出したのは、アリスとアイリッシュの待ち人、クロバレイス王国元王女、現クロバレイス王国騎士団長アイザック・デイ・ガストラフの妻、ララだった。
「まあ、ララちゃん、レンフィさん、待ってたわ。もちろん元気よ。ララちゃんたちこそ、遠いところ疲れたでしょう?」
「ララ様、レンフィ様、お久しぶりです。おかげさまで元気にしておりますわ。遠いところ、ようこそおいでくださいました」
ララとアリスは定期的に手紙のやり取りをしている。そこで、アリスの懐妊を知り、アリスが安定期に入ると、訪ねる旨が記されていた。ララは、“こちらに二週間ほど滞在するので、体調の良い日に訪ねたい”と慮ってくれていた。ララも長旅で疲れているだろうと、到着して二日後を指定し、本日晴れて再会となった。
立ち上がる二人に、ララは満面の笑顔で応えた。ララ付きの侍女レンフィは、挨拶、お礼と共に頭を下げる。
「もっと近かったら毎日でも遊びに来るのにね。本当はもっと早く来たかったんだけどなあ。十一月半ばになってしまったよ。ああ、アリス嬢。ご懐妊おめでとう。どう?体の方は。まったくいつも通りだって手紙には書いてあったけどさ。ムリしてない?」
アリスに駆け寄り、その手を取ってソファーに座らせながら、自分もその隣に腰を下ろす。結婚をしたアリスを“嬢”呼びすることに突っ込みたかったレンフィだが、アリスの体調を考え、余計な時間を使わないよう努めた。
「ありがとうございます。本当にまったく何もないのです。けれど、日に日に大きくなるお腹に、元気に育ってくれていると実感していますの」
嬉しそうに微笑み、愛おしそうにお腹を撫でるアリスに、ララもレンフィも、嬉しそうに笑った。
「双子って聞いてさ、心配していたんだ。多胎児だと大変だって聞くから」
そう。アリスのお腹には、二つの命が宿っていた。そのため、エリアストの心配が尋常ではない。
妊娠発覚時点からエリアストは仕事へ行かず、この邸にいる。仕事はすべて部下に持ち込ませた。少しでもアリスに何かあったときに、一瞬で駆けつけるために。双子とわかった時点で、さらに過保護に拍車がかかる。常にアリスを側に置き、五分おきに様子を窺う。一応執務室にはいるが、そこに、アリスのための椅子やソファー、すぐに横になれるようベッドまで用意していた。
「そうですね。けれど、驚くほど順調なのです。旦那様も毎日とても気遣ってくださいます。お義父様もお義母様も、邸のみなさんも、本当に良くしてくださって」
にこにことするアリスが可愛くて、ララは飛びつきたい衝動に駆られるが、アリスは大事な体。グッと堪える。
「あー。ディレイガルドの病的なまでの過保護っぷりが目に浮かぶなあ。だからさあ」
フッ、とどこか哀愁漂うような短い息を吐いたララが、アリスの斜め後方に向かって少しだけ声量を上げた。
「何でそんなに威圧してくるわけ?自分で言ったじゃんっ。“私はいないものと思え”ってっ。存在感もの凄く醸し出してるよ、ディレイガルドッ」
お行儀悪くララがビシリと指さす先には、半端ない威圧を放つエリアストがいた。
*つづく*
ノックの後に顔を出したのは、アリスとアイリッシュの待ち人、クロバレイス王国元王女、現クロバレイス王国騎士団長アイザック・デイ・ガストラフの妻、ララだった。
「まあ、ララちゃん、レンフィさん、待ってたわ。もちろん元気よ。ララちゃんたちこそ、遠いところ疲れたでしょう?」
「ララ様、レンフィ様、お久しぶりです。おかげさまで元気にしておりますわ。遠いところ、ようこそおいでくださいました」
ララとアリスは定期的に手紙のやり取りをしている。そこで、アリスの懐妊を知り、アリスが安定期に入ると、訪ねる旨が記されていた。ララは、“こちらに二週間ほど滞在するので、体調の良い日に訪ねたい”と慮ってくれていた。ララも長旅で疲れているだろうと、到着して二日後を指定し、本日晴れて再会となった。
立ち上がる二人に、ララは満面の笑顔で応えた。ララ付きの侍女レンフィは、挨拶、お礼と共に頭を下げる。
「もっと近かったら毎日でも遊びに来るのにね。本当はもっと早く来たかったんだけどなあ。十一月半ばになってしまったよ。ああ、アリス嬢。ご懐妊おめでとう。どう?体の方は。まったくいつも通りだって手紙には書いてあったけどさ。ムリしてない?」
アリスに駆け寄り、その手を取ってソファーに座らせながら、自分もその隣に腰を下ろす。結婚をしたアリスを“嬢”呼びすることに突っ込みたかったレンフィだが、アリスの体調を考え、余計な時間を使わないよう努めた。
「ありがとうございます。本当にまったく何もないのです。けれど、日に日に大きくなるお腹に、元気に育ってくれていると実感していますの」
嬉しそうに微笑み、愛おしそうにお腹を撫でるアリスに、ララもレンフィも、嬉しそうに笑った。
「双子って聞いてさ、心配していたんだ。多胎児だと大変だって聞くから」
そう。アリスのお腹には、二つの命が宿っていた。そのため、エリアストの心配が尋常ではない。
妊娠発覚時点からエリアストは仕事へ行かず、この邸にいる。仕事はすべて部下に持ち込ませた。少しでもアリスに何かあったときに、一瞬で駆けつけるために。双子とわかった時点で、さらに過保護に拍車がかかる。常にアリスを側に置き、五分おきに様子を窺う。一応執務室にはいるが、そこに、アリスのための椅子やソファー、すぐに横になれるようベッドまで用意していた。
「そうですね。けれど、驚くほど順調なのです。旦那様も毎日とても気遣ってくださいます。お義父様もお義母様も、邸のみなさんも、本当に良くしてくださって」
にこにことするアリスが可愛くて、ララは飛びつきたい衝動に駆られるが、アリスは大事な体。グッと堪える。
「あー。ディレイガルドの病的なまでの過保護っぷりが目に浮かぶなあ。だからさあ」
フッ、とどこか哀愁漂うような短い息を吐いたララが、アリスの斜め後方に向かって少しだけ声量を上げた。
「何でそんなに威圧してくるわけ?自分で言ったじゃんっ。“私はいないものと思え”ってっ。存在感もの凄く醸し出してるよ、ディレイガルドッ」
お行儀悪くララがビシリと指さす先には、半端ない威圧を放つエリアストがいた。
*つづく*
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