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詐欺師とボスと穴だらけの推理
席を立つ私に、茶髪が声をかけてきた。
「ガーディニー嬢、どちらへ?」
「もうすぐ教員が来るぞ。どうした」
気付いた黒髪もそう言う。
「そうですか。では後にいたしましょう。どこのどなたか存じませんが、ご親切にありがとうございます」
教室の空気が凍りついた。
「お、まえ、私を、知らない、のか?」
黒髪が恐ろしく引き攣った顔をしている。
「あら?どこかでお会いしました?申し訳ございません。わたくし、人の顔を覚えることがどうも苦手で」
「ハビエル・ケイス・エトワリュージュだっ。王家主催のパーティーなどで何度も顔を合わせているぞ?ダンスだってしているのだが?」
私が首を傾げていると、
「母である王妃とよく茶会をしているではないか!」
そこでハッとした。王妃様は私の欲しいものをくれた人。見合いで王城に訪れたときに初めてお目にかかった。あのときのあの冷たい目。数々の蔑んだ言葉を端々に感じた。欲を言えば、あんなに遠回しではなく直球で来て欲しいと思ったものだ。その後、何故かちょいちょい呼び出されて、今では茶飲み友だちである。最初の頃のS感がなくなっていることが酷く残念だ。その王妃の子ども。ああ、見合いしたアイツか。ならばこいつは詐欺王子か。
「まあ、これは失礼いたしました、殿下。お久しぶりでございますね。お見合い以来でしたかしら」
「何年前?!聞いていたか?何度も顔を合わせて何度もダンスをしているのだが?」
うるせぇし面倒なので、笑って頷いておいた。何だか涙目の詐欺王子。
「殿下、“これからはご挨拶をする程度の顔見知りということで、金輪際関わることのなきよう、よろしくお願いいたします”と申し上げたと思いますが」
「今更?!散々関わってきて今更それを言うの?!本当に私を認識していなかったのだな?!そしてそのセリフは覚えているの?!」
「難儀な記憶力なもので」
王子がガックリと床に手をついた。なんだ。お尻を蹴るにしてもこちらを向いていないし、頭を踏みつけるにしても床から離れすぎている。なんて中途半端な体勢なんだ。何をして欲しいかわからぬ。この体勢でして欲しいことか。ああ、私はあなたの椅子になります、ということか。
「殿下、どうぞお立ちください。わたくしには座る椅子はすでに用意されておりますので、敢えて殿下を椅子にして座ろうなどと思っておりませんわ。何よりも貧弱すぎて安定感悪そうですので、迷惑ですのよ?」
「何の話だ?!」
「あ、そうですわよね、申し訳ございません。このように、みなさまの前で貧弱などと。男性の尊厳を踏みにじっておりました。大丈夫です、まだまだこれから伸びますわ。努力は裏切りません。もっと筋肉をつけてから、もう一度挑戦してくださいましね」
「本当に会話が噛み合わないな?!」
………
……
…
さて放課後ですよ。男性に囲まれたハーレム女を見つけに行こう。と、思っていたのだが、またしても閃いたのだ。あの詐欺王子。ゲームの傾向から、きっとハイスペックな野郎共が攻略対象だろう。ならば、きっとあの詐欺野郎は攻略対象だ。王子だ、きっと顔もいいに決まっている。その婚約者がヒロイン。で、その婚約者を奪おうと、他の攻略対象たちがもちゃもちゃしている。どうだ。天才だろう、私。そんなわけで、王子に聞いてみよう。立ち上がろうとして、声をかけられた。
「ガーディニー侯爵嬢様。わたくし、ヴェルダージュ公爵が娘、ロザリアですわ。少々お話、よろしいかしら」
紫髪の少々つり上がった紫目。制服のリボンの色が三年生、最高学年だ。公爵という立場から、きっとボスだ。もしや、ボスが婚約者か?
*つづく*
「ガーディニー嬢、どちらへ?」
「もうすぐ教員が来るぞ。どうした」
気付いた黒髪もそう言う。
「そうですか。では後にいたしましょう。どこのどなたか存じませんが、ご親切にありがとうございます」
教室の空気が凍りついた。
「お、まえ、私を、知らない、のか?」
黒髪が恐ろしく引き攣った顔をしている。
「あら?どこかでお会いしました?申し訳ございません。わたくし、人の顔を覚えることがどうも苦手で」
「ハビエル・ケイス・エトワリュージュだっ。王家主催のパーティーなどで何度も顔を合わせているぞ?ダンスだってしているのだが?」
私が首を傾げていると、
「母である王妃とよく茶会をしているではないか!」
そこでハッとした。王妃様は私の欲しいものをくれた人。見合いで王城に訪れたときに初めてお目にかかった。あのときのあの冷たい目。数々の蔑んだ言葉を端々に感じた。欲を言えば、あんなに遠回しではなく直球で来て欲しいと思ったものだ。その後、何故かちょいちょい呼び出されて、今では茶飲み友だちである。最初の頃のS感がなくなっていることが酷く残念だ。その王妃の子ども。ああ、見合いしたアイツか。ならばこいつは詐欺王子か。
「まあ、これは失礼いたしました、殿下。お久しぶりでございますね。お見合い以来でしたかしら」
「何年前?!聞いていたか?何度も顔を合わせて何度もダンスをしているのだが?」
うるせぇし面倒なので、笑って頷いておいた。何だか涙目の詐欺王子。
「殿下、“これからはご挨拶をする程度の顔見知りということで、金輪際関わることのなきよう、よろしくお願いいたします”と申し上げたと思いますが」
「今更?!散々関わってきて今更それを言うの?!本当に私を認識していなかったのだな?!そしてそのセリフは覚えているの?!」
「難儀な記憶力なもので」
王子がガックリと床に手をついた。なんだ。お尻を蹴るにしてもこちらを向いていないし、頭を踏みつけるにしても床から離れすぎている。なんて中途半端な体勢なんだ。何をして欲しいかわからぬ。この体勢でして欲しいことか。ああ、私はあなたの椅子になります、ということか。
「殿下、どうぞお立ちください。わたくしには座る椅子はすでに用意されておりますので、敢えて殿下を椅子にして座ろうなどと思っておりませんわ。何よりも貧弱すぎて安定感悪そうですので、迷惑ですのよ?」
「何の話だ?!」
「あ、そうですわよね、申し訳ございません。このように、みなさまの前で貧弱などと。男性の尊厳を踏みにじっておりました。大丈夫です、まだまだこれから伸びますわ。努力は裏切りません。もっと筋肉をつけてから、もう一度挑戦してくださいましね」
「本当に会話が噛み合わないな?!」
………
……
…
さて放課後ですよ。男性に囲まれたハーレム女を見つけに行こう。と、思っていたのだが、またしても閃いたのだ。あの詐欺王子。ゲームの傾向から、きっとハイスペックな野郎共が攻略対象だろう。ならば、きっとあの詐欺野郎は攻略対象だ。王子だ、きっと顔もいいに決まっている。その婚約者がヒロイン。で、その婚約者を奪おうと、他の攻略対象たちがもちゃもちゃしている。どうだ。天才だろう、私。そんなわけで、王子に聞いてみよう。立ち上がろうとして、声をかけられた。
「ガーディニー侯爵嬢様。わたくし、ヴェルダージュ公爵が娘、ロザリアですわ。少々お話、よろしいかしら」
紫髪の少々つり上がった紫目。制服のリボンの色が三年生、最高学年だ。公爵という立場から、きっとボスだ。もしや、ボスが婚約者か?
*つづく*
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