愛を知らない者たちの愛

プロローグ

　このお話は、拙作「これはひとつの愛の形」より、ケーニス王国編を掘り下げたものになります。
　なかなかクレイジーなお話しかと思いますので、優しい恋愛を求めている方はこのまま閉じてください。
　予告なく残酷、性的な話になります。BL要素と申しますか、両刀、というのでしょうか。それらが含まれております。苦手な方はお戻りくださいますよう、お願いいたします。


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　魔法のある世界。
　みんな魔力を持ってはいるが、戦えるほどの魔力を持つ者は、三人に一人の割合で存在する。その中でも、貴族に仕えることが出来るほど力のある者は、百人に一人程度。王城を守護するほどになると、千人に一人、王族に仕えるほどの者は、一万人に一人となる。
　仕える実力は、あくまでも最低基準の話であり、王城級、王族級の者が貴族に仕えることも、稀ではあるがない話ではない。
　ケーニス王国はさほど大きくはない国だが、軍事力の面において、大陸の覇者サファ帝国に迫る勢いの国だ。理由として、魔法に頼り切らない点が大きい。戦う魔力のない者も戦わせるため、武器が充実している。魔力の乏しい者の魔力でも扱うことの出来る魔力武器だ。
　ただ、この魔力武器、魔力の高い者が使うことは出来ない。魔力を込めずにただの武器として使うことは出来るが。高魔力者の魔力に耐えうる魔力武器もあるにはあるが、かなり希少。その素材が手に入りにくいのだ。故に、対魔法としては弱者の武器となる。だが侮ることなかれ。この武器の威力は、貴族級に匹敵する。そのくらいでないと、サファ帝国に迫ることは出来ないので、当然と言えば当然の結果なのだが。
　この武器を扱う者を訓練する訓練所が、市井では一番の人気スポットだ。入所する者が後を絶たないことはもちろん、模擬戦闘を常時行っているため、娯楽の一環として人気を博している。観客席を設けており、毎日が満員御礼。経済効果においても嬉しい悲鳴を上げるほどだ。
　市井の人にはほぼ知られてはいないが、訓練所の地下にも闘技場がある。ひと月に一度開かれるこの闘技場は、賭博専用。貴族や豪商、果ては王族までが出入りをする、会員制の賭博場だ。会員の情報は魔法の縛りにより外部に漏れることはない。みんなお忍びで観戦に来る、仮面必須の闇賭博。対戦相手に関しては表の闘技場と同じ、人対人、人対魔獣、魔獣対魔獣の三種目。違いは人に対してのルールだ。表は怪我や気絶は構わないが、生活に支障が出るほどの傷を負わせたり、命を奪うことは厳禁であり、降参した相手を追撃することも、審判の指示に従わないことも御法度ごはっとである。しかし裏は何でもあり。訓練ではない。どちらが生き残るか、参加者は命をベットする。会員制の闇賭博たる所以ゆえんだ。
　闇賭博に出場する人間の殆どは、借金の形に売られたり、金策で首が回らなくなったりと、金に振り回された者たち。極々少数だが、自ら戦いを求める戦闘狂もいる。長くこの地下闘技場で生き残る者は、人気が高い。そもそも長くいる者は極少数派の戦闘狂だ。事情のある者は、この闘技場の性質上、一回ないし数回でお役御免となる。連れて来られた事情が解消されるか、死ぬか。ちなみに解放された者たちから、地下闘技場のことが漏れることはない。彼らには情報漏洩の魔法がかけられており、口にしたら最後、連れ戻され、死ぬまでそこから出られないことを知っているからだ。


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