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第十章
Ⅱ
しおりを挟む「いもうと…さん?
琥珀さんが?龍海さん、の?」
彼女が一つ一つ確認するように言葉を続ける。
「…あぁ」
彼女は三秒ほど固まった。
そして真っ赤になった顔を両手で覆った。
「お、おい…」
「本当、ですか…?」
蚊の鳴くような声。
「あ、あぁ」
分かってもらえたかとほっとした矢先、
「証拠は?」
「え?」
「まだ、信じられない」
彼女が目を合わせないまま、ただ机の上の紅茶を見つめてそう言った。
証拠。
これはもう琥珀からも話をしてもらった方がいいのではないか。
そう思って携帯を出す。
もう夜遅いが、頼む、出てくれ。
電話をかける俺を彼女がチラリとみた。
『…もしもし。』
「…もしもし、琥珀か」
明らかに寝起きの声だ。
『…どうしたの。翠さんのこと?』
「あぁ、会えた。」
『そう、良かったじゃん。
誤解は解けて、気持ち伝えて大団円ですかぁ。
浮かれたたっくんはこんな時間に妹に電話してきたんですか~』
「いや、それは…」
『はぁ?まさか、また翠さん困らせてるの?
許せないわぁ』
「うるさい。」
『どういう状況なの?』
「…いや、俺がお前のことを好きだと…」
『え、何それたっくん気持ち悪…
やめてよね』
「は?こっちの台詞だバカ。」
『…翠さんが信じてくれないって感じ?』
「あぁ」
『…代わって』
「あぁ、わかった。」
携帯から耳を離す。
「翠。…琥珀が代われと…」
「…はい。」
彼女は恐る恐る携帯を手に取り、
「…もしもし。」
意を決したように、通話を始めた。
「…琥珀さん」
琥珀も話し始めたらしい。
「こちらこそ……そんな…!
…こちらこそ、ごめんなさい。」
彼女は静かに琥珀の話を聞いている。
「…本当に……たっくん…」
彼女の口から出た聞きなれない呼ばれ方にぎょっとする。
「そう、でしたか…」
そう言った後、少しの沈黙を経て、
「…はい。」
彼女は納得したかのように返事をした。
「はい?……え…
……はい。……え?」
そして急に様子が変わった。
「は、え?
……デッ、まっ、え?」
急に言葉にならない言葉を並べている。
「あっ、あぁ…」
「おい、大丈夫か。」
あいつ、一体なんの話をしている。
「…ごめんなさい。琥珀さん。」
しかも琥珀に謝りだした。
あいつ、もしかして何か彼女を責めるようなことを…
「…はい。
……ふふっ、私も大好きです。」
「えっ…」
…そうではなかったみたいだ。
「ふふっ、分かりました。
…琥珀さん、ありがとうございます。」
そう言って、彼女は少し微笑んで携帯を渡してきた。
「…はい、龍海さん。ありがとうございました。」
「っ、あぁ」
…久しぶりに、彼女が微笑んだ顔を見た。
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