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照れ笑いの後にするキス
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彼女の名前は『瀬戸明日香』さん。
自己紹介のときに名乗ったのを僕は聞き逃さないようにしていた。
留年の理由はわからなかったがすでにクラスに溶け込んでいた。
あのテンションだもんなぁ・・・初対面の人に突然ニックネームをつける・・
「亮ちゃぁぁぁあぁん」
彼女、明日香さんはいつも僕のところへきては意味のわからないことを言う。
今日もきっとそれだろう。
「なんですか。今日は。」
「ねぇ、嫌な顔しないでよぉ。まあいいや、あのねあのねー」
「はい」
「なんか頭が痛い」
「あのねぇ!小学生じゃないんですよぉ?!」
僕がそう言うと明日香さんはまた悪戯そうに笑った。
「だって、亮ちゃんに心配してもらいたいんだも。だめぇ?」
「・・・可愛いこと言ってもだめですよ。頭が痛いなら保健室に行ったらどうです?」
「ねぇ、お願いつれてって」
明日香さんは年上なわけだが(聞いた話だと2つ上らしい。)
こうやって時々僕に甘えてくる。その姿は正直理性を抑えることさえ難しくなるほど可愛かった。
僕は本音を言うとあの日、入学式の日から彼女が好きだ。
これを恋といわないのならなんだって話なほど彼女にハマッテいる。
だからこうやって甘えてこられたり、頼られるのは嫌じゃない。むしろ大歓迎だ。
「・・・瀬戸さん」
「明日香」
「・・・・・・明日香・・・さん。」
彼女は自分を名前で呼ばそうとする。恥ずかしいだろ・・・
「明日香!」
「・・・明日香さん、こうやって怒れるなら元気な証拠でしょう。」
「ねぇえ、お願い」
今日はしつこいなぁ・・・このままだと僕は白状な人間になるのでとりあえず彼女を連れてく。
彼女はご機嫌な感じで僕の手を握って歩いている。これが恋人同士ならなぁ…
「あ。れ?」
突然明日香さんが止まった。
僕は振り返り様子を伺うがとまったままだった。
「明日香さん?」
「・・・待って、ね。なんか、変」
また冗談だと思い僕はヤケクソになったのか彼女を抱き上げた。
「ちょ・・・っと!亮ちゃん?恥ずかしいでしょ、おろせ!」
「・・・・狙ってたんじゃないんですか?とりあえずつきました。」
看護室のドアを開けるといつもやさしい笑顔のフミさんが迎えてくれる。
「あらあら。明日香ちゃんどうしたの?」
顔なじみなのか親しげに話し始めた。
「フミさん。また頭がいたくってぇ・・・」
「お薬は?ちゃんと飲んでる?」
「うん・・・・・・・」
あまり状況がわからない僕は何も言わずに部屋を出た。
頭が痛いのは本当だったのか。後で彼女に謝ろう。
それから最後の講義まで明日香さんは姿を見せなかった。
フミさんに聞くとあれから帰ったらしい。水臭いな。
そんなことを思いながらまたいつもの道を歩き出す。
「へっへっへっへ」
建物の影から明日香さんが現れた。
僕は驚いて転びそうになった。
「そこまで驚かなくっても。」
「か、帰ったんじゃなかったんですか・・・?」
「うーん。でもね亮ちゃんにお礼言いたかったし。」
「・・・いいですよ。そんなの」
「迷惑だよねー。ごめんねー」
何言ってるんだか。
「あのね、僕は・・・・・・・・・・・なんでもないです」
「言え!気になるぅ」
「・・・だから、僕は明日香さんのこと迷惑だなんて思ったことないです。
入学式のあの日から、ずっと。だからもっと、頼ってもらっていいですよ」
思いっきり告白じゃないか・・・・
僕は照れ隠しのつもりでスタスタを歩き出した。
それを追おうとする明日香さん。
それが可愛く感じてまた少しスピードを上げる。
しかしそのスピードは小さな悲鳴と一緒に落ちていく・・・
「ひゃッ」
振り返ると見事に転んだ明日香さんがいた。
僕はおなかを抱えて笑った後、明日香さんに手を差し伸べたのだが
明日香さんはすごく真っ赤な顔をしてこっちを見てくれなかった。
「明日香さん、立ちましょうよ」
「わかってる」
「さ、手かしてください」
明日香さんは下を向いたままで動こうとしない。
「・・・・・恥ずかしいんですか」
僕がいつも仕返しかのようにしてニヤリと笑って言うと明日香さんは怒りながら
「な、によ。この歳で転んだの見てダッサーとか思ってるんでしょ!」
僕はそんな彼女がまた可愛く思えた。
彼女の手を取り、グイっと引いて立たせた。
「え、ちょっと・・・」
「顔、あげてください」
まだ顔が赤いままなのか(耳は真っ赤だ。可愛い。)顔をあげてくれない。
僕は彼女の頬にそっと触れて顔を持ち上げた。
「ちょ・・・・・・・・」
そして目があった時、キスをした。
ただ、唇と唇を合わせるだけのキス。それだけでも僕の心を満たしてくれた。
唇を離すと少し彼女は呆然としていたがクスクスと笑った。
「ちょっと・・・責任、とってよ?」
「え・・・もしかして初めて・・・でした?」
「違うけど。けど、私、本気にするから」
「え。はい、してください」
僕が答えると彼女はまた顔を赤くした。
「え、待ってください。明日香さんから言ったのに…顔あげてくださいよ」
彼女は首を横に振り小さな声で
「あっち行ってて」
と言った。
なんだか僕まで恥ずかしくなって笑うことしか出来なかった。
「わら・・・わないで!」
「ごめんなさい。明日香さんなんか可愛すぎます」
そう言うと彼女はすごい早さでこっちを見た。目を丸くしている。
そんな彼女に僕はまたキスをする。
今度は長い、長いキスだった。
自己紹介のときに名乗ったのを僕は聞き逃さないようにしていた。
留年の理由はわからなかったがすでにクラスに溶け込んでいた。
あのテンションだもんなぁ・・・初対面の人に突然ニックネームをつける・・
「亮ちゃぁぁぁあぁん」
彼女、明日香さんはいつも僕のところへきては意味のわからないことを言う。
今日もきっとそれだろう。
「なんですか。今日は。」
「ねぇ、嫌な顔しないでよぉ。まあいいや、あのねあのねー」
「はい」
「なんか頭が痛い」
「あのねぇ!小学生じゃないんですよぉ?!」
僕がそう言うと明日香さんはまた悪戯そうに笑った。
「だって、亮ちゃんに心配してもらいたいんだも。だめぇ?」
「・・・可愛いこと言ってもだめですよ。頭が痛いなら保健室に行ったらどうです?」
「ねぇ、お願いつれてって」
明日香さんは年上なわけだが(聞いた話だと2つ上らしい。)
こうやって時々僕に甘えてくる。その姿は正直理性を抑えることさえ難しくなるほど可愛かった。
僕は本音を言うとあの日、入学式の日から彼女が好きだ。
これを恋といわないのならなんだって話なほど彼女にハマッテいる。
だからこうやって甘えてこられたり、頼られるのは嫌じゃない。むしろ大歓迎だ。
「・・・瀬戸さん」
「明日香」
「・・・・・・明日香・・・さん。」
彼女は自分を名前で呼ばそうとする。恥ずかしいだろ・・・
「明日香!」
「・・・明日香さん、こうやって怒れるなら元気な証拠でしょう。」
「ねぇえ、お願い」
今日はしつこいなぁ・・・このままだと僕は白状な人間になるのでとりあえず彼女を連れてく。
彼女はご機嫌な感じで僕の手を握って歩いている。これが恋人同士ならなぁ…
「あ。れ?」
突然明日香さんが止まった。
僕は振り返り様子を伺うがとまったままだった。
「明日香さん?」
「・・・待って、ね。なんか、変」
また冗談だと思い僕はヤケクソになったのか彼女を抱き上げた。
「ちょ・・・っと!亮ちゃん?恥ずかしいでしょ、おろせ!」
「・・・・狙ってたんじゃないんですか?とりあえずつきました。」
看護室のドアを開けるといつもやさしい笑顔のフミさんが迎えてくれる。
「あらあら。明日香ちゃんどうしたの?」
顔なじみなのか親しげに話し始めた。
「フミさん。また頭がいたくってぇ・・・」
「お薬は?ちゃんと飲んでる?」
「うん・・・・・・・」
あまり状況がわからない僕は何も言わずに部屋を出た。
頭が痛いのは本当だったのか。後で彼女に謝ろう。
それから最後の講義まで明日香さんは姿を見せなかった。
フミさんに聞くとあれから帰ったらしい。水臭いな。
そんなことを思いながらまたいつもの道を歩き出す。
「へっへっへっへ」
建物の影から明日香さんが現れた。
僕は驚いて転びそうになった。
「そこまで驚かなくっても。」
「か、帰ったんじゃなかったんですか・・・?」
「うーん。でもね亮ちゃんにお礼言いたかったし。」
「・・・いいですよ。そんなの」
「迷惑だよねー。ごめんねー」
何言ってるんだか。
「あのね、僕は・・・・・・・・・・・なんでもないです」
「言え!気になるぅ」
「・・・だから、僕は明日香さんのこと迷惑だなんて思ったことないです。
入学式のあの日から、ずっと。だからもっと、頼ってもらっていいですよ」
思いっきり告白じゃないか・・・・
僕は照れ隠しのつもりでスタスタを歩き出した。
それを追おうとする明日香さん。
それが可愛く感じてまた少しスピードを上げる。
しかしそのスピードは小さな悲鳴と一緒に落ちていく・・・
「ひゃッ」
振り返ると見事に転んだ明日香さんがいた。
僕はおなかを抱えて笑った後、明日香さんに手を差し伸べたのだが
明日香さんはすごく真っ赤な顔をしてこっちを見てくれなかった。
「明日香さん、立ちましょうよ」
「わかってる」
「さ、手かしてください」
明日香さんは下を向いたままで動こうとしない。
「・・・・・恥ずかしいんですか」
僕がいつも仕返しかのようにしてニヤリと笑って言うと明日香さんは怒りながら
「な、によ。この歳で転んだの見てダッサーとか思ってるんでしょ!」
僕はそんな彼女がまた可愛く思えた。
彼女の手を取り、グイっと引いて立たせた。
「え、ちょっと・・・」
「顔、あげてください」
まだ顔が赤いままなのか(耳は真っ赤だ。可愛い。)顔をあげてくれない。
僕は彼女の頬にそっと触れて顔を持ち上げた。
「ちょ・・・・・・・・」
そして目があった時、キスをした。
ただ、唇と唇を合わせるだけのキス。それだけでも僕の心を満たしてくれた。
唇を離すと少し彼女は呆然としていたがクスクスと笑った。
「ちょっと・・・責任、とってよ?」
「え・・・もしかして初めて・・・でした?」
「違うけど。けど、私、本気にするから」
「え。はい、してください」
僕が答えると彼女はまた顔を赤くした。
「え、待ってください。明日香さんから言ったのに…顔あげてくださいよ」
彼女は首を横に振り小さな声で
「あっち行ってて」
と言った。
なんだか僕まで恥ずかしくなって笑うことしか出来なかった。
「わら・・・わないで!」
「ごめんなさい。明日香さんなんか可愛すぎます」
そう言うと彼女はすごい早さでこっちを見た。目を丸くしている。
そんな彼女に僕はまたキスをする。
今度は長い、長いキスだった。
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