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悪魔
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「ナタリー様、、それは一体?」
フローラが怯えながらではあるが、私を心配し側へとやって来る。
しかし彼女の視線は私では無くカイエンと呼ばれた小さな男に釘付けだった。
カイエンは歳の頃は20代そこそこといった所だろうか?黒く短い髪にルビーの様に深い美しい赤色の瞳をした俗に言うイケメンである。
顔も小さく八頭身なのだが、しかし残念な事に体長は30㎝程しかないのだ。
「これは悪魔よ。」
「悪魔!?」
フローラは驚きそのまま固まってしまった。
「アルベルト様、これが私の成長が遅れている原因です。」
アルベルト様はしばらく呆けていたが、痛たたたと言いながら身体を起こし、こちらを睨みつけた。
マリアさんは馬から何とか1人で降りると、アルベルト様の横へ辿り着き彼を支えるように寄り添った。
「お前、悪魔を使役していたのか!?そのような事がバレればお前1人の首だけでは済まないぞ!!」
アルベルト様が鬼の首でも取ったかのような顔をして私を責め立ててくる。
「そうですね。ですので今まで悪魔の存在をひた隠しにして参りました。しかしそれももう無意味な事です。お父様とお母様は逃げ遅れた領地の人達と共に残ると決め、船には乗りませんでした。生きているかどうか、、、。」
そう言うと私はアルベルト様を睨みつけた。
「なっ、何だその目は!!!」
「あなたは私が人質として魔物達の元へ行くのを忘れたのですか!!今私を殺せば、魔物達はどう思うでしょう?人質として送るはずだった人間を、国をまとめようとしている王の息子が殺した、、この事実を魔物達はどう取るでしょう?」
私の質問にアルベルト様は瞠目した。彼は本当に何も考えず、ただ私に腹が立ったと言う理由だけで殺そうとしたらしい。そう思うと何だか情けなく、そして心底悲しかった。
「私は、、、」
困惑した様子のアルベルト様をマリアさんが後ろから優しく支え、惑わされてはいけませんと声をかけている。
「マリアさん、あなたが魔法の力で人々の心を手中に収めていくのをずっと見逃して参りした。しかしアルベルト様が人質という価値を持った私を殺そうとした事で私も目が覚めました。」
私の言葉にマリアさんは顔色を悪くした。アルベルト様は何の事だと私を睨みつける。
「何のこと!そうやってすぐ私に言いがかりを付けないで!!」
「アルベルト様はこれから人々の未来を背負っていくお方です。出来れば自らの力で魅了の魔法を打ち破って欲しかった、、いや、、それほどにマリアさんの事を愛していたのでしょうけど、、。」
涙が溢れそうなのを必死で我慢し、強い口調でカイエンに命令した。
「カイエン、、アルベルト様にかけられた魅了の魔法を取り払って。そしてマリアさんにその魔法を使えなくして頂戴。」
カイエンは私の肩に座ったままゆったりと足を組み、私の頬を指先でつついた。
「お願いするなら、お前の目玉なり耳なり何かくれよ。タダで使おうなど厚かましいぞ!」
その言葉に私は激高した。
「あなた何年も何年も我が家で食っちゃ寝食っちゃ寝しておいて、しかも私の魔力を好き放題吸って!それなのに今まで私は何のお願いもしなかったのよ!これぐらい叶えなさいよ!!!」
あまりの剣幕で怒られ、カイエンは冷や汗をかきながら私の肩から離れた。
「おー怖えー、、これだから人間の女は厄介なんだよ。すぐ怒るし、あぁ、ナタリー、今日は股から血が出る日か?」
「うるさーい!!!!そんな露骨な言い方やめなさいよ!!!」
恥ずかしげもなくそんな事を言うカイエンを真っ赤な顔で睨みつける。見た目は幼女の様な幼さを残した私だが、ツリ目に美人というこの容姿は怒ると迫力があるのだ。
「はいはい分かったよ。たまには働きますよ!マリアだっけ?」
カイエンに名前を呼ばれマリアさんの肩がビクリと震えた。
「お前に恨みはないんだけど、ご主人様の命令だからな。ヨイショっと。」
そう言って背伸びをするとカイエンは180cmを超える長身の若者へと変化した。これが本来の彼の姿である。
無駄に見栄えが良い上に露出の高い服を着たカイエンを、マリアさんは頬を染めながら見つめていた。
「えーっと封じ魔法だな、、」
カイエンは古い記憶を思い出すように目を閉じた後、右手の人差し指を高く上げ、マリアさんに振り下ろした。指先から溢れ出した光がマリアさんの周りをキラキラとまとわり付き、そしてその光ににつられるように彼女の中からも光が溢れ出した。
「何これ、、」
マリアさんはその光景を呆然と眺めていたが、私はそこまで見届けると踵を返し船の方へと歩き始めた。
「ナタリー様、最後まで見届けなくてよろしいのですか?」
フローラが私の横に寄り添いそう聞いてきたが、私は振り返りもせずに頷いた。
「良いの。確かにアルベルト様は魅了の魔法にかかっていたけれど、あれは気持ちを増長させるものであって、無い気持ちを発生させるものでは無いの。要するにアルベルト様はマリアさんを心から愛していたのよ。私がマリアさんの魅了の魔法を封じるのは、アルベルト様が冷静な気持ちでマリアさんと向き合って、彼女と良い国をこれから作って欲しい、、そう思ったから。あとは2人で考えれば良いわ、、」
「ナタリー様、、」
フローラが瞳に涙を溜めながら私を見つめた。
「行きましょう。私達には私達の任務があるわ。」
私が微笑むとフローラも微笑んだ。その拍子に溢れた彼女の美しい涙を私は生涯忘れはしないだろう。
「ナタリー嬢、、」
船へと足を運ぶ私を次に引き止めたのはミカエル様だった。
彼の方を見ると片膝を地面につきこちらを見上げている。
「ミカエル様どうしたのですか!?」
「ナタリー嬢、、いえ、ナタリー様、私はあなたの良くない噂を鵜呑みにし、あなたをバカにしていました。」
ミカエル様の唐突な告白に私は息を飲んだ。バカにしていたと言われれば何と返して良いか分からない。私は彼の次の言葉を待つしかなかった。
「しかし先程のやり取りを聞き、それは間違いだと分かりました。私、ミカエルはナタリー様を命の限り守る事をここに誓います。」
彼はそう言うと私の手を取り、手の甲にキスを落とした。その仰々しい行いは、アルベルト様達に見せつけているようにも感じられた。
「、、ありがとうございます。私、ミカエル様に悪魔を使役していた事がバレればもう口も聞いて貰えないかと思っていました。」
私は頬を染めながら正直な気持ちを彼に話してみた。私の瞳は、彼の美しい青く澄んだ瞳に捕まってしまう。
「今の発言を聞けばナタリー様が私利私欲の為に悪魔を使っていなかった事は明白です。大方その悪魔に騙されて無理矢理契約を結ばされたのでしょう?」
「おい!そこの男、推測でモノを言うな!俺が騙したなどと証拠でもあるのか?」
仕事を終えいつの間にか戻って来ていたのだろう。元の小さい姿になったカイエンが私の肩で怒っている。私はそんなカイエンの額にデコピンを食らわした。
「偉そうに言わない!その通りでしょうが!!」
「痛い!!ナタリー、お前今日は横暴だぞ!一仕事終えた後なんだから俺を少しは労われ!!」
カイエンが耳元で喚き散らすので私は頭がズキズキと痛み始めていた。
「たまに仕事をしたと思ったら偉そうにするのね。まぁ良いは、ありがとう。無事に済んだの?」
「当たり前だ。俺を誰だと思ってるんだ。」
私達はそんな話しをしながら船へと乗り込んだ。遠くでアルベルト様が何か叫んでいたが、無視する事にした。
「ナタリー様よろしいのですか?」
「えぇ。彼にもう伝えたい事はないわ。最後に言いたい事が言えて良かった。」
私の言葉が聞こえたのかどうかは分からないが、私達を送り届けてくれる漁師の皆がイカリを引き上げ帆を張った。
「さようなら、、アルベルト様。」
私の声は海風にかき消された。
フローラが怯えながらではあるが、私を心配し側へとやって来る。
しかし彼女の視線は私では無くカイエンと呼ばれた小さな男に釘付けだった。
カイエンは歳の頃は20代そこそこといった所だろうか?黒く短い髪にルビーの様に深い美しい赤色の瞳をした俗に言うイケメンである。
顔も小さく八頭身なのだが、しかし残念な事に体長は30㎝程しかないのだ。
「これは悪魔よ。」
「悪魔!?」
フローラは驚きそのまま固まってしまった。
「アルベルト様、これが私の成長が遅れている原因です。」
アルベルト様はしばらく呆けていたが、痛たたたと言いながら身体を起こし、こちらを睨みつけた。
マリアさんは馬から何とか1人で降りると、アルベルト様の横へ辿り着き彼を支えるように寄り添った。
「お前、悪魔を使役していたのか!?そのような事がバレればお前1人の首だけでは済まないぞ!!」
アルベルト様が鬼の首でも取ったかのような顔をして私を責め立ててくる。
「そうですね。ですので今まで悪魔の存在をひた隠しにして参りました。しかしそれももう無意味な事です。お父様とお母様は逃げ遅れた領地の人達と共に残ると決め、船には乗りませんでした。生きているかどうか、、、。」
そう言うと私はアルベルト様を睨みつけた。
「なっ、何だその目は!!!」
「あなたは私が人質として魔物達の元へ行くのを忘れたのですか!!今私を殺せば、魔物達はどう思うでしょう?人質として送るはずだった人間を、国をまとめようとしている王の息子が殺した、、この事実を魔物達はどう取るでしょう?」
私の質問にアルベルト様は瞠目した。彼は本当に何も考えず、ただ私に腹が立ったと言う理由だけで殺そうとしたらしい。そう思うと何だか情けなく、そして心底悲しかった。
「私は、、、」
困惑した様子のアルベルト様をマリアさんが後ろから優しく支え、惑わされてはいけませんと声をかけている。
「マリアさん、あなたが魔法の力で人々の心を手中に収めていくのをずっと見逃して参りした。しかしアルベルト様が人質という価値を持った私を殺そうとした事で私も目が覚めました。」
私の言葉にマリアさんは顔色を悪くした。アルベルト様は何の事だと私を睨みつける。
「何のこと!そうやってすぐ私に言いがかりを付けないで!!」
「アルベルト様はこれから人々の未来を背負っていくお方です。出来れば自らの力で魅了の魔法を打ち破って欲しかった、、いや、、それほどにマリアさんの事を愛していたのでしょうけど、、。」
涙が溢れそうなのを必死で我慢し、強い口調でカイエンに命令した。
「カイエン、、アルベルト様にかけられた魅了の魔法を取り払って。そしてマリアさんにその魔法を使えなくして頂戴。」
カイエンは私の肩に座ったままゆったりと足を組み、私の頬を指先でつついた。
「お願いするなら、お前の目玉なり耳なり何かくれよ。タダで使おうなど厚かましいぞ!」
その言葉に私は激高した。
「あなた何年も何年も我が家で食っちゃ寝食っちゃ寝しておいて、しかも私の魔力を好き放題吸って!それなのに今まで私は何のお願いもしなかったのよ!これぐらい叶えなさいよ!!!」
あまりの剣幕で怒られ、カイエンは冷や汗をかきながら私の肩から離れた。
「おー怖えー、、これだから人間の女は厄介なんだよ。すぐ怒るし、あぁ、ナタリー、今日は股から血が出る日か?」
「うるさーい!!!!そんな露骨な言い方やめなさいよ!!!」
恥ずかしげもなくそんな事を言うカイエンを真っ赤な顔で睨みつける。見た目は幼女の様な幼さを残した私だが、ツリ目に美人というこの容姿は怒ると迫力があるのだ。
「はいはい分かったよ。たまには働きますよ!マリアだっけ?」
カイエンに名前を呼ばれマリアさんの肩がビクリと震えた。
「お前に恨みはないんだけど、ご主人様の命令だからな。ヨイショっと。」
そう言って背伸びをするとカイエンは180cmを超える長身の若者へと変化した。これが本来の彼の姿である。
無駄に見栄えが良い上に露出の高い服を着たカイエンを、マリアさんは頬を染めながら見つめていた。
「えーっと封じ魔法だな、、」
カイエンは古い記憶を思い出すように目を閉じた後、右手の人差し指を高く上げ、マリアさんに振り下ろした。指先から溢れ出した光がマリアさんの周りをキラキラとまとわり付き、そしてその光ににつられるように彼女の中からも光が溢れ出した。
「何これ、、」
マリアさんはその光景を呆然と眺めていたが、私はそこまで見届けると踵を返し船の方へと歩き始めた。
「ナタリー様、最後まで見届けなくてよろしいのですか?」
フローラが私の横に寄り添いそう聞いてきたが、私は振り返りもせずに頷いた。
「良いの。確かにアルベルト様は魅了の魔法にかかっていたけれど、あれは気持ちを増長させるものであって、無い気持ちを発生させるものでは無いの。要するにアルベルト様はマリアさんを心から愛していたのよ。私がマリアさんの魅了の魔法を封じるのは、アルベルト様が冷静な気持ちでマリアさんと向き合って、彼女と良い国をこれから作って欲しい、、そう思ったから。あとは2人で考えれば良いわ、、」
「ナタリー様、、」
フローラが瞳に涙を溜めながら私を見つめた。
「行きましょう。私達には私達の任務があるわ。」
私が微笑むとフローラも微笑んだ。その拍子に溢れた彼女の美しい涙を私は生涯忘れはしないだろう。
「ナタリー嬢、、」
船へと足を運ぶ私を次に引き止めたのはミカエル様だった。
彼の方を見ると片膝を地面につきこちらを見上げている。
「ミカエル様どうしたのですか!?」
「ナタリー嬢、、いえ、ナタリー様、私はあなたの良くない噂を鵜呑みにし、あなたをバカにしていました。」
ミカエル様の唐突な告白に私は息を飲んだ。バカにしていたと言われれば何と返して良いか分からない。私は彼の次の言葉を待つしかなかった。
「しかし先程のやり取りを聞き、それは間違いだと分かりました。私、ミカエルはナタリー様を命の限り守る事をここに誓います。」
彼はそう言うと私の手を取り、手の甲にキスを落とした。その仰々しい行いは、アルベルト様達に見せつけているようにも感じられた。
「、、ありがとうございます。私、ミカエル様に悪魔を使役していた事がバレればもう口も聞いて貰えないかと思っていました。」
私は頬を染めながら正直な気持ちを彼に話してみた。私の瞳は、彼の美しい青く澄んだ瞳に捕まってしまう。
「今の発言を聞けばナタリー様が私利私欲の為に悪魔を使っていなかった事は明白です。大方その悪魔に騙されて無理矢理契約を結ばされたのでしょう?」
「おい!そこの男、推測でモノを言うな!俺が騙したなどと証拠でもあるのか?」
仕事を終えいつの間にか戻って来ていたのだろう。元の小さい姿になったカイエンが私の肩で怒っている。私はそんなカイエンの額にデコピンを食らわした。
「偉そうに言わない!その通りでしょうが!!」
「痛い!!ナタリー、お前今日は横暴だぞ!一仕事終えた後なんだから俺を少しは労われ!!」
カイエンが耳元で喚き散らすので私は頭がズキズキと痛み始めていた。
「たまに仕事をしたと思ったら偉そうにするのね。まぁ良いは、ありがとう。無事に済んだの?」
「当たり前だ。俺を誰だと思ってるんだ。」
私達はそんな話しをしながら船へと乗り込んだ。遠くでアルベルト様が何か叫んでいたが、無視する事にした。
「ナタリー様よろしいのですか?」
「えぇ。彼にもう伝えたい事はないわ。最後に言いたい事が言えて良かった。」
私の言葉が聞こえたのかどうかは分からないが、私達を送り届けてくれる漁師の皆がイカリを引き上げ帆を張った。
「さようなら、、アルベルト様。」
私の声は海風にかき消された。
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