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家出日記
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憂鬱な日。学生の僕の中ではテスト返却。
そんなもの憂鬱でもなんでもないと思う人もいるだろう。でも、僕には違った。
家を飛び出した、、
事の発端は勿論テストだ。学年最後のテストだから良い成績を残すと豪語した僕。結果は惨敗だった。今までとった事のない点数だった。自分ではさぼったつもりは微塵もない。肩を落とし、落胆した。ひどく重い足取りで家に帰った。親が帰るまでには時間がある。言い訳を考えることに必死になっていた。側から見れば、さぞかし哀れだっただろう。だが、そんな事僕には関係ない。何が優先されるべきか、頭では分かっている。
しかし、学生が持つ「俺はやったんだぜ~」的な根拠なんてどこにもないゴミみたいなプライドが邪魔をする。時はあっという間に流れ、ドアが開いた。親が帰ってきた。まずは、母だ。
帰ってくるなり、テストの出来が悪いことを僕の顔を遠目に見て察したようだ。
僕は澄ました顔でかっこつけて言う。
「テストやばいわ。」
これを聞いた母は、「ふーん。」とギリギリ聞き取れるぐらいの声量で呟く。完全に呆気に取られた。予想外だ。計画ではここで食いつかせて言い訳をする予定だった。ここで気付いた。母は自分よりも何枚も上手であることに。その後の会話は一切なかった。
湯船に浸かり次の作戦を考えた。そう、父が帰ってくるのだ。何よりも厄介な相手だ。
「よし、これでいこう。」
そう言って風呂を上がった。
しばらくして、父が帰ってきた。口を開いて喋ろうとした瞬間、耳に入ってきたものがあった。父の声だ。
「テスト悪かったんだな。」これまた予想外である。自分の思考回路をフル回転させて考えた。なぜ知っているんだ。
母だ、母の存在を忘れていた。ボスをどう倒すかを考えているばかりに、無防備になった背中から、ドンッと攻撃を喰らってしまった。こうなったら、ライオンに捕まったシマウマも同然。身動きを取ることは不可能だ。夕食を終えた父に呼び出されている。母は、台所で洗い物をしている。ぼくは説教を受けた。
テストよりも態度のことを言われた。
反論の隙を伺いながら、黙って耐えた。
怒りの波が治り、これをチャンスと見て、すかさず口を開いた。
「まぁ、今回は仕方ない。難しかったもん。」
この一言がまずかった。
父は見ていて新聞から目を離した、こちらを見た。そして、大きな大きな波が僕を飲み込んだ。そこからは言わなくても分かるだろう。僕が負けた。折れた、最初から勝ち目なんてなかったんだ。
「1人じゃ何も出来ないんだから威張るな。」この父が放った的の真ん中を射た
ような正確な言葉に、僕のプライドは酷く傷ついた。と、同時にやってやるよと、どこか強気の自分がいる。出来ない事は分かっている。上着を着て、財布とスマホをカバンに入れ、家を出た。
今日は家に帰らないと心に決めていたが、歩いている内にあることに気付いた。何をしていいかわからない。そもそも、家出なんて不慣れである。やり方のマニュアルなんてどこにもない。突きつけられた現実の中の自分はあまりにもちっぽけで惨めだった。一歩を踏み出すたびにどんどんそれが分かった来る。着ている服も、持ってるスマホも、財布も、その中のお金も自力で得たものなんて、何もない、あるのは劣等感だけだった。冬の終わりかけの寒さが追い打ちをかける。そう、結局何も出来ない。裸になって家を飛び出せなかった時点で負けは確定していた。
1日に2度負けた。勝てないことを悟った日。空に煌めく星は何を意味するのかを理解するには僕には早すぎた。
そんなもの憂鬱でもなんでもないと思う人もいるだろう。でも、僕には違った。
家を飛び出した、、
事の発端は勿論テストだ。学年最後のテストだから良い成績を残すと豪語した僕。結果は惨敗だった。今までとった事のない点数だった。自分ではさぼったつもりは微塵もない。肩を落とし、落胆した。ひどく重い足取りで家に帰った。親が帰るまでには時間がある。言い訳を考えることに必死になっていた。側から見れば、さぞかし哀れだっただろう。だが、そんな事僕には関係ない。何が優先されるべきか、頭では分かっている。
しかし、学生が持つ「俺はやったんだぜ~」的な根拠なんてどこにもないゴミみたいなプライドが邪魔をする。時はあっという間に流れ、ドアが開いた。親が帰ってきた。まずは、母だ。
帰ってくるなり、テストの出来が悪いことを僕の顔を遠目に見て察したようだ。
僕は澄ました顔でかっこつけて言う。
「テストやばいわ。」
これを聞いた母は、「ふーん。」とギリギリ聞き取れるぐらいの声量で呟く。完全に呆気に取られた。予想外だ。計画ではここで食いつかせて言い訳をする予定だった。ここで気付いた。母は自分よりも何枚も上手であることに。その後の会話は一切なかった。
湯船に浸かり次の作戦を考えた。そう、父が帰ってくるのだ。何よりも厄介な相手だ。
「よし、これでいこう。」
そう言って風呂を上がった。
しばらくして、父が帰ってきた。口を開いて喋ろうとした瞬間、耳に入ってきたものがあった。父の声だ。
「テスト悪かったんだな。」これまた予想外である。自分の思考回路をフル回転させて考えた。なぜ知っているんだ。
母だ、母の存在を忘れていた。ボスをどう倒すかを考えているばかりに、無防備になった背中から、ドンッと攻撃を喰らってしまった。こうなったら、ライオンに捕まったシマウマも同然。身動きを取ることは不可能だ。夕食を終えた父に呼び出されている。母は、台所で洗い物をしている。ぼくは説教を受けた。
テストよりも態度のことを言われた。
反論の隙を伺いながら、黙って耐えた。
怒りの波が治り、これをチャンスと見て、すかさず口を開いた。
「まぁ、今回は仕方ない。難しかったもん。」
この一言がまずかった。
父は見ていて新聞から目を離した、こちらを見た。そして、大きな大きな波が僕を飲み込んだ。そこからは言わなくても分かるだろう。僕が負けた。折れた、最初から勝ち目なんてなかったんだ。
「1人じゃ何も出来ないんだから威張るな。」この父が放った的の真ん中を射た
ような正確な言葉に、僕のプライドは酷く傷ついた。と、同時にやってやるよと、どこか強気の自分がいる。出来ない事は分かっている。上着を着て、財布とスマホをカバンに入れ、家を出た。
今日は家に帰らないと心に決めていたが、歩いている内にあることに気付いた。何をしていいかわからない。そもそも、家出なんて不慣れである。やり方のマニュアルなんてどこにもない。突きつけられた現実の中の自分はあまりにもちっぽけで惨めだった。一歩を踏み出すたびにどんどんそれが分かった来る。着ている服も、持ってるスマホも、財布も、その中のお金も自力で得たものなんて、何もない、あるのは劣等感だけだった。冬の終わりかけの寒さが追い打ちをかける。そう、結局何も出来ない。裸になって家を飛び出せなかった時点で負けは確定していた。
1日に2度負けた。勝てないことを悟った日。空に煌めく星は何を意味するのかを理解するには僕には早すぎた。
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