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第三十話 確認者を消す理由
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会議に、
俺の席はなかった。
正確に言えば、
席はある。
だが、
名札がない。
端の椅子。
「本日の議題は、
確認者制度の是非について」
管理局長が、
淡々と告げる。
視線は、
俺を避けている。
「確認者は、
判断を行わない」
「しかし、
判断に影響を与える」
一人の官僚が言う。
「これは、
責任の所在を
曖昧にします」
別の声。
「現場が、
“勇者の顔色”を
窺い始めている」
それは、
事実だ。
俺は、
口を開かない。
弁明すれば、
役割を
主張することになる。
王女が、
静かに言った。
「確認者は、
制度ではありません」
「移行期の、
措置です」
「では、
終わりはいつですか」
鋭い問い。
王女は、
少しだけ
間を置く。
「……終わりは、
必要なくなったときです」
曖昧だ。
だから、
嫌われる。
「提案があります」
管理局長が言う。
「勇者レインを、
地方巡察へ」
「中央から、
切り離す」
追放。
その言葉は、
使われない。
だが、
意味は同じだ。
王女は、
即答しない。
俺は、
立ち上がる。
「構わない」
全員が、
こちらを見る。
「俺は、
中央に
いる理由がない」
「確認は、
現場でできる」
それで、
十分だ。
王女が、
目を伏せる。
「……分かりました」
決定だ。
会議は、
それで終わった。
夜、
久しぶりに
魔王の声が
重かった。
「ついに、
始まった」
「何がだ」
「終わりの準備が」
俺は、
歩きながら聞く。
「世界の?」
「君の居場所の」
言い方が、
正確すぎる。
「兆しが、
出ている」
「各地で、
小さな歪みが
同時に起きている」
「魔物でも、
災害でもない」
「“判断の遅れ”だ」
心当たりが、
ありすぎた。
「制度が、
自分で考え始めた」
「だが、
まだ弱い」
魔王は、
淡々と続ける。
「君が、
中央から消えれば、
露呈する」
「それが、
破綻か、
成長か」
地方巡察の準備は、
早かった。
剣は、
持たない。
書類も、
最小限。
王女が、
見送りに来る。
「……戻る場所は」
「必要になったら」
それでいい。
「勇者殿」
彼女は、
珍しく
個人的な声で言う。
「あなたは、
消されつつあります」
「分かってる」
「それでも、
進みますか」
俺は、
頷く。
「消え方を、
間違えなければ」
馬車が、
動き出す。
王都が、
遠ざかる。
英雄の席も、
権限も、
後ろに残る。
世界は救えない。
だが、
世界が
自分で考える瞬間に、
立ち会うことはできる。
俺の席はなかった。
正確に言えば、
席はある。
だが、
名札がない。
端の椅子。
「本日の議題は、
確認者制度の是非について」
管理局長が、
淡々と告げる。
視線は、
俺を避けている。
「確認者は、
判断を行わない」
「しかし、
判断に影響を与える」
一人の官僚が言う。
「これは、
責任の所在を
曖昧にします」
別の声。
「現場が、
“勇者の顔色”を
窺い始めている」
それは、
事実だ。
俺は、
口を開かない。
弁明すれば、
役割を
主張することになる。
王女が、
静かに言った。
「確認者は、
制度ではありません」
「移行期の、
措置です」
「では、
終わりはいつですか」
鋭い問い。
王女は、
少しだけ
間を置く。
「……終わりは、
必要なくなったときです」
曖昧だ。
だから、
嫌われる。
「提案があります」
管理局長が言う。
「勇者レインを、
地方巡察へ」
「中央から、
切り離す」
追放。
その言葉は、
使われない。
だが、
意味は同じだ。
王女は、
即答しない。
俺は、
立ち上がる。
「構わない」
全員が、
こちらを見る。
「俺は、
中央に
いる理由がない」
「確認は、
現場でできる」
それで、
十分だ。
王女が、
目を伏せる。
「……分かりました」
決定だ。
会議は、
それで終わった。
夜、
久しぶりに
魔王の声が
重かった。
「ついに、
始まった」
「何がだ」
「終わりの準備が」
俺は、
歩きながら聞く。
「世界の?」
「君の居場所の」
言い方が、
正確すぎる。
「兆しが、
出ている」
「各地で、
小さな歪みが
同時に起きている」
「魔物でも、
災害でもない」
「“判断の遅れ”だ」
心当たりが、
ありすぎた。
「制度が、
自分で考え始めた」
「だが、
まだ弱い」
魔王は、
淡々と続ける。
「君が、
中央から消えれば、
露呈する」
「それが、
破綻か、
成長か」
地方巡察の準備は、
早かった。
剣は、
持たない。
書類も、
最小限。
王女が、
見送りに来る。
「……戻る場所は」
「必要になったら」
それでいい。
「勇者殿」
彼女は、
珍しく
個人的な声で言う。
「あなたは、
消されつつあります」
「分かってる」
「それでも、
進みますか」
俺は、
頷く。
「消え方を、
間違えなければ」
馬車が、
動き出す。
王都が、
遠ざかる。
英雄の席も、
権限も、
後ろに残る。
世界は救えない。
だが、
世界が
自分で考える瞬間に、
立ち会うことはできる。
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完結確約 9話完結です。
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