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冒険者三人との出会い
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まずは街の方角を確認する為に、ルーチェはホワイトライオンもどきの姿に戻り、天高く飛んだ。
この森はかなり広いらしく、歩いて三日。走って一日。飛べばすぐに着きそうだ。しかし、飛んで行くのはすぐに却下した。魔物と間違えられて街の人々と戦闘になりかねないからだ。走っていくのが賢明だろう。
そうと決まれば人間の姿になると、“加速”の言霊を紡ぎ、超特急で走り出す。
走って走って走り続けていると、昼に差しかかった。
「――ん? 何でしょうか、この音は……」
このまま行けば夕方には着きそうだと思った時、微かに戦闘しているような音が聞こえてきた。
無視してもよかったが、後から何かあったと知った時の後味の悪さを思い、とりあえず様子を見に行くことにした。
助けが必要なさそうならそのまま去ればいいし、助けが必要そうならその時介入すればいい。
もう一度“加速”し、音と気配のする方向へ駆け抜ける。
音と気配が近くに迫ってきたので、状況が分かりやすく、かつ、姿を隠せるように“脚力強化”を紡いで木に飛び乗った。木と木を飛んで渡っていき、すぐ傍まで寄ると、やはり戦闘中だった。あれはオーガだ。それも三体。基本的にゴブリン、オーク、オーガ、ウルフ系は束になって行動する。一体いれば他にもいると考えた方がいい。
オーガの相手をしているのは三人の、おそらく冒険者。おそらくがつくのは単に、ルーチェが冒険者を見たことがないからだ。
戦闘の様子から察するに、魔法使い、治癒師、弓使いのパーティのようだった。が。あまりにもバランスが悪い。前衛がいないのだから。状況はかなりよくない。魔法使いは魔力が切れかかっているように見える。治癒師も同様。弓使いの矢は尽きかけている。すぐにでも助けに入った方がよさそうだ。ただし、勝手に手伝うわけにはいかない。ロゴスの話によると、獲物を横取りされたと揉めることがある為、双方の同意が必要だとか。
ルーチェは木から足音なく飛び降り、今度はわざと足音を立てて三人に近寄った。
「あの、助太刀してもよろしいですか?」
叫んではいないのに、この戦闘の最中でもよく通る声でルーチェは確認した。
「助かるわ! って女の子じゃない!?」
と、驚いているのは桃色の髪に空色の瞳を持った、18~9歳くらいの魔法使いの少女。
「ああ? ってガキじゃねぇか!? 引っ込んでろ!」
と、アッシュブロンドの髪に紫色の瞳を持った、17~8歳くらいの弓使いの少年が。
「ちょっと! 何でこんなところにお嬢様みたいなのが一人でいるの!? しかも子どもが! ああ、もう! 僕はまだやれるよ!」
と、癇癪を起しかけているのは14~5歳くらいに見える、金髪にブラウンの瞳を持った治癒師の少年。
共通しているのは、ルーチェを子どもと認識していることと、子どもに助けられるわけにはいかないとやる気を出していること。
仕方がないと言えば、仕方がないのかもしれない。子どもにも見える見た目の、どう見てもお嬢様にしか見えない少女が現れたのだから。
しかし心がけはいいが、実力が伴っていない。現に、まだ大した傷は負わせられていないのだから。
そうこうしている内に、オーガが手に持っている棍棒で、魔法使いの少女に殴りかかろうとしている。
「きゃぁっ!?」
ルーチェは即座に飛び出し、“腕力強化”を紡ぐと片手でオーガ渾身の棍棒を受け止めた。
「…………う、嘘でしょ? こんな女の子が……」
目の前の出来事が受け入れられないのか、魔法使いの少女だけでなく、他の二人の少年も呆然としている。
「ふふ。もう大丈夫ですよ。助太刀しますね」
にっこりと魔法使いの少女に笑み、棍棒を掴みオーガの身体ごと持ち上げ、ぐるぐると回転させると、ぽーいと突っ立っている二体のオーガに向けて放り投げた。
獲物の取り分で揉めたら権利を放棄すればいいのだ。そう決めたルーチェは、起き上がろうとしている三体のオーガを見据えた。
この森はかなり広いらしく、歩いて三日。走って一日。飛べばすぐに着きそうだ。しかし、飛んで行くのはすぐに却下した。魔物と間違えられて街の人々と戦闘になりかねないからだ。走っていくのが賢明だろう。
そうと決まれば人間の姿になると、“加速”の言霊を紡ぎ、超特急で走り出す。
走って走って走り続けていると、昼に差しかかった。
「――ん? 何でしょうか、この音は……」
このまま行けば夕方には着きそうだと思った時、微かに戦闘しているような音が聞こえてきた。
無視してもよかったが、後から何かあったと知った時の後味の悪さを思い、とりあえず様子を見に行くことにした。
助けが必要なさそうならそのまま去ればいいし、助けが必要そうならその時介入すればいい。
もう一度“加速”し、音と気配のする方向へ駆け抜ける。
音と気配が近くに迫ってきたので、状況が分かりやすく、かつ、姿を隠せるように“脚力強化”を紡いで木に飛び乗った。木と木を飛んで渡っていき、すぐ傍まで寄ると、やはり戦闘中だった。あれはオーガだ。それも三体。基本的にゴブリン、オーク、オーガ、ウルフ系は束になって行動する。一体いれば他にもいると考えた方がいい。
オーガの相手をしているのは三人の、おそらく冒険者。おそらくがつくのは単に、ルーチェが冒険者を見たことがないからだ。
戦闘の様子から察するに、魔法使い、治癒師、弓使いのパーティのようだった。が。あまりにもバランスが悪い。前衛がいないのだから。状況はかなりよくない。魔法使いは魔力が切れかかっているように見える。治癒師も同様。弓使いの矢は尽きかけている。すぐにでも助けに入った方がよさそうだ。ただし、勝手に手伝うわけにはいかない。ロゴスの話によると、獲物を横取りされたと揉めることがある為、双方の同意が必要だとか。
ルーチェは木から足音なく飛び降り、今度はわざと足音を立てて三人に近寄った。
「あの、助太刀してもよろしいですか?」
叫んではいないのに、この戦闘の最中でもよく通る声でルーチェは確認した。
「助かるわ! って女の子じゃない!?」
と、驚いているのは桃色の髪に空色の瞳を持った、18~9歳くらいの魔法使いの少女。
「ああ? ってガキじゃねぇか!? 引っ込んでろ!」
と、アッシュブロンドの髪に紫色の瞳を持った、17~8歳くらいの弓使いの少年が。
「ちょっと! 何でこんなところにお嬢様みたいなのが一人でいるの!? しかも子どもが! ああ、もう! 僕はまだやれるよ!」
と、癇癪を起しかけているのは14~5歳くらいに見える、金髪にブラウンの瞳を持った治癒師の少年。
共通しているのは、ルーチェを子どもと認識していることと、子どもに助けられるわけにはいかないとやる気を出していること。
仕方がないと言えば、仕方がないのかもしれない。子どもにも見える見た目の、どう見てもお嬢様にしか見えない少女が現れたのだから。
しかし心がけはいいが、実力が伴っていない。現に、まだ大した傷は負わせられていないのだから。
そうこうしている内に、オーガが手に持っている棍棒で、魔法使いの少女に殴りかかろうとしている。
「きゃぁっ!?」
ルーチェは即座に飛び出し、“腕力強化”を紡ぐと片手でオーガ渾身の棍棒を受け止めた。
「…………う、嘘でしょ? こんな女の子が……」
目の前の出来事が受け入れられないのか、魔法使いの少女だけでなく、他の二人の少年も呆然としている。
「ふふ。もう大丈夫ですよ。助太刀しますね」
にっこりと魔法使いの少女に笑み、棍棒を掴みオーガの身体ごと持ち上げ、ぐるぐると回転させると、ぽーいと突っ立っている二体のオーガに向けて放り投げた。
獲物の取り分で揉めたら権利を放棄すればいいのだ。そう決めたルーチェは、起き上がろうとしている三体のオーガを見据えた。
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