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はじまり
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「可愛いから好きだと思えるものって何?」
小学三年生の佳大(けいた)に聞いてきたのは、近所に住む同級生の晴悠(はゆ)の母親だった。
出会って一年未満だが、頻繁に家を行き来している母親同士、子供同士、一緒の時間を過ごすことが多い。
その理由は「推し活」だ。
母親同士、同じアイドルグループを推しているということを偶然知ることとなり、初対面で意気投合。
子供同士は母親同士の距離が近づくにつれて仲良くなっていった感じだが、佳大は晴悠と仲良くなりたいと、三年生になった時のクラス替え時から何となく思っていたので、幸運に巡り合えたと感じたのだった。
佳大の誕生日が近い。
「可愛いから好きだと思えるものって何?」という質問は、佳大の誕生日プレゼントのヒントになるのだろう。
当時九歳の佳大は冷静に分析していた。
今思えば可愛げのない子供だ。
だからこそ「可愛いから好き」などという質問をされたのかもしれない。
(気づかれていたのかもしれないけど)
「晴悠くんママが好きなエイくんは可愛いと思うよ」
晴悠の母親が推しているグループの最年少、末っ子というポジションの子の名前を答えてみる。
「確かにエイくんは可愛いけど、もう少し近くにいる人とか物とか、そういうのが聞きたいな」
そんな返しをされる始末。
目の前でおやつの手作り焼き菓子を頬張りながら、テレビ画面で流されているライブ映像を見て晴悠が言う。
「ケイくん、エイくんが好きなの!えーヤダ!」
晴悠の母親がすかさず発する。
「えーヤダって晴悠、エイくん嫌い?」
「嫌いじゃないけど、なんかヤダ!」
佳大の母親が言う。
「やきもちかな?晴悠くん。エイくんと晴悠くんって似てる気がするし、同類は拒んじゃうやつかもね」
「やきもちじゃない!」
そんな風に晴悠が答える。
「僕はリーダーが良い!ユキくんがカッコいい!」
晴悠はリーダーをやっている子の名前挙げて、好きだと言う。
「ユキくんは佳大くんに似てるよね、大人びている感じが」
晴悠の母親が言う。
「互いに自分の推しに寄せた子育てしちゃってるのかな?でもONENew(ワニュー)よりもうちの子たちの方がデビューは早いけど!」
「我が子に似た雰囲気の子をたまたま推しちゃっているってこと!」
母親同士が笑い合っている。
「話を戻すけど、佳大くん、どうかな?」
「うーん……晴悠くんママが作ってくれたお菓子の、エイくんのお誕生日に作っていたケーキ?果物いっぱいの。あれは可愛かったよ」
「あぁ、あれ!エイくんのイメージキャラクターを模ったケーキ、あれは可愛かったよね!」
佳大の母親がスマホの画像フォルダから検索して、ケーキの画像を見せてくる。
「佳大くん、気遣ってくれてる?嬉しいけど!」
「ほんとうに可愛いと思ったものしか、可愛いとは言わない」
「やだ、佳大。そんな大人びた発言、どこで覚えてきたのだろう?」
母親の発言を聞きながら、我関せずとおやつを食す、目の前の可愛い子をチラチラと盗み見する。
お世辞は知らない、社交辞令も知らない。
でも、目の前の可愛い子を可愛いと言ってしまうのは良くない。
九歳の未だ乏しい思考でも、それだけはわかる。
(いつかは言うかもしれないし、ずっと言わないかもしれない)
その可愛いと思う気持ちに、特別な名前を付けることを知るのは、もっと先の未来だ。
小学三年生の佳大(けいた)に聞いてきたのは、近所に住む同級生の晴悠(はゆ)の母親だった。
出会って一年未満だが、頻繁に家を行き来している母親同士、子供同士、一緒の時間を過ごすことが多い。
その理由は「推し活」だ。
母親同士、同じアイドルグループを推しているということを偶然知ることとなり、初対面で意気投合。
子供同士は母親同士の距離が近づくにつれて仲良くなっていった感じだが、佳大は晴悠と仲良くなりたいと、三年生になった時のクラス替え時から何となく思っていたので、幸運に巡り合えたと感じたのだった。
佳大の誕生日が近い。
「可愛いから好きだと思えるものって何?」という質問は、佳大の誕生日プレゼントのヒントになるのだろう。
当時九歳の佳大は冷静に分析していた。
今思えば可愛げのない子供だ。
だからこそ「可愛いから好き」などという質問をされたのかもしれない。
(気づかれていたのかもしれないけど)
「晴悠くんママが好きなエイくんは可愛いと思うよ」
晴悠の母親が推しているグループの最年少、末っ子というポジションの子の名前を答えてみる。
「確かにエイくんは可愛いけど、もう少し近くにいる人とか物とか、そういうのが聞きたいな」
そんな返しをされる始末。
目の前でおやつの手作り焼き菓子を頬張りながら、テレビ画面で流されているライブ映像を見て晴悠が言う。
「ケイくん、エイくんが好きなの!えーヤダ!」
晴悠の母親がすかさず発する。
「えーヤダって晴悠、エイくん嫌い?」
「嫌いじゃないけど、なんかヤダ!」
佳大の母親が言う。
「やきもちかな?晴悠くん。エイくんと晴悠くんって似てる気がするし、同類は拒んじゃうやつかもね」
「やきもちじゃない!」
そんな風に晴悠が答える。
「僕はリーダーが良い!ユキくんがカッコいい!」
晴悠はリーダーをやっている子の名前挙げて、好きだと言う。
「ユキくんは佳大くんに似てるよね、大人びている感じが」
晴悠の母親が言う。
「互いに自分の推しに寄せた子育てしちゃってるのかな?でもONENew(ワニュー)よりもうちの子たちの方がデビューは早いけど!」
「我が子に似た雰囲気の子をたまたま推しちゃっているってこと!」
母親同士が笑い合っている。
「話を戻すけど、佳大くん、どうかな?」
「うーん……晴悠くんママが作ってくれたお菓子の、エイくんのお誕生日に作っていたケーキ?果物いっぱいの。あれは可愛かったよ」
「あぁ、あれ!エイくんのイメージキャラクターを模ったケーキ、あれは可愛かったよね!」
佳大の母親がスマホの画像フォルダから検索して、ケーキの画像を見せてくる。
「佳大くん、気遣ってくれてる?嬉しいけど!」
「ほんとうに可愛いと思ったものしか、可愛いとは言わない」
「やだ、佳大。そんな大人びた発言、どこで覚えてきたのだろう?」
母親の発言を聞きながら、我関せずとおやつを食す、目の前の可愛い子をチラチラと盗み見する。
お世辞は知らない、社交辞令も知らない。
でも、目の前の可愛い子を可愛いと言ってしまうのは良くない。
九歳の未だ乏しい思考でも、それだけはわかる。
(いつかは言うかもしれないし、ずっと言わないかもしれない)
その可愛いと思う気持ちに、特別な名前を付けることを知るのは、もっと先の未来だ。
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