10 / 28
2話〜イケメンが俺をストーキングしてくるんだが〜
2-6
しおりを挟む
「……そんで、お前はさっきから何見てんの?」
陽影は目を細め、グラウンドを見つめる。
「羨ましいと思ったんだ」
「羨ましい?」
「俺もあんなふうに、誰からの制限も受けずに外を走り回ってみたい」
「お前もしかして病弱なの? ドクターストップかかってるとか?」
「そういうわけじゃないけど」
陽影は首を横に振った。
「俺の仕事は肌を見せることが多いから、できるだけ体は綺麗にしておく必要があるんだ。ファンデーションで大体は隠せるが、それでも怪我をしないに越したことはない」
「海外ではどうしてたんだ?」
「俺の暮らしてきた国は医療費が高かったから、あまり怪我をしたくなかった」
ワオ、それは何とも現実的な問題ですこと。
「でも、金持ちなんだろ。医療費くらい払えんじゃねえの?」
「そうかもしれない。でも……一番はやっぱり、些細なことで、親の手を煩わせたくなかったのかもしれない。そんなことで怒る人じゃないと分かっていても、それでも嫌なんだ。俺が嫌なんだ」
ああ、何だか、すごく気持ちは分かるなそれ。
俺も同じだ。姉ちゃん達は怒らないし、むしろ心配してくれると分かっているけど、それでも迷惑をかけるのが嫌で、言わないでいることも多々ある。
俺も親の転勤で引越してばかりだったし、こいつと俺、結構似た境遇なのかも。
ま、キャパシティだかケーパビリティだかは全然違うけどな。
陽影は窓を開けた。窓枠に肘を置き頬杖を突き(痛そうだ。数秒ごとに手を組み替えている。馬鹿だ)、生徒達のはしゃぐ様子を聴覚と視覚でもって噛み締めている。
吹き込む風が陽影の前髪を揺らす。滅多に見られない目元が顕になると、いつもの数倍、こいつの顔立ちが幼げに見える。
瞳の色が薄いほど、目に入る光量は多くなるらしい。俺達一般人にとっての普通はこいつにとっての普通ではない。こいつの目には、眼前の光景はどれだけ眩しく、輝かしく映っているんだろう。
「……友達ってのは」
ふと、言葉が口をついて出る。陽影の視線が俺を捉える。
「別に、特別なことはしなくてもいいんじゃねえの。ただ、なんかやりたいことがあったら一緒にやって、楽しんで。たまに喧嘩して、しばらくして仲直りして。そんで……そいつが困ってる時、黙って悩みを聞いてやるとか、何もできなくてもそばにいてやるとか」
照れ臭くなって、俺は笑った。
「そういうのが、俺の理想かな」
陽影もまた、唇の端をゆっくりと上げ、優しく笑う。
「分かった。そうするよ」
出会って半月で、俺達は友達と呼べる仲になった。
陽影は目を細め、グラウンドを見つめる。
「羨ましいと思ったんだ」
「羨ましい?」
「俺もあんなふうに、誰からの制限も受けずに外を走り回ってみたい」
「お前もしかして病弱なの? ドクターストップかかってるとか?」
「そういうわけじゃないけど」
陽影は首を横に振った。
「俺の仕事は肌を見せることが多いから、できるだけ体は綺麗にしておく必要があるんだ。ファンデーションで大体は隠せるが、それでも怪我をしないに越したことはない」
「海外ではどうしてたんだ?」
「俺の暮らしてきた国は医療費が高かったから、あまり怪我をしたくなかった」
ワオ、それは何とも現実的な問題ですこと。
「でも、金持ちなんだろ。医療費くらい払えんじゃねえの?」
「そうかもしれない。でも……一番はやっぱり、些細なことで、親の手を煩わせたくなかったのかもしれない。そんなことで怒る人じゃないと分かっていても、それでも嫌なんだ。俺が嫌なんだ」
ああ、何だか、すごく気持ちは分かるなそれ。
俺も同じだ。姉ちゃん達は怒らないし、むしろ心配してくれると分かっているけど、それでも迷惑をかけるのが嫌で、言わないでいることも多々ある。
俺も親の転勤で引越してばかりだったし、こいつと俺、結構似た境遇なのかも。
ま、キャパシティだかケーパビリティだかは全然違うけどな。
陽影は窓を開けた。窓枠に肘を置き頬杖を突き(痛そうだ。数秒ごとに手を組み替えている。馬鹿だ)、生徒達のはしゃぐ様子を聴覚と視覚でもって噛み締めている。
吹き込む風が陽影の前髪を揺らす。滅多に見られない目元が顕になると、いつもの数倍、こいつの顔立ちが幼げに見える。
瞳の色が薄いほど、目に入る光量は多くなるらしい。俺達一般人にとっての普通はこいつにとっての普通ではない。こいつの目には、眼前の光景はどれだけ眩しく、輝かしく映っているんだろう。
「……友達ってのは」
ふと、言葉が口をついて出る。陽影の視線が俺を捉える。
「別に、特別なことはしなくてもいいんじゃねえの。ただ、なんかやりたいことがあったら一緒にやって、楽しんで。たまに喧嘩して、しばらくして仲直りして。そんで……そいつが困ってる時、黙って悩みを聞いてやるとか、何もできなくてもそばにいてやるとか」
照れ臭くなって、俺は笑った。
「そういうのが、俺の理想かな」
陽影もまた、唇の端をゆっくりと上げ、優しく笑う。
「分かった。そうするよ」
出会って半月で、俺達は友達と呼べる仲になった。
0
あなたにおすすめの小説
[BL]愛を乞うなら君でなければ。
わをん
BL
離婚歴のある子持ち主人公。人生に何の希望もなく日々を消化するかのごとく過ごしていた時に出会ったハウスキーパーの『吉野』。たとえ同性であっても、裏表のない真っ直ぐな言葉を紡ぐ彼に惹かれる気持ちは抑えられない。彼に教わる愛の作法ーー。[子持ちリーマン×新米ハウスキーパー]
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
白花の檻(はっかのおり)
AzureHaru
BL
その世界には、生まれながらに祝福を受けた者がいる。その祝福は人ならざるほどの美貌を与えられる。
その祝福によって、交わるはずのなかった2人の運命が交わり狂っていく。
この出会いは祝福か、或いは呪いか。
受け――リュシアン。
祝福を授かりながらも、決して傲慢ではなく、いつも穏やかに笑っている青年。
柔らかな白銀の髪、淡い光を湛えた瞳。人々が息を呑むほどの美しさを持つ。
攻め――アーヴィス。
リュシアンと同じく祝福を授かる。リュシアン以上に人の域を逸脱した容姿。
黒曜石のような瞳、彫刻のように整った顔立ち。
王国に名を轟かせる貴族であり、数々の功績を誇る英雄。
王弟の恋
結衣可
BL
「狼の護衛騎士は、今日も心配が尽きない」のスピンオフ・ストーリー。
戦時中、アルデンティア王国の王弟レイヴィスは、王直属の黒衣の騎士リアンと共にただ戦の夜に寄り添うことで孤独を癒やしていたが、一度だけ一線を越えてしまう。
しかし、戦が終わり、レイヴィスは国境の共生都市ルーヴェンの領主に任じられる。リアンとはそれきり疎遠になり、外交と再建に明け暮れる日々の中で、彼を思い出すことも減っていった。
そして、3年後――王の密命を帯びて、リアンがルーヴェンを訪れる。
再会の夜、レイヴィスは封じていた想いを揺さぶられ、リアンもまた「任務と心」の狭間で揺れていた。
――立場に縛られた二人の恋の行方は・・・
貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~
倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」
大陸を2つに分けた戦争は終結した。
終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。
一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。
互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。
純愛のお話です。
主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。
全3話完結。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
青龍将軍の新婚生活
蒼井あざらし
BL
犬猿の仲だった青辰国と涼白国は長年の争いに終止符を打ち、友好を結ぶこととなった。その友好の証として、それぞれの国を代表する二人の将軍――青龍将軍と白虎将軍の婚姻話が持ち上がる。
武勇名高い二人の将軍の婚姻は政略結婚であることが火を見るより明らかで、国民の誰もが「国境沿いで睨み合いをしていた将軍同士の結婚など上手くいくはずがない」と心の中では思っていた。
そんな国民たちの心配と期待を背負い、青辰の青龍将軍・星燐は家族に高らかに宣言し母国を旅立った。
「私は……良き伴侶となり幸せな家庭を築いて参ります!」
幼少期から伴侶となる人に尽くしたいという願望を持っていた星燐の願いは叶うのか。
中華風政略結婚ラブコメ。
※他のサイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる