3 / 39
3.嘘。しかし問題はなし
しおりを挟む「ただいま」
公園でたっぷり時間を潰してから家に帰る。
オレを迎えてくれたユキさんは、どこか不機嫌だった。
「希くん……」
「どうしたんですか?」
「実は、晩ご飯を作ろうと思って準備してたんですけど……失敗しちゃいました」
「失敗? ユキさんが?」
ユキさんは紛うことなきドジっ子だが、作る料理はマジで美味い。ユキさんにしては珍しい失敗だ。
「考え事してたら、フライパンをへし曲げちゃって……希くんが帰ってくるまでに作り終えたかったんですけど……ごめんなさい」
しゅん、と肩を落として落胆するユキさん。
「とにかく、少し待ってくださいね。すぐに作ってきますから」
ユキさんはそう言い残し、颯爽とキッチンに去っていく。
ユキさんは変なところでプライドが高いというか、意地っ張りなところがある。そして、自分の仕事に対して完璧主義だ。
ここで下手に慰めの言葉をかけると、ユキさんは意地を張って、余計肩に力を入れ過ぎてしまう。そして今度は本当に大失敗してしまうかもしれない。
こういうときオレは、下手に口出しをせず、満足するまでユキさんの自由にさせている。
リビングで寛いでいると、嬉しそうな顔をしたユキさんが、オレの分の食事を持ってきた。
オレはダイニングに座った。ユキさんはオレの真向かいに座り、テーブルに頬杖をついた。
「美味しいですか?」
「はい」
「よかった。作り直した甲斐がありました」
オレがご飯を食べるのを、嬉しそうに見つめるユキさん。
不意に、その表情が曇る。
「希くん」
「はい」
「あのね、今日学校から連絡があったんです」
あ、やべ。
「ここ最近、希くんが無断欠席を繰り返してるって。だから、親御さんからも何か言ってほしいって言われたんです。私、希くんに何を言えばいいんでしょうか」
「……怒ればいいんじゃないですか」
自分のことながら、他人事な返答。
「怒ることも、もちろん考えました。でも私、怒るっていうよりも、心配の方が大きいんです。何か、学校で嫌なことがあったんじゃないかって、だから学校に行ってないんじゃないかって……心配で」
うわ、ここまで心配されるとは思ってなかった。今更ながら、罪悪感。
何とか言い訳しなければ。
「それは杞憂ですよ、ユキさん」
「え?」
「確かにオレはここ最近学校に行っていない。でもそれは学校が嫌とかではなくて、地球を救う旅をしていたんです」
「地球を、救う旅?」
「話すと長くなりますが、あれはおよそ一ヶ月前のことでした。学校に登校しようとしたオレは、子供達に虐められている亀を見つけたんです」
そう、一ヶ月前のこと。オレは子供に虐められている可愛そうな亀を見つけ、助けたんだ。
亀はオレの強さに大層感激したのか、足元に必死に縋りついてきて、こう言った。
「地球を救えるのはあなたしかいません。どうか、力をお貸しください」
と。
たった今地球には人類滅亡の危機が降りかかっている。
かつて、人類を滅亡の危機に陥れた魔王ゼロアス。勇者によって長い間封印されていた魔王は、今にも長き眠りから目覚めようとしているのである。
ゼロアスはとても強い。よって並の人間では到底倒すことができない。しかし、亀を助けた心優しい青年ならば、魔王を倒すことができるかもしれない。
というわけで、オレは亀のために、ひいては地球を救うために、学校に行く時間を犠牲にして旅に出ていたのだ……というようなことを、長い時間をかけユキさんに説明する。
ここまで言ったことはもちろん全部嘘である。
「そ、それで」
ユキさんはゴクリと唾を飲み込む。
「人類はどうなってしまうんですか? 助かるんですか?」
「それはまだ分かりません。ですが、ゼロアスの勝手にはさせませんよ。オレが必ずや人類を救ってみせます」
「流石希くん。私の自慢の息子なだけあります! 頑張ってください、応援しています!」
「はい、もちろんです」
こうしてオレは、話題を逸らし、楽しい楽しい夕食の時間を手に入れることができたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話
日向汐
BL
「好きです」
「…手離せよ」
「いやだ、」
じっと見つめてくる眼力に気圧される。
ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26)
閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、
一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
短期でサクッと読める完結作です♡
ぜひぜひ
ゆるりとお楽しみください☻*
・───────────・
🧸Twitterもぜひ遊びに来てください🫧
❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21
・───────────・
応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪)
なにとぞ、よしなに♡
・───────────・
【完結】俺とあの人の青い春
月城雪華
BL
高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。
けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。
ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。
けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。
それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。
「大丈夫か?」
涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる