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第3話 胸騒ぎ
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「エルフィナお姉様」
後ろから声がした。
「どうしたの? 目を真っ赤にして」
メアリナだった。
「そんな顔してると、私が何かしたみたいじゃない」
「メアリー……」
「学園でお姉様に話しかけるのなんて、私くらいなんだから」
そっぽを向きながら言う。
「そんな顔するくらいなら、今日は帰れば?」
「だめよ」
エルフィナは首を振った。
「昨日から嫌な予感がするの」
「予感?」
「今日、裏山で野外宿泊訓練でしょ?」
「それが?」
「魔法はダメでも……私の予感は当たるの、
メアリー、知ってるでしょ?」
盗賊の待ち伏せ、崖崩れからの回避。
家族を危機から救ったのは1度や2度では無い。
とくに最近、その頻度も精度も上がっている様だった。
しかし残念な事に、
助けられたと言う思いを、家族は持っていなかった。
無論感謝された事も無い。
「何よ?嫌な予感って?」
メアリナは呆れた。
「お姉様には、
いつも嫌な事ばかり起きてるじゃない……
今更でしょ?」
「私にじゃなくて、貴方によ?
それに学園の皆んなにも……かな?」
「どんな事が起きるっていうのよ?」
「それは……私には分からない……いつもそう……
胸騒ぎがするだけ」
「相変わらず、役に立たない予感ね?」
「フフ……そうね……
でも可愛いメアリーに何か有ったら私……」
「気持ち悪いから、可愛いとか言わないで!」
メアリナは顔を赤くする。
だいたいお姉様が居たって、魔法も使えないのだし……
いくら剣が強くても、魔物とか相手だったら、
お姉様1人じゃどうにも出来ないじゃない?」
そう言いながらも、少しだけ顔を赤く染めるメアリナ。
心の底からエルフィナを嫌っている訳ではない様に見える。
以前アルガルドから聞いていた事を思い出す。
この呪いには、醜く見える他にも、
他人から疎まれる要素も、
付随されているのではないかと。
家族からも、疎まれているとは言え、
食事もちゃんと家族と一緒、服装もまとも……
こうして学園にも普通に通わせて貰っている。
心の底から嫌われているのではない……
呪いがそうさせている……
そう思う事で、何とか心の平静を保っていた。
************************
「創造神様。あの娘、結界が、綻び始めてません?
前世であの娘が得意だった予知能力が、
顕現けんげんし始めていますよ?
それに、神聖魔力も、漏れ出している様な……」
「うむ……そうじゃな……お前も感じるか?」
創造神は言った。
「しかし最近……ではないぞ。
5歳を過ぎた頃から、少しずつ漏れ始めておったのだよ?
わしがあの星を結界で囲ったのも、その為じゃった……」
「そんな前からなのですか?
あの娘が健在だということを、
外の世界に知られない様に……
それであの結界を張ったのですね?」
「そうじゃ。別世界の神々共は、大きな過ちを犯した。
決してやってはいけない事を、やってしまったのだ……
その報いを嫌でも知る事になるじゃろう……」
創造神の声が低く響く。
「そして、その日は、そう遠くはない……という事じゃ……」
************************
「ねえ、お姉様、お弁当は持ってきた?
今日は野外宿泊訓練だから、学内の食堂はお休みよ?」
「知ってるわよ……」
エルフィナは少し困ったように笑った。
「昨日ね、うちの料理長にお弁当を頼んだら、
聞こえないふりをされてね。
〝あっ、もうこんな時間だ!夕食の準備をしなきゃ〟
って言って、逃げちゃったの」
「え……」
「だから仕方なく、朝早く起きて自分で作ったのよ」
そう言って、鞄の中から小さな包みを見せる。
「メアリーは、ちゃんと作ってもらえたんでしょ?」
「うん」
メアリナは少し気まずそうに視線を逸らした。
「でも私、持ってくるの忘れちゃって……
誰か気付いて、持って来てくれないかしら?」
「どうかしらね?」
エルフィナは空を見上げた。
「この時間になっても届かないなら……
気付いてないんじゃない?」
「そっか……」
「ねえ、私の作ったお弁当、食べる?」
「え?良いの?」
メアリナは驚いた顔をした。
「お姉様……公爵家の、お嬢様なのに、
料理得意だったわよね?
普通、公爵令嬢は料理なんてしないわよ?」
「そんなことないわよ」
エルフィナは小さく笑う。
「あっ、でも私にお弁当をくれたら、
お姉様は、お昼どうするの?」
エルフィナは少し胸に手を当てた。
「私は、なんだか……
胸騒ぎとか……色々……
昔のこととか思い出して……食欲ないの……
せっかく作ったのだから、
メアリーが食べてくれたら嬉しいわ」
そう言って弁当を差し出す。
あくまでも妹想い。
いかに疎うとまれようと、メアリナを愛していた。
夜になり、森の広場では、大きな焚き火が燃えていた。
野外宿泊訓練の楽しみ――キャンプファイヤー。
生徒たちは笑い、歌い、
テンションは最高潮に達していた。
だがその外側では――
エルフィナの進言により、
アルガルドが、警備を増やして厳戒態勢を敷いていた。
「警備隊長……」
アルガルドが静かに言う。
「何やら怪しい気配を感じませんかな?
しかも……かなりの数ですぞ」
「そうですか?」
警備隊長は首を傾げた。
「私には何も……」
アルガルドは目が悪い。
だが――
だからこそ、他の者よりも遥かに気配に敏感だった。
そして。
その瞬間だった。
夜空に――
青白い魔法陣が浮かび上がる。
後ろから声がした。
「どうしたの? 目を真っ赤にして」
メアリナだった。
「そんな顔してると、私が何かしたみたいじゃない」
「メアリー……」
「学園でお姉様に話しかけるのなんて、私くらいなんだから」
そっぽを向きながら言う。
「そんな顔するくらいなら、今日は帰れば?」
「だめよ」
エルフィナは首を振った。
「昨日から嫌な予感がするの」
「予感?」
「今日、裏山で野外宿泊訓練でしょ?」
「それが?」
「魔法はダメでも……私の予感は当たるの、
メアリー、知ってるでしょ?」
盗賊の待ち伏せ、崖崩れからの回避。
家族を危機から救ったのは1度や2度では無い。
とくに最近、その頻度も精度も上がっている様だった。
しかし残念な事に、
助けられたと言う思いを、家族は持っていなかった。
無論感謝された事も無い。
「何よ?嫌な予感って?」
メアリナは呆れた。
「お姉様には、
いつも嫌な事ばかり起きてるじゃない……
今更でしょ?」
「私にじゃなくて、貴方によ?
それに学園の皆んなにも……かな?」
「どんな事が起きるっていうのよ?」
「それは……私には分からない……いつもそう……
胸騒ぎがするだけ」
「相変わらず、役に立たない予感ね?」
「フフ……そうね……
でも可愛いメアリーに何か有ったら私……」
「気持ち悪いから、可愛いとか言わないで!」
メアリナは顔を赤くする。
だいたいお姉様が居たって、魔法も使えないのだし……
いくら剣が強くても、魔物とか相手だったら、
お姉様1人じゃどうにも出来ないじゃない?」
そう言いながらも、少しだけ顔を赤く染めるメアリナ。
心の底からエルフィナを嫌っている訳ではない様に見える。
以前アルガルドから聞いていた事を思い出す。
この呪いには、醜く見える他にも、
他人から疎まれる要素も、
付随されているのではないかと。
家族からも、疎まれているとは言え、
食事もちゃんと家族と一緒、服装もまとも……
こうして学園にも普通に通わせて貰っている。
心の底から嫌われているのではない……
呪いがそうさせている……
そう思う事で、何とか心の平静を保っていた。
************************
「創造神様。あの娘、結界が、綻び始めてません?
前世であの娘が得意だった予知能力が、
顕現けんげんし始めていますよ?
それに、神聖魔力も、漏れ出している様な……」
「うむ……そうじゃな……お前も感じるか?」
創造神は言った。
「しかし最近……ではないぞ。
5歳を過ぎた頃から、少しずつ漏れ始めておったのだよ?
わしがあの星を結界で囲ったのも、その為じゃった……」
「そんな前からなのですか?
あの娘が健在だということを、
外の世界に知られない様に……
それであの結界を張ったのですね?」
「そうじゃ。別世界の神々共は、大きな過ちを犯した。
決してやってはいけない事を、やってしまったのだ……
その報いを嫌でも知る事になるじゃろう……」
創造神の声が低く響く。
「そして、その日は、そう遠くはない……という事じゃ……」
************************
「ねえ、お姉様、お弁当は持ってきた?
今日は野外宿泊訓練だから、学内の食堂はお休みよ?」
「知ってるわよ……」
エルフィナは少し困ったように笑った。
「昨日ね、うちの料理長にお弁当を頼んだら、
聞こえないふりをされてね。
〝あっ、もうこんな時間だ!夕食の準備をしなきゃ〟
って言って、逃げちゃったの」
「え……」
「だから仕方なく、朝早く起きて自分で作ったのよ」
そう言って、鞄の中から小さな包みを見せる。
「メアリーは、ちゃんと作ってもらえたんでしょ?」
「うん」
メアリナは少し気まずそうに視線を逸らした。
「でも私、持ってくるの忘れちゃって……
誰か気付いて、持って来てくれないかしら?」
「どうかしらね?」
エルフィナは空を見上げた。
「この時間になっても届かないなら……
気付いてないんじゃない?」
「そっか……」
「ねえ、私の作ったお弁当、食べる?」
「え?良いの?」
メアリナは驚いた顔をした。
「お姉様……公爵家の、お嬢様なのに、
料理得意だったわよね?
普通、公爵令嬢は料理なんてしないわよ?」
「そんなことないわよ」
エルフィナは小さく笑う。
「あっ、でも私にお弁当をくれたら、
お姉様は、お昼どうするの?」
エルフィナは少し胸に手を当てた。
「私は、なんだか……
胸騒ぎとか……色々……
昔のこととか思い出して……食欲ないの……
せっかく作ったのだから、
メアリーが食べてくれたら嬉しいわ」
そう言って弁当を差し出す。
あくまでも妹想い。
いかに疎うとまれようと、メアリナを愛していた。
夜になり、森の広場では、大きな焚き火が燃えていた。
野外宿泊訓練の楽しみ――キャンプファイヤー。
生徒たちは笑い、歌い、
テンションは最高潮に達していた。
だがその外側では――
エルフィナの進言により、
アルガルドが、警備を増やして厳戒態勢を敷いていた。
「警備隊長……」
アルガルドが静かに言う。
「何やら怪しい気配を感じませんかな?
しかも……かなりの数ですぞ」
「そうですか?」
警備隊長は首を傾げた。
「私には何も……」
アルガルドは目が悪い。
だが――
だからこそ、他の者よりも遥かに気配に敏感だった。
そして。
その瞬間だった。
夜空に――
青白い魔法陣が浮かび上がる。
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