アルファが僕を選ばない10の理由

田中 乃那加

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仮想で暴走

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 今夜はやめておこうかと思った配信をつけてみた。

『――今日は声だけでごめんね』

 画面にはそれっぽいバーチャル背景だけにして声はできるだけ抑えておく。
 
【あれ、今日はラジオ配信?】
【どうしたのイオちゃん】
【なんか病んでる?】

 なんて心配するコメントを読みながらは小さく笑いながら。

『ちょっと久しぶりにお姉ちゃんがきてるから』

 と半分嘘を言う。
 この世界は虚構だ。年齢なんてもちろんデタラメだし性別だって偽っている。家庭事情も一人暮らしのフリーターでたまに姉が泊まりにくる設定となっていた。

 もちろん寝室は離れているし大声さえ出さなければそうそう迷惑などかけないだろうが、それでも久しぶりの在宅には気を使ってしまうのが性格なのだろう。

『んとね、なんかイオのところはフクザツな家庭でね』

 ぽつりぽつりと設定内での話していく。
 
『お母さんがいなくてほとんどお姉ちゃんがイオを育ててくれたんだけど』

 その姉が今度、恋人を連れてくるらしいと口にすれば。

【それって結婚ってこと?】

 とコメントが入り、思わずため息をついて。

『だよね、絶対に結婚しちゃうよね……』

 と呻いたらすぐに。

【シスコンwww】
【それはシスコン】
【お姉ちゃん大好きすぎる】
【ママ代わりだったんだもんね】

 のコメントたちにムッと眉を寄せる。

『……シスコンじゃないもん』

 たしかに好きだけどとつぶやいた時だった。

『あ、はじめましてー。ええっとキョンさん?』

 どうやら初めてここに来たらしいリスナーの名前に、イオはきっちり挨拶をする。
 過疎だし初見はそう多くない。
 しかしだいたいはそのままなにもコメント残すことなくスルーでいくだろうが、それでも来てくれたのだから声くらいかけたかったのだ。

 しかし。

『!?!?』

 一瞬で画面上に派手なイラストが表示されその下のテキストに彼のみならず、リスナーたちも息をのむ。

『ちょ、こ、これ……っ、キョンさん……なに!? え、ギフト!? ぜったい高いヤツだよね!?』

【うおおお! ナイスギフト!!】
【初見?】
【うそだろ……】
【やば】

 どうやら数万もするギフトらしい。しかも普通なら初見リスナーが来て数秒で投げるものではない。

『ちょ、ちょ、待って! キョンさん!? こんな高いギフトあ、ありがとう……でも、そんな……』

 無料ギフトさえ投げなくてもいいと公言してるものだから、いきなり高額ギフト投げられて困惑しないはずはない。

 だがまた次の瞬間。

『いやいやいっ、もういい! もういいから!!』

【うぎゃぁぁ!】
【また投げた!!】
【あ、それも5万超】

 再び派手に光り踊るイラストにびびりまくりの配信者と他リスナーたち。

『ほんとにっ、ほんとにもうやめよ? お金大事にしようよ……』

【配信者がそれいうwww】
【むしろもっと煽って投げてもらえや】
【キョンがんばれー】
【もっと投げろー】

『みんななに言ってんの! えーっとキョンさん? すっごく嬉しいけどね、あんまりこういうの慣れてないっていうかはじめてで――って、だから投げなくていいってば!!』

 無言でひたすらギフトをなげてくるリスナーを前に彼は頭を抱えるのであった。





 
 






 
 

 
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