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禁忌と狂気の幕間
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――目の前で愛しい我が子の首が落ちた。
『っ、なにを!』
おびただしい血の海の中、まるで眠ったように目を閉じた頭部を腕に抱くことすら許されず絶叫した。
『どうして』
どこで間違ってしまったのだろう。
自問するが答えたはない。
『魔王よ、どうして実の息子を手にかけたんだ! 僕の……僕たちの子なのに』
またあの夢だ。オルニトはそう思った。
傍観者であるはずなのに胸が張り裂けるように痛い。
ふと己の姿に視線を向ければ、その衣服ははだけて力任せに破かれていた。
そして今回、痛みもリアルで。
身体の至る所がじくじくと疼くように痛い。
特に下半身が甘く痺れていた。
『己の妻に乱暴を働いた男を許せと言うのか』
立ちはだかるのは魔王と呼ばれた男。
燃えるような赤い瞳に射抜かれ、息を呑む。
『そ、それは』
そこで無いはずの記憶が蘇る。
実の息子に組み敷かれ力ずくで奪われた。
やめてくれと泣いても叫んでも身体を暴かれる戸惑いと絶望。
――ずっと肉体的成長をしなかった彼の身長が突然伸び始めたのは数ヶ月前のことだ。
あっという間に自分を見下ろすようになったことで、微笑ましさに目を細めていたというのに。
まさかそんな愛息子に襲われるなんて思いもしなかった。
『僕が悪いんだ……きっと……』
実の親で、しかも同性。禁忌の魔法により魔王の子を産んたとはいえ、今やどこからどう見ても男の身体そのものなのだが。
だからきっと親への愛を歪んだものに勘違いしてしまっているのだと、ひたすら彼を諭してきた。
『ずっと忠告してきただろう』
冷たい夫の声に心臓まで凍りつきそうだ。
腕の中の血濡れの頭部は、いまだ体温を失っていないのに。
『今回の事は不問としてやる。それより今度は娘をつくるぞ、娘ならきっとお前に似て可愛いはずだ』
『君は気でも狂ってるのか!? あの子を殺したんだよ? 大事な我が子を』
『やれやれ、まだ分からんか』
魔王は深くため息をつくと、やおらに腕を伸ばしてきた。
痛いほど右腕を捕まれ引かれる。思わず悲鳴をあげるがお構い無しで、そのまま床に倒された。
『な、なにを……っ』
『お前の身体の負担になるかと思ってもう産ませまいと思ったが、その必要はなさそうだな』
『待って! 本当になに言ってるの!?』
おおよそ自分の常識では理解出来ない。
我が子をこの手で殺していて、その血すら乾かぬうちにまた孕まそうとするなんて。
『やめろっ、やだってば』
もちろん必死で抵抗するが、力では到底勝てる相手ではない。
しかも腕には息子の首を抱きかかえているという異常な光景。
――この子だけは落としちゃダメだ。
心が壊れていく。いやもう既に壊れてしまったのかもしれない。
生首に唇をよせながらすすり泣く彼に、容赦なくのしかかる男。
『嗚呼』
軋むほど両脚を広げさせられて陰茎から睾丸、慎ましやかな秘所まで晒される。
『すっかり雄になってしまった』
元はもちろん男である。
しかし半ば強制的に孕すために作り替えられた身体は、雄の象徴であるそこは幼子のモノくらいのサイズにまで縮こまってしまった。
それが時を経て元に戻ったのだ。
今では引き締まって薄く割れた腹筋を撫でられ、びくりと震える。
『またお前を女にできる悦びを噛み締めるとしよう』
『まさか本当に……お願いだからやめてくれ! もうしたくない……赤ちゃん産みたくない』
『駄々をこねるな』
必死に泣きながら訴えても、うっそりと笑う彼に届きはしない。
息子からのレイプでとろみを帯びた白濁とわずかな血が彼の太ももを垂れて汚す。
『まずはヤツのモノを掻き出さねば』
その言葉と同時に指が遠慮なく突き入れられ、色付いたそこをぐちゅぐちゅと犯す。
異物感とはまた別の感覚を拾いかけ、彼は身をよじって抵抗する。
『あっ、ぅ!? ひ、ひぃ、やめ……ぬいてっ』
『暴れるな。足の一本や二本折っても構わないのだぞ』
『い゙っ!』
足を掴む手の力がほんの少し強くなるだけで、恐怖と痛みに歯を鳴らして怯えた。
『そうだ』
魔王は楽しげに顔を歪める。
『足は切断するか』
『せっ……!? 』
本当にやりかねない。いやするだろう、彼はそういう男だ。
人質のような形で結婚して百年あまり。ようやく理解したこと。
魔王の執着を甘く見てはいけない。
従者やメイドたちと親しげに話をしているだけで、あとで仕置きと称して手酷い抱かれ方をしてきたのだ。
息子とはいえ、他の雄に寝盗られた魔王の怒りはどれほどのものか。
考えるだけで恐ろしい。
『怯える顔も愛らしいな』
心底そう思っているのだろう。場にそぐわぬ蕩けるような笑みを浮かべている。
『再びこの腹が膨れる様を見られるとは』
『お願い。他の事ならいくらでもするから……赤ちゃんは……妊娠だけは許して』
無駄だと分かっていても懇願せざるえない。
そもそもこんな状況でのセックスなんて常軌を逸している。
すぐ隣りには血まみれの息子の身体が横たわり、その首を落とすまいと抱く母。そしてそれを蹂躙する父。
『……たすけて』
涙に濡れた瞳は虚ろになっていく。とうに人間としての理を大きく外れたこの身をもってしても、この狂気には耐えられなかった。
『そこで見ていろ、盗人め』
魔王がそう呟く。
そうして色を失った頬にうやうやしいキスを落とし、それと同時に腕の中の生首が小さく身動ぎした。
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