1 / 3
自分のセックスで泣くな
しおりを挟む
「あー」
気まずそうに逸らされた視線にまた傷つく。
これじゃあいっその事、思い切り罵倒されてビンタされた方がマシだった。
「歩夢……」
「わかった、別れよう」
切り出される前にこちらからフッてやる。
僕は努めて抑揚を消した声で言う。
「僕も浮気するカノジョとか嫌だから」
「ハァ!?」
カノジョ、いや元カノがムッとした顔をした。
「こっちのセリフだし。あたしが知らないと思ってバカにしないでよ。歩夢だって他に好きな人いたんでしょ」
もちろんしていない。浮気どころか、そこまで深く付き合った女の子は誰もいない。
でも、いつもこうやってすぐにフられるから。
「くそ……」
結局、ビンタされた。
マシどころか普通に痛いし、周りに人もいたから恥ずかしかったし。何より心が痛かった。
「ひゃあ、痛そうだな」
そんな言葉と共に手が伸びてくる。
「さわんないで」
顔を背けて逃げると目の前に座った高校生のクソガキ、雄太が目を細めて笑っていた。
「手当してやる」
「いいよ、別に」
雄太は僕の弟、でも血は繋がってない。
両親はいわゆる再婚家庭で、半年前に父子家庭だった我が家に来たのが彼と彼の母親。
彼の母、つまり継母は少し天然な所もある可愛らしい女性だ。
この人が僕の母さんになるならいいな、と軽く考えての父の再婚。
もちろんお養母さんは今でも優しい。
むしろ少し優し過ぎるんじゃないかって思うくらいだ。若いし可愛いし明るいし、父さんは本当によくこんないい人と結婚できたと思う。
……でも問題はここから。
「遠慮すんなって」
相変わらずニヤけてる雄太。
こいつがお養母さんの息子だってとても信じられない。それくらいクソガキだった。
「だから近いってば」
まずセクハラがひどい。
最初は単純に懐いてくれてるのかと思って嬉しかったさ。
でもすぐになんか違うとわかった。
なにしろ相手は高校生だぞ。
同性の、しかも血の繋がりはなくても兄である僕の腰やら尻やら胸やらを揉みしだく弟がいてたまるか!
「今回の女は気性が荒いな」
「……」
「別れ際に男をひっぱたくとかゴリラかよ。そんなバカ女、やめて良かっただろ」
「……」
「それにまた浮気されたんだろ。ご愁傷さま」
「……なんで知ってんの」
傷心中の兄を煽りまくるなんて人の心がないのか、このクソガキ。
しかも浮気されたことまで知られてるとか意味わかんない。
でも僕の苛立ちもあっさり流されて。
「いつものことじゃん。それに忘れたのかよ。俺の友達の姉貴が、歩夢と同じ大学だって」
「あっ」
そうだった。しかもこいつ、やたらコミュ強で交友関係広いんだよ。
「俺の監視から逃れられると思うなよ」
だからその監視ってのをやめろ。
過保護だか何だかしらないけど、自分のツテをつかって家族の動向を把握する弟がキモい。
「いい加減やめればいいのに。毎回、ヤることもせずに別れちゃうんだから」
「うるさい」
ヤることもせずに、か。
確かにそうだ。僕は童貞ではないが、二度目をしたことがない。
その一度目がトラウマ級に最悪だったから仕方ないだろ。
「とにかく僕に触るな、あと服やら勝手に持っていくな」
ったく、油断するとすぐに人の衣類やら小物やら持ち出すんだから。
高校生にとって大学生の持ち物ってそんなに憧れるものなんだろうか、大したブランド物持ってないのに。
「はーい」
相変わらず人をバカにしたように笑いながらの間延びした返事。これは絶対にわかってないな。
「じゃあ歩夢のパンツもらっていい?」
「いいわけない」
下着くらい買ってもらって欲しい。というか言わなくても気を回してくれるタイプだろ、養母さんは。
「ほらさっさと行けよ。今日バイトだろ」
「あ、いけね」
面倒になって部屋から追い出しにかかる。
雄太は立ち上がると慌てた様子で部屋を出ていった。
ホッと息をつく。
「ほんとにもう……」
ベタベタ触ってくるんだから。
甘えてきてくれてるとしても何だか気まずいしやめて欲しい。
やんわり言ってきかないからガッツリ態度に表すのに、結局きかないんだよね。
でもこんな事で両親を悩ませたくはないし。
今は向こうも思春期 (?)でやらかしてるだけかもしれない。
まだ家族になって半年、そう半年だ。ゆっくり距離を学んでくれたら――。
「あ」
真面目なことを考えてたのに、なんか変な気分になってきた。
「うーん、久しぶりだしなあ」
カノジョはいたのにそういうことは出来なかったもんな。
仕方ない、と自分に言い訳しながらベッドに座り直す。
「っ、う」
服を汚してしまいたくなくて、しっかりくつろげる。
「ミユちゃん……」
元カノ、じゃなくてその二つほど前の子の顔を思い出したのは単なる偶然だ。
手に触れてキスをして、これは完全にいけるってなると途端にダメになる。
「……ぅ、ぐすっ……うぅ」
まただ。
気持ちよくなってきて息があがるくらいで、なぜか涙腺が弱くなる
つまり気持ちよくなると泣いちゃうんだ、僕は。
なんでこうなるのかわかんない。
傍からみればキスだけで涙目から始まって、セックスするだけで号泣しちゃうなんて女の子がひかないわけがない。
「あっ、ぅ、ん、っ……」
声だって必死にこらえないと出ちゃうし、その間にすすり泣いてるんだから困る。
なんでこんなふうになっちゃうのか僕自身も分からない。
感情がたかぶると涙が出る、みたいな感じなのかも。でもよりによってセックス中にこうなるのは絶対にダメだ。
――はじめての時もそれでドン引きされてその場で逃げられた。
そこから噂に尾びれがついたみたいで、僕が過去の恋人を思い出して最中に号泣してるってことになった。
そこからまず女の子たちには変に慰められるし、噂を否定してもどこか信じてもらえてないし。
よしんば付き合えても、躊躇してたら浮気されて捨てられるの無限ループ。
「ぐすっ……く……ぅ……あ、ぅう、んんぅ……も、やだぁ……」
こうやって泣きながらひとりでするのも、そのたびにいつの間にか胸を弄る癖もやめたい。
やめたい、のに。
「はぁっ……ぁ……ん、ん、ぁっ」
身体の奥が熱い。ムズムズするっていうか、変な感じ。
「くっ……ぁあ、ぁっ」
イくことは出来たけど、なにか物足りない。
まだウズウズするっていうか。落ち着かないのが、なぁ。
「あー」
もう色々とイヤになる。
汚れた手をティッシュでぬぐいながら、大きなため息をついた。
気まずそうに逸らされた視線にまた傷つく。
これじゃあいっその事、思い切り罵倒されてビンタされた方がマシだった。
「歩夢……」
「わかった、別れよう」
切り出される前にこちらからフッてやる。
僕は努めて抑揚を消した声で言う。
「僕も浮気するカノジョとか嫌だから」
「ハァ!?」
カノジョ、いや元カノがムッとした顔をした。
「こっちのセリフだし。あたしが知らないと思ってバカにしないでよ。歩夢だって他に好きな人いたんでしょ」
もちろんしていない。浮気どころか、そこまで深く付き合った女の子は誰もいない。
でも、いつもこうやってすぐにフられるから。
「くそ……」
結局、ビンタされた。
マシどころか普通に痛いし、周りに人もいたから恥ずかしかったし。何より心が痛かった。
「ひゃあ、痛そうだな」
そんな言葉と共に手が伸びてくる。
「さわんないで」
顔を背けて逃げると目の前に座った高校生のクソガキ、雄太が目を細めて笑っていた。
「手当してやる」
「いいよ、別に」
雄太は僕の弟、でも血は繋がってない。
両親はいわゆる再婚家庭で、半年前に父子家庭だった我が家に来たのが彼と彼の母親。
彼の母、つまり継母は少し天然な所もある可愛らしい女性だ。
この人が僕の母さんになるならいいな、と軽く考えての父の再婚。
もちろんお養母さんは今でも優しい。
むしろ少し優し過ぎるんじゃないかって思うくらいだ。若いし可愛いし明るいし、父さんは本当によくこんないい人と結婚できたと思う。
……でも問題はここから。
「遠慮すんなって」
相変わらずニヤけてる雄太。
こいつがお養母さんの息子だってとても信じられない。それくらいクソガキだった。
「だから近いってば」
まずセクハラがひどい。
最初は単純に懐いてくれてるのかと思って嬉しかったさ。
でもすぐになんか違うとわかった。
なにしろ相手は高校生だぞ。
同性の、しかも血の繋がりはなくても兄である僕の腰やら尻やら胸やらを揉みしだく弟がいてたまるか!
「今回の女は気性が荒いな」
「……」
「別れ際に男をひっぱたくとかゴリラかよ。そんなバカ女、やめて良かっただろ」
「……」
「それにまた浮気されたんだろ。ご愁傷さま」
「……なんで知ってんの」
傷心中の兄を煽りまくるなんて人の心がないのか、このクソガキ。
しかも浮気されたことまで知られてるとか意味わかんない。
でも僕の苛立ちもあっさり流されて。
「いつものことじゃん。それに忘れたのかよ。俺の友達の姉貴が、歩夢と同じ大学だって」
「あっ」
そうだった。しかもこいつ、やたらコミュ強で交友関係広いんだよ。
「俺の監視から逃れられると思うなよ」
だからその監視ってのをやめろ。
過保護だか何だかしらないけど、自分のツテをつかって家族の動向を把握する弟がキモい。
「いい加減やめればいいのに。毎回、ヤることもせずに別れちゃうんだから」
「うるさい」
ヤることもせずに、か。
確かにそうだ。僕は童貞ではないが、二度目をしたことがない。
その一度目がトラウマ級に最悪だったから仕方ないだろ。
「とにかく僕に触るな、あと服やら勝手に持っていくな」
ったく、油断するとすぐに人の衣類やら小物やら持ち出すんだから。
高校生にとって大学生の持ち物ってそんなに憧れるものなんだろうか、大したブランド物持ってないのに。
「はーい」
相変わらず人をバカにしたように笑いながらの間延びした返事。これは絶対にわかってないな。
「じゃあ歩夢のパンツもらっていい?」
「いいわけない」
下着くらい買ってもらって欲しい。というか言わなくても気を回してくれるタイプだろ、養母さんは。
「ほらさっさと行けよ。今日バイトだろ」
「あ、いけね」
面倒になって部屋から追い出しにかかる。
雄太は立ち上がると慌てた様子で部屋を出ていった。
ホッと息をつく。
「ほんとにもう……」
ベタベタ触ってくるんだから。
甘えてきてくれてるとしても何だか気まずいしやめて欲しい。
やんわり言ってきかないからガッツリ態度に表すのに、結局きかないんだよね。
でもこんな事で両親を悩ませたくはないし。
今は向こうも思春期 (?)でやらかしてるだけかもしれない。
まだ家族になって半年、そう半年だ。ゆっくり距離を学んでくれたら――。
「あ」
真面目なことを考えてたのに、なんか変な気分になってきた。
「うーん、久しぶりだしなあ」
カノジョはいたのにそういうことは出来なかったもんな。
仕方ない、と自分に言い訳しながらベッドに座り直す。
「っ、う」
服を汚してしまいたくなくて、しっかりくつろげる。
「ミユちゃん……」
元カノ、じゃなくてその二つほど前の子の顔を思い出したのは単なる偶然だ。
手に触れてキスをして、これは完全にいけるってなると途端にダメになる。
「……ぅ、ぐすっ……うぅ」
まただ。
気持ちよくなってきて息があがるくらいで、なぜか涙腺が弱くなる
つまり気持ちよくなると泣いちゃうんだ、僕は。
なんでこうなるのかわかんない。
傍からみればキスだけで涙目から始まって、セックスするだけで号泣しちゃうなんて女の子がひかないわけがない。
「あっ、ぅ、ん、っ……」
声だって必死にこらえないと出ちゃうし、その間にすすり泣いてるんだから困る。
なんでこんなふうになっちゃうのか僕自身も分からない。
感情がたかぶると涙が出る、みたいな感じなのかも。でもよりによってセックス中にこうなるのは絶対にダメだ。
――はじめての時もそれでドン引きされてその場で逃げられた。
そこから噂に尾びれがついたみたいで、僕が過去の恋人を思い出して最中に号泣してるってことになった。
そこからまず女の子たちには変に慰められるし、噂を否定してもどこか信じてもらえてないし。
よしんば付き合えても、躊躇してたら浮気されて捨てられるの無限ループ。
「ぐすっ……く……ぅ……あ、ぅう、んんぅ……も、やだぁ……」
こうやって泣きながらひとりでするのも、そのたびにいつの間にか胸を弄る癖もやめたい。
やめたい、のに。
「はぁっ……ぁ……ん、ん、ぁっ」
身体の奥が熱い。ムズムズするっていうか、変な感じ。
「くっ……ぁあ、ぁっ」
イくことは出来たけど、なにか物足りない。
まだウズウズするっていうか。落ち着かないのが、なぁ。
「あー」
もう色々とイヤになる。
汚れた手をティッシュでぬぐいながら、大きなため息をついた。
39
あなたにおすすめの小説
執着男に勤務先を特定された上に、なんなら後輩として入社して来られちゃった
パイ生地製作委員会
BL
【登場人物】
陰原 月夜(カゲハラ ツキヤ):受け
社会人として気丈に頑張っているが、恋愛面に関しては後ろ暗い過去を持つ。晴陽とは過去に高校で出会い、恋に落ちて付き合っていた。しかし、晴陽からの度重なる縛り付けが苦しくなり、大学入学を機に逃げ、遠距離を理由に自然消滅で晴陽と別れた。
太陽 晴陽(タイヨウ ハルヒ):攻め
明るく元気な性格で、周囲からの人気が高い。しかしその実、月夜との関係を大切にするあまり、執着してしまう面もある。大学卒業後、月夜と同じ会社に入社した。
【あらすじ】
晴陽と月夜は、高校時代に出会い、互いに深い愛情を育んだ。しかし、海が大学進学のため遠くに引っ越すことになり、二人の間には別れが訪れた。遠距離恋愛は困難を伴い、やがて二人は別れることを決断した。
それから数年後、月夜は大学を卒業し、有名企業に就職した。ある日、偶然の再会があった。晴陽が新入社員として月夜の勤務先を訪れ、再び二人の心は交わる。時間が経ち、お互いが成長し変わったことを認識しながらも、彼らの愛は再燃する。しかし、遠距離恋愛の過去の痛みが未だに彼らの心に影を落としていた。
更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です
X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl
制作秘話ブログ: https://piedough.fanbox.cc/
メッセージもらえると泣いて喜びます:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion
学園の卒業パーティーで卒業生全員の筆下ろしを終わらせるまで帰れない保険医
ミクリ21
BL
学園の卒業パーティーで、卒業生達の筆下ろしをすることになった保険医の話。
筆下ろしが終わるまで、保険医は帰れません。
俺の指をちゅぱちゅぱする癖が治っていない幼馴染
海野
BL
唯(ゆい)には幼いころから治らない癖がある。それは寝ている間無意識に幼馴染である相馬の指をくわえるというものだ。相馬(そうま)はいつしかそんな唯に自分から指を差し出し、興奮するようになってしまうようになり、起きる直前に慌ててトイレに向かい欲を吐き出していた。
ある日、いつもの様に指を唯の唇に当てると、彼は何故か狸寝入りをしていて…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる