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地雷系男子は××できない1
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どうせ目を閉じてしまうのだから暗い部屋のままで良い。
賀志 叶芽はそう呟いた。
「さようなら」
つぅ、と頬に流れる涙。別れの言葉は一体誰に対しての手向けだったのか。
――思えばろくな人生ではなかった。
八歳の頃に両親が離婚し、二卵性双生児の妹を連れて父親が出ていく。
十歳で母親が再婚してからさらに狂い始める。
再婚相手の連れ子に性的虐待を受け、其れを弱みとして関係を続けさせられること八年。
高卒で就職し家を飛び出すもセクハラで退職、フリーターとして食いつなぐことに。
そこで出会った年上の男に惚れてしまったのが運の尽き。
「……あいつは泣いてくれるかな」
いや泣かないだろ、と心の中の自分が容赦ないツッコミを入れる。
認めたくはないが相当なクズ男だったから。
最初は優しく親身だった。
その優しさにすがってしまったら最後、今度は少しずつ金をせびられるようになる。
バイトを増やし、それでも回らなくなれば水商売にも手を出した。
毎朝クタクタになって帰ってきた叶芽を、男は満足そうに抱く。
自分に尽くしてくれてありがとう。愛してる、という甘いだけで中身のない空っぽの言葉だけを拠り所に頑張った。
それでも報われないのがクズとの恋愛。
ついには男の借金のカタに身体を差し出すように言われ、ヤクザ者たちに嬲り物にされる。
そこからは売春 (ウリ)も強要されて、搾取されるだけの日々。
しかし終焉は呆気ない。
クズ男に捨てられたのだ。
実は単身赴任中の既婚者であることも告げられ、心の傷だけを残し去っていく。
そして、今にいたる。
「はは、バカみてぇ」
痩せた腕を見た。
どこもかしこも薄汚れて見える。生活感の欠片もないガランとした部屋。
「生前整理が楽でいいや」
そんな独り言も響いてしまうほどの孤独。
もう、限界だった。
「……」
縄に首を通す。
何度もシュミレーションはした。死んだ後の悲惨さも考えた。しかしこのまま生き続ける方が惨めだし辛いだろう。
ならばいっそ、と衝動的に縄を買った。
「大家さんごめんなさい」
事故物件にしちゃって。
そうつぶやいた時だった。
「!」
ピンポン、と鳴るインターホン。躊躇うような間を置いてもう一度。
「うわ、最悪」
なんでこんな時に。間が悪すぎだろボケが。
訪問者は悪くない。だれがこんな真昼間から部屋にこもって自殺を企てると予想するだろうか。
八つ当たりなのは分かっている。しかしそうでもしないと気もおさまらない。
「チッ、無視だ無視」
再び縄を掛ける。
また鳴るチャイム、眉間にシワが寄る。
「うるさいな」
留守だ諦めろ、と怒鳴りつけてやりたいがそこまでマヌケではない。
「あーもう考えるな、集中!」
自殺を集中するとはなんだろう。しかしまた。
「……」
今度はドアノブが控えめに音を立てる。しかし。
「えっ」
ガポッ、と奇妙な音が響く。それはまるでなにかが外れたような。
……ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!!!
「ひぃっ!?」
それを皮切りにピンポン連打。ドアまでガタガタ鳴るもんだから、思わず首にまとわりつく縄を放り出して尻もちをついた。
「ええっ、ちょ、ええっ!?」
なんだこの怪奇現象。人が生きるか死ぬか (厳密に言うと死一択である)って時に幽霊でも出やがったのか。
そんな思考で脳内パニックを起こす。
「っ、な、なんだ」
玄関から漏れてくる光と、うっすらと見える大きな影。
そしてなおも響くインターホン連打とドアのガタガタ音。
叶芽はその場にへたりこみながら震えていたが。
「!」
コツン、と足が何かに当たる。
その物音もがらんとした部屋に思ったより大きく響き――。
「すいませぇぇぇんっ、すいませんぇぇんっ!!」
「うぎゃぁぁぁっ!!!」
ドアの向こうの人物が大声でわめき始めたのだ。
もう怖いどころじゃない。
「あれ? やっぱり人いた! あっ、すいませんっ、すんませぇぇん!!!」
「ひいっ、お化け!」
「おば……? えっ、お化けいるんですか!? ちょ、待って! 今助けに行きますからね!!!」
「はぁ!? 待て――」
ドガンッ、と爆音と衝撃が走り抜けドアが大破した。
「本っ当にすんませんでしたァァァァァッ!!!!」
突然差し込んできた光に目がくらむ。と同時に耳をつんざくような大声に耳までやられそうに。
そして極めつけが目の前で、華麗なスライディング土下座をキメたタンクトップの男。
「…………え」
お化けってマッチョなんだ、と叶芽は見当違いなことを考えながら呆然と佇んでいた。
賀志 叶芽はそう呟いた。
「さようなら」
つぅ、と頬に流れる涙。別れの言葉は一体誰に対しての手向けだったのか。
――思えばろくな人生ではなかった。
八歳の頃に両親が離婚し、二卵性双生児の妹を連れて父親が出ていく。
十歳で母親が再婚してからさらに狂い始める。
再婚相手の連れ子に性的虐待を受け、其れを弱みとして関係を続けさせられること八年。
高卒で就職し家を飛び出すもセクハラで退職、フリーターとして食いつなぐことに。
そこで出会った年上の男に惚れてしまったのが運の尽き。
「……あいつは泣いてくれるかな」
いや泣かないだろ、と心の中の自分が容赦ないツッコミを入れる。
認めたくはないが相当なクズ男だったから。
最初は優しく親身だった。
その優しさにすがってしまったら最後、今度は少しずつ金をせびられるようになる。
バイトを増やし、それでも回らなくなれば水商売にも手を出した。
毎朝クタクタになって帰ってきた叶芽を、男は満足そうに抱く。
自分に尽くしてくれてありがとう。愛してる、という甘いだけで中身のない空っぽの言葉だけを拠り所に頑張った。
それでも報われないのがクズとの恋愛。
ついには男の借金のカタに身体を差し出すように言われ、ヤクザ者たちに嬲り物にされる。
そこからは売春 (ウリ)も強要されて、搾取されるだけの日々。
しかし終焉は呆気ない。
クズ男に捨てられたのだ。
実は単身赴任中の既婚者であることも告げられ、心の傷だけを残し去っていく。
そして、今にいたる。
「はは、バカみてぇ」
痩せた腕を見た。
どこもかしこも薄汚れて見える。生活感の欠片もないガランとした部屋。
「生前整理が楽でいいや」
そんな独り言も響いてしまうほどの孤独。
もう、限界だった。
「……」
縄に首を通す。
何度もシュミレーションはした。死んだ後の悲惨さも考えた。しかしこのまま生き続ける方が惨めだし辛いだろう。
ならばいっそ、と衝動的に縄を買った。
「大家さんごめんなさい」
事故物件にしちゃって。
そうつぶやいた時だった。
「!」
ピンポン、と鳴るインターホン。躊躇うような間を置いてもう一度。
「うわ、最悪」
なんでこんな時に。間が悪すぎだろボケが。
訪問者は悪くない。だれがこんな真昼間から部屋にこもって自殺を企てると予想するだろうか。
八つ当たりなのは分かっている。しかしそうでもしないと気もおさまらない。
「チッ、無視だ無視」
再び縄を掛ける。
また鳴るチャイム、眉間にシワが寄る。
「うるさいな」
留守だ諦めろ、と怒鳴りつけてやりたいがそこまでマヌケではない。
「あーもう考えるな、集中!」
自殺を集中するとはなんだろう。しかしまた。
「……」
今度はドアノブが控えめに音を立てる。しかし。
「えっ」
ガポッ、と奇妙な音が響く。それはまるでなにかが外れたような。
……ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!!!
「ひぃっ!?」
それを皮切りにピンポン連打。ドアまでガタガタ鳴るもんだから、思わず首にまとわりつく縄を放り出して尻もちをついた。
「ええっ、ちょ、ええっ!?」
なんだこの怪奇現象。人が生きるか死ぬか (厳密に言うと死一択である)って時に幽霊でも出やがったのか。
そんな思考で脳内パニックを起こす。
「っ、な、なんだ」
玄関から漏れてくる光と、うっすらと見える大きな影。
そしてなおも響くインターホン連打とドアのガタガタ音。
叶芽はその場にへたりこみながら震えていたが。
「!」
コツン、と足が何かに当たる。
その物音もがらんとした部屋に思ったより大きく響き――。
「すいませぇぇぇんっ、すいませんぇぇんっ!!」
「うぎゃぁぁぁっ!!!」
ドアの向こうの人物が大声でわめき始めたのだ。
もう怖いどころじゃない。
「あれ? やっぱり人いた! あっ、すいませんっ、すんませぇぇん!!!」
「ひいっ、お化け!」
「おば……? えっ、お化けいるんですか!? ちょ、待って! 今助けに行きますからね!!!」
「はぁ!? 待て――」
ドガンッ、と爆音と衝撃が走り抜けドアが大破した。
「本っ当にすんませんでしたァァァァァッ!!!!」
突然差し込んできた光に目がくらむ。と同時に耳をつんざくような大声に耳までやられそうに。
そして極めつけが目の前で、華麗なスライディング土下座をキメたタンクトップの男。
「…………え」
お化けってマッチョなんだ、と叶芽は見当違いなことを考えながら呆然と佇んでいた。
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