通過儀礼は華やかにはためく

田中 乃那加

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6.蛇足とは呼ばないで

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 なぜ成人の日こんな日に、僕が成人した彼女と待ち合わせて出掛けたのか。
 ……それは彼女に成人祝いを贈りたい、と思ったから。
 なんせ年下ながらにお世話になった人だし。年上の僕が何もしないという選択肢はない。
あとは単純に着物女性が好きで、連れ立って歩きたいっていう下心めいたモノだ。
 どう足掻いても僕が男で、可愛いかったり綺麗な女の子を好ましく思うのは悪いことじゃないだろ。

 ―――さて。
 あの時、ジュエリーショップで交わした会話はこうだ。

『誠さん、指輪買いません?』
『え!?』

 突然の申し出に思わず声を上げた僕に彼女が、シッ! と言葉を止める。
 
『絶対に振り向いたり、キョロキョロしちゃダメですよ……あたし達、尾行されてます』
『えっ……あ、そ、そうか……』

 ごく自然にって思った。
 僕の恋人は過去も現在もストーカー男で、かなり深刻に病んでるからな。
 ……深々とため息をついた僕に、彼女が言った言葉に再びギョッとさせられる。

『この際、あのヤンデレホモ男に指輪のひとつでも送ってやりましょうよ。左薬指にでも嵌めてやれば、今日のこともすっかり忘れて機嫌直しますって』
『でもそれって……』

 結婚指輪的な感じになるだろう? と恐る恐る聞けば。

『でしょうね』

 と返ってきた。

『やっぱり!』
『でも、誠さん? 貴方がいつもあのサイコホモ野郎に振り回されてるのは知ってますけどね、そろそろしっかり
『た、手網ぁ!? あいつは馬かい?』
『似たようなモンですよ。不安定なあの男だってこれで少し落ち着く、か、も』
『落ち着く……か』

 確かに今のまま始終ストーカーされたり、ハメ撮り等で脅されたりしちゃ堪らない。
 それに僕だって、別に嫌々彼の恋人やってるわけじゃあない。
 ちゃんと愛してるし、大切にしたいって……。

『分かった』

 大きく頷いた僕に、彼女が。

『その意気ですよ。大丈夫、サイズは測っときましたから! ……秘密で』

 と艶やかな着物の胸をドン、と叩いた。
 僕はそれに頼もしさと、一抹の恐ろしさを感じて苦笑いを浮かべる。

 ―――これでまぁ、指輪を贈ることになった訳だ。














■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪



「さすが持つべきは女友達だなぁ」
「……うるさい、サイコホモ野郎」

 彼女に礼を言い、彼女が苦々しい顔で罵倒する。
 
『やっぱりあいつ恋人は俺に振り回されてるのが似合ってるよ』

 そう独りごちながら、俺は左薬指に輝くリングにうっとり見入った。


 

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感想 3

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みんなの感想(3件)

キノウ
2020.08.21 キノウ

最初は「チラッと」読み流すつもりが、一気に読んでました。恭介スゴ!最後の指輪は流石。
なんで芽衣子ちゃんが指輪サイズ知ってる?と思ったら…、持つべきものは女友達ですね。
誠は諦めて、恭介に溺れるのが一番いいかもしれないですね(笑)
また、機会があれば二人の先が知りたいです。
楽しいお話ありがとうございました(笑)

2020.08.21 田中 乃那加

最後まで読んで頂き、嬉しいです!
機会あれば、また書いてみようと思います。
本当にありがとうございます

解除
yomyomJ
2020.03.04 yomyomJ

三作品、一気読みしちゃいました!
誠は口は悪いけど恭介が大好きなツンデレさん。
何だかんだ言ってるけど結局二人ラブラブねぇ〜。
面白かったです!また二人の番外編なんか読めたら良いなァ…。

2020.03.04 田中 乃那加

嬉しい感想を……!
ありがとうございます
また書ければと思います。

解除
かゆ
2020.01.13 かゆ

面白くていっきに読んでしまいました!

2020.01.14 田中 乃那加

ありがとうございます!

解除

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