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ヤンデレなドS男に愛を囁かれてもメーワクです1
「おい……それなんだ」
「え? あ、よく出来てるでしょ」
相変わらず、無駄に広く豪華な装飾の目立つ寝室。
そしてこれまたバカでかいベッドの上には裸の少年と青年。グッタリと身体を投げ出しているアレンの隣で、なにやら熱心にやっている。
彼の目の前には、見慣れない魔法機器があった。
言わばカメラと画像編集機器、のようなものらしい。
異世界だと全ての原動力が魔法になるが、その仕組みなどはあまり変わらない。
「ていうか、いつの間に撮ってたんだよ。盗撮だな」
「この期に及んで、それ言うかなぁ。エロくて可愛い恋人の姿を残しておきたい、っていうオトコゴコロってもんでしょ」
「山のようにツッコミたいところあるけどさァ……これ、かなり悪質な編集と、捏造があるだろ」
画面の中、男達が絡みむつみあっている。
ロケーションはこの寝室の、このベッド。場面は、まさにセックスの真っ最中であった。
「へぇ?」
「とぼけた顔するな! 僕はこんなキモチワルイ声出さないし、頭の悪いコトいうワケないだろ」
確かに映像の中の青年は、快感に身をくねらせ淫語をわめきちらしている。
もっと突いて、だの。キスしてだの。果ては、孕ませてぇ♥ なんて腰をふりながらおねだりしていた。
ゾッと寒気と吐き気を感じて睨みつければ、彼は悪びれず肩をすくめるだけ。
「そこはさぁ。なんていうか……演出?」
「だから捏造だろ」
「そりゃね。アレンのツンデレで意地っ張りで、強情な性格は好きだけどさぁ」
「ケッ、悪かったな」
いくら責め立てられても♥付きの喘ぎ声をあげたりしないし、自分から『ち〇ぽ、ちょうだいっ!』なんてせがむなんてもってのほか。
「ウソウソ! 拗ねないでよぉ。さっきも、優しく抱いてあげたじゃん」
「頼んでないし。むしろ金輪際、触れてほしくないけどな」
「またまた~。アレンってば、すぐに照れちゃって」
「照れてなんてないっ、さっきから君の耳は腐ってんのか!? ガキと言えど、容赦しないぞ!」
「そのガキに、アンアン喘がされてたくせに」
「~~~ッ!!!」
なまじ図星なもんで顔を真っ赤にして悔しがるしかない。
ここへ連れ戻されてから、またセックス漬けの日々だった。
最初こそ拘束と調教。あと3Pのコンボで足腰立たなくなるまで責め立てられたが、ここの所はそこまで執拗に抱かれることはない。
しかし相変わらずの監禁は続いている。
今もなんだかんだと言い訳つけて、シーツに沈まされていたのだ。
「こんな下らないモノ、何に使うんだ」
趣味だと答えたら、気持ち悪いとぶん殴ってやろう。
そう思って顔をしかめ尋ねれば、ニアは小さくうなずいた。
「これでライバルを蹴落としておこうかなぁって、ね」
「ハァ?」
意味は分からないが、とりあえずその不愉快な映像を消せと口を開きかけた時。
「これはまた――ひどい」
感情の読めない声が響く。
ノックおろか、ドアを開く音すらさせずに入ってきたのは銀髪のエルフ。
相変わらずその冷徹とも言える表情を、皮肉げに歪めて笑っている。
「あっ、シセロまで! コレはあの間男に見せる用だから、いーの」
「間男ぉ? なんの事だ。って。こんなクソみたいな映像、他人に見せるな!!!」
これじゃあどこの頭のユルい娼婦だと笑われる。
そう怒鳴れば。
『だから見せるんじゃないか』
と、平然と言葉が返ってくるものだからさらに苛立ちはつのる。
「いい加減にしろ! 変態のクソガキめっ」
「ひっど~い。シセロぉ、アレンがいじめるよぉ」
ニアがわざとらしい泣き真似してみせるが、彼は綺麗な顔をしかめて小さくため息をついただけだった。
「くだらない」
「ちょ、その反応も傷つくんだけど!」
「はいはい。そんなことより――」
ギャイギャイと文句を言い立てる少年を軽くあしらうと、シセロが静かに歩み寄ってくる。
「アレン、貴方に話があります。二人きりで」
「……」
何を言われるのか。想像もつかなかった。
いや、それは嘘になる。想像はできた。いくつもいくつも。
悪い想像なら、限りなく。
「ニア、席を外してくれますか」
静かだが有無を言わせぬ口調。
さすがの無邪気に振舞っていた少年も、その空気に気圧されたらしい。軽く肩をすくめただけで、その立ち上がった。
「シセロ」
部屋の入口で、そっと何かを耳打ちする。
しかし無反応で表情を変えない彼に苦笑いし、こちらを振り向いた。
「アレン、またね!」
ウインクひとつ寄越して、微笑む彼にアレンは少しだけ戸惑う。
なんだか、変に含みのある空気だ。
でもそれを顔に出すのはすごく悔しいので。
「あと三日くらいは、姿見せなくてもいいぞ」
「あははっ。ひっどいなぁ。でも、そんな君も大好きだよ」
わざと吐いた暴言に、明るい笑い声をあげてドアが閉まる。
「なんだあれ?」
「いつものことでしょう。っていうか、その間抜け面やめなさい」
「!」
気がつけば、隣に座っていた男。
足音おろか、ベッドの軋みすら気が付かなかった。
「し、シセロ」
「怖いですか? 私が」
そんなワケあるか、と勢いよく否定したい。
ついでに、色々と文句言ってやっても良かったのだ。
なのに唇からは上手く言葉が出てこない。視線も合わせられず、臆病者のように目を伏せることしか出来ない。
そんな自分がひどく悔しくて腹立たしくて。
シーツにこっそり爪を立てた。
「アレン」
「べ、別にお前なんてなぁっ――」
「……申し訳なかった」
目も合わせず怒鳴りつけようと口を開いた矢先の言葉に、言葉を失う。
(いまコイツ、謝った?)
この不遜と横柄さを絵に書いたような男。
ドSで慇懃無礼。性格も最悪な、冷徹無慈悲とも言われるシセロ大臣が。
頭を下げるわけでもないが、確かに謝罪の言葉を口にしたのだ。
従者たちが。いや、国中の者たちが腰を抜かすかもしれない。
天変地異でも起きるんじゃなかろうか、と震え上がっても仕方のないことだった。
「この前は少し、無理をさせてしまったので」
「へ?」
これもまた、かなり今更な話だ。なんなら最初から無理させられっぱなしの、無理強いばかりの関係。
だからアレンは思わず顔をあげ、神妙な面持ちのこの男を見つめた。
「なにバカみたいな顔してるんですか」
「……は?」
今度は睨みつけられる。
「貴方が私のことをどう思ってるかは知りませんが、私だって悪いと思えば謝ります」
「あ、そ」
神妙な顔したり怒ったり。コイツわけわかんないな、なんて思いながらアレンはため息をつく。
「謝ってくれるんなら、もう解放してくれ」
「それは駄目です」
にべもなく断られた。
やっぱり性悪で、ロクでもない男だ。そう思うと舌打ちのひとつも出る。
「ったく。なんでだよ」
国王の花嫁、だなんて言われできたが。それもよく分からないことになっている。
「なんで魔王が蘇っているんだ。それに魔王と君の間には、何かあるんだろう? やはり国を裏切っていたのか。時期国王のビルガってのは、どんな奴なんだ。そもそも存在しているのか」
「一度にいくつも質問しないでください。やかましい人だ」
心底、鬱陶しそうに眉を寄せると鼻を鳴らす。その姿は、不貞腐れた子どものようだ。
「シセロ。教えてくれ」
「……」
やはりすべてが、らしくない。先程から、様子がおかしい。
そう思うと、不思議と彼に対する敵意とか怯えのような (アレン自身は否定するだろうが)感情が沈んで行く気がした。
同時に、今ならすべて聞き出せると口をひらく。
「君は魔王と――どんな契約を交わした?」
煌めく青。
やや、揺らめく瞳をとらえ問いただした。
「なぜ私が魔王なんかと」
「少なくとも何らかの取り引きはしたんだろう。アイツは何を求めていて、君は一体なにが欲しかったんだ」
「……」
「前国王に息子なんていなかった、そうだよな?」
「なにを荒唐無稽なことを」
「荒唐無稽? 果たしてそうかな。あの時、魔王は確かにこう言った。『自分は魔王であり、国王だ』って。これはどういう意味だよ」
「それは……」
そらされた視線。
アレンはようやく、自分が真相の端っこを掴んだ気がした。
若い王の花嫁として捧げられる。
しかし実際、そんな者は存在しない。ニセモノの童帝をでっち上げたのは、なぜか。
「死にぞこないの魔王に、この国を売り渡す気だったか」
彼が魔王側のスパイだという噂が、本当だったとしたら。
なんらかの報酬目当てで、この国を裏切るつもりだったのかもしれない。
童帝ビルガ、なる架空の人物になりすましさせて。
あの魔力だ。大人から子どもまで、色んな姿に変身できるだろう。
「なぁシセロ。君がどんな報酬につられたのかは知らないけど――」
「違う」
「っ!」
地を這うような低い声での否定。
その途端、視界が急激に回る。
「え……」
気がつけば、ベッドに押し倒されていた。
両肩を勢いよく押され、背中の下でマットレスが弾む。
「報酬につられたのは、魔王の方ですよ。私はただ、出し抜いただけ」
じっと見下ろす二つの目。
深い青の中に、暗い光が宿る。
「ねぇアレン」
「おいっ、なにしやがる!」
声色にさえ薄ら寒いモノを感じ、思わず言葉がうわずった。
それを彼は目だけで笑うと、いっそう体重をかけてのりあげてくる。
「私が怖いですか?」
「こ、怖くなんて……」
嘘だ、怖い。
変態だしドSだし、ムカつくし。そんな男が、初めて見せた暗い表情。
静かに陰鬱に。そして何より激しい感情で、見つめてくる瞳に怯む。
「私には、魔王を欺いてでも手に入れたかったものがありましてね」
冷たい手が、頬に触れた。
エルフ特有の白く長い、綺麗な形の指。微かに震えるアレンをなだめるように、何度も撫でる。
「貴方ですよ、アレン」
囁かれたと同時に唇に落とされた口付けは、柔らかく優しかった。
それがまた、動揺を誘うのだ。
「愛してます。ずっと前から」
「なん、だって……?」
銀色の髪が、裸の胸をくすぐった。
「他の男に抱かれるなんて、考えるのも腸が煮えくり返るくらいに」
「そ、それはお前が――」
あまりのことに驚愕しつつも、口を開く。
すると口元に、細く長い指を当てられた。
「黙って」
幼い子どもに言うように、柔らかな声色で沈黙をうながされる。
そのまま再び、上唇に触れるだけのキスがほどこされた。
「え? あ、よく出来てるでしょ」
相変わらず、無駄に広く豪華な装飾の目立つ寝室。
そしてこれまたバカでかいベッドの上には裸の少年と青年。グッタリと身体を投げ出しているアレンの隣で、なにやら熱心にやっている。
彼の目の前には、見慣れない魔法機器があった。
言わばカメラと画像編集機器、のようなものらしい。
異世界だと全ての原動力が魔法になるが、その仕組みなどはあまり変わらない。
「ていうか、いつの間に撮ってたんだよ。盗撮だな」
「この期に及んで、それ言うかなぁ。エロくて可愛い恋人の姿を残しておきたい、っていうオトコゴコロってもんでしょ」
「山のようにツッコミたいところあるけどさァ……これ、かなり悪質な編集と、捏造があるだろ」
画面の中、男達が絡みむつみあっている。
ロケーションはこの寝室の、このベッド。場面は、まさにセックスの真っ最中であった。
「へぇ?」
「とぼけた顔するな! 僕はこんなキモチワルイ声出さないし、頭の悪いコトいうワケないだろ」
確かに映像の中の青年は、快感に身をくねらせ淫語をわめきちらしている。
もっと突いて、だの。キスしてだの。果ては、孕ませてぇ♥ なんて腰をふりながらおねだりしていた。
ゾッと寒気と吐き気を感じて睨みつければ、彼は悪びれず肩をすくめるだけ。
「そこはさぁ。なんていうか……演出?」
「だから捏造だろ」
「そりゃね。アレンのツンデレで意地っ張りで、強情な性格は好きだけどさぁ」
「ケッ、悪かったな」
いくら責め立てられても♥付きの喘ぎ声をあげたりしないし、自分から『ち〇ぽ、ちょうだいっ!』なんてせがむなんてもってのほか。
「ウソウソ! 拗ねないでよぉ。さっきも、優しく抱いてあげたじゃん」
「頼んでないし。むしろ金輪際、触れてほしくないけどな」
「またまた~。アレンってば、すぐに照れちゃって」
「照れてなんてないっ、さっきから君の耳は腐ってんのか!? ガキと言えど、容赦しないぞ!」
「そのガキに、アンアン喘がされてたくせに」
「~~~ッ!!!」
なまじ図星なもんで顔を真っ赤にして悔しがるしかない。
ここへ連れ戻されてから、またセックス漬けの日々だった。
最初こそ拘束と調教。あと3Pのコンボで足腰立たなくなるまで責め立てられたが、ここの所はそこまで執拗に抱かれることはない。
しかし相変わらずの監禁は続いている。
今もなんだかんだと言い訳つけて、シーツに沈まされていたのだ。
「こんな下らないモノ、何に使うんだ」
趣味だと答えたら、気持ち悪いとぶん殴ってやろう。
そう思って顔をしかめ尋ねれば、ニアは小さくうなずいた。
「これでライバルを蹴落としておこうかなぁって、ね」
「ハァ?」
意味は分からないが、とりあえずその不愉快な映像を消せと口を開きかけた時。
「これはまた――ひどい」
感情の読めない声が響く。
ノックおろか、ドアを開く音すらさせずに入ってきたのは銀髪のエルフ。
相変わらずその冷徹とも言える表情を、皮肉げに歪めて笑っている。
「あっ、シセロまで! コレはあの間男に見せる用だから、いーの」
「間男ぉ? なんの事だ。って。こんなクソみたいな映像、他人に見せるな!!!」
これじゃあどこの頭のユルい娼婦だと笑われる。
そう怒鳴れば。
『だから見せるんじゃないか』
と、平然と言葉が返ってくるものだからさらに苛立ちはつのる。
「いい加減にしろ! 変態のクソガキめっ」
「ひっど~い。シセロぉ、アレンがいじめるよぉ」
ニアがわざとらしい泣き真似してみせるが、彼は綺麗な顔をしかめて小さくため息をついただけだった。
「くだらない」
「ちょ、その反応も傷つくんだけど!」
「はいはい。そんなことより――」
ギャイギャイと文句を言い立てる少年を軽くあしらうと、シセロが静かに歩み寄ってくる。
「アレン、貴方に話があります。二人きりで」
「……」
何を言われるのか。想像もつかなかった。
いや、それは嘘になる。想像はできた。いくつもいくつも。
悪い想像なら、限りなく。
「ニア、席を外してくれますか」
静かだが有無を言わせぬ口調。
さすがの無邪気に振舞っていた少年も、その空気に気圧されたらしい。軽く肩をすくめただけで、その立ち上がった。
「シセロ」
部屋の入口で、そっと何かを耳打ちする。
しかし無反応で表情を変えない彼に苦笑いし、こちらを振り向いた。
「アレン、またね!」
ウインクひとつ寄越して、微笑む彼にアレンは少しだけ戸惑う。
なんだか、変に含みのある空気だ。
でもそれを顔に出すのはすごく悔しいので。
「あと三日くらいは、姿見せなくてもいいぞ」
「あははっ。ひっどいなぁ。でも、そんな君も大好きだよ」
わざと吐いた暴言に、明るい笑い声をあげてドアが閉まる。
「なんだあれ?」
「いつものことでしょう。っていうか、その間抜け面やめなさい」
「!」
気がつけば、隣に座っていた男。
足音おろか、ベッドの軋みすら気が付かなかった。
「し、シセロ」
「怖いですか? 私が」
そんなワケあるか、と勢いよく否定したい。
ついでに、色々と文句言ってやっても良かったのだ。
なのに唇からは上手く言葉が出てこない。視線も合わせられず、臆病者のように目を伏せることしか出来ない。
そんな自分がひどく悔しくて腹立たしくて。
シーツにこっそり爪を立てた。
「アレン」
「べ、別にお前なんてなぁっ――」
「……申し訳なかった」
目も合わせず怒鳴りつけようと口を開いた矢先の言葉に、言葉を失う。
(いまコイツ、謝った?)
この不遜と横柄さを絵に書いたような男。
ドSで慇懃無礼。性格も最悪な、冷徹無慈悲とも言われるシセロ大臣が。
頭を下げるわけでもないが、確かに謝罪の言葉を口にしたのだ。
従者たちが。いや、国中の者たちが腰を抜かすかもしれない。
天変地異でも起きるんじゃなかろうか、と震え上がっても仕方のないことだった。
「この前は少し、無理をさせてしまったので」
「へ?」
これもまた、かなり今更な話だ。なんなら最初から無理させられっぱなしの、無理強いばかりの関係。
だからアレンは思わず顔をあげ、神妙な面持ちのこの男を見つめた。
「なにバカみたいな顔してるんですか」
「……は?」
今度は睨みつけられる。
「貴方が私のことをどう思ってるかは知りませんが、私だって悪いと思えば謝ります」
「あ、そ」
神妙な顔したり怒ったり。コイツわけわかんないな、なんて思いながらアレンはため息をつく。
「謝ってくれるんなら、もう解放してくれ」
「それは駄目です」
にべもなく断られた。
やっぱり性悪で、ロクでもない男だ。そう思うと舌打ちのひとつも出る。
「ったく。なんでだよ」
国王の花嫁、だなんて言われできたが。それもよく分からないことになっている。
「なんで魔王が蘇っているんだ。それに魔王と君の間には、何かあるんだろう? やはり国を裏切っていたのか。時期国王のビルガってのは、どんな奴なんだ。そもそも存在しているのか」
「一度にいくつも質問しないでください。やかましい人だ」
心底、鬱陶しそうに眉を寄せると鼻を鳴らす。その姿は、不貞腐れた子どものようだ。
「シセロ。教えてくれ」
「……」
やはりすべてが、らしくない。先程から、様子がおかしい。
そう思うと、不思議と彼に対する敵意とか怯えのような (アレン自身は否定するだろうが)感情が沈んで行く気がした。
同時に、今ならすべて聞き出せると口をひらく。
「君は魔王と――どんな契約を交わした?」
煌めく青。
やや、揺らめく瞳をとらえ問いただした。
「なぜ私が魔王なんかと」
「少なくとも何らかの取り引きはしたんだろう。アイツは何を求めていて、君は一体なにが欲しかったんだ」
「……」
「前国王に息子なんていなかった、そうだよな?」
「なにを荒唐無稽なことを」
「荒唐無稽? 果たしてそうかな。あの時、魔王は確かにこう言った。『自分は魔王であり、国王だ』って。これはどういう意味だよ」
「それは……」
そらされた視線。
アレンはようやく、自分が真相の端っこを掴んだ気がした。
若い王の花嫁として捧げられる。
しかし実際、そんな者は存在しない。ニセモノの童帝をでっち上げたのは、なぜか。
「死にぞこないの魔王に、この国を売り渡す気だったか」
彼が魔王側のスパイだという噂が、本当だったとしたら。
なんらかの報酬目当てで、この国を裏切るつもりだったのかもしれない。
童帝ビルガ、なる架空の人物になりすましさせて。
あの魔力だ。大人から子どもまで、色んな姿に変身できるだろう。
「なぁシセロ。君がどんな報酬につられたのかは知らないけど――」
「違う」
「っ!」
地を這うような低い声での否定。
その途端、視界が急激に回る。
「え……」
気がつけば、ベッドに押し倒されていた。
両肩を勢いよく押され、背中の下でマットレスが弾む。
「報酬につられたのは、魔王の方ですよ。私はただ、出し抜いただけ」
じっと見下ろす二つの目。
深い青の中に、暗い光が宿る。
「ねぇアレン」
「おいっ、なにしやがる!」
声色にさえ薄ら寒いモノを感じ、思わず言葉がうわずった。
それを彼は目だけで笑うと、いっそう体重をかけてのりあげてくる。
「私が怖いですか?」
「こ、怖くなんて……」
嘘だ、怖い。
変態だしドSだし、ムカつくし。そんな男が、初めて見せた暗い表情。
静かに陰鬱に。そして何より激しい感情で、見つめてくる瞳に怯む。
「私には、魔王を欺いてでも手に入れたかったものがありましてね」
冷たい手が、頬に触れた。
エルフ特有の白く長い、綺麗な形の指。微かに震えるアレンをなだめるように、何度も撫でる。
「貴方ですよ、アレン」
囁かれたと同時に唇に落とされた口付けは、柔らかく優しかった。
それがまた、動揺を誘うのだ。
「愛してます。ずっと前から」
「なん、だって……?」
銀色の髪が、裸の胸をくすぐった。
「他の男に抱かれるなんて、考えるのも腸が煮えくり返るくらいに」
「そ、それはお前が――」
あまりのことに驚愕しつつも、口を開く。
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