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最後の攻防
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怪物ハーティフが、再び時の精霊に食らいつこうと、レティシアが張るシールドに体をぶつけて爪をたて始めた時、
「レティシア、その笛を貸せ!」
と、カミュンが何か言っている。
「どうするの?
あ、まさか!!」
レティシアの驚きと同時に、カミュンが鬣から飛び降りてくる。
「クロスノス!
リタの鬣に掴まって、最上級魔法の『闇の顎門』を撃て!
奴の外郭を限界まで削ぐんだ!!」
と、カミュンが叫びながら、目を閉じて気を溜めていくのがわかった。
彼の両手に握りしめた剣に、私の髪の毛が巻きつけられ、カッと消えると同時に刀身が燃え上がるように光り輝く。
クロスノスは、私の鬣に掴まると、
「闇の精霊よ!
大いなる深き闇の底よりその牙を現し、我が敵を食いちぎれ!
バキ・ラ・トギア!!」
と、唱えた。
ハーティフの後ろから、大きな獣の牙が見えて、ハーティフの背中に噛み付く。
ミシミシ、バキバキバキ!!
そのままハーティフの鎧のような外郭にヒビが入り、砕けて落ちるのが見えた。
再び、ハーティフの一回り小さい本体が露わになる。
そのまま闇の牙がさらに食い込もうとすると、ハーティフの内側から強固な外郭が盛り上がってきた。
「させるか!!」
そこへ、カミュンが跳躍して回転を加えながら斬り込んでいく。
危ない!
ハーティフもすぐに気づいて、鋭い爪を繰り出す。
ガキン!!
すれ違いざま、カミュンは怪物ハーティフの体を闇の牙ごと真っ二つに切り裂いた。
斬れた!?
「リタ!今だ、搾り取れ!!」
カミュンが倒れながら私に言う。
私はハーティフの体の断面から、エネルギーを沢山抜き出した。
流石に出る量が違う。
ォォォ・・・ォォ・・・。
音が落ち始め、ハーティフが初めて膝を折った。
こんな状態でも、まだ生きている・・・!
「カミュン!」
クロスノスが叫び、カミュンに駆け寄る。
目線をチラリとむけると、胸と首から激しく血を流すカミュンが見えた。
あ!!
考えずにカミュンの出血を、彼の時を止めることで防ぐ。
レティシアも、カミュンに駆け寄っていくのが見えた。
死なないで!!
そう願いながら、私は力を振り絞ってハーティフのエネルギーを抜いた。
ォ・・・ォォ・・・ォ・・・ォ・・・。
・・・。
ついに沈黙した。
ハーティフが動かなくなる。
私はカミュンの方を見た。
レティシアが彼に、光の御手をかけている。
その様子を見て、カミュンの時を再び戻した。
「カミュン!?
生きてるの?」
私が尋ねると、レティシアが振り向いて頷いた。
「無茶苦茶よ。
人魚の笛を刀身に同化させて、斬り裂くとか言うんだもの。」
と、彼女が言うと、クロスノスも背嚢から薬を取り出して、カミュンに飲ませている。
「危ない傷でした。
あと数ミリ深かったら助かりませんでしたよ。
頑丈だからと、この向こうみずさはいただけませんね、まったく!!」
私はクロスノスの言葉にホッとして、動かないハーティフに近づく。
音は聞こえない。
でも、油断できない。
私は尾の先に、ハーティフの体を巻きつけると、みんなを見下ろした。
「みんな、ありがとう。
ここからは、私一人で行くね。」
三人が私を驚いたように見る。
「ここから先は、時の精霊の力が届かないから。
みんなを連れて行けない。
必ず帰るから、またね。」
私は奥に向かって、進み出した。
「リタ!」
カミュンの声がする。
振り向いたら・・・気持ちが揺らぎそう。
「カミュン・・・あの場所で、初めて会ったあの場所で待ってて。」
私は振り向かずに、時の精霊の間を抜けて行く。
途中、私はアムの言葉を思い出した。
『最短距離は、流れに逆らい、原初の精霊の間を抜けたところだ。
三柱の神々がそこにいる。
ただし、歴代の黒竜で、そんなことをした者はいない。
無事に戻れるかもわからない。』
・・・そうだよね。
私もわからない。
カミュン達の姿が見えなくなり、私は時の精霊の間を抜けて、原初の精霊の間に入った。
「くくく・・・。」
その時、ハーティフの恐ろしい声が聞こえた。
私は、尾の先に感じる違和感に、思わず振り向いた。
ハーティフが体を、私の尾に同化させ始めていたからだ。
な、なんで!?
音は聞こえないのに!!
「はぁ、はぁ、ようやく手に入れた・・・リタ。
やはりお前の力はまだ、未完。」
ハーティフは、息も絶え絶えにしがみついている。
これじゃ、時のない場所に来ても、ハーティフは止まらない!!
振り落とそうにも、できないくらい同化していた。
執念という言葉しか、浮かばないくらいの気迫を感じる。
「ふふ、同化すればこちらのものだ・・・さあ、支配してやる。
この私が、お前の力を究極まで高めてやろう。」
私はその声に危機感を感じて、全速力で先へ進んだ。
頭がぼーっとしてくる。
「リタ・・・無駄だ。
お前の力は貰った。
さあ、原初の精霊を手に入れに行くぞ。」
私はぼやける意識の中で、ハーティフを捉えて、体の力を外に放出した。
ピュヴォォォォォ!
「ギャァァァ!よせ!
お前の・・・力まで・・・一緒に抜けるぞ!?
弱った体では・・・混沌の神に呑まれても戻れぬぞ!?」
それでも、先へ進みながら力を拡散させて、ハーティフを弱らせていく。
やがて原初の精霊が見えてきた。
「あぁ!!
止まれ!!
これだ・・・!
これこそ、私の求める力だ!!」
ハーティフが叫んでいる。
精霊の最高位にして、三柱の神々の力の結晶。
大きさも、荘厳さも、他の精霊たちとは一線を画す。
その巨大な力は、今の私には厳しい。
それでも止まれない!
「くそ!!
止まれというのに!
黒竜を乗っ取るだけでは、世界の創造は叶わぬ!!
お前はの力は、破壊神止まりなのだ!
私は、その先の創造をする存在となるために今日まで・・・。」
ピュヴォォォォォ!!!
さらに力を抜いて、黙らせる。
あなたみたいな人が、世界の創造なんて、冗談じゃないわ!!
「レティシア、その笛を貸せ!」
と、カミュンが何か言っている。
「どうするの?
あ、まさか!!」
レティシアの驚きと同時に、カミュンが鬣から飛び降りてくる。
「クロスノス!
リタの鬣に掴まって、最上級魔法の『闇の顎門』を撃て!
奴の外郭を限界まで削ぐんだ!!」
と、カミュンが叫びながら、目を閉じて気を溜めていくのがわかった。
彼の両手に握りしめた剣に、私の髪の毛が巻きつけられ、カッと消えると同時に刀身が燃え上がるように光り輝く。
クロスノスは、私の鬣に掴まると、
「闇の精霊よ!
大いなる深き闇の底よりその牙を現し、我が敵を食いちぎれ!
バキ・ラ・トギア!!」
と、唱えた。
ハーティフの後ろから、大きな獣の牙が見えて、ハーティフの背中に噛み付く。
ミシミシ、バキバキバキ!!
そのままハーティフの鎧のような外郭にヒビが入り、砕けて落ちるのが見えた。
再び、ハーティフの一回り小さい本体が露わになる。
そのまま闇の牙がさらに食い込もうとすると、ハーティフの内側から強固な外郭が盛り上がってきた。
「させるか!!」
そこへ、カミュンが跳躍して回転を加えながら斬り込んでいく。
危ない!
ハーティフもすぐに気づいて、鋭い爪を繰り出す。
ガキン!!
すれ違いざま、カミュンは怪物ハーティフの体を闇の牙ごと真っ二つに切り裂いた。
斬れた!?
「リタ!今だ、搾り取れ!!」
カミュンが倒れながら私に言う。
私はハーティフの体の断面から、エネルギーを沢山抜き出した。
流石に出る量が違う。
ォォォ・・・ォォ・・・。
音が落ち始め、ハーティフが初めて膝を折った。
こんな状態でも、まだ生きている・・・!
「カミュン!」
クロスノスが叫び、カミュンに駆け寄る。
目線をチラリとむけると、胸と首から激しく血を流すカミュンが見えた。
あ!!
考えずにカミュンの出血を、彼の時を止めることで防ぐ。
レティシアも、カミュンに駆け寄っていくのが見えた。
死なないで!!
そう願いながら、私は力を振り絞ってハーティフのエネルギーを抜いた。
ォ・・・ォォ・・・ォ・・・ォ・・・。
・・・。
ついに沈黙した。
ハーティフが動かなくなる。
私はカミュンの方を見た。
レティシアが彼に、光の御手をかけている。
その様子を見て、カミュンの時を再び戻した。
「カミュン!?
生きてるの?」
私が尋ねると、レティシアが振り向いて頷いた。
「無茶苦茶よ。
人魚の笛を刀身に同化させて、斬り裂くとか言うんだもの。」
と、彼女が言うと、クロスノスも背嚢から薬を取り出して、カミュンに飲ませている。
「危ない傷でした。
あと数ミリ深かったら助かりませんでしたよ。
頑丈だからと、この向こうみずさはいただけませんね、まったく!!」
私はクロスノスの言葉にホッとして、動かないハーティフに近づく。
音は聞こえない。
でも、油断できない。
私は尾の先に、ハーティフの体を巻きつけると、みんなを見下ろした。
「みんな、ありがとう。
ここからは、私一人で行くね。」
三人が私を驚いたように見る。
「ここから先は、時の精霊の力が届かないから。
みんなを連れて行けない。
必ず帰るから、またね。」
私は奥に向かって、進み出した。
「リタ!」
カミュンの声がする。
振り向いたら・・・気持ちが揺らぎそう。
「カミュン・・・あの場所で、初めて会ったあの場所で待ってて。」
私は振り向かずに、時の精霊の間を抜けて行く。
途中、私はアムの言葉を思い出した。
『最短距離は、流れに逆らい、原初の精霊の間を抜けたところだ。
三柱の神々がそこにいる。
ただし、歴代の黒竜で、そんなことをした者はいない。
無事に戻れるかもわからない。』
・・・そうだよね。
私もわからない。
カミュン達の姿が見えなくなり、私は時の精霊の間を抜けて、原初の精霊の間に入った。
「くくく・・・。」
その時、ハーティフの恐ろしい声が聞こえた。
私は、尾の先に感じる違和感に、思わず振り向いた。
ハーティフが体を、私の尾に同化させ始めていたからだ。
な、なんで!?
音は聞こえないのに!!
「はぁ、はぁ、ようやく手に入れた・・・リタ。
やはりお前の力はまだ、未完。」
ハーティフは、息も絶え絶えにしがみついている。
これじゃ、時のない場所に来ても、ハーティフは止まらない!!
振り落とそうにも、できないくらい同化していた。
執念という言葉しか、浮かばないくらいの気迫を感じる。
「ふふ、同化すればこちらのものだ・・・さあ、支配してやる。
この私が、お前の力を究極まで高めてやろう。」
私はその声に危機感を感じて、全速力で先へ進んだ。
頭がぼーっとしてくる。
「リタ・・・無駄だ。
お前の力は貰った。
さあ、原初の精霊を手に入れに行くぞ。」
私はぼやける意識の中で、ハーティフを捉えて、体の力を外に放出した。
ピュヴォォォォォ!
「ギャァァァ!よせ!
お前の・・・力まで・・・一緒に抜けるぞ!?
弱った体では・・・混沌の神に呑まれても戻れぬぞ!?」
それでも、先へ進みながら力を拡散させて、ハーティフを弱らせていく。
やがて原初の精霊が見えてきた。
「あぁ!!
止まれ!!
これだ・・・!
これこそ、私の求める力だ!!」
ハーティフが叫んでいる。
精霊の最高位にして、三柱の神々の力の結晶。
大きさも、荘厳さも、他の精霊たちとは一線を画す。
その巨大な力は、今の私には厳しい。
それでも止まれない!
「くそ!!
止まれというのに!
黒竜を乗っ取るだけでは、世界の創造は叶わぬ!!
お前はの力は、破壊神止まりなのだ!
私は、その先の創造をする存在となるために今日まで・・・。」
ピュヴォォォォォ!!!
さらに力を抜いて、黙らせる。
あなたみたいな人が、世界の創造なんて、冗談じゃないわ!!
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