不遇弓使いの英雄譚ー無敵スキル『絶対反転』を得て救世主となる

たからかた

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1章

旅の依頼

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あの日から、半年が経過した。
俺は無事、故郷の森に帰り着き、じっちゃんとオウムのフェイルノと平和に暮らしている。

勇者ネプォンは、魔王ダーデュラを倒し、この国の姫と結婚して、王になったそうだ。

英雄と姫の結婚。
まさに、奴が望んだ通りになったわけだ。

だが、その割に各地で魔族の活動が収まらない。魔王が倒れたはずなのに、勢いが衰えるどころか、ますます盛んになっている。

各地で、新たな冒険者たちが立ち上がり、討伐してまわっているようだが。

「おかえり、アーチロビン」

俺の帰りを待っていたじっちゃんが、玄関まで迎えにきてくれた。

俺は、いつもの止まり木にフェイルノをとまらせて、顔を上げる。

「ただいま、じっちゃん」

「今度もこんなに早く帰ってきたのかい。もう少しゆっくり冒険しておいで」

「いや、いいんだよ。今回も魔族の首領は倒したんだ。三下だったけど」

「怪我はないかい?」

「ないよ。いつも通り、例の力を使ったしさ。これ、今回の報酬」

俺は机の上に、金貨の袋をドサッと置いた。
じっちゃんは、中を開いて感心しながら俺を見る。

「今回もすごいのう」

「うん、じっちゃんのパイプ、これで新調して。あと、いつもの額を引いたら、残りはマフィマフィン協会に寄付するから」

「戦や災害で、家や仕事を失った人々を助けるマフィマフィン協会にじゃな」

「そう。せめて一日でも早く、いつもの日常を取り戻してほしいから」

「ふぉっ、ふぉ。偉いのう。いろんな冒険者が、お前をスカウトしたいらしいぞ? お前を何とかと呼んでたな……確か」

「隠しチートキャラ」

「それそれ、ちーときゃら。どういう意味だかよくわからんがな。お前は素晴らしい才能を持っているんだ。こんな森の中で、じーさんと暮らす必要はないんだぞ?」

「いいんだよ。俺、じっちゃんが好きだし、名誉とか出世とか興味ない」

「しかしなぁ」

「俺は今の生活が好きなんだよ。俺の能力が必要な時に、その冒険者に力を貸すけど、あとは戻ってきたい」

「アーチロビン……」

「ほら、俺の力を使えば、人家に近い場所での戦は起きないし。じっちゃんが平和に暮らせる」

「まあな。すごいことだ」

「それに俺、勇者なんて信じてない」

「ネプォンの奴が、悪かったからな……」

「勇者がなんなのか、もうわからなくなったよ。一体なんなんだよ、じっちゃん」

「勇者か。勇者は本来魔王を倒す為に、天が選ぶ英雄のことだ。新しい魔王が生まれるたびに、一人の勇者が選ばれる」

「魔王は数百年に一度、必ず生まれるんだよね?」

「そうじゃ。歴代の勇者は魔王に打ち勝つ為に、英雄となるべく魂を鍛え上げて生まれてくるといわれている」

「魂を? もう、そこから違うんだな」

「その分、何度も生まれ変わりながらまた苦労を重ねて、やっと英雄として生まれてくるらしい」

「ふーん……ネプォンがねぇ」

「勇者は勝つ為に神器を与えられ、仲間と才能に恵まれ、ことを成し遂げる運を与えられる特別な存在だ。当代ただ一人の、な」

「神器まで揃えてもらえるんだな」

「神器でしか、魔王の魂は砕けないからのう」

「人格も、ちゃんと見極めてるのかな」

「徳を併せ持つとは限らん。『事を成し遂げる為』、の存在だからな。人格者ばかりが、成功するわけではないのが世の中だ」

「だろうな」

「アーチロビン……」

「はは! もうこりごりだよ。そんな連中に付き合うの。さぁ、じっちゃん、ご飯にしよう!」

俺は手を洗って服を着替えると、エプロンをつけて台所に立った。

深く関わらないのが一番だ。
そうすれば、傷つかずにすむ。
相手に期待した方が悪いのだから。

そんなある日、来客があった。

「オキャクサマ! オキャクサマ!」

フェイルノが、薪を割っていた俺の元へと飛んできて、知らせてくれる。

ふらりと森の奥へ飛んでいったかと思えば、人を連れてきたのか?

「フェイルノ、仕事の依頼じゃないだろうな」

「ンー、タブン」

「家まで連れてくるな。森の入り口で狼煙をあげるように、決めてるのに」

「キニイッタノ。ダカラ、アンナイ、シタノ」

気に入った?
初対面の知らない奴を?

俺は汗を拭きながら、辺りを見回す。
客なんて、どこにも……ん?

森の木々の隙間から、俺を覗き見している奴がいる。

俺は薪割りの斧を置いて、じっと相手を見た。
シーンとして、動きを見せない。

なんなんだ? 用事がないなら、帰るぞ。

俺が薪を集めて、家に帰ろうとした時、後ろから声がかかった。

「あの……!」

その声で、女性だということがわかる。
俺は振り向いて、彼女を見た。

白いローブを纏い、聖なる紋章をかたどったペンダントを下げている。

神官か。

あのシャーリーと同じ格好をした彼女に、少し嫌悪感を感じて、自然と声が低くなる。

もう、何もさせないからな。
そんな気持ちを込めて、返事をした。

「───何か?」

俺が言うと、彼女はスタスタと歩いてきて、ローブのフードを取ろうとする。

その瞬間、

「きゃ!!」

と、叫んで倒れた。

足元の切り株の根に、足を取られたみたいだ。
森を歩き慣れてないな。

「大丈夫ですか?」

俺が呆れて見ていると、彼女は慌てて起き上がり、服についた汚れをパンパンと叩いて落とす。

「は、はい! お構いなく!」

彼女は早口で喋りながら、改めてフードをはずした。その頭には、純白の狐の耳が生えている。

よく見ると、後ろからふっさりした尻尾も見えていた。

人の姿に、狐の耳と尻尾を生やした種族、孤族だ。

孤族出身の神官か。
白狐とは珍しいな。

耳がピクピク動いて、可愛らしい。
大きな目も、愛らしさに華を添えていた。

ふんわりとした、可憐な美少女という言葉がぴったりだ。

「ご用はなんでしょう?」

俺が尋ねると、彼女は姿勢を正して礼儀正しくお辞儀をする。

「はい、私は神官のクリムティナ・フィオ・グライア。あなたは、“名無しの弓使い様”でいらっしやいますか?」

そう、俺は本名は名乗らないことにしている。
……やっぱり、仕事の依頼かな。

「そうです。で、ご用件は?」

「どうか、ご助力を! 私たちのパーティーに加わっていただきたいのです!! 旅の仲間として」

よりによって、なんてお願いだ。
俺が旅までしないことを、聞いていないのか?

「……俺は、長旅に同行はしません。あくまで単発の討伐の加勢はしますけど」

「そこを、そこをなんとか!」

「帰ってください」

俺は背を向けて、家に向かって歩き出した。長旅なんて、冗談じゃない。

俺はもう誰にも、利用されたくない。

「待って!!」

彼女は躓きながら、追いついてくる。
無視、無視。

構わないでくれ。

「話を聞いてください!」

ガシ!
いきなり俺は、彼女に腕を掴まれた。

「おっと!」

「お願い……ケルヴィン殿下の為にも、手ぶらでは帰れないんです」

「ケルヴィン殿下?」

「あ……!」

彼女は、慌てて手を離して口を覆う。耳が後ろに倒れて、困惑していることがすぐにわかった。

ケルヴィン殿下といえば、この国の王子。勇者ネプォンと結婚したヘレン姫の弟になる。

つまり義弟。

「何でわざわざ、王族が旅に出るんだ?」

俺が質問すると、彼女はやってしまったという表情のまま、俺を見上げた。

「魔族の勢いが衰えぬ現状に、胸を痛められていらっしゃるのです。それに……ネプォン王の所業に、思うところがあるそうで」

「所業?」

「英雄とは思えぬ振る舞いを、なさるらしいのです。その上……本当は魔王ダーデュラを倒していないのではないかと、殿下は睨んでいます」

魔王ダーデュラを、倒していない?
俺を生贄にして、レアアイテムを手に入れたあいつが?

俺は思わず彼女を振り向いて、次の言葉を待った。




~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。

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