不遇弓使いの英雄譚ー無敵スキル『絶対反転』を得て救世主となる

たからかた

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六章

夢の世界で、龍王に出会う

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翌日、俺たちは無事にポリュンオスに着いた。

俺は一晩中起きていたから、今はすごく眠い。

「すまんのぅ、アーチロビン。ワシが酔っ払ってしまって、みすみすイルハートや敵の接近を許してしもうた」

魔導士ティトは、朝から俺に謝りっぱなし。
気にすることはない。

結果的に犠牲者はいないから。

「いいよ、ティトだって息抜きしないと。それに、今回一番痛い思いをしたのは、フィオなんだ」

「アーチロビン、私は平気」

「すまん、フィオ。今度はワシが体を張るからな。まったく、イルハートのやつめ! あやつの狙いがいまいち読めんわ」

「それより、今は月の神殿に行こう」

「お、おぉ、そうじゃな、アーチロビン」

そう、今は大魔導士イルハートにかまう暇はない。早く日の本へ渡る足がかりをつけないと。

入国手続きを経て、ポリュンオスの観光案内を見る。

月の神殿は、首都『チュア・サンク』の西にあるとか。

東には太陽の神殿があり、二人の巫女がそれぞれを統括している、とある。

「テデュッセアによると、太陽と月の神殿の巫女は、双子なんだそうだ。とても仲がいいらしい」

ケルヴィン殿下が、俺たちに説明してくれる。
テデュッセア? あぁ、昨夜ケルヴィン殿下と仲良くしていた、あの……。

「ケルヴィン殿下、彼女はこの国の?」

「そうだ。現地のことは、現地の人と仲良くなることでよくわかる。彼女はその点最高だったよ」

「彼女はどこに?」

「家に帰ったよ。私のカジノの儲けを半分持って」

「半分!?」

「今朝、全部持って行こうとしたから、流石に引き留めたよ。交渉してやっと、半分にしてくれた」

「そ、それはまた……」

「まぁ、また会う約束もしたからな」

「えー」

「いつか、会いましょう、て」

「そ、それって……」

「ふふ、ていよくフラれたわけさ。ほら、馬車に乗ろう」

俺たちは、月の神殿まで馬車に乗ることになった。

「アーチロビン、着くまで寝ない?」

フィオが膝枕をしてくれる。な、なんだか照れくさい。

ためらっていると、腕を引っ張られて、彼女の膝に頭を乗せられた。……気持ちいいな。

彼女が優しく頭を撫でてくれるので、目を閉じる。安らぐな……本当に。

音が遠ざかり、振動も感じなくなって眠りについた。
そんな中、俺は夢を見た。

見知らぬ場所、見知らぬ人たち。彼らに囲まれた、一頭の龍。

あれが、龍王?

少し気の弱そうな龍王が、俺の方を見て驚いている。

「アンタ……アンタ、誰?」

龍王が喋った!?

周りの人々は、龍王を見て周りを見回している。彼らに俺は見えないのか。

「龍ちゃん、誰と話してるの?」

赤児を背中におんぶした女性が、手に布のついた棒を持って掃除をしながら、龍王に話しかけている。

龍ちゃん!? え、龍王が、こんなに人と近い? しかも、まるで家族のように扱われている。

「カジカ、静かにして。ハタキで掃除するなら向こうをお願い。アタシは来客があるの」

龍王はそう言って、俺の方に近づいて来る。

いや、なんというか……こんなに威圧感を感じない龍王は、初めてだ。

まるで、友人のような腰の低さと、龍王としての力強さを両方感じる稀有な存在。

これが、七体目の龍王なのか?

「アンタ、違う世界から来たのね?」

龍王が、俺の近くで質問してくる。

「あ、あぁ。俺はアーチロビン」

「アーチロビン……なるほど。この世界の海外の人間でもないわけね」

「あんたが、龍王?」

「そうよ。アンタ、夢の世界を渡ってきたのね? てことは、アタシに何か危機が迫ってるの?」

俺はこの世界のこと、魔王のことを龍王に伝えた。

龍王は、紙を取り出して、尻尾の先に墨をつけると、サラサラと書き込んでいる。

「ふんふん、なるほどね」

「この国ではそうやって、文字を書くのか?」

「んー、そうよ。今の時代はね。未来はもっと便利になるわ。スマホとかタブレットに打ち込むようになるから」

「スマホ? タブレット?」

「あぁ、やめましょ。世界観が壊れるわ」

「世界観……」

「話を戻すわね。そのレディオークとかいう魔物が、アタシを倒しにくる、と。アタシが負ければ、アンタの力を削いでしまうわけね」

「そうだ。七体目の龍王を倒したレディオークを、龍神が勇者と認めれば、俺は力を削がれる」

「アタシ、逃げた方がいいのかしら?」

「無理だ。こちらの世界からアンタの目の前に、道が開かれてしまう。おそらくどこに行っても、追いつかれる」

「ひゃー」

龍王は怯えて縮こまる。

おいおい、こんなに気弱でこの龍は、龍同士の戦いを制したのか?

「龍ちゃん」

カジカと呼ばれた女性が、ハタキをブン!と振ってやって来る。

な、何やら、破壊力を感じるな。

「龍ちゃんの話で、大体わかった」

「カジカ、アンタは関わらないのよ」

「いやよ、龍ちゃんは私が守る」

「アンタには、ダンナと赤ちゃんがいるでしょ」

「私の可愛い龍ちゃんに、手出しする魔物なんか、これでぶん殴ってやるんだから!」

「痛い!!」

彼女が振ったハタキが、龍王の尻尾に当たって、龍王が痛さに悶絶している。

え、掃除道具がそんなに武器になる世界?

俺が戸惑っていると、涙目の龍王が尻尾をフーフー吹きながら、俺を見た。

「あー、痛い。六体の龍王を倒したということは、相当強い魔物ね」

「あぁ、だから、俺たちがそこに行ってあんたを守る」

「まるで、武士ねぇ」

「武士?」

「日の本では、軍人のことをそう呼ぶ時代なの」

「へぇ」

「とにかく、こちらのことをあらかじめ伝えておくわよ。アンタたちみたいな格好した人が、ゾロゾロ来たら、この国の人は卒倒しちゃうわ」

「異邦人、ていうんだよな? 絵本に書いてあった」

「そうそう。ま、アタシの世界も正史の日の本じゃないけどね」

「そうなのか?」

「ん? あぁ! 忘れて! とにかく、早く来てちょうだい。アタシはなるべく海の中にいるわ。村から離れた方が、みんなを巻き込まないから」

「海だな」

「頼んだわよ、アーチロビン───」

周りの光景が白んでいって、見えなくなっていく。

夢から醒めるのか……。

「アーチロビン、アーチロビン」

体が揺さぶられて、目を覚ます。

フィオが、月の神殿に着いたと教えてくれた。

俺は起き上がると、みんなと馬車を降りて月の神殿を見上げた。

「入るかの」

魔導士ティトが言うので、俺は呼び止める。みんなに、さっきの夢のことを伝えておかないと。

俺は道々、夢で見たことをみんなに話した。

「夢……というのが、信憑性に欠けるけど、状況を考えると本当に夢を渡れたのかもしれないな」

ケルヴィン殿下が、考え込みながら聞いてくれた。

「日の本……その人たちの着ているものから察するに、かなり昔だね。武士なんて言葉が、サラッと出るんだから」

聖騎士ギルバートが、顎に指を置いて、うんうんと頷く。

「龍ちゃん、と呼ばれてるなんて可愛い。その龍王は、きっといいことを沢山して慕われた龍なんだわ。徳高い龍なのかも」

フィオが、ニコニコしながら俺を見た。慕われてるというか、馴染んでいるというか……。

近所で顔を合わせる、隣人のような龍王だった。

「しかし、聞けば頼りなさそうな龍王じゃのう。レディオークを歯牙にもかけぬほど、強かったらよかったのになぁ」

魔導士ティトが、ぼやいている。
まだ、戦闘力はわからない。それに、そばにいたハタキを振るう女性も、なかなかの迫力だった。

彼女が、最強の戦士なのか?

まさかな……。

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