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アホな婚約者よさようなら
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私はエリザベス。
生まれは貴族。
お嬢様。
婚約者はバノンという名前の、まったく使えない浮気者。
ティータイムの時間に相談があると言って、テーブルの向かい側に陣取ってきた。
「リティと駆け落ちした件なら、許すようにお父様に言われたので、とりあえず許します。」
開口一番私はバノンに言った。
バノンの父親は、私の父親の親友。
バノンの父親に、よく言い聞かせるからと泣きつかれて、駆け落ちした先からバノンを呼び戻してもらった。
許したくないけど、彼のお父様があまりにも気の毒だったから。
当のバノンは首を振っている。
「一緒になってみたら、全く使えない女でさ。
ちょうどよかったよ。
彼女も俺が無理矢理連れ戻されたと思っているから、恨んでないと言われてさ。
後腐れなくて助かった。」
なんてことを言う。
「私に謝罪は?」
「ごめんなさい、エリザベス。
これでいい?」
ため息しか出てこない。
「済んだことはこれくらいにしてさ。
聞いてくれよ。」
「何を?」
「好きな女性ができたんだ。」
堂々とそんなこと言うのね。
駆け落ち騒動が収まるか収まらないかのうちに、他の恋に悩んで相談にくる、呆れた人。
バノンは身を乗り出すと言った。
「王女ペティを振り向かせたい。
なんとかしてくれ。」
「あのね、バノン。
親が決めた婚約者とはいえ、失礼だと思わない?」
私はバノンに詰め寄る。
「あ、そうだ。
君の従姉妹のマリーには、もう飽きたと伝えてくれ。」
「バノン、だからね・・・。」
「それから、君の親友ジェニーはかわいいから、まだ別れは告げないでほしい。
ペティ様に振られたら彼女で穴埋めしたいからさ。
あ、これはこれまでにかかった交際費。」
「バノン・・・、私の周りの女性に次々と手を出してるの?」
私はこめかみに、青筋が浮き上がるのを感じていた。
「そうそう。
君の妹のヘレンだけど、もうお付き合いできる年齢だよね。
紹介してくれない?」
「いや。」
私の言葉にバノンは目を丸くして、驚く。
「なぜ?」
「妹を気に入ったら付き合うんでしょ?」
「もちろん。」
「・・・、ペティ様が本命よね?」
「彼女は天上に咲く一輪の花だ。
リティは、間違えて選んだ花。
マリーは花びらが散った後のめしべ。
ジェニーは、今が一番綺麗に咲いてる花。
ヘレンは開きかけた蕾。」
とうとうと語る彼に、怒りを通り越して呆れてしまう。
「つまり?
あなたにとっては、お花を摘んでるような感覚なのね?」
私はとりあえず、まとめてみる。
バノンは、うんうんと頷いて笑う。
「うまいこというね。」
「そりゃ、それだけ花に例えて話されればね。」
私は、拳を握りしめる。
「私は、何?」
笑顔を引き攣らせてバノンに尋ねた。
「エリザベス?」
「あなたにとっては、私は何?」
「ん?
婚約者でしょう?」
「そうは思えないの。
まるで、あなたのお母様のように扱われてない?」
バノンは私の言葉に、目を丸くして驚いていた。
「父様に言われたんだよ。
妻になる人は、母親と思って大事にしろ、てね。
だから・・・。」
「だから?」
「君を母親だと思って話してる。
頼りになるし、話を聞いてくれるし、僕を裏切らない。
おまけに僕を愛してくれて、結婚したら、子供まで産んで育ててくれる。
他にいないよ。
こんな素晴らしい女性は。」
その言葉で私の中では、もはや愛情という名の感情は全てなくなっていった。
「母親というより、都合のいい女なのね。」
私は凍るような声で喋った。
「あなたのお父様は、母親と同じくらい大切にしろと言いたかったんだと思うわ。
母親だと思って甘えろとは、おっしゃってないはずよ。」
私は立ち上がった。
バノンは瞬きをして、私の言葉を待っている。
「私は子供と結婚する気はありません。
あなたのお母様にもなりません。
私は、私を一人の女性として愛してくれる人と、結ばれたいと思いますので。」
そういうと、執事を呼ぶ。
「はい、お嬢様。」
「こちらのバノン・ダロ公爵との婚約は、白紙にいたします。
速やかに書類を整え、ダロ家に通達を。
結納金もすぐに止めてちょうだい。
それから、以前お話があったカーティス王子とのお見合いをお受けすると連絡してください。」
私はテキパキと指示を出した。
「君に権限があるのか!?」
バノンが吠えるが、私は駆け落ちを許す代わりに、この家の当主の座についたのだ。
もちろん、権限がある。
「もちろん。」
私は言い放って、そっぽを向いた。
お父様の顔を立ててきたけど、もう限界。
「エリザベス!?
なんでだよ?」
バノンは信じられないという顔をした。
「君は僕の婚約者だろ?
僕を裏切らない、僕のために尽くす、僕のためならどんなことも許す。
そうだろ?」
聞いているだけで頭が痛くなる。
なんなのこいつ。
「私は、母親にはなりませんと言いましたわ。
あなたを愛する義理はございません。
いっそ、お母様とご結婚ください。
あなたのいう条件を、すぐに満たしてくださるでしょう。」
私はそういうと、屋敷内の警備員を呼んでバノンをつまみ出した。
バノンは悪態をつきながら、帰っていった。
翌週、私はカーティス王子と見合いをして、トントン拍子に話が弾んで、婚約した。
バノンが王宮の門の入り口まで来て喚き散らしたらしいけど、衛兵につまみ出されて家に帰ったそうだ。
その後は、結婚に向けて王族として覚えなくてはいけないことを必死に学ぶ日々に、バノンのことはすっかり忘れていた。
嫌なことは新しいことで、塗りつぶすのが一番よね。
そんな時、バノンが逮捕されたと聞いた。
カーティス王子を呪うために、魔術師を呼んだら、その娘がとても綺麗な女性で、手を出してしまい、逆に彼が呪いをかけられたそう。
呪いと言っても、ずーっと酔っ払い続ける呪いなんだって。
それで喧嘩沙汰を起こして、逮捕。
別れてよかったわ。
さあ、今日はカーティス王子との結婚式!
外はとてもいい天気よ!
新しい門出には最高だわ!
私は、花嫁衣装を着て、カーティス王子が待つ場所まで、バージンロードを歩いて行く。
気になることなんて何もない。
私は幸せになるんだから。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。
お気に召したら、ブックマーク登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。
次回作は、『人身御供の乙女は、放り込まれた鬼の世界で、超絶美形の鬼の長に溺愛されて人生が変わりました』です。現在公開中です。
※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
生まれは貴族。
お嬢様。
婚約者はバノンという名前の、まったく使えない浮気者。
ティータイムの時間に相談があると言って、テーブルの向かい側に陣取ってきた。
「リティと駆け落ちした件なら、許すようにお父様に言われたので、とりあえず許します。」
開口一番私はバノンに言った。
バノンの父親は、私の父親の親友。
バノンの父親に、よく言い聞かせるからと泣きつかれて、駆け落ちした先からバノンを呼び戻してもらった。
許したくないけど、彼のお父様があまりにも気の毒だったから。
当のバノンは首を振っている。
「一緒になってみたら、全く使えない女でさ。
ちょうどよかったよ。
彼女も俺が無理矢理連れ戻されたと思っているから、恨んでないと言われてさ。
後腐れなくて助かった。」
なんてことを言う。
「私に謝罪は?」
「ごめんなさい、エリザベス。
これでいい?」
ため息しか出てこない。
「済んだことはこれくらいにしてさ。
聞いてくれよ。」
「何を?」
「好きな女性ができたんだ。」
堂々とそんなこと言うのね。
駆け落ち騒動が収まるか収まらないかのうちに、他の恋に悩んで相談にくる、呆れた人。
バノンは身を乗り出すと言った。
「王女ペティを振り向かせたい。
なんとかしてくれ。」
「あのね、バノン。
親が決めた婚約者とはいえ、失礼だと思わない?」
私はバノンに詰め寄る。
「あ、そうだ。
君の従姉妹のマリーには、もう飽きたと伝えてくれ。」
「バノン、だからね・・・。」
「それから、君の親友ジェニーはかわいいから、まだ別れは告げないでほしい。
ペティ様に振られたら彼女で穴埋めしたいからさ。
あ、これはこれまでにかかった交際費。」
「バノン・・・、私の周りの女性に次々と手を出してるの?」
私はこめかみに、青筋が浮き上がるのを感じていた。
「そうそう。
君の妹のヘレンだけど、もうお付き合いできる年齢だよね。
紹介してくれない?」
「いや。」
私の言葉にバノンは目を丸くして、驚く。
「なぜ?」
「妹を気に入ったら付き合うんでしょ?」
「もちろん。」
「・・・、ペティ様が本命よね?」
「彼女は天上に咲く一輪の花だ。
リティは、間違えて選んだ花。
マリーは花びらが散った後のめしべ。
ジェニーは、今が一番綺麗に咲いてる花。
ヘレンは開きかけた蕾。」
とうとうと語る彼に、怒りを通り越して呆れてしまう。
「つまり?
あなたにとっては、お花を摘んでるような感覚なのね?」
私はとりあえず、まとめてみる。
バノンは、うんうんと頷いて笑う。
「うまいこというね。」
「そりゃ、それだけ花に例えて話されればね。」
私は、拳を握りしめる。
「私は、何?」
笑顔を引き攣らせてバノンに尋ねた。
「エリザベス?」
「あなたにとっては、私は何?」
「ん?
婚約者でしょう?」
「そうは思えないの。
まるで、あなたのお母様のように扱われてない?」
バノンは私の言葉に、目を丸くして驚いていた。
「父様に言われたんだよ。
妻になる人は、母親と思って大事にしろ、てね。
だから・・・。」
「だから?」
「君を母親だと思って話してる。
頼りになるし、話を聞いてくれるし、僕を裏切らない。
おまけに僕を愛してくれて、結婚したら、子供まで産んで育ててくれる。
他にいないよ。
こんな素晴らしい女性は。」
その言葉で私の中では、もはや愛情という名の感情は全てなくなっていった。
「母親というより、都合のいい女なのね。」
私は凍るような声で喋った。
「あなたのお父様は、母親と同じくらい大切にしろと言いたかったんだと思うわ。
母親だと思って甘えろとは、おっしゃってないはずよ。」
私は立ち上がった。
バノンは瞬きをして、私の言葉を待っている。
「私は子供と結婚する気はありません。
あなたのお母様にもなりません。
私は、私を一人の女性として愛してくれる人と、結ばれたいと思いますので。」
そういうと、執事を呼ぶ。
「はい、お嬢様。」
「こちらのバノン・ダロ公爵との婚約は、白紙にいたします。
速やかに書類を整え、ダロ家に通達を。
結納金もすぐに止めてちょうだい。
それから、以前お話があったカーティス王子とのお見合いをお受けすると連絡してください。」
私はテキパキと指示を出した。
「君に権限があるのか!?」
バノンが吠えるが、私は駆け落ちを許す代わりに、この家の当主の座についたのだ。
もちろん、権限がある。
「もちろん。」
私は言い放って、そっぽを向いた。
お父様の顔を立ててきたけど、もう限界。
「エリザベス!?
なんでだよ?」
バノンは信じられないという顔をした。
「君は僕の婚約者だろ?
僕を裏切らない、僕のために尽くす、僕のためならどんなことも許す。
そうだろ?」
聞いているだけで頭が痛くなる。
なんなのこいつ。
「私は、母親にはなりませんと言いましたわ。
あなたを愛する義理はございません。
いっそ、お母様とご結婚ください。
あなたのいう条件を、すぐに満たしてくださるでしょう。」
私はそういうと、屋敷内の警備員を呼んでバノンをつまみ出した。
バノンは悪態をつきながら、帰っていった。
翌週、私はカーティス王子と見合いをして、トントン拍子に話が弾んで、婚約した。
バノンが王宮の門の入り口まで来て喚き散らしたらしいけど、衛兵につまみ出されて家に帰ったそうだ。
その後は、結婚に向けて王族として覚えなくてはいけないことを必死に学ぶ日々に、バノンのことはすっかり忘れていた。
嫌なことは新しいことで、塗りつぶすのが一番よね。
そんな時、バノンが逮捕されたと聞いた。
カーティス王子を呪うために、魔術師を呼んだら、その娘がとても綺麗な女性で、手を出してしまい、逆に彼が呪いをかけられたそう。
呪いと言っても、ずーっと酔っ払い続ける呪いなんだって。
それで喧嘩沙汰を起こして、逮捕。
別れてよかったわ。
さあ、今日はカーティス王子との結婚式!
外はとてもいい天気よ!
新しい門出には最高だわ!
私は、花嫁衣装を着て、カーティス王子が待つ場所まで、バージンロードを歩いて行く。
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