山に登ったら巫女少女と出会ったので遊ぶことにしました

榊空

文字の大きさ
9 / 92

9

しおりを挟む
 もみじに連れられて青藍せいらんの所に向かうと焚火に当たりながら無表情でありながらジト目でこちらを見つめてくる青藍と目が合う。



「遅いー、お腹空いてもう歩けない」

「そんなに時間たってないと思うんだけど。というか私のお野菜上げたでしょ?」

「野菜もいいけど、お肉が食べたい」

「あ、そうだ今更なんだけどどうしても食べられないものってあるかい? 例えば玉ねぎとか」

「なんで玉ねぎかは分からないけど、大丈夫だよ。この体になってからはなんでも食べられるようになったから」

「人の姿になれるようになると何か変わるのかい?」

「え? あー、多分、お兄さん勘違いしてます。私たちは元から人ですよ。人の姿から狐の姿になれるようになったのが私で、猫の姿になれるようになったのが青藍ちゃんです」

「え、そうなのかい? あー、それなら何でも食べられるのかな。好き嫌いとかもないのかい?」

「ないですよ。青藍ちゃんもないです」

「そっか、それなら安心だ」



 もみじと青藍に確認をした後に静人とかなでは調理を開始する。早く食べたいというのは分かっていたので、できるだけ早く下準備を終わらせ焼く工程に入る。



「まさかおにいさん達が帰って来てからも待たされるとは……、このお肉が焼ける音と匂いがきつい……」

「青藍ちゃん、よだれよだれ」

「じゅる、おっと、危ない。でも、この匂いはしょうがないと思うんだよにゃあ」

「口調も崩れてきてるからね? まったくもう」

「そういうもみじちゃんだってよだれ垂れてきてるわよ?」

「ふへ!?」

「ふっふっふー、もみじちゃんもこの匂いには抗えないようだね」

「う、この匂いがずるいんだもん。いつもはもっとこう普通だもん」

「別に恥ずかしがらなくてもいいのよ? はいこれ、小さいのが焼きあがったわ」

「「ごくり」」



 もみじと青藍は目の前に出されたハンバーグを見て、というか匂いを嗅いで、尻尾が見えたら振ってるのではという表情で釘付けになっている。なぜかつばは飲み込むが食べようとしないもみじ達にかなでは首を傾げる。



「あれ、どうしたの? 食べないの?」

「た、食べてもいいの?」

「食べてもらいたくて作ったのだから、むしろ食べてもらわなくちゃ困るわ。ほら、まだまだ作ってるから遠慮せずに食べて!」

「「い、いただきます!」」



 もみじと青藍は手を合わせると目の前にだされたハンバーグを無我夢中で食べた。美味しいからかどんどん食べながらも終始笑顔だ。そして、一つのハンバーグを食べ終えるのと同時になぜか二人とも涙をこぼしている。



「え!? どうしたの!? おいしくなかった? 苦手なものとか入ってたのかしら!?」

「え? あれ? なんで泣いてるんだろう? おかしいね。暖かくておいしいって思っただけなのに」

「優しくて幸せな味がしたから? 自分で収穫して食べるのも達成感があっておいしく感じたけれど、この料理は作った人の優しさが込められてる気がする」

「……いいのかな、こんなにおいしいものをもらっちゃって……」



 もみじはおいしくて幸せな気持ちになれる料理を見て、自分が返せるものがないことに気が付いたのか小さい声で呟く。罪悪感を感じているのが手に取るようにわかる表情だった。そんなもみじ達の目の前に新しく出来上がったハンバーグを置きながら、二人の頭を撫でる。急な行動に驚いた表情を見せるもみじ達だったが、かなでの優しい笑顔に何も言えずにされるがままになっている。そんな二人を見てかなでが口を開く。



「料理はね愛情を込めて作るのよ? おいしいって言ってくれるかなーとか、喜んでくれるかなーとか考えてね、そうやって作るの。だから、食べてるときはそんなめんどくさいことは考えないで、おいしい時はおいしいって言う。嬉しい時は嬉しさを表現する。それだけでいいのよ? それだけで私としず君は嬉しいのよ」

「……えへへ、うん。ありがとう。すごく、すっごくおいしいよ!」

「うん、おいしい。すごくおいしいよ。もっと食べていい?」

「もちろん! じゃんじゃん作るからね!」



 もみじ達はそんなかなでの言葉を聞いて安心したのか、最初謙遜していたのが嘘のように素直に甘えれるようになっていた。お代わりを要求されたかなでは、嬉しそうに袖をまくり上げると静人のところに戻り気合を入れて新しいハンバーグを作り始める。そんなハンバーグを小さい体のどこに詰め込んでいるのかもみじ達はどんどん食べていく。二人がもう動けないぐらいに食べたときに残っていたのは、二人分のハンバーグが作れるかどうか位の量だった。



「ふふ、たくさん食べたわね」

「ごちそうさまでした。こんなにたくさん食べれたの初めてかもしれない。お腹が苦しいのなんて今まで経験したことないもん」

「満足。美味しかった。今まで食べたこともないくらいすごくおいしかったよ」

「それは、良かったわ」

「やっぱり、嬉しいものだね。こうやっておいしいって言ってもらえるのは」



 もみじ達はお腹が苦しいのか動きづらそうにしていたが、それでも表情は言うまでもなく喜びの表情だった。そんな表情のもみじ達を見られてうれしいのか、たくさんの料理を作って疲れているはずの二人も笑顔で残ったハンバーグを食べていた。



「ごちそうさまでした。さて、僕らはもうそろそろ帰ろうか」

「そうね、あまり長居するのも悪いものね。着替えも持ってくるの忘れてたし」

「着替え持ってきてても帰ってたけどね。明日からもいろいろあるんだから」

「私は別に大丈夫よ? 私の仕事は家の事だけだし。時間に多少の余裕はあるわ」

「えっと、基本ここへの入り口は夕方から夜の間しか開かないから、朝は来れないですよ?」

「な、なんですって……、私の癒しが……」

「えっと、ごめんなさい」



 打ちひしがれるかなでを見て謝るもみじと対照的に、静人は呆れた様子だった。



「ほら、子供に謝らせるのはどうかと思うよ? 今日はありがとうね?」

「あ、でもほら、明日の夕方は来ても大丈夫よね? それに、ご飯作らないともみじちゃんたち、また野菜だけの生活になるわよ?」

「それは、……そうかもね、よし、それじゃあこれから毎日、夕方にご飯を作りに来ようか。その時にもみじちゃん達にはご飯作るのを手伝ってもらおう」

「そうね、それで少しずつ料理になれてもらいましょうか」



 静人はかなでの言葉に納得したのか頷く。



「で、できるかな……? おいしくないものができると思うよ? 作ったことないから」

「その時はその時、というか初めからできるなんて思ってないから。少しずつでいいのよ少しずつで」

「少しずつ……」

「むむ、私も作るの? どちらかというと私は食べる係がいい」

「だーめ、ちゃんと青藍ちゃんにも覚えてもらうからね? 今日の料理美味しかったでしょ?」

「おいしかったー。けど、自分で作ってもおいしくないと思う。あれはおねえさん達が作ってくれたから美味しかったんだろうなって思ったし」

「むはー、嬉しいことを言ってくれるじゃない! それなら、私たちと一緒に食べた、初めての料理として覚えて欲しいなって思うんだけどダメかしら?」

「むむ、うーん、まぁいいか。お姉さんたちと食べた料理はおいしかったし、覚えようかな?」



 青藍は少し考えこんだそぶりを見せた後、さっきまでの料理のことを思い出す。思い出した後想い出としてならいいかなと笑顔になる。



「ふふ、それでいいわよ。もみじちゃんも一緒に料理頑張って作ろうね!」

「はい! 私の作った料理をお兄さんたちに食べてもらって、おいしいって言ってもらえるように頑張ります! 青藍ちゃん一緒に頑張ろうね」

「ほどほどに頑張る。もみじちゃんはすごい頑張って。楽しみにしてるから」

「うん! 頑張るよ!」

「ふふふ、それなら、二人には可愛いエプロンを用意しなきゃいけないわね」

「「えぷろん?」」

「渡すときに教えるわね。よし、明日することは決まったし帰りましょうか」



 かなでは楽しみにしててねと二人に笑いかけながら静人と一緒に帰る。もみじ達は二人に手を振りながら見送る。その様子に嬉しそうな顔をしながらかなでが手を振り返す。もみじ達はその様子に更に嬉しそうにぴょんぴょん跳ねながら手をぶんぶん降り返していた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...