山に登ったら巫女少女と出会ったので遊ぶことにしました

榊空

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 用水路の工事を始めて二か月近くたったある日、ついに用水路が完成した。図が書いてあるノートを置いた静人は満足そうな顔で用水路を眺める。一回煮沸させてから使うことになるだろう水を見ながら静人は腕を組んで悩むそぶりを見せる。



「そういえば何だけど、飲み水とかはどうしてるんだい?」

「井戸の水を使ってるよ?」

「え、井戸があるのかい? 僕たち見たことないんだけど」

「うん! 前からあるよ? 冷たくておいしいの!」

「しかも飲めるのか……、それならその水を使えばよかったかな」



 今まで自分たちの家から持ってきていた大量の水のことを思い出しながら苦笑する。そんな静人を見ていたかなでが口をはさむ。



「私たちも大丈夫かは分からないんだけどね。そうだ! 水質調査とかできないの?」

「水質調査用のキットがあるけど、飲料水としての調査なら業者に頼んで調べてもらう形になるよ?」

「ここに連れてこないといけないってこと? それなら駄目ね……」

「いや、ここには連れてこなくていいんだけどね。ただ、水を入れる容器が送られてくるから、それに水を入れて調査を依頼するって感じかな」

「なるほどねー、それなら今度頼んでみる? 私たちが使ってもいいなら楽だし」

「お水美味しかったよ?」



 もみじはキョトンとした顔で首を傾げながら二人を見る。そんなもみじを見て、少し慌てた様子のかなでが落ち着いた声で話しかける。



「念のためよ。調査をして結果を見てからのほうが安心だしね。安心できるっていうのは大事なことなのよ?」

「そうなの?」

「その井戸からの水はどうやって汲んでるんだい?」

「ロープをね! クルクルってするの!」



 明るい表情になったもみじを見て、ほっとした表情で息をつくかなでだったが、気が付いていないもみじは楽しそうに体全体で水を汲むのを表現していた。



「もしかして、釣瓶かい? 結構大変だろう?」

「うん! だから、飲み水以外は川で汲むようにしてるの!」

「ねぇねぇしず君。釣瓶ってどのくらい大変なの?」

「そうだね。簡単に想像するなら、お水が入ったバケツを二階からロープで引っ張るって考えたらいいんじゃないかな。滑車があるからそれよりは楽だろうけど、それを何回もするって考えたら大変さが分かるでしょ?」



 静人の言葉を想像したのか顔をしかめるかなではそのあと静人を期待のまなざしを向ける。



「それは確かに大変かも。それを簡単にすることはできないの?」

「それこそポンプとかにしたらいいんだろうけど、それは日曜大工の域を超えてる気がするね」

「頑張りましょう!」

「いや、さすがにね。それこそたくさんの人の力を借りないと無理かな」

「用水路は作ったのに……、わざわざ本まで買ってコンクリートを固めてたくせに」

「用水路はそこまで長い距離じゃなかったし、それでも二か月はかかったんだから」

「確かに二か月もかかったのよね……。井戸についてはいい考えを思いつくまで保留ね」

「さてと、今日もなんだかんだでお昼だし料理を作って食べたら帰ろうか。また夜に来るけど」



 静人達は最初、夜のご飯を作って食べた後に作業を始めて帰る生活をしていたが、それでは時間が足りないと考えて、夜のご飯の分と次の日の朝昼の分の食材を持ってきて料理をするようになった。朝、目が覚めたら朝ご飯を作って用水路を作りに出かけ、昼になったら昼食を作り四人で一緒に食べてから家に戻り、かなでは家事と食材の調達、静人は仕事をするという多忙な毎日になっていた。それでも二人とも苦痛に思ってはいないのか楽しそうな毎日を送っていた。



「お兄さんたち大丈夫? 一日ぐらいゆっくりしたほうがいいと思うよ?」

「そうだよ、毎日来るけどここ最近は朝も昼も働いてる。少しは休まないと体壊しちゃうよ?」

「このぐらいなら体を壊したりしないよ。大丈夫」

「そうね、むしろ、もみじちゃんと青藍ちゃんに会えないほうが体の疲れが取れないわ。心配になっちゃって夜も眠れなくなりそう」

「それなら私たちだって、おにいさんたちのことが心配。だから、今日の夜くらいはここに来ないで休む。いい?」







「う、分かったわ。それじゃあ、今日だけ休もうかしら。そのかわり青藍ちゃん達もしっかりご飯食べて、お風呂に入って、しっかり寝ること。いいわね?」



 心配だからか一言ずつ言葉を区切って話すかなでに、青藍は無表情ながらもしっかりと頷いて見せた。



「大丈夫。もみじちゃんもいるし、約束は守る。お兄さんもそれでいい?」

「うん、分かった。今日は家でゆっくりするね。青藍ちゃんももみじちゃんもしっかりご飯食べるんだよ? あ、それと二人は文字読めるかな?」

「私は分かる」

「青藍ちゃんは分かるよ! 私も少しなら読めるけど、どうして?」

「そっか、それなら今度分からない文字のほうは教えるけど、実は料理の本を買ったんだ。僕たちも作ったことのない料理も書かれてて、ためになる本だったからもみじちゃん達にも見せたいなって思って」

「お兄さんたちも作ったことない……、見てみたい!」

「私も少し気になるから見せて」

「分かった。今日は持ってきてないから明日持ってくるね。その時に読み方も教えるね」

「うん! お兄さんありがとう!」

「楽しみにしてる」



 もみじは静人の説明に目を輝かせ、青藍も無表情ではあるが、本に対しての好奇心はあるのか、いつもよりも声が弾んでいるように感じた。



「それじゃあ今日は帰るね。今日はゆっくりする約束だから、また明日の夜だね」

「うん! ばいばい! 用水路ありがとね!」

「ばいばい。また明日。用水路は大事にする」

「ホントいい子ね。……私だけでも来たらダメかしら」

「だめ。休む。お姉さんを許したら、お兄さんも来ちゃいそうだし」

「しょうがないわね。もみじちゃん達の優しさを無下にするのも悪いし、今日は帰るわね。また明日ね」

「うん! ばいばーい!」

「また明日。……今日の夜来ても入れないからね?」

「も、もちろん分かってるわよ!? おほほほ」

「また、わざとらしい笑い方を……。今時いないよ。そんな笑い方の人」

「ほ、ほら帰りましょう! もみじちゃん送ってくれる?」



 ジト目で見てくる青藍に対して動揺した様子のかなでは、悪役令嬢のような笑い方で返したが、静人はそんなかなでを見て呆れた様子でため息をついていた。かなでは慌てた様子でその場から立ち去ろうとしたが、もみじに送ってもらわないといけないことに気が付いたのか、せわしなく体を動かした後、視線をもみじのほうにむける。もみじはそんなかなで達の様子を微笑ましいものを見る目で見た後、いつもの場所まで見送った。かなでは初め涙目であったが、怒ることもできず、思い切りかなでと青藍を抱きしめ機嫌を直したのか最後は笑ってその場を後にした。
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