山に登ったら巫女少女と出会ったので遊ぶことにしました

榊空

文字の大きさ
23 / 92

23

しおりを挟む

 家に帰り着いた静人達は早速パソコンで小物を調べ始める。最初は二人で調べていたが、一人はお昼ご飯の準備をしないといけないことに気が付いてかなでが調べることになった。



「結構あるのね……」

「かなで、お昼ご飯はチャーハンでいいかい?」

「ええ、おいしいのを期待してるわね?」

「分かった。美味しくなるように頑張るよ」



 かなでのお願いに微笑んで返す静人はキッチンへと戻っていく。からからと卵を溶く音やチャーハンを焼く音がリビングまで響いてくる。醤油の焦げるいい匂いがしたところでかなでのお腹から音が鳴る。



「くぅ、ここまで匂いが充満するなんて……、お腹空いてきたよー。さすがはしず君」

「はい、チャーハン。それと卵のスープも作ったからそっちも食べてね」

「美味しそうな匂い! いただきます!」

「召し上がれ」



 我慢ができなかったのか、目の前に出されたチャーハンにすぐに手を付けたかなでは、口をもぐもぐさせながら顔で美味しさを伝えてくる。



「はは、そんながっつかなくても……、僕の分はあげないからね?」

「そんなことしないわよ。あ、卵スープも美味しい」

「寒い日はあったかい汁ものが一品ないとね」

「内側からあったまるのは美味しいし安心するわよね」

「そうだね。寒い日は汁物が一番。今度また豚汁とか作ろうかな」

「お肉たっぷりでよろしく。あ、ケーキどうしようか」

「作るつもりだよ?家族が一人増えた記念で。あ、用水路ができた記念でもあるね」

「そういえばそうね。桔梗ちゃんが来たことで忘れてたわ」

「ケーキと一緒に洋服渡そうか。小物はまた今度かな」

「そうね。自分たちで納得できる出来になってから渡しましょう」

「妥協はしたくないからね」



 静人はチャーハンを食べながら自分で買った素材をちらりと流し見て頷く。かなではいつもより早く食べ終わり食器を片付けると、自分の買ってきた素材を抱えて自分の部屋に持って向かっていく。



「ごちそうさまでした。あ、食器は私が洗うから流し台に置いといてね。食べ終わったら呼んで!」

「はいはい、ゆっくり食べるから遠慮しないで小物作りに専念してて」

「はーい! それじゃあお先!」



 早く作業を始めたいかなでは静人に返事をしてすぐに自分の部屋に入っていく。その後ろ姿を苦笑いで見送る静人は目の前のチャーハンを味わって食べてから、卵スープで体を温めると空になった食器を流し台に置き自分の部屋に荷物を運んでいった。運び終わった静人は一息ついた後かなでのもとへ向かう。



「かなで、食べ終わったよ」

「え、もう? 早かったわね。まだ素材の厳選すら終わってないわ」

「僕が早いというか、かなでが時間を忘れて厳選していただけだと思うけど」

「そうかしら? あ、そんな話をしてる場合じゃないわ。これなんだけど……」

「うん? あー、これは……」



 かなでは静人にデザインが見えるように紙を渡すと、受け取った静人は少し考えこみながらも意見を伝える。二人で意見を交換しながら少しずつ完成に近づいていく。



「出来た!」

「これなら気に入ってもらえるかな? 結局は僕たちじゃなくて着る人の気持ち次第だからね」

「それはそうなんだけど、もみじちゃん達って洋服の種類とか分かるのかな?」

「巫女服しか見たことないから、もしかしたらわからないかもね……」

「ふふ、教えがいがあるわね! たくさん用意して、どんな色が好きかとか聞いて最高に似合う服を作り上げるのよ!」

「僕は洋服づくりには関われなさそうだから小物作りを頑張るよ」

「ええ、洋服づくりは私と凪さんとグラで頑張るわ!」



 拳を握り締めて掲げるかなでは気合が入った声を出す。



「もうそろそろケーキ作り始めようかな」

「あ、フルーツケーキがいい!」

「もみじちゃん達が気に入ってくれたら嬉しいけどね」

「大丈夫! しず君が作るケーキおいしいもの!」

「あはは、ありがとう。ケーキは一つじゃなくて二つぐらい作ってみようかな」



 静人はかなでの言葉が嬉しかったのか静かにやる気を見せ、照れ隠しなのか作るケーキを増やそうと考えた。



「ホント!? あとはショートケーキかしら……。チョコケーキ、ここはモンブランという可能性も……」



 静人の提案に嬉しそうな声で反応するかなでは、今まで食べたケーキを思い出しながらつぶやく。そんなかなでを見て頬をかきながら口を出す。



「最初はショートケーキがいいかなって思ってるんだけど。あくまでも主役はもみじちゃん達だからね?」

「わ、分かってるわよ。うん。ショートケーキも美味しいもの」

「ならいいけど。……今度、他のケーキも作ろうか?」

「大好き! しず君!」

「現金というかなんというか。僕も大好きだよ、かなで」



 苦笑いをしながらもその気持ちに偽りはないのか、静人はかなでに顔を向け嬉しそうに柔らかく微笑む。少し雰囲気がほわほわしたところで静人達は動き出した。静人はケーキを、かなでは小物のデザインと素材の厳選を始める。ケーキが楽しみなかなではいつもなら手伝う調理から離れて、出来上がるケーキを待ち望みながら作業を始める。



「フルーツ、何使うのかしら。近くで買ってくるとは言ってたけど」



 ケーキの材料を買い忘れた静人が慌てて買い物に向かっていくのを見ていたかなでは、ワクワクしながら静人の帰りを待つ。しばらく静かに待っていたかなでだったが、暇になったのか紙にデザインを描き始める。



「ふぅ、あ、なんかいい匂いする……」



 時間を忘れるくらい集中して描いていたかなでは一息つこうと背伸びしたときに、自分の部屋にいい匂いが届いていることに気付く。鼻をスンスンさせながら匂いの元に引き寄せられていくかなでの行きついた先で静人がケーキを並べていた。



「おや? においに引き寄せられたのかい?」



 静人はケーキを並べて箱の中に入れている途中でかなでの姿に気が付き苦笑いを浮かべる。そんな静人の姿に気が付いたかなでは今どう思われているのか分かったのか、手をワタワタさせながら必死に話し出す。



「ち、違うからね!? 別にいい匂いがしたから来ただけで、食べようと思ってきたわけじゃないからね!」

「分かってるよ。……ちなみにケーキは味見用があるけど食べるかい?」

「食べ……ない! やっぱりもみじちゃん達と一緒に食べたいもんね!」

「あはは、そうかい? あ、飾りつけをするから手伝ってくれるかい?」

「ええ、いいわよ! 綺麗に飾り付けるわ!」

「ふふ、期待してるね」



 やる気を出したかなでは静人から渡されたケーキをじっくり見て、ふちに生クリームで壁を作り、内側に飾り付け用にカットされたフルーツをふんだんに盛り付ける。



「出来た! どう? しず君」

「これはまたたくさん盛りつけたね。食べきれるかい?」

「私たちよりかもあの子たちのほうが食べるし。大丈夫よ。それに二ホールなら私でもいける」

「体に悪いからやめてね? 時間もいい感じだし、もうそろそろ行こうか」

「出来れば形崩したくないし、丁寧に持ってね!」

「あ、持つのは僕なんだ。……一つは持つからもう一つは持ってもらっていい?」



 ケーキを入れた箱と自分の荷物を交互に見て、無理だと感じたのか首を横に振ってかなでにもう一つのケーキを頼む。かなでは静人の荷物を見て納得した顔で頷いて大事そうに受け取る。



「……食べないでね?」

「食べないわよ! よし、それじゃあ行きましょうか」



 からかい交じりの静人の声に頬を膨らませてかなでが反論した後、気を取り直して自分の荷物を持っていつもの場所に向かう。いつものように森の入り口に着いた二人はもみじ達が来たのに気づいて手をあげると、もみじ達が固まった様子で静人達を見つめる。



「どうしたの?」

「ふむ、お主たちが連れてきたわけではないのか。後ろの者たちは誰なのだ?」

「え?」



 固まっていたもみじの代わりに一歩前に出た桔梗が話し始める。その言葉に驚いた様子の静人達は慌てた様子で後ろを振り向くと、そこにはバツが悪そうな顔で出てくる二人の人影があった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

神のミスで転生したけど、幼女化しちゃった! 神具【調薬釜】で、異世界ライフを楽しもう!

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
旧題:神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜  ※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!  電子書籍は、2026/3/9に発売です!  書籍は2026/3/11に発売(予約受付中)です!メロンブックス様より、特典の描き下ろしSSペーパーがあります。詳しくは、メロンブックス様へお願い致します。  イラストは、にとろん様です。よろしくお願い致します!  ファンタジー小説大賞に投票して頂いた皆様には、大変感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】元Sランク受付嬢の、路地裏ひとり酒とまかない飯

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ギルド受付嬢の佐倉レナ、外見はちょっと美人。仕事ぶりは真面目でテキパキ。そんなどこにでもいる女性。 でも実はその正体、数年前まで“災厄クラス”とまで噂された元Sランク冒険者。 今は戦わない。名乗らない。ひっそり事務仕事に徹してる。 なぜって、もう十分なんです。命がけで世界を救った報酬は、“おひとりさま晩酌”の幸福。 今日も定時で仕事を終え、路地裏の飯処〈モンス飯亭〉へ直行。 絶品まかないメシとよく冷えた一杯で、心と体をリセットする時間。 それが、いまのレナの“最強スタイル”。 誰にも気を使わない、誰も邪魔しない。 そんなおひとりさまグルメライフ、ここに開幕。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...