山に登ったら巫女少女と出会ったので遊ぶことにしました

榊空

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 いつも通りの時間に神社に向かいみんなで談笑しているときに、今日あったことを思い出した静人が桔梗に質問を投げる。



「今日帰りにみどりさんって名乗る人に会って話をしたんだけど、その人から何か話を聞いてるかい?」

「みどりと会ったのだ? わしらは特に何も聞いておらんのだ。何か言っておったのだ?」

「今日会いに来るって言ってたんだけど……」

「うむ? そうなのだ? だったら多分来るのだ」

「そういえばここに人が入ってくるところ見たことないけどどんな感じなの?」

「えっとね、あ、あんな感じだよ」



 もみじが説明しようと口を開いたタイミングと同時に空間がゆがむ。その中から話題のみどりが現れた。



「あら、話をしてたら来たわね。私たちもあんな風に出てくるの?」

「お姉ちゃんたちは木々の間で空間を歪ませておるからあそこまで露骨な歪み方はしておらんのだ」

「あ、桔梗やあらへんの。久しぶり、元気そうやなぁ」

「久しぶりなのだ。みどりも元気そうで良かったのだ」

「あら、その語尾変わってないんやな。かわいらしいままや」

「うむ? 前は威厳があると言ってたのだ。かわいらしいのだ?」



 桔梗の言葉遣いに口をほころばせたみどりだったが、そんなみどりの言葉に眉間にしわを寄せた桔梗がみどりに詰め寄る。失言したと顔に書いてあるみどりはとっさに言い繕うが、顔は微笑ましいものを見る顔のままだ。



「あ、うんうん。威厳があるで?」

「本当にそう思ってるのだ? いまさら口調を変えるのも難しいのだから本音を言ってもいいのだ」

「すごいかわいらしい語尾やなって思ってた。まぁ、その見た目やし威厳も何もあらへんよ」

「うぬ……、やはりか、そうだろうとは思っていたのだ。というか、見た目はお主もそう変わらんのだ! 大人の姿に擬態しよって」

「一応この姿もうちの姿やし、今となってはこの姿のほうが長いんやもん。と、他の人らが話に入りづらそうやし。桔梗、紹介してや」

「静人とお姉ちゃんはもう知っているのだから、先にこちらを紹介するのだ。わしの友達のもみじと青藍なのだ!」

「友達? あら、やっと友達ができたんやね。よろしくな?」



 桔梗に紹介された二人が前に出て軽く頭を下げる。



「あ、もみじです! よろしくお願いします!」

「青藍。よろしく」

「青藍ちゃんダメだよ? ちゃんとあいさつしないと!」

「でも、これ以上何を言えと……?」

「構わんよ? おっと、そういえばずっとこの姿やったな。ちょっと待っててな」



 気にしていない顔で笑うみどりだったが、自分の姿を見て納得したのかもみじ達から少し離れると同時にみどりの体が光りだす。光が収まった場所にいるのは先ほどよりも背が縮み幼い顔になったみどりの姿だった。外見年齢的には桔梗と同じくらいに見える。



「ほい、どちらかと言えばこっちが本当の姿や。せやからそこまで硬くならへんでよかよ?」

「わぁ! 小さくなっちゃった! 大丈夫なの? 体痛くない?」

「あはー、この姿になって体の心配したのはあんたが二人目やな」

「他にもいたの? 心配した人」

「おったで? というかすぐ後ろで渋い顔をしとるやつやな」



 もみじの心配そうな言葉に軽く笑ったみどりの言葉に青藍が聞き返すと、みどりは青藍たちの後ろで渋い顔でみどりを見る桔梗を指さす。頬を少し膨らませた桔梗は指さしてきたみどりから目をそらしボソッと呟く。



「普通、急に体が縮んだら痛くないかどうか確認するのだ」

「私たちは普通の人じゃないけどね。そもそも桔梗も犬から人になれるんだし」

「うぐ、あの時はいきなりだったからびっくりしただけなのだ」

「まさか、すごいと称賛されるのではなく大丈夫かと心配されるとは思わなかった」

「称賛されたかったの?」

「そうやなぁ。変化してドヤ顔決めたら涙目で体をさすられてん。さすがにびっくりしたわ」

「それはびっくりする」

「うぐぐ」

「いや、まぁ、嬉しかったからええんやけどな? っと、そやそや静人さんらに聞きたいことがあってんやけど」



 微笑みつつ桔梗たちと話してたみどりだったが、静人のほうを見て思い出したのか微笑みをそのままに静人に話しかける。



「僕たちに? 何かな?」

「いや、わざわざうちの所に買い物に来たやろ? なんでかなっておもて」

「あー、その話はご飯の後でいいかな? その方が話も早いと思うし」

「おん? まぁええけど。どこで食べるん?」

「もちろんここでだよ。というかそのための食材を買いに行ってたわけだからね」

「私たちも手伝って料理作ってるんだよ!」

「私はそこまでしてないけどね。大体もみじちゃんが手伝ってる」

「おー、偉いなぁ。……え、もしかして桔梗も手伝っているん?」



 青藍ともみじの頭を優しくなでていたみどりだったが、桔梗の顔を見て体がこわばる。そんなみどりの姿を見て遠い目をした桔梗が話しかける。



「安心するのだ。わしは手伝っておらんのだ。いや、食器並べ位は手伝うがな? 料理の方には手を出しておらんのだ」

「そう、それならよかった。うちも手伝ったほうがいい?」

「いや、今日の所はお客さんとしてゆっくりしてもらっていいよ」

「そ? それならゆっくりしときますわ。桔梗は手伝わんようにな」

「分かっているのだ。この前久しぶりに料理を作ったら大変なことになったからもう諦めているのだ」

「桔梗お姉ちゃんと一緒にいつかは料理したいなって思ってるんだけど……」

「う、うむ。いつかは出来るのだ。……きっと」

「桔梗ちゃんの料理講座はまた今度開くとして、今日はこれを持ってきたんだけど食べたことあるかな?」



 そう言って取り出したのは今日みどりの所で買ったサンマである。見たことなかったのかもみじと青藍は興味津々な様子で近づいてくる。



「魚なのは分かるけど名前までは分からない」

「青藍ちゃんってお魚好きだよね? その青藍ちゃんが知らないなら私にもわからないかな?」

「魚自体は食べたことあるんだね?」

「うん! ここの近くの川にもいるからたまに食べてたの! さすがにお兄さんたちに食べてもらうことは出来ないけど」

「あー、もしかしてそのまま食べてたり?」

「頭からもしゃもしゃと食べてた。おいしいよ?」

「寄生虫の問題があると思うんだけど」

「おん? この世界にはそんなもんおらんやろ? 危険なものを排除するのがここの結界の役目やし」

「そうなんですか? だったら大丈夫なのかな……? あ、でも頭から食べてたってことは捌いたりとかはしてなかったのか」

「魚は丸のみが美味しいよ? お兄ちゃんたちの料理はそれ以上においしいけど」

「ありがとう。僕達に丸のみはできないからね。料理するよ。というわけでさばいていくといいたいけど、今日使う魚はサンマだからね。とてもシンプルに塩焼きにしようかなって思ってるんだ」

「塩で焼くだけなの?」

「うん。だから魚の料理はまた今度かな。酢締めとかいろいろ作りたいけど今日は焼くだけ。でもその一品だけだと寂しいからお味噌汁とか作ろうか」

「分かった! お味噌汁作るね!」

「焼くだけでもおいしくなる……? 私は生で食べてたけどもしかして勿体ない食べ方をしてた……?」



 静人の提案にやる気をみなぎらせるもみじと違い、青藍は焼くだけでもおいしくなるという事実にショックを受けたのか呆然とした顔でぶつぶつ呟く。



「どうしたの青藍ちゃん?」

「なんでもない。お味噌汁なら私の出番ないしおとなしく座って待っとく」

「ご飯炊いてるから時間見ててもらっていいかな?」

「任せて」



 青藍はもみじに心配ないと告げてから土鍋のご飯をじっとして眺める。やはりさっきの動揺が抑えられないのかいつもより目が死んでるように感じる。



「それじゃあサンマの下処理から。とはいっても海からあげられるときに鱗とか大体とれちゃうらしいけどね。鱗を水で洗って体の汚れを流したら余分な水をキッチンペーパーで吸い取る。そのあとに塩を振って少し時間をおいてから浮き出てきた水を吸い取る。あとは焼くだけだね」

「きっちんぺーぱー?」

「使い捨ての紙のことなんだけど。これはみどりさんに相談かな」

「あー、なるほど。それでうちの所に来たんやね?」

「聞いてたんですか?」

「まぁ、せやね。なんとなく予想はしとったさかい。まぁ、その前にご飯食べないと青藍ちゃんの顔が怖いんやけど」



 聞いたことのない単語だったからか首を傾げるもみじを見て確信に変わったのか、静人達の所に来たみどりだったが、青藍の顔を見て長くなりそうな話をするのをやめた。



「焼き魚にするだけでこんなにもいい匂いが……。ぐすん」

「早うせんと青藍ちゃんがおかしくなってしまうで?」

「なんで涙目なんだろう……。あ、お兄さん。お味噌汁は私も手伝います!」

「うん。一緒に頑張ろうね」

「なんというかこうなると私のやる仕事がなくなるわね。うーん。あ、みどり……さん? ちゃん? ちょっといいかしら?」

「ちゃんでも呼び捨てでも好きな方でええで? それでどんな用事?」

「ありがとうみどりちゃん! えっとここの世界に電気とかって用意出来る?」



 ちゃん付で呼ばれたことに笑顔になったみどりだったが、そのあとのかなでの提案に顔をしかめる。



「さすがに無理やろなぁ。用意できたとしても偉い高くなる思うで? かといってここに発電所作るのは嫌やし。水道すら用意出来ひんしな。まぁガスぐらいなら用意するのも大変やないやろうけど。お金どうするん?」

「やっぱり無理よね……」



 みどりの言葉に無茶な要求だと感じていたかなではため息をつく。そんな二人の会話に桔梗が混じってくる。



「そのことについては静人と話したのだ。ここで作物を作る。そっちで言う無農薬野菜とかになるのだ? それをみどりの所で卸したいと考えているのだ」

「うーん。まぁ、それなら何とかなるやろか。そや、いっそのことここに村を作らへん?」

「村なのだ?」

「そう、村といっても私たちみたいな人たちの村や。探したことはあらへんけどうちたちと似たような境遇の人は他にもいると思うんよ」

「なるほどの? 確かにそういうものがいるのならここに住んでもいいのだ。でも、村を作るのはさすがに大変なのだ。ここだけだとすぐに人でいっぱいになってしまうのだ」

「そこらへんは無駄に広い森の中に作るんよ。この世界の天気は掌握しとるやろ?」

「うむ、もちろんなのだ。とはいえ森を開拓するのはさすがにこの人数だと厳しいのだ」

「さすがに静人さんらを手伝わせるのもあれやから、ここに来てもいいって言ったやつらにも手伝わせる。一人そういう知り合いがおるねん」

「うーむ。分かったのだ。でも、住む前にわしらともみじ達に会ってからにしてほしいのだ。性格的に合わんやつだったらそのものよりももみじ達を選ぶのだ」

「それはそうやな。とはいえ連れてくるのは女やし。大丈夫やと思うけどな? よし、それじゃあ……、とにかくさっきの交換の話はいったん終わりやな」

「うむ、早く食卓の席に着かんと青藍の目がやばいのだ」



 いつの間にか出来上がっていた料理を目の前に、美味しそうなものがあるにもかかわらず食べれないという状況を作り出した桔梗たちを、剣呑なまなざしで見る青藍の目に慄きながら急いで食卓の席に着く二人だった。

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