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しおりを挟む調べ物をしていた青藍が匂いに誘われて現れる。
「お腹空いた……」
「青藍が来たのだ。調べ物はもういいのだ?」
「調べ物はまだ終わってないけど、この匂いの中するのは辛い」
「それは分かるのだ」
「今日はもみじちゃんとしず君が作るから私たちは待ってるだけなのよね」
「おねえちゃんは手伝わないの?」
料理を手伝わないでくつろいでいるかなでに青藍は不思議そうな顔で首を傾げる。
「しず君を手伝うのよりも今日は桔梗ちゃんとお話ししたかったからね。あ、お茶は急須に入ってるからね」
「熱いから気を付けるのだ」
「しばらく置いておけば大丈夫。この姿になってから猫舌になった気がする」
「そうなのだ? 猫の姿に引っ張られてるのかもしれんのだ。でも、わしは犬に引っ張られてる気がせんのだ」
「そう? 桔梗は見てて犬っぽいよ?」
「それはどういう意味なのだ?」
「桔梗ちゃんはかわいいってことね!」
「いや、それはどうなのだ?」
「それで考えるともみじは狐っぽいことってするのかな?」
「その前に狐っぽいところが分からないのだ」
「狐ってどんな印象かしら」
「うーん、あ、狐火?」
「確かに火を出せるのだ。そういえばわしには出せんし青藍も出せないのだ?」
「うん。でも、狐火って本当の狐は出せないよね?」
「それはそうね。あら、そう考えるとあんまり関係ないのかしら」
「私はこの姿になってから夜になってもよく見えるようになったよ。でもそのくらいかな。お昼寝は前もしてたからこの姿になってからってわけじゃないし」
「うーむ、わしは鼻が利くようになったくらいなのだ。あ、あと早く走れるようになって体力も多くなったのだ」
桔梗は自分の足の速さに自信があるからか胸を張って答える。かなではそんな桔梗に納得したように頷く。
「そういえばいろんなところに行くって言ってたわね。そういえば車に乗ってきたのよね。あれよりかも速く走れる?」
「さすがに無理と言いたいところなのだが……、たぶん行けるのだ。でも、さすがにその速度で走ったら体力が持たないのだ」
「早く走れるだけでもすごいわ。青藍ちゃんはそういうのは無いの?」
「うーん。試したことないからわからないけどもしかしたら前よりかも体は軽く感じるから少しは変わってるかも」
「あー、確かに普通に生活してたら人から逸脱した行動とらないわよね」
「うん。でも、なんとなくできるって実感というか予感はあるから多分普通にできる」
「そう考えるとやっぱり多少は影響されてるみたいなのだ。もみじは置いといてみどりのタヌキはどうなのだ?」
「さすがに私も会ったのがまだ数回だから分からないわね。タヌキの習性で言ったら大きな音が苦手とかかしら?」
「おー、確かみどりは大きな音が苦手だったのだ。大きな音が聞こえると体が硬直するって言ってたのだ」
「でも、まぁそれは人でも似たようなことは起こるから分からないわね。ちなみにいのししは調べてもあまりわからないのよね」
「うーん、それなら結局あんまりわからないね」
「まぁ、調べる必要もないしいいんじゃ?」
そんな会話をしてるかなで達に静人が不思議そうな顔で近づいてくる。
「何を調べる必要がないんだい?」
「お姉ちゃんたちなんのお話してるの?」
「あ、ご飯できたの?」
「うん。できたよ! えへへー、良い感じにできたと思う!」
「ホントだ。美味しそう」
「美味しそうなのだ。あ、それと調べる必要がないのはわしらの体が動物に引っ張られてる気がするという話のことなのだ」
「私は夜でも目がしっかり見えて、桔梗は鼻が利くみたいな話だったから他の人もそうなのかなって。でも、別に体に害があるみたいなことは聞かないし」
「なるほどね。たしかにみんな動物の特徴を持ってるね。体に害があるわけじゃないなら特に調べる必要ないのかな」
「うむ、この体になってから病気になったこともないのだ。怪我はしたことあるからその点は心配なのだ」
「え、怪我したことあるの?」
青藍は怪我したことがあるという話を聞いてことなかったからか驚いた様子で桔梗を見る。そんな青藍に対して少し恥ずかしそうに桔梗がその時の状況を伝える。
「うむ、夢中で走ってるときに目の前にあった木に気が付かなくて突進したことがあるのだ」
「なんでまたそんなことに」
「走れるのが楽しくて無我夢中で走ってたのだ」
「あ、なるほど。桔梗だからね」
何かに納得したのか頷く青藍にジト目で桔梗が見つめる。
「なんか馬鹿にされた気がするのだ」
「気のせい。その時の怪我って治ったの?」
「……まぁいいのだ。怪我は治ったのだ。正直そこまで大きな怪我ではなかったのだ。だから意外に早く治ったのだ」
「治りも早いのかな?」
「だからって怪我することはしないでね? 青藍ちゃん」
「分かってる。心配しなくても大丈夫だよ。おねえちゃん」
「ならいいけど。ってそのことはまた後にしましょ。せっかくのオムライスが冷めちゃうわ」
「そうだね。冷めたら美味しさが半減しちゃうから早く食べようか」
「食べる。お腹空いた」
「そうなのだ。わしもお腹空いたのだ」
「えへへー、自信作だから期待しててね!」
「うむ、期待してるのだ。というかいつも作るのも美味しいのだ」
「えへへーありがとう。あ、ケチャップも作ってみたんだよ!」
「ケチャップって作れるの!? いつも市販の物を使ってるのに」
「あはは、調べてみたら意外に作れそうだったからね。もみじちゃんと一緒に作ってみたんだ」
「ほえー、作れるものなのね。あ、おいしい」
感心した様子で出来上がったケチャップを救うかなではおもむろに口に運ぶ。市販のとはまた違う味わいだがそれでもおいしく感じたかなでが美味しと告げると静人ともみじはほっと胸をなでおろす。
「それならよかった。それじゃあケチャップじゃなくてオムライスを食べようか。いただきます」
「「「「いただきます!」」」」
「おいしい。久しぶりに食べた気がする」
「そうなのだ? わしは食べた覚えがないのだ」
「桔梗がいないときに食べたから当然。そういえば焼き芋も一緒に食べてなかった気がする」
「ハッ……! そうなのだ。わしだけこの中で焼き芋を食べてないのだ」
「そうだったかな? それだったらお泊り会が終わって、あっちに戻った後にあっちで作ろうか」
「むむ、こっちでは作らないのだ?」
「いろいろとめんどくさいことになるかもしれないし。出来ればもみじちゃん達のときみたいに外で作りたいからね。こっちだと煙が見えると騒ぎになるかもしれないから」
「そうなのだ? それならしょうがないのだ。あっちに行った時の楽しみに取っておくのだ」
「そうなんだ。楽しみにしててね」
「うむ、なのだ」
オムライスを食べながら焼き芋をみんなで出来るのが嬉しいのか桔梗は笑顔で頷く。そんな桔梗を優しい表情で見守りつつみんなで食事を楽しんだ。
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