山に登ったら巫女少女と出会ったので遊ぶことにしました

榊空

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 朝になり、昨日の疲れなど一切見せずにかなでは目を覚ます。いつもなら頭の回らない朝も、前日の運動が効いたのかすっきりとした朝だ。


「ほら、もみじちゃん。桔梗ちゃん。起きて」

「う、うむ? もう朝なのだ?」

「そうよー。起きないと朝ごはん食べ損ねちゃうわよ?」

「それは困るのだ! あ、おはようなのだ」

「うん。おはよう。ほら、もみじちゃんもおはよう」

「うん。おはよう……」

「あらあら、今日はお眠なのね? いつもなら私を起こしに来るくらい早起きなのに」


 朝ご飯を食べ損ねると聞いて慌てて飛び起きる桔梗に挨拶を返すかなで。続けて起きたもみじはいつもの活発な様子とは違い瞼が重そうだ。


「それはお姉ちゃんが、もみじのことを担ぐのを止めなかったのが原因だと思うのだ」

「えー? だってあそこまで嬉しそうにされたら張り切っちゃうじゃない?」

「少なくともわしは嬉しそうじゃなかったと思うのだ……。いや、まぁそのことは別にいいのだ。このままだと一人だけ食べれんことになるしまた担いでいくのだ?」

「そうねー、それでもいいけど。今日の所は担ぐんじゃなくてお姫様抱っこにしようかしら」

「なんなのだそれ?」

「えっとね、こんな感じに抱っこすること」


 お姫様抱っこのことを知らない桔梗に分かるように、眠気でぐでんぐでんになっているもみじを抱きかかえる。それを見た桔梗はさらに首を傾げる。


「うむ、なんでそれでお姫様なのだ?」

「それは……、なんでかしらね? でもまぁ、そう呼ばれてるからそれでいいのよ。別に起源なんて知ったところで意味ないんだし」

「まぁ、それもそうなのだ。というかどうせならわしもその運び方が良かったのだ。あ、いや、何でもないのだ!」


 昨日いきなり肩に担がれたことを思い出した桔梗は、どうせなら肩じゃなくてお姫様抱っこのほうが負担が少なかった気がすると思い口を滑らしたのを見てかなでの目がキラキラ輝く。そのかなでを見た桔梗はまずいと思ったのか慌てて自分の口をふさぐ。


「うふふー、明日は私が運んで……、あー、そういえば今日までだったわね。家に泊まるの」

「うむ? あー……、もうそんなに経ったのだ? 楽しい時間はあっという間なのだ」

「ホントにね。よし、それなら明日じゃなくてご飯食べ終わった後にしてあげるわね!」

「いや、別にいいのだ」

「遠慮しないの」

「いや、遠慮というか」


 ぐいぐい来るかなでに気圧されて了承しそうになる一歩手前の所でもみじが目を覚ます。


「むー? ふみゅー、おはようお姉さん……」

「あら、起きたのね? おはようもみじちゃん」

「うんー、あ、桔梗お姉ちゃんもおはよう? ……あれ、私の背大きくなった?」

「いや、なんでそうなるのだ。お姉ちゃんが抱っこしてるだけなのだ」


 いきなりの発言に桔梗は呆れた口調で自分のことを見下ろす体制になったもみじを見上げる。


「あ、ホントだ! でも何で?」

「起こしたのに起きなかったからね。朝ごはん食べ損ねたくないでしょ?」

「朝ご飯! ありがとう、お姉さん!」

「どういたしまして」


 お姫様抱っこのままリビングにたどり着くと、そこにはテーブルの上でテレビを見ているみどりの姿と机に突っ伏している青藍の姿があった


「なんや今日は、俵担ぎやなくてお暇様抱っこなんやなぁ」

「もみじがお姫様?」

「せやでー、良かったなぁ」

「お姫様かぁ。でも、お姫様ってつまらなさそうだったよ?」

「へ? つまらなさそう?」


 思いがけない言葉だったからか言葉を返すだけになったみどりに、もみじは気が付いていないのか話をそのまま続ける。


「うん。神社であった時にね、姫になるといろいろつまらなくなる。だから巫女であるお主が羨ましいって言われたことあるもん」

「そ、そうなんや。ちなみにそれっていつの話?」

「私が生きてた頃!」

「ほ、ほーん」


 話しをそのまま続けてもいいのかそれともやめるべきかと思考するみどりだったが、隣にいた青藍はいつまでたっても席に着こうとしないもみじ達をジト目で見る。


「今はお姫様のことよりご飯……」

「せ、せやね! ご飯ご飯!」


 青藍の表情から相当我慢していることを読み取ったみどりが慌てた様子で席に着くよう促し席に着いたが、かなではここにいないもう一人のことが気になったのか口を開く。


「あれ? また茜さんいないの?」

「茜は書類の書き直しや。ま、そんなに時間かかるもんやないしすぐ帰ってくると思うで?」

「まぁ、お昼ごはんとは言わないから、夜ご飯までには帰ってきてほしいわねー。今日が一応最終日なんだし」

「あー、そういえばそうやったな。まぁ、ここで泊まるのが最後なわけやないんやけどな?」

「私としてはいつでも大歓迎よ!」

「まぁ、たまには遊びに来るわ。つまみとかもってな?」

「楽しみにしてるわね!」

「私たちもたまになら来てもいいのかな?」


 みどりとかなでの会話を聞いていたもみじが遠慮がちに訪ねると親指を立てて少し大げさ目に返事する。


「もちろんよ! なんなら毎日来ても」

「それはやめとくのだ。というかさすがに日にちを空けとくと不味い感じがするのだ」

「そうなの? それならしょうがないわね」


 言葉の途中を遮るように話し始めた桔梗の説明にかなでは肩を落としつつも納得した。


「うむ、まぁ、もみじ達が行くのは止めんのだ。その時はわしがお留守番するのだ」

「ダメ! 一人きりのお留守番はさみしいもん! 桔梗お姉ちゃんが一人で残るんだったら私も残る!」

「そうねー、一人ぼっちはさみしいものねー。それじゃあ今まで通り私たちが行くってことで万事解決ね!」

「うん!」


 和気あいあいとしゃべる中で会話に参加していなかった静人が青藍を見ながら注意する。


「あはは、みんなお話に夢中になるのは分かるけど、いい加減食事を始めないと青藍ちゃんがかわいそうだよ」

「目の前にあるのに、食べちゃダメなのきつい……」

「わわわ、ごめんね。青藍ちゃん! いただきますしよ!」

「あらら、ごめんね? それじゃあいただきます」


 慌てた様子のもみじと机に顎を乗せて涙交じりに目の前の料理をにらみつけて空腹に耐える青藍を見て、かなでが手を合わせる。それを見た青藍は目を輝かせて手を合わせいつもの言葉を口に出す。


「いただきます」


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