山に登ったら巫女少女と出会ったので遊ぶことにしました

榊空

文字の大きさ
86 / 92

86

しおりを挟む

 かなでと静人が村と世界の名前を考えていると、かなでの後ろからみどりが現れた。


「うーん、うちも世界樹があるとは聞いたことあらへんな。見えないだけであるかもしれへんけど」

「やっぱりそうなんだ……、ってみどりちゃん。どうしたの?」


 いきなり現れたみどりに気付かなかったかなではいつものように返事をした後、みどりのことに気が付き、なぜここにいるのかと首を傾げる。


「いや、ちゃんと送り届けたって言う報告せんといかんかなって。そういえば何で急に世界樹の話になったん?」

「あー、もうそろそろあっちの名前を決めたほうがいいんじゃないかって話になりまして」

「なんというか今更やね。まぁ、でも付けといたほうがええやろな。いろいろと不便やったし。候補とかはあるん?」


 やはり名前はついていなかったのかみどりは割とあっさりと名前を付けることに同意した。候補を聞かれた静人は首を横に振ってさっきまで話していたことを伝える。


「いや、それが村の名前と世界の名前は別で考えようという話になったくらいで決まってはいないんです。一応村の名前は巫女の住む村ということで『かんなぎ村』がいいんじゃないと提案はしましたけどね」

「『かんなぎ村』かぁ。うん、それでええんやない? わざわざ変に長い名前を付ける理由は無いやろし。世界の名前の候補は無いん?」


 名前の候補を聞いたみどりは特に否定する必要を感じなかったからか、すぐに頷いて同意する。世界の名前の候補を聞かれた静人とかなでは顔を見合わせた後、かなでが頷き口を開く。


「今のところ、何もシンボルになるようなものがないから決めきれないのよね。何かあったりしない?」

「そんなこと急に言われてもやなぁ。あー、神社があるで?」


 困ったように頬をかいたみどりはパッと思いついたものを口に出す。それを聞いたかなでは腕を組み頬に手を当てて悩む。


「それこそ村の名前になってるのよね。あれ、そういえば今更だけどあそこって何を祀ってるの?」

「あそこは確か狐を祀っておったはずやで。それこそもみじが神様みたいなもんやな」


 みどりはかなでの疑問について調べてあったからかスラスラと答えを出す。それを聞いたかなではポンッと手を打ったあと自信満々な顔で宣言する。


「だったら世界の名前はもみじね!」

「さすがにそのままは……、あの世界にはもみじちゃんだけじゃなくて青藍ちゃんも桔梗ちゃんもいるんだから」

「それもそうね……。あ、そういえばもみじちゃんも青藍ちゃんも、桔梗ちゃんもみどりちゃんも、更には茜ちゃんも全員名前が色に関係してるのよね」


 名前を思い浮かべたかなでは共通点を見つけ、みどりも言われて気が付いたのか感心したような顔で頷く。


「そういえばそうやな。せやったら世界の名前は色に関係した名前にするん?」

「色に関係する名前ですか……。パレットとかですか?」

「パレット? あの荷物運ぶときに使うやつ?」


 パレットと聞いて思い浮かぶ物が荷物を運ぶときに使う物だったかなでは、首を傾げて不思議そうな顔で静人を見上げる。


「確かにそれもパレットだけどね。僕が言ってるパレットはほら、絵を描くときに使うあの白いやつのこと」

「あー、あれね! パレットかー。うん、村の名前って考えると違う気がするけど世界の名前って考えるとぴったりな気がするかも」


 静人の説明でピンと来たのか手をポンッと叩くと、パレットという単語の意味するものが正しく伝わったのか、うんうんと頷き納得した様子だった。それを見たみどりも少し悩んだそぶりを見せたが、すぐに笑顔になって頷く。


「そやね。うん。ええかもな。分かりやすいし。あ、でもこっちの世界で意味を持つ名前にするとごっちゃにならん?」

「でもパレットってなかなか使う機会のない言葉だしいいんじゃない? 説明されるまで私も分からなかったし。パレットに行こうって言えば、私たちからしてみればどこなのか分かるし」

「そう言われてみればそうやな。別に周りの人に説明する必要もないんやし、それでええか」

「そうそう。私たちだけ、関係者だけ分かればいいのよ。というわけで村の名前はかんなぎ村で世界の名前はパレットで決定ね」

「ま、分かりやすくてええか。あとはそれを桔梗たちが気に入るかどうかやな」

「そうね。気に入らなかったらまた考え直さなきゃね」


 もみじ達が気に入らないと言ったらすぐに考え直すと態度に示したのを見たみどりは、そんなことは起きないだろうと軽く笑いながら首を横に振る。


「大丈夫やと思うけどな。わざわざ否定してまで考えるほどのものやないし」

「いや、村の名前って結構大事だと思うんだけど」

「そんなこと言われたかて、今まで名前なしやったんやで?」


 今まで名前がなくても生活できていたということを伝えられたかなでは、そう言われてみるとすんなりと通りそうだと納得する。


「あ、そう言われると確かにわざわざ新しく考えることは無い気がするわね」

「まぁ、分かりやすいのはありがたいし。これから先、新しく住む人達のためにも必要やな。人やないけど」

「何言ってるのよ。私からしたらみどりちゃん達もちゃんと人よ?」

「そやろか? まぁ、そう言ってもらえるならそれでもええか。うち達のことが伝わる名称もほしいけどな。巫女とかでええ気もするけど」


 自分たちの名称を決めて分かりやすくしたいというみどりの希望に、かなでは確かにそれも決めたほうがいいかといったん考える様子を見せる。


「巫女ではあるもんね。ううん、そのままでもいい気がするけど……。動物と合わせて動物巫女? それだと可愛くないから獣巫女? あ、ケモミミ巫女!」

「いや、ケモミミではないんやけどな? まぁ、ケモミミにしようと思えばできるけども」


 唐突な名称にみどりは軽く首を横に振りつつ訂正しつつ、ケモミミに出来なくもないと悪戯気に笑う。すると、そのことが衝撃的だったのかかなでがひどく驚いた様子で目を見開く。


「出来るの!?」

「出来るでー。でも、わざわざする理由がないやろ?」

「そんなことないわ! ケモ耳にはケモ耳の可愛さがあるもの!」


 酷く驚いていたかなでに気が付かなかったみどりは軽い様子で肯定したが、そのあとのかなでのすさまじい剣幕に顔を引きつらせる。


「そ、そやろか。いや、そんな目で見られてもせんからね?」

「えー? しようよー。かわいいよ?」

「かわいくはないやろ。あ、もみじ達やったらかわいいかもしれんな。出来るのかは知らんけど」

「もみじちゃん達は出来ないの?」


 自分のケモミミ姿を想像したみどりはかなでの言葉を鼻で笑いつつ、自分よりももみじ達のほうが可愛くなるとかなでの標的を変える。かなではみどりの最初の言葉が聞こえなかったからか、特に否定もしないでもみじ達の話題に食いつく。


「知らん。けど、やろうと思えばできるんやない? うちは子供の姿から大人の姿に変わるときに、間違えてケモミミになったことあるから慣れるのをしっとるけど、もみじ達がなったことあるかは知らんし」

「それもそっかー。今度頼んでみようかしら。ということでみどりちゃん」


 みどりの説明で納得したかなでは少しして頷いた後、みどりのほうを見て期待するような目で見つめる。


「せやからそんな目してもやなぁ……。はぁ、一度だけやで?」


 かなでに見詰められたみどりは困ったように頬をかいた後に、指を一本だけ立てて諦めたように肩を落とす。その顔はしょうがないやつやなぁと言いたげに少し笑っていた。


「ホント!? ありがとう!」

「はいはい。えっと、あー、こんな感じやったね。ほい、これでええ?」


 かなでのお礼の言葉を軽く流したみどりは少し集中するように目を閉じて、少ししてから感覚をつかめたのか軽い掛け声と共に頭の上に耳をはやした。丸っこく緑色のタヌキの耳だ。それを見たかなでは目を輝かせて近づく。


「おー! かわいいわ! やっぱりケモミミはいいわね!」

「そこまで熱弁されてもうちには良さは分からへんのやけど……。まぁええわ。ほい、終わり。うん、やっぱりこっちのほうが落ち着くわぁ」

「えー! 早いよー。もっと堪能したかった。触ったりしたかったのにー」


 みどりはかなでが近づいてきた所で頭の耳を戻して普通の人の姿になった。近づいてすぐに戻したみどりにかなでは抗議の声をあげるが、みどりは困ったように笑うだけだ。


「さすがに触らせるつもりはなかったしなぁ。そういうのはもみじ達にやってあげ、な?」

「むー、そこまで嫌がられるならしょうがないわね。その時はみどりちゃんも一緒に触りましょうね!」

「まぁ、うちが触られるのは嫌やけど。触る方ならええか。そん時はうちも一緒にもみじ達をわしゃわしゃしようか」

「ちゃんと許可を取ってからね!」

「分かっとるわ」


 自分が触られるのは嫌でも人のを触るのはしてみたいのか、みどりはかなでの提案に笑みを浮かべて頷く。途中から話に入らずにいた静人は二人の楽しそうな様子に嬉しそうに笑顔を見せてキッチンへと向かう。飲み物の用意を終わらせて二人の前に置くと二人はお礼を言った後、またしばらく談笑を楽しんだ。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

神のミスで転生したけど、幼女化しちゃった! 神具【調薬釜】で、異世界ライフを楽しもう!

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
旧題:神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜  ※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!  電子書籍は、2026/3/9に発売です!  書籍は2026/3/11に発売(予約受付中)です!メロンブックス様より、特典の描き下ろしSSペーパーがあります。詳しくは、メロンブックス様へお願い致します。  イラストは、にとろん様です。よろしくお願い致します!  ファンタジー小説大賞に投票して頂いた皆様には、大変感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】元Sランク受付嬢の、路地裏ひとり酒とまかない飯

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ギルド受付嬢の佐倉レナ、外見はちょっと美人。仕事ぶりは真面目でテキパキ。そんなどこにでもいる女性。 でも実はその正体、数年前まで“災厄クラス”とまで噂された元Sランク冒険者。 今は戦わない。名乗らない。ひっそり事務仕事に徹してる。 なぜって、もう十分なんです。命がけで世界を救った報酬は、“おひとりさま晩酌”の幸福。 今日も定時で仕事を終え、路地裏の飯処〈モンス飯亭〉へ直行。 絶品まかないメシとよく冷えた一杯で、心と体をリセットする時間。 それが、いまのレナの“最強スタイル”。 誰にも気を使わない、誰も邪魔しない。 そんなおひとりさまグルメライフ、ここに開幕。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...