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しおりを挟むかなでと静人が村と世界の名前を考えていると、かなでの後ろからみどりが現れた。
「うーん、うちも世界樹があるとは聞いたことあらへんな。見えないだけであるかもしれへんけど」
「やっぱりそうなんだ……、ってみどりちゃん。どうしたの?」
いきなり現れたみどりに気付かなかったかなではいつものように返事をした後、みどりのことに気が付き、なぜここにいるのかと首を傾げる。
「いや、ちゃんと送り届けたって言う報告せんといかんかなって。そういえば何で急に世界樹の話になったん?」
「あー、もうそろそろあっちの名前を決めたほうがいいんじゃないかって話になりまして」
「なんというか今更やね。まぁ、でも付けといたほうがええやろな。いろいろと不便やったし。候補とかはあるん?」
やはり名前はついていなかったのかみどりは割とあっさりと名前を付けることに同意した。候補を聞かれた静人は首を横に振ってさっきまで話していたことを伝える。
「いや、それが村の名前と世界の名前は別で考えようという話になったくらいで決まってはいないんです。一応村の名前は巫女の住む村ということで『かんなぎ村』がいいんじゃないと提案はしましたけどね」
「『かんなぎ村』かぁ。うん、それでええんやない? わざわざ変に長い名前を付ける理由は無いやろし。世界の名前の候補は無いん?」
名前の候補を聞いたみどりは特に否定する必要を感じなかったからか、すぐに頷いて同意する。世界の名前の候補を聞かれた静人とかなでは顔を見合わせた後、かなでが頷き口を開く。
「今のところ、何もシンボルになるようなものがないから決めきれないのよね。何かあったりしない?」
「そんなこと急に言われてもやなぁ。あー、神社があるで?」
困ったように頬をかいたみどりはパッと思いついたものを口に出す。それを聞いたかなでは腕を組み頬に手を当てて悩む。
「それこそ村の名前になってるのよね。あれ、そういえば今更だけどあそこって何を祀ってるの?」
「あそこは確か狐を祀っておったはずやで。それこそもみじが神様みたいなもんやな」
みどりはかなでの疑問について調べてあったからかスラスラと答えを出す。それを聞いたかなではポンッと手を打ったあと自信満々な顔で宣言する。
「だったら世界の名前はもみじね!」
「さすがにそのままは……、あの世界にはもみじちゃんだけじゃなくて青藍ちゃんも桔梗ちゃんもいるんだから」
「それもそうね……。あ、そういえばもみじちゃんも青藍ちゃんも、桔梗ちゃんもみどりちゃんも、更には茜ちゃんも全員名前が色に関係してるのよね」
名前を思い浮かべたかなでは共通点を見つけ、みどりも言われて気が付いたのか感心したような顔で頷く。
「そういえばそうやな。せやったら世界の名前は色に関係した名前にするん?」
「色に関係する名前ですか……。パレットとかですか?」
「パレット? あの荷物運ぶときに使うやつ?」
パレットと聞いて思い浮かぶ物が荷物を運ぶときに使う物だったかなでは、首を傾げて不思議そうな顔で静人を見上げる。
「確かにそれもパレットだけどね。僕が言ってるパレットはほら、絵を描くときに使うあの白いやつのこと」
「あー、あれね! パレットかー。うん、村の名前って考えると違う気がするけど世界の名前って考えるとぴったりな気がするかも」
静人の説明でピンと来たのか手をポンッと叩くと、パレットという単語の意味するものが正しく伝わったのか、うんうんと頷き納得した様子だった。それを見たみどりも少し悩んだそぶりを見せたが、すぐに笑顔になって頷く。
「そやね。うん。ええかもな。分かりやすいし。あ、でもこっちの世界で意味を持つ名前にするとごっちゃにならん?」
「でもパレットってなかなか使う機会のない言葉だしいいんじゃない? 説明されるまで私も分からなかったし。パレットに行こうって言えば、私たちからしてみればどこなのか分かるし」
「そう言われてみればそうやな。別に周りの人に説明する必要もないんやし、それでええか」
「そうそう。私たちだけ、関係者だけ分かればいいのよ。というわけで村の名前はかんなぎ村で世界の名前はパレットで決定ね」
「ま、分かりやすくてええか。あとはそれを桔梗たちが気に入るかどうかやな」
「そうね。気に入らなかったらまた考え直さなきゃね」
もみじ達が気に入らないと言ったらすぐに考え直すと態度に示したのを見たみどりは、そんなことは起きないだろうと軽く笑いながら首を横に振る。
「大丈夫やと思うけどな。わざわざ否定してまで考えるほどのものやないし」
「いや、村の名前って結構大事だと思うんだけど」
「そんなこと言われたかて、今まで名前なしやったんやで?」
今まで名前がなくても生活できていたということを伝えられたかなでは、そう言われてみるとすんなりと通りそうだと納得する。
「あ、そう言われると確かにわざわざ新しく考えることは無い気がするわね」
「まぁ、分かりやすいのはありがたいし。これから先、新しく住む人達のためにも必要やな。人やないけど」
「何言ってるのよ。私からしたらみどりちゃん達もちゃんと人よ?」
「そやろか? まぁ、そう言ってもらえるならそれでもええか。うち達のことが伝わる名称もほしいけどな。巫女とかでええ気もするけど」
自分たちの名称を決めて分かりやすくしたいというみどりの希望に、かなでは確かにそれも決めたほうがいいかといったん考える様子を見せる。
「巫女ではあるもんね。ううん、そのままでもいい気がするけど……。動物と合わせて動物巫女? それだと可愛くないから獣巫女? あ、ケモミミ巫女!」
「いや、ケモミミではないんやけどな? まぁ、ケモミミにしようと思えばできるけども」
唐突な名称にみどりは軽く首を横に振りつつ訂正しつつ、ケモミミに出来なくもないと悪戯気に笑う。すると、そのことが衝撃的だったのかかなでがひどく驚いた様子で目を見開く。
「出来るの!?」
「出来るでー。でも、わざわざする理由がないやろ?」
「そんなことないわ! ケモ耳にはケモ耳の可愛さがあるもの!」
酷く驚いていたかなでに気が付かなかったみどりは軽い様子で肯定したが、そのあとのかなでのすさまじい剣幕に顔を引きつらせる。
「そ、そやろか。いや、そんな目で見られてもせんからね?」
「えー? しようよー。かわいいよ?」
「かわいくはないやろ。あ、もみじ達やったらかわいいかもしれんな。出来るのかは知らんけど」
「もみじちゃん達は出来ないの?」
自分のケモミミ姿を想像したみどりはかなでの言葉を鼻で笑いつつ、自分よりももみじ達のほうが可愛くなるとかなでの標的を変える。かなではみどりの最初の言葉が聞こえなかったからか、特に否定もしないでもみじ達の話題に食いつく。
「知らん。けど、やろうと思えばできるんやない? うちは子供の姿から大人の姿に変わるときに、間違えてケモミミになったことあるから慣れるのをしっとるけど、もみじ達がなったことあるかは知らんし」
「それもそっかー。今度頼んでみようかしら。ということでみどりちゃん」
みどりの説明で納得したかなでは少しして頷いた後、みどりのほうを見て期待するような目で見つめる。
「せやからそんな目してもやなぁ……。はぁ、一度だけやで?」
かなでに見詰められたみどりは困ったように頬をかいた後に、指を一本だけ立てて諦めたように肩を落とす。その顔はしょうがないやつやなぁと言いたげに少し笑っていた。
「ホント!? ありがとう!」
「はいはい。えっと、あー、こんな感じやったね。ほい、これでええ?」
かなでのお礼の言葉を軽く流したみどりは少し集中するように目を閉じて、少ししてから感覚をつかめたのか軽い掛け声と共に頭の上に耳をはやした。丸っこく緑色のタヌキの耳だ。それを見たかなでは目を輝かせて近づく。
「おー! かわいいわ! やっぱりケモミミはいいわね!」
「そこまで熱弁されてもうちには良さは分からへんのやけど……。まぁええわ。ほい、終わり。うん、やっぱりこっちのほうが落ち着くわぁ」
「えー! 早いよー。もっと堪能したかった。触ったりしたかったのにー」
みどりはかなでが近づいてきた所で頭の耳を戻して普通の人の姿になった。近づいてすぐに戻したみどりにかなでは抗議の声をあげるが、みどりは困ったように笑うだけだ。
「さすがに触らせるつもりはなかったしなぁ。そういうのはもみじ達にやってあげ、な?」
「むー、そこまで嫌がられるならしょうがないわね。その時はみどりちゃんも一緒に触りましょうね!」
「まぁ、うちが触られるのは嫌やけど。触る方ならええか。そん時はうちも一緒にもみじ達をわしゃわしゃしようか」
「ちゃんと許可を取ってからね!」
「分かっとるわ」
自分が触られるのは嫌でも人のを触るのはしてみたいのか、みどりはかなでの提案に笑みを浮かべて頷く。途中から話に入らずにいた静人は二人の楽しそうな様子に嬉しそうに笑顔を見せてキッチンへと向かう。飲み物の用意を終わらせて二人の前に置くと二人はお礼を言った後、またしばらく談笑を楽しんだ。
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