高嶺の花も恋をしたい!

吉岡ミホ

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初めての夜①

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 どうしてこんなことになったのだろう。
 三軒目のワインバーに行ったことは覚えている。甘いスパークリングワインが美味しかった。
 お酒はそこそこ飲めるけれど辛口のお酒は苦手で、ヒューガルデンから始まった本日のラインナップは完璧だった。
 愚痴を聞いてくれる同期にも恵まれて、最悪の気分だったのに、全部吐き出すことができた。

 今さらほかの会社に就職しなおすこともできないし、異動願を出せるようになるまで受付で我慢するしかないのが私の現状だ。受け入れるしかない。

 いっぱい飲んで、いっぱい愚痴って、高野には随分と慰められた。おかげでいい夜を過ごせたと思う。
 でも、今のこの状況……!

 ダブルベッドにスヤスヤと眠るイケメン、そして腕枕。ここは……おそらく高野の部屋だ。
 三軒目で記憶が途切れているということは、私、寝ちゃったの? きっとそう。
 私の家がわからなくて、仕方なく自分の家に連れてきたのだろう。申し訳ないことをした。

 念のために少し頭を起こし服装をチェックしてみたが、リクルートスーツの上着を脱いでいるだけでちゃんとブラウスもスカートも、ストッキングに至るまで身に着けたままだったことにホッとする。

 それにしても、こんなに近くで男の人を見たのは初めてだ。
 眠っていると年齢より少し若く見える。ワックスが取れてしまった髪型のせいだろうか。
 本当に……綺麗な顔だわ。

 私は彼の腕が痺れないように頭の下から腕を外し、そっとベッドから離れようとした。
 その瞬間、腕を掴まれた。

「……起きたのか?」
「う、うん。ごめんなさい、私、ワインバーで寝ちゃったのね」

 高野が上半身を起こし、ベッドサイドにある時計を見ている。
 時計は1時30分をさしていた。少なくとも、記憶のあった頃から3時間以上が経過している。

「いや……俺ももっと早くに止めるべきだった。せめて家を聞いておけばよかったのだが」
「ごめんね、ご迷惑をおかけしました」
「別に迷惑じゃ……」
「それに、いっぱい愚痴を聞いてくれてありがとうね」

 おかげで今は少しすっきりした気分だ。少し寝たからというのもあるだろう。

「誘ったのは俺だ。気にするな」
「う、うん……」

 少し寝て酔いがさめたからか、こうやってベッドの上に二人でいるのは恥ずかしい。
 でも、壁側にいる私は高野がいる限りどこにもいけない。高野は立ち上がろうとせず、ずっと私の腕を掴んだままだった。

 寝起きの彼からは、さっきまでは感じなかった男らしい色香がだだ洩れになっている。ネクタイを外して胸元が開いているせいかしら。

 未だかつて誰からも手を出されたことのない私だし、高野自身は誰とも付き合う気がないと言っていた。だから何かが起こるはずもないのだけれど、この色香に当てられる私の方がちょっと心配だ。思わず身を委ね、彼にすり寄ってしまいそうになる自分にブレーキをかける。

「あ、えっと、私、帰るね。こんなに遅くまでお邪魔してごめんなさい」

 とにかくこの状況はよろしくない。私が居たら高野だって休めないだろうし、早く退散しなくては。
 そう思い、私は高野の上を乗り越えてベッドから降りようとした。
 その瞬間、くるっと体を入れ替えた高野が私をベッドに押し付けた。
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