高嶺の花も恋をしたい!

吉岡ミホ

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不安①

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 今日はしないのだろうか。
 この数ヶ月、試験勉強で余裕がなかった。試験が終わってからも、結果が出るまでは落ち着かなくてそんな気になれず、気がつけばもう随分セックスしていない気がする。

 まだ実技試験の特訓は続くけど、一次合格した直後の休み前日だ。今日くらいは求めてくるだろうと思っていたのに、もう寝ちゃうの?

 疲れているのかな? 桃子の話では新しいプロジェクトが始まったみたいだし、忙しいのかもしれない。

 それとも、もう私の体には飽きた……とか。
 言い寄ってくる女性の中に気になる人がいる……とか。

 三桁に届く告白を受けているそうだもの、中には高野が惹かれる人もいるだろう。
 その人のことを考えて、私には手を出さないことにしたのだろうか。……ありえる。

 じゃあ、もうセフレは必要ない? ということは、私、ここに寝ていていいの?

 いや、そもそもこの家に同居させてもらっているこの状態ってよくないんじゃないの?

 高野のベッドの傍らに寝ながら、ぐるぐると様々な憶測が頭をよぎる。

 桃子と飲んだお酒はすっかり冷めてしまっていた。悶々と考えているからか、ベッドに入ってかれこれ1時間経つのに全く睡魔が訪れない。頭の中はどんどん負の方向へ落ち込んでいく。

 結局のところ、どうして負の方向へ落ち込んでいくのかというと、好きな人に触れてもらえないことが辛いのだ。このまま同じベッドに寝ているのに、私の気持ちだけが募っていくのだろうか。

 高野は優しい人だから、出て行けなんて自分から言えないのかもしれない。
 やっぱりここに寝ていてはいけない気がする。
 今日はソファーで寝て、明日の朝にはここを出ていこう。とりあえず行くあてがないから、実家に帰るしかないか……。

 そう思い、私はそっとベッドを抜け出そうとした。
 壁側に寝ている私は、高野を乗り越えてベッドを降りなければいけない。

 高野も同期と飲んできたのだから疲れているはず。きっともう寝ているだろう。

 そっと……そっと……まるでベッドに壁ドンするかのように高野を跨ぐ。
 そういえば、前にもこんなことがあった気がする。あの時は寝ていなかったけど……。

 そう思っていると、突然高野が片手で私を抱きしめた。体勢が崩れた私は、元いた位置に崩れ落ちる。

(きゃぁっ!)

 ホッ……高野の上に落ちなくてよかった、と思った次の瞬間、ギューッと抱え込まれた。

(……!! く、くるし……)

 ガッと高野が左脚を私に掛けてきて、まるで抱き枕にされている状態になる。

 目の前には高野のTシャツがあって、規則正しい息遣いが聞こえる。真っ暗で見えないけれど、おそらく寝ぼけて私を抱き枕にしちゃったのだ。

 抜け出そうと思えば抜け出せたと思う。
 でも抱きしめられるなんて何日ぶりだろう。やっぱりそれが嬉しくてじっとそのままの体勢でいると、少し高い高野の体温でだんだん気持ちが落ち着いてきた。嗅ぎ慣れた高野の体臭といつもの柔軟剤の香りがする。

(この温もり、この匂い、ホッとする。やっぱり好き……)

 先ほどまでの悶々としていた気持ちが嘘のように鎮まり、次第に私の意識は薄れていった。


 ◇ ◇ ◇


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