44 / 55
不安①
しおりを挟む
今日はしないのだろうか。
この数ヶ月、試験勉強で余裕がなかった。試験が終わってからも、結果が出るまでは落ち着かなくてそんな気になれず、気がつけばもう随分セックスしていない気がする。
まだ実技試験の特訓は続くけど、一次合格した直後の休み前日だ。今日くらいは求めてくるだろうと思っていたのに、もう寝ちゃうの?
疲れているのかな? 桃子の話では新しいプロジェクトが始まったみたいだし、忙しいのかもしれない。
それとも、もう私の体には飽きた……とか。
言い寄ってくる女性の中に気になる人がいる……とか。
三桁に届く告白を受けているそうだもの、中には高野が惹かれる人もいるだろう。
その人のことを考えて、私には手を出さないことにしたのだろうか。……ありえる。
じゃあ、もうセフレは必要ない? ということは、私、ここに寝ていていいの?
いや、そもそもこの家に同居させてもらっているこの状態ってよくないんじゃないの?
高野のベッドの傍らに寝ながら、ぐるぐると様々な憶測が頭をよぎる。
桃子と飲んだお酒はすっかり冷めてしまっていた。悶々と考えているからか、ベッドに入ってかれこれ1時間経つのに全く睡魔が訪れない。頭の中はどんどん負の方向へ落ち込んでいく。
結局のところ、どうして負の方向へ落ち込んでいくのかというと、好きな人に触れてもらえないことが辛いのだ。このまま同じベッドに寝ているのに、私の気持ちだけが募っていくのだろうか。
高野は優しい人だから、出て行けなんて自分から言えないのかもしれない。
やっぱりここに寝ていてはいけない気がする。
今日はソファーで寝て、明日の朝にはここを出ていこう。とりあえず行くあてがないから、実家に帰るしかないか……。
そう思い、私はそっとベッドを抜け出そうとした。
壁側に寝ている私は、高野を乗り越えてベッドを降りなければいけない。
高野も同期と飲んできたのだから疲れているはず。きっともう寝ているだろう。
そっと……そっと……まるでベッドに壁ドンするかのように高野を跨ぐ。
そういえば、前にもこんなことがあった気がする。あの時は寝ていなかったけど……。
そう思っていると、突然高野が片手で私を抱きしめた。体勢が崩れた私は、元いた位置に崩れ落ちる。
(きゃぁっ!)
ホッ……高野の上に落ちなくてよかった、と思った次の瞬間、ギューッと抱え込まれた。
(……!! く、くるし……)
ガッと高野が左脚を私に掛けてきて、まるで抱き枕にされている状態になる。
目の前には高野のTシャツがあって、規則正しい息遣いが聞こえる。真っ暗で見えないけれど、おそらく寝ぼけて私を抱き枕にしちゃったのだ。
抜け出そうと思えば抜け出せたと思う。
でも抱きしめられるなんて何日ぶりだろう。やっぱりそれが嬉しくてじっとそのままの体勢でいると、少し高い高野の体温でだんだん気持ちが落ち着いてきた。嗅ぎ慣れた高野の体臭といつもの柔軟剤の香りがする。
(この温もり、この匂い、ホッとする。やっぱり好き……)
先ほどまでの悶々としていた気持ちが嘘のように鎮まり、次第に私の意識は薄れていった。
◇ ◇ ◇
この数ヶ月、試験勉強で余裕がなかった。試験が終わってからも、結果が出るまでは落ち着かなくてそんな気になれず、気がつけばもう随分セックスしていない気がする。
まだ実技試験の特訓は続くけど、一次合格した直後の休み前日だ。今日くらいは求めてくるだろうと思っていたのに、もう寝ちゃうの?
疲れているのかな? 桃子の話では新しいプロジェクトが始まったみたいだし、忙しいのかもしれない。
それとも、もう私の体には飽きた……とか。
言い寄ってくる女性の中に気になる人がいる……とか。
三桁に届く告白を受けているそうだもの、中には高野が惹かれる人もいるだろう。
その人のことを考えて、私には手を出さないことにしたのだろうか。……ありえる。
じゃあ、もうセフレは必要ない? ということは、私、ここに寝ていていいの?
いや、そもそもこの家に同居させてもらっているこの状態ってよくないんじゃないの?
高野のベッドの傍らに寝ながら、ぐるぐると様々な憶測が頭をよぎる。
桃子と飲んだお酒はすっかり冷めてしまっていた。悶々と考えているからか、ベッドに入ってかれこれ1時間経つのに全く睡魔が訪れない。頭の中はどんどん負の方向へ落ち込んでいく。
結局のところ、どうして負の方向へ落ち込んでいくのかというと、好きな人に触れてもらえないことが辛いのだ。このまま同じベッドに寝ているのに、私の気持ちだけが募っていくのだろうか。
高野は優しい人だから、出て行けなんて自分から言えないのかもしれない。
やっぱりここに寝ていてはいけない気がする。
今日はソファーで寝て、明日の朝にはここを出ていこう。とりあえず行くあてがないから、実家に帰るしかないか……。
そう思い、私はそっとベッドを抜け出そうとした。
壁側に寝ている私は、高野を乗り越えてベッドを降りなければいけない。
高野も同期と飲んできたのだから疲れているはず。きっともう寝ているだろう。
そっと……そっと……まるでベッドに壁ドンするかのように高野を跨ぐ。
そういえば、前にもこんなことがあった気がする。あの時は寝ていなかったけど……。
そう思っていると、突然高野が片手で私を抱きしめた。体勢が崩れた私は、元いた位置に崩れ落ちる。
(きゃぁっ!)
ホッ……高野の上に落ちなくてよかった、と思った次の瞬間、ギューッと抱え込まれた。
(……!! く、くるし……)
ガッと高野が左脚を私に掛けてきて、まるで抱き枕にされている状態になる。
目の前には高野のTシャツがあって、規則正しい息遣いが聞こえる。真っ暗で見えないけれど、おそらく寝ぼけて私を抱き枕にしちゃったのだ。
抜け出そうと思えば抜け出せたと思う。
でも抱きしめられるなんて何日ぶりだろう。やっぱりそれが嬉しくてじっとそのままの体勢でいると、少し高い高野の体温でだんだん気持ちが落ち着いてきた。嗅ぎ慣れた高野の体臭といつもの柔軟剤の香りがする。
(この温もり、この匂い、ホッとする。やっぱり好き……)
先ほどまでの悶々としていた気持ちが嘘のように鎮まり、次第に私の意識は薄れていった。
◇ ◇ ◇
64
あなたにおすすめの小説
なぜ私?スパダリCEOに捕獲され推しの秘書になりました
あいすらん
恋愛
落ち込んでいた私が見つけた最高の趣味。
それは完璧スパダリCEOの「声」を集めること。
動画サイトで最高のイケボを見つけた私、倉田ひかりは、声を録音するためだけに烏丸商事の会社説明会へ。
失業中の元ピアノ講師には、お金のかからない最高のレクリエーションだったのに。
「君、採用」
え、なんで!?
そんなつもりじゃなかったと逃げ出したのに、運命は再び私と彼を引き合わせる。
気づけば私は、推しの秘書に。
時短の鬼CEO×寄り道大好き迷子女。
正反対な2人が繰り広げる、イケボに溺れるドタバタラブコメ!
無表情いとこの隠れた欲望
春密まつり
恋愛
大学生で21歳の梓は、6歳年上のいとこの雪哉と一緒に暮らすことになった。
小さい頃よく遊んでくれたお兄さんは社会人になりかっこよく成長していて戸惑いがち。
緊張しながらも仲良く暮らせそうだと思った矢先、転んだ拍子にキスをしてしまう。
それから雪哉の態度が変わり――。
Melty romance 〜甘S彼氏の執着愛〜
yuzu
恋愛
人数合わせで強引に参加させられた合コンに現れたのは、高校生の頃に少しだけ付き合って別れた元カレの佐野充希。適当にその場をやり過ごして帰るつもりだった堀沢真乃は充希に捕まりキスされて……
「オレを好きになるまで離してやんない。」
「君はいらない」と捨てられた夜、天敵の冷徹社長に「なら、俺が貰う」と拾われました。――手を出さない約束でしたが、彼の理性が限界のようです
ひふみ黒
恋愛
【婚約破棄から始まる、不器用なライオン(冷徹社長)の猛烈な求愛!】
「俺の妻になるなら覚悟しろ。……もう、指一本逃がすつもりはない」
★あらすじ★
「美月は完璧すぎて、可愛げがないんだよ」
28歳の誕生日。
一流ホテルのウエディングプランナーである相沢美月(あいざわ みつき)は、婚約者の裏切りにより、結婚目前ですべてを失った。
雨の降る路地裏。
ヒールも折れ、心も折れてうずくまっていた美月の前に現れたのは、かつての高校時代の天敵であり、現在は勤務先の冷徹な社長 一条蓮(いちじょう れん)だった。
「捨て猫以下だな」
そう憎まれ口を叩きながらも、彼は泥だらけの美月を躊躇なく抱き上げ、最高級ペントハウスへと連れ帰る。
そして、彼が突きつけたのは、あまりにも強引な提案だった。
「住む場所がないなら、俺の家に来い。その代わり――俺の『婚約者』役を演じろ」
利害の一致した契約関係。
条件は「お互いに干渉しないこと」、そして「決して手を出さないこと」。
……のはずだったのに。
「髪、濡れたままだと風邪を引く」
「あんな男のために泣くな。顔が台無しだ」
同居生活で見えてきたのは、冷徹な仮面の下に隠された、不器用すぎるほどの優しさと独占欲。
美月が作った手料理を誰よりも美味しそうに食べ、元婚約者が復縁を迫ってくれば「俺の女に触れるな」と徹底的に排除する。
天敵だったはずの彼に守られ、凍っていた美月の心は次第に溶かされていく。
しかし、ある雷雨の夜。
美月が不用意に彼に触れた瞬間、一条の理性のタガが外れてしまい――。
「……手を出さない約束? 撤回だ」
「そんな無防備な顔で見つめて、何もしないでいられるほど、俺は聖人君子じゃない」
10年越しの片思いをこじらせたハイスペック社長 × 仕事熱心で恋愛に臆病なプランナー。
契約から始まった二人の関係が、本物の愛(溺愛)に変わるまで。
元婚約者への痛快な「ざまぁ」も収録した、極上の大人のシンデレラストーリー!
【登場人物】
◆相沢 美月(28)
ホテルの敏腕ウエディングプランナー。真面目でお人好しな性格が災いし、「つまらない女」と婚約破棄される。実は家事万能で、酔うと少しだけ甘えん坊になる(本人は無自覚)。
◆一条 蓮(28)
ホテルグループの社長。美貌と才覚を併せ持つが、他人に興味を示さないため「氷の貴公子」と呼ばれる。実は高校時代から美月を一途に想い続けており、彼女のこととなると冷静さを失う。
ベンチャーCEOの想い溢れる初恋婚 溺れるほどの一途なキスを君に
犬上義彦
恋愛
『御更木蒼也(みさらぎそうや)』
三十歳:身長百八十五センチ
御更木グループの御曹司
創薬ベンチャー「ミサラギメディカル」CEO(最高経営責任者)
祖母がスイス人のクオーター
祖父:御更木幸之助:御更木グループの統括者九十歳
『赤倉悠輝(あかくらゆうき)』
三十歳:身長百七十五センチ。
料理動画「即興バズレシピ」の配信者
御更木蒼也の幼なじみで何かと頼りになる良き相棒だが……
『咲山翠(さきやまみどり)』
二十七歳:身長百六十センチ。
蒼也の許嫁
父:咲山優一郎:国立理化学大学薬学部教授
『須垣陸(すがきりく)』
三十四歳:百億円の資金を動かすネット投資家
**************************
幼稚園教諭の咲山翠は
御更木グループの御曹司と
幼い頃に知り合い、
彼の祖父に気に入られて許嫁となる
だが、大人になった彼は
ベンチャー企業の経営で忙しく
すれ違いが続いていた
ある日、蒼也が迎えに来て、
余命宣告された祖父のために
すぐに偽装結婚をしてくれと頼まれる
お世話になったおじいさまのためにと了承して
形式的に夫婦になっただけなのに
なぜか蒼也の愛は深く甘くなる一方で
ところが、蒼也の会社が株取引のトラブルに巻き込まれ、
絶体絶命のピンチに
みたいなお話しです
社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
桜井 響華
恋愛
派遣受付嬢をしている胡桃沢 和奏は、副社長専属秘書である相良 大貴に一目惚れをして勢い余って告白してしまうが、冷たくあしらわれる。諦めモードで日々過ごしていたが、チャンス到来───!?
半年間、俺の妻になれ〜幼馴染CEOのありえない求婚から始まる仮初の溺愛新婚生活〜 崖っぷち元社畜、会社が倒産したら玉の輿に乗りました!?
とろみ
恋愛
出勤したら会社が無くなっていた。
高瀬由衣(たかせゆい)二十七歳。金ナシ、職ナシ、彼氏ナシ。ついでに結婚願望も丸でナシ。
明日までに家賃を用意できなければ更に家も無くなってしまう。でも絶対田舎の実家には帰りたくない!!
そんな崖っぷちの由衣に救いの手を差し伸べたのは、幼なじみで大企業CEOの宮坂直人(みやさかなおと)。
「なぁ、俺と結婚しないか?」
直人は縁談よけのため、由衣に仮初の花嫁役を打診する。その代わりその間の生活費は全て直人が持つという。
便利な仮初の妻が欲しい直人と、金は無いけど東京に居続けたい由衣。
利害の一致から始まった愛のない結婚生活のはずが、気付けばいつの間にか世話焼きで独占欲強めな幼なじみCEOに囲い込まれていて――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる