高嶺の花も恋をしたい!

吉岡ミホ

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ビアガーデンで同期会⑥

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  実はこっちのテーブルへ移る前、隣の男どもが花緒の話をしているのを耳に挟んだ。

「ツンとしたイメージだったけど、高嶺って喋ったら意外と普通の子なんだよな。お客様の子供と遊んでくれたりして。小さい子に好かれる女っていいよな。俺ちょっときゅんとした」
「俺は自分より背の高い女の子、全然アリだけど? レッドカーペットの上をスーパーモデル侍らして歩いてるハリウッドスターの気分が味わえるじゃん」
 
 花緒のいい所を評価されるのは嬉しい。
 しかし花緒を侍らせる? なにがハリウッドスターだ。ムカつく! 

 皆が花緒を狙い始めるのではないかと思うとイラッとした。花緒は俺のものだ。誰であろうと指一本触れさせたくない。

 本音を言えば、花緒の彼氏として早く堂々と関係をオープンにしたかった。離れている間、何度そう思ったことか。

 物理的に会えない時間は、俺の花緒への気持ちを加速させていた。

 今まで花緒の迷惑になるのではないかと我慢していたが、せめて俺が花緒にアプローチ中だということが広まれば、花緒を狙っている男たちへの牽制になるのではないか?
 俺に寄ってくる女どももバッサリ無くせたらさらにいい。

 思いがけない展開だが、俺はこの同期会を利用させてもらうつもりだ。

「別に困らないし、全然嫌じゃない」
「え、ちょっと……」
「うわ、高野君積極的~!」
「あ、ビ、ビール空になっちゃった! 私ちょっと取ってくるね」

 突然立ち上がった花緒が、ジョッキを手にビールサーバーへ行ってしまった。

「あーあ、花緒逃げちゃった」
「へぇー、高野君でもフラれることあるんだ」

 生島と山口がニヤニヤしながら俺を見る。

「高野……残念だったな。やっぱお前でも高嶺の花は難しいかー。まあ、落ち込むな。お前なら他にいくらでも――」

 若田までがニヤニヤと笑いを堪えながら慰めてくる。
 こいつら何も知らないくせに……ムカつく!

「ちょっと行ってくる」

 俺はテーブルにいた奴らを無視して、花緒の後を追いかけた。

 しかしビールサーバーの前に花緒の姿はなかった。
 周りを見ると、少し離れたところで営業の男と話をしている。――あの『侍らせ』男だ。

「――なんだ、俺てっきりDVDで観ているのかと」
「プッ……私たちの子供時代じゃないんだからー。今はどこでもビデオオンデマンドだと思うよ?」
「それってEテレも観られるの? 『おかあさんといっしょ』と『アンパンマン』に夢中だと聞いているんだ」
「一歳前後のお子様かな。夏成ではプライムビデオにNHKこどもパークのサブスクもプラスしているから大丈夫よ。ほとんどの子供向け番組は観られるわ」
「へぇ……じゃあ、今度そのお客様のお子さんを案内するときに頼んでもいい? 花緒ちゃんがいてくれると心強いなあ」

 は? 『花緒ちゃん』だと?

「え、う、うん……いつでも言って。あ、私がいない時でも受付なら誰でも操作できるから」
「花緒ちゃんがいるときがいいなぁ。ほかの受付さんは話しかけにくいし」
「そ、そう……?」

 花緒があからさまに引いているというのに、この『侍らせ』男は気づかないのかよ。
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