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知らされていなかった事実②
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それは高野と私がスーパーで買い物をしている写真だった。
そして、手を繋いでマンションへ入っていく後ろ姿も。
どちらも同じ服を着ているから、きっとスーパーで見かけてそのまま後をつけてきた人がいるのだろう。
着ている服の感じから、高野が和歌山へ行ったっきりになる直前だと思われる。
全く気づいていなかった。誰かに後をつけられていたのかと思うとゾッとする。
「これ……あなたが撮ったんですか?」
「いーえ。誰だか知らないわ。でも社内に拡散されているわよ」
信じられない。貸会議室に籠りがちだったから全く気付いていなかった。
「こっそり丸高組の御曹司を捕まえておきながら、甲斐甲斐しく副社長のお世話をするなんてムカつくのよ」
どうやら真ん中の女性は副社長のことを狙っている人らしく、さっきから副社長のことばかり言ってくる。
それよりも――。
「丸高組の御曹司……?」
高野が? 丸高組の?
今まで一度も聞いたことがなかった。それが本当だとしたらどうして言ってくれなかったのだろう。
考えてみれば、あんな駅近の一等地に 使っていないマンションを持っているおじい様がいるなんて、普通ではない。
それに、おじい様は土建屋だと言ってたし、高野のあの建築に対する知識。工学博士を取っているからと言ってあの若さでは考えられないくらいの知識量だ。特に……。
「あ……」
日吉大社へ行った時の、あの半端ない歴史的建造物に対する知識量、それに博士論文も歴史的建造物についてだと言っていた……。
振り返ってみれば、全てが繋がった。
「あなた……ひょっとして知らなかったの? プッ! 笑える―。なんだ、そんなことも知らないなんて、彼女と言っても大した関係じゃなかったのね。遊びの相手にそんなこと教える必要ないものね」
「ほんと、心配して損しちゃった。これならすぐに捨てられそうね」
「ちょっとあなた達! それじゃ、この女が副社長の方に行っちゃうじゃない!」
真ん中の女性がヒステリックに叫んだ。
「あー……そこは小宮さんが頑張られてはどうでしょう。同期なんですよね、副社長と。同期で同じ本社に残っているなんて奇跡的ですよ、そのお年で……」
「なんですって⁉」
「まあまあ、落ち着いて。私はすっきりしたから良かったわ。まだまだ丸高の御曹司は狙えそう。副社長だって、独身なんだから、誰が狙ったって問題ないし。せっかく夏成ハウスに入って、独身の御曹司が二人もいるんだから頑張らないとね!」
言いたい放題言って、その三人組は給湯室を出て行った。
彼女たちが落としていった爆弾の威力は凄かった。私をいじめるためだったなら大成功だ。
「どうして言ってくれなかったんだろう……」
知らされていなかった事実に、思った以上に衝撃を受けていた。
その日はそれから仕事にならず、ぼうっとしていた私に「顔色が悪いな。今日はもう上がっていいよ」と言ってくれた副社長の言葉をありがたく受けとり、帰宅することにした。
帰り道、あの女性が言っていた言葉が何度も頭の中によみがえる。
『遊びの相手にそんなこと教える必要ないものね』
確かにあの人の言っていることは正しい。遊びの関係なら……。
そして、手を繋いでマンションへ入っていく後ろ姿も。
どちらも同じ服を着ているから、きっとスーパーで見かけてそのまま後をつけてきた人がいるのだろう。
着ている服の感じから、高野が和歌山へ行ったっきりになる直前だと思われる。
全く気づいていなかった。誰かに後をつけられていたのかと思うとゾッとする。
「これ……あなたが撮ったんですか?」
「いーえ。誰だか知らないわ。でも社内に拡散されているわよ」
信じられない。貸会議室に籠りがちだったから全く気付いていなかった。
「こっそり丸高組の御曹司を捕まえておきながら、甲斐甲斐しく副社長のお世話をするなんてムカつくのよ」
どうやら真ん中の女性は副社長のことを狙っている人らしく、さっきから副社長のことばかり言ってくる。
それよりも――。
「丸高組の御曹司……?」
高野が? 丸高組の?
今まで一度も聞いたことがなかった。それが本当だとしたらどうして言ってくれなかったのだろう。
考えてみれば、あんな駅近の一等地に 使っていないマンションを持っているおじい様がいるなんて、普通ではない。
それに、おじい様は土建屋だと言ってたし、高野のあの建築に対する知識。工学博士を取っているからと言ってあの若さでは考えられないくらいの知識量だ。特に……。
「あ……」
日吉大社へ行った時の、あの半端ない歴史的建造物に対する知識量、それに博士論文も歴史的建造物についてだと言っていた……。
振り返ってみれば、全てが繋がった。
「あなた……ひょっとして知らなかったの? プッ! 笑える―。なんだ、そんなことも知らないなんて、彼女と言っても大した関係じゃなかったのね。遊びの相手にそんなこと教える必要ないものね」
「ほんと、心配して損しちゃった。これならすぐに捨てられそうね」
「ちょっとあなた達! それじゃ、この女が副社長の方に行っちゃうじゃない!」
真ん中の女性がヒステリックに叫んだ。
「あー……そこは小宮さんが頑張られてはどうでしょう。同期なんですよね、副社長と。同期で同じ本社に残っているなんて奇跡的ですよ、そのお年で……」
「なんですって⁉」
「まあまあ、落ち着いて。私はすっきりしたから良かったわ。まだまだ丸高の御曹司は狙えそう。副社長だって、独身なんだから、誰が狙ったって問題ないし。せっかく夏成ハウスに入って、独身の御曹司が二人もいるんだから頑張らないとね!」
言いたい放題言って、その三人組は給湯室を出て行った。
彼女たちが落としていった爆弾の威力は凄かった。私をいじめるためだったなら大成功だ。
「どうして言ってくれなかったんだろう……」
知らされていなかった事実に、思った以上に衝撃を受けていた。
その日はそれから仕事にならず、ぼうっとしていた私に「顔色が悪いな。今日はもう上がっていいよ」と言ってくれた副社長の言葉をありがたく受けとり、帰宅することにした。
帰り道、あの女性が言っていた言葉が何度も頭の中によみがえる。
『遊びの相手にそんなこと教える必要ないものね』
確かにあの人の言っていることは正しい。遊びの関係なら……。
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