高嶺の花も恋をしたい!

吉岡ミホ

文字の大きさ
88 / 109

知らされていなかった事実②

しおりを挟む
 それは高野と私がスーパーで買い物をしている写真だった。
 そして、手を繋いでマンションへ入っていく後ろ姿も。

 どちらも同じ服を着ているから、きっとスーパーで見かけてそのまま後をつけてきた人がいるのだろう。

 着ている服の感じから、高野が和歌山へ行ったっきりになる直前だと思われる。

 全く気づいていなかった。誰かに後をつけられていたのかと思うとゾッとする。

「これ……あなたが撮ったんですか?」
「いーえ。誰だか知らないわ。でも社内に拡散されているわよ」

 信じられない。貸会議室に籠りがちだったから全く気付いていなかった。
 
「こっそり丸高組の御曹司を捕まえておきながら、甲斐甲斐しく副社長のお世話をするなんてムカつくのよ」

 どうやら真ん中の女性は副社長のことを狙っている人らしく、さっきから副社長のことばかり言ってくる。

 それよりも――。

「丸高組の御曹司……?」

 高野が? 丸高組の? 

 今まで一度も聞いたことがなかった。それが本当だとしたらどうして言ってくれなかったのだろう。

 考えてみれば、あんな駅近の一等地に 使っていないマンションを持っているおじい様がいるなんて、普通ではない。

 それに、おじい様は土建屋だと言ってたし、高野のあの建築に対する知識。工学博士を取っているからと言ってあの若さでは考えられないくらいの知識量だ。特に……。

「あ……」

 日吉大社へ行った時の、あの半端ない歴史的建造物に対する知識量、それに博士論文も歴史的建造物についてだと言っていた……。

 振り返ってみれば、全てが繋がった。

「あなた……ひょっとして知らなかったの? プッ! 笑える―。なんだ、そんなことも知らないなんて、彼女と言っても大した関係じゃなかったのね。遊びの相手にそんなこと教える必要ないものね」
「ほんと、心配して損しちゃった。これならすぐに捨てられそうね」
「ちょっとあなた達! それじゃ、この女が副社長の方に行っちゃうじゃない!」

 真ん中の女性がヒステリックに叫んだ。

「あー……そこは小宮さんが頑張られてはどうでしょう。同期なんですよね、副社長と。同期で同じ本社に残っているなんて奇跡的ですよ、そのお年で……」
「なんですって⁉」
「まあまあ、落ち着いて。私はすっきりしたから良かったわ。まだまだ丸高の御曹司は狙えそう。副社長だって、独身なんだから、誰が狙ったって問題ないし。せっかく夏成ハウスに入って、独身の御曹司が二人もいるんだから頑張らないとね!」

 言いたい放題言って、その三人組は給湯室を出て行った。
 彼女たちが落としていった爆弾の威力は凄かった。私をいじめるためだったなら大成功だ。
 
「どうして言ってくれなかったんだろう……」

 知らされていなかった事実に、思った以上に衝撃を受けていた。

 その日はそれから仕事にならず、ぼうっとしていた私に「顔色が悪いな。今日はもう上がっていいよ」と言ってくれた副社長の言葉をありがたく受けとり、帰宅することにした。
 
 帰り道、あの女性が言っていた言葉が何度も頭の中によみがえる。

『遊びの相手にそんなこと教える必要ないものね』

 確かにあの人の言っていることは正しい。遊びの関係なら……。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

繰り返す夜と嘘 〜【実録】既婚の僕と後輩の彼女、あの夜のキスから始まった13年の秘密〜

まさき
恋愛
結婚して半年の僕と、同じ職場の彼女。 出会った頃は、ただの先輩と新入社員だった。   互いに意識しながらも、 数年間、距離を保ち続けた。   ただ見つめるだけの関係。   けれど――   ある夏の夜。 納涼会の帰り道。   僕が彼女の手を握った瞬間、 すべてが変わった。   これは恋でも、友情でもない。   けれど理性では止められない、 名前のない関係。   13年続いた秘密。 誓約書。 そして、5年の沈黙。   これは――   実際にあった「夜」の記録。

あるアイドル見習いの、恋にならないメロディをきいて

はなたろう
恋愛
静まり返ったダンススタジオに、サクヤがやってきた。生意気だった少年は、アイドルを目指す21歳の大人の男になっていた。 「踊ろうぜ」 差し出された手に触れると、あの日のメロディが静かに蘇る。 「才加、オレさ――」 サクヤの淡い初恋は、10年を経てようやく動き出す。その行方は――。 dulcis〈ドゥルキス〉のメンバー、サクヤがアイドルとして輝く前。少年から青年へと成長するまでの、原点となるサイドストーリー。 ※表紙と挿し絵はAIで作成しています

うちの幼馴染がデレすぎてて俺の理性はもう限界。でも毎日が最高に甘いからもうどうでもいいや

静内燕
恋愛
相沢悠太の日常は、規格外の美少女である幼馴染、白石葵によって完全に支配されている。 朝のモーニングコール(ベッドへのダイブ付き)から始まり、登校中の腕組み、そして「あーん」が義務付けられた手作り弁当。誰もが羨むラブラブっぷりだが、悠太はこれを「家族愛」だと頑なに誤解(無視)している。 「ゆーたは私の運命の相手なんだもん!」と、葵のデレデレは今日も過剰の一途。周囲の冷やかしや、葵を狙う男子生徒のプレッシャーが高まる中、悠太の**「幼馴染フィルター」**はついに限界を迎える。 この溺愛っぷり、いつまで「家族」で通せるのか? 甘すぎる日常が、悠太の鈍感な理性を溶かし尽くす――最初からクライマックスの、超高濃度イチャイチャ・ラブコメ、開幕!

結婚する事に決めたから

KONAN
恋愛
私は既婚者です。 新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。 まずは、離婚してから行動を起こします。 主な登場人物 東條なお 似ている芸能人 ○原隼人さん 32歳既婚。 中学、高校はテニス部 電気工事の資格と実務経験あり。 車、バイク、船の免許を持っている。 現在、新聞販売店所長代理。 趣味はイカ釣り。 竹田みさき 似ている芸能人 ○野芽衣さん 32歳未婚、シングルマザー 医療事務 息子1人 親分(大島) 似ている芸能人 ○田新太さん 70代 施設の送迎運転手 板金屋(大倉) 似ている芸能人 ○藤大樹さん 23歳 介護助手 理学療法士になる為、勉強中 よっしー課長(吉本) 似ている芸能人 ○倉涼子さん 施設医療事務課長 登山が趣味 o谷事務長 ○重豊さん 施設医療事務事務長 腰痛持ち 池さん 似ている芸能人 ○田あき子さん 居宅部門管理者 看護師 下山さん(ともさん) 似ている芸能人 ○地真央さん 医療事務 息子と娘はテニス選手 t助 似ている芸能人 ○ツオくん(アニメ) 施設医療事務事務長 o谷事務長異動後の事務長 雄一郎 ゆういちろう 似ている芸能人 ○鹿央士さん 弟の同級生 中学テニス部 高校陸上部 大学帰宅部 髪の赤い看護師(川木えみ) 似ている芸能人 ○田來未さん 准看護師 ヤンキー 怖い

叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する

花里 美佐
恋愛
冷淡財閥御曹司VS失業中の華道家 結婚に興味のない財閥御曹司は見合いを断り続けてきた。ある日、祖母の師匠である華道家の孫娘を紹介された。面と向かって彼の失礼な態度を指摘した彼女に興味を抱いた彼は、自分の財閥で花を活ける仕事を紹介する。 愛を知った財閥御曹司は彼女のために冷淡さをかなぐり捨て、甘く変貌していく。

無表情いとこの隠れた欲望

春密まつり
恋愛
大学生で21歳の梓は、6歳年上のいとこの雪哉と一緒に暮らすことになった。 小さい頃よく遊んでくれたお兄さんは社会人になりかっこよく成長していて戸惑いがち。 緊張しながらも仲良く暮らせそうだと思った矢先、転んだ拍子にキスをしてしまう。 それから雪哉の態度が変わり――。

フリーランスエンジニアの優しすぎる無償の愛

春咲さゆ
恋愛
26歳OLの木崎茉莉は人生のどん底にいた。上手くいかないことに慣れ、心を凍らせることで自分を守る毎日に絶望した茉莉は、雨の夜に思わず人生の終わりを願ってしまう。そんな茉莉に手を差し伸べたかっこいい彼。茉莉は、なぜか無償の愛のような優しさをくれる不思議な男性に少しずつ救われ、前を向いていく。けれど、疑ってしまうほど親切な彼には、親切であり続ける理由があって……。雨の夜の出会いがもたらした、優しくも切ない物語。

甘い年下、うざい元カレ

有山レイ
恋愛
会社のイベントで年上の OL が酔払い、若いインターンと一夜の関係になった。偶然、翌日には嫌いな元彼が突然現れた。

処理中です...