神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。

文字の大きさ
43 / 48

第43話 初めての野宿

しおりを挟む
 丸々一日近く歩いた。

 こんなに歩いた感想としては――――ステータスって凄いな! という事だ。

 森で生きている時は、長時間散歩に出たことはないし、王都に来ても長時間歩いた事はないけれど、道をひたすら歩き続けて感じるのは、ステータスが上昇したおかげなのか全く疲れない。

 それは俺だけでなくシャリーの顔にも疲れの色は全くなく、リアちゃんもソフィアちゃんも加護のおかげなのか、まだまだぴんぴんしている。

 ただ、すっかり日が落ちて、世界は真っ暗に支配されている。

 いつでも野宿ができるようにと、魔法のテントを購入しておいて良かった。

 これはビゼルさんが強く勧めてくれた品で、金額は高価な物らしいけど、俺が持っている植物のいくつかと交換してくれた。

 なので、俺にとってはタダで手に入れた事になるけど、ビゼルさんはそれでもいいと寧ろ喜んでくれた。

「あんなに小さな箱からこんなに大きなテントに変わるなんて、魔道具って凄いんですね~」

「そうだね。俺も初めて使ったけど、思っていたよりもずっと凄いな」

 早速テントの中を覗くと、入口近くにはいくつかのプレボックスが並んでいて、中には布団が並んでいた。ちゃんと靴脱ぎばまであって、内側から鍵を閉めると外から開けられないようにできている。

 テント自体からも不思議な魔力の力を感じるのは、防御魔法が施されているからだ。

 これだけで魔法でも魔物の攻撃や誰かが斬りつけても弾かれるそうだ。

 中の確認が終わったので、プレボックスを外に出して蓋を開く。

 ボックスの中には数々の調理器具が入っていた。

 みんなで手分けしてテーブルを取り出してはセットしたり、料理を担当してくれるソフィアちゃんが料理しやすいように調理器具をセットしたりと、初めての野宿で慣れないけど何だか楽しいセッティングの時間を過ごした。

 完成したセットにはすぐにソフィアちゃんが調理に掛かり、リアちゃんとシャリーはソフィアちゃんの指示通りに皿を運んだり野菜を斬ったりする。

 なんだか三姉妹のようにも見えて微笑ましい。

 俺は妹弟たちと共に、周囲を警戒だ。

 こういう時も魔物が襲ってくるから、常に気を引き締めている。

 といっても道しるべの地図で常に見張っているので、こちらに敵意がある存在が近づいてきたらすぐに分かる。

 ある意味、周辺の探知にも役に立つスキルだなと改めて感動した。

 ここら辺で取れそうな植物はあまりなかった。

「アルマ様~出来上がりましたよ~」

 ソフィアちゃんの呼ぶ声がして、それほど時間は経っておらず、野宿も予想していて練習を重ねていたと言ったのは本当の事でもあり、彼女の手際の良さを示す。

 テーブルにはリアちゃんとシャリーが涎を垂らす勢いで、フォークとスプーンを握って目の前の料理に視線が釘付けになっている。

 本当に姉妹に見えるのがまた可愛らしい。

「周囲の警戒は俺のスキルで賄えるからクレアとルークも気にせずに食べよう」

【【あい~!】】

 テーブルに座り、みんなで手を合わせる。

「「「いただいきます~!」」」【【いただきます~!】】

 大きなプレートにパンと野菜、お肉、魚と野宿とは思えない品が並んで、お椀には美味しそうな野菜スープが匂いを発して存在感を放っている。

 真っ先に野菜スープをスプーンで一口食べてみる。

 口の中に広がる野菜の甘さが異世界ならではなのか、はたまたソフィアちゃんの腕の良さなのか分からないが、全く臭みがなく野菜とスープの甘味が全く喧嘩せずにすーっと口の中に広がっていく。

 飲み込んだ後の後味もまた素晴らしい。こういうのを胃の中が幸せというのかな。

 今度は一口サイズに切ってあるパンに隣にある野菜とお肉を乗せる。その上からフォークで差し込むとお肉から肉汁があふれて真下にあり野菜を伝ってパンに沁み込み始める。

 この料理はレストラン『スザク』で開発した肉汁をパンに沁み込ませて食べるもので、ほんの少しの手間でものすごい旨さを誇る。

 肉汁がパンに沁み込んだのを確認して、待ちきれんばかりの速さで口の中に入れる。

 肉汁の旨味が口の中に広がるが、嚙み始めると野菜の優しさとパンの素朴な甘みがワイルドな肉汁と合わさって、とてつもない旨さを口の中で表現し始める。

 見た目はただのハンバーガーにも似てるのに、あまりの旨さに頬が吊り上がる。これにはどうしても抵抗できない。

 それは俺だけでなく、リアちゃん、シャリーも頬が吊り上がり、珍しくクレアもガツガツ食べる。ルークに至っては言うまでもない。

「「美味しい~!」」

 声は出せないが、リアちゃんも一緒に声を上げる。

 作ってくれたソフィアちゃんに感謝しながら、目の前の食事を次々口の中に運んでいく。

 会話も忘れて目の前のプレートに乗った食事を平らげた。

 それを待っていたかのように、俺が提案した和風マグカップが渡された。

 中にはアルキバガン森の深部でしか取れない植物で作れるお茶が入っており、初めて飲んだ時は衝撃を覚える旨さだった。

 ただ、クレア曰く普通の人は、一日一杯以上飲むのはよくないという。

 というのもアルキバガン森の深部の植物はものすごい魔力を吸い込んでいて、どの植物も濃い魔力を身ごもっていて、いくらお茶として作ったとしても、濃い魔力が体の中に入り過ぎると良くないという。

 葉っぱ一つで十人分に割って丁度いいそうだ。

 余った分は問題がない俺とクレア、ルークにそれぞれ分けられて多めに入っている。

「このお茶、本当に美味しい……幸せ…………」

 お茶というよりは、もはやジュースとも思える甘さと旨さと言葉では表現できない美味しさがある。

 近いものはと聞かれたら、ミルクティーの全ての味が濃くなって甘さが強調された不思議な味。

 初めての野宿での食事はものすごく満足いくものとなった。

 食べ終わるとソフィアちゃんを覗いたみんなで食器洗いをして、片付けに入る。

 これはパーティーメンバーが全員平等・・であるための決め事だ。

 美味しい料理を準備してくれたソフィアちゃんはソワソワしながら椅子に座って見守っているけど、途中で一人だけ除け者にされてる気分だからと簡単な手伝いだけしてくれた。

 その日は初めての魔法のテントの中で、みんな仲良く布団に並んで眠りについた。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

七億円当たったので異世界買ってみた!

コンビニ
ファンタジー
 三十四歳、独身、家電量販店勤務の平凡な俺。  ある日、スポーツくじで7億円を当てた──と思ったら、突如現れた“自称・神様”に言われた。 「異世界を買ってみないか?」  そんなわけで購入した異世界は、荒れ果てて疫病まみれ、赤字経営まっしぐら。  でも天使の助けを借りて、街づくり・人材スカウト・ダンジョン建設に挑む日々が始まった。  一方、現実世界でもスローライフと東北の田舎に引っ越してみたが、近所の小学生に絡まれたり、ドタバタに巻き込まれていく。  異世界と現実を往復しながら、癒やされて、ときどき婚活。 チートはないけど、地に足つけたスローライフ(たまに労働)を始めます。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

小さな小さな花うさぎさん達に誘われて、異世界で今度こそ楽しく生きます!もふもふも来た!

ひより のどか
ファンタジー
気がついたら何かに追いかけられていた。必死に逃げる私を助けてくれたのは、お花?違う⋯小さな小さなうさぎさんたち? 突然森の中に放り出された女の子が、かわいいうさぎさん達や、妖精さんたちに助けられて成長していくお話。どんな出会いが待っているのか⋯? ☆。.:*・゜☆。.:*・゜ 『転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました。もふもふとも家族になります!』の、のどかです。初めて全く違うお話を書いてみることにしました。もう一作、『転生初日に~』の、おばあちゃんこと、凛さん(人間バージョン)を主役にしたお話『転生したおばあちゃん。同じ世界にいる孫のため、若返って冒険者になります!』も始めました。 よろしければ、そちらもよろしくお願いいたします。 *8/11より、なろう様、カクヨム様、ノベルアップ、ツギクルさんでも投稿始めました。アルファポリスさんが先行です。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

処理中です...