能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。

文字の大きさ
77 / 102
四章

第76話 始めまして、勇者様ですか?

しおりを挟む
 『ヴァレンシア』の立派な砲台が、勇者軍に向けられている。

 ヘルドさん曰く、「クソ勇者が暴れると面倒だ。けん制用に砲台でも向けておけ」との事。

 勇者様って……一体どんな人なんだろう。


 野営地で準備を終えた勇者様と隣に綺麗な金髪の別嬪さん、何人かの兵士達が『ヴァレンシア』の前を訪れた。

 僕とアイリス、ヘルドさんの三人で出迎えた。


「なっ!? 貴様はヘルド!? 今すぐ成敗してや――「おう、あの砲台が見えないか?」――クソ!! この卑怯者!!!」

 あ……はい。

 何となく、今の台詞でどんな性格か分かった気がした。

「一先ず、助けてくださってありがとうございますだろう? クソ勇者」

「な、なっ!? ふ、ふざけるな! 貴様のようなやつに」

 ヘルドさんが右手人差し指で砲台を再度指した。

「く、くっ…………あ…………と……ま……た」

「ん? 聞こえないなー、あのクソ勇者クラフト殿は先程の戦いて喉でもやられたのかな~?」

 ヘルドさん、絶対楽しんでいるよね!?

 二人の漫才みたいなやり取りを見ていると、隣にいた別嬪さんが二人の間に入ってきた。

「ヘルド様。此度の援護、大変助かりました。ありがとうございます」

 別嬪さんは深々とお辞儀する。

 その姿はまるで聖女様のようだ。

「よう、腹黒聖女」

 聖女様なのかよ!!

 しかも、腹黒って何!?

「腹黒だなんて……ヘルド様ったら、意地悪ですぅ……」

 ああ、ちょっと目をうるうるしてて、凄く可哀想です!

 ヘルドさん! ちゃんと謝った方がいいですよ!

「あん? あいつは腹黒だから、自分に害があるやつにはすげぇんだよ。そのうち見れるから楽しみにしとけ」

 へ?

 ま、まあ……いっか。

「それで、何で貴様がここにいて、その……船? は何だ!」

「おう、俺様は俺様の国『自由国』を守る為に、大袈裟な爆発を調査しに来た。それとこの船は『ヴァレンシア』だ」

「は!? お前、国を作ったのか!? しかも、『ヴァレンシア』!? 『ヴァレンシア』って……王国の?」

「ああ、俺様が王国と自由連邦国を滅ぼして作った国なんだぞ」

「は!? 王国を滅ぼした!?!?」

「おう、そんときの戦利品として、この『ヴァレンシア』を手に入れたぜ」

 ヘルドさん……ちょっと嘘入ってませんか?

 『ヴァレンシア』復元させた時は、あんなに狼狽えていたのに……。

 あっ、そんな目で睨まないで!

 事実を述べただけなのに……。


「おい、クソ勇者。先日あった爆発について教えろ」

「は!? 何故貴様に教えねばならないのだ!」

「そりゃ、俺様がお前の国の王様だからな!」

「は!? いつから貴様が俺の王様になった!」

「う~ん、一年くらい前かな?」

「一年も前から!? くっ、納得いかん! 俺の留守中に王国を攻めるなんて、貴様はやはり許せない! 今すぐ成敗――」

 ヘルドさんがニヤニヤしながら、またもや右手人差し指で砲台を指す。

「ぐぎぎ……人質など……最低なやつだ! …………そういや、『ヴァレンシア』の砲って一回撃ったら、暫く撃てないんじゃ?」

 以前の『ヴァレンシア』ならね。

 今の『ヴァレンシア』は、撃ち放題なんですよ~。

「ほう……試してみるか?」

 ドヤ顔のヘルドさんに今一度踏ん切りが付かない勇者様。

「勇者様。ここは一つ、ヘルド様に従いましょう」

 聖女様の意外な言葉に勇者様は驚くも、仕方ないと呟き、ヘルドさんの指示に従おうとした。

 ――その時。


「あら? そちらの彼女さん…………まさか――――――魔女?」

「へ? 私? そうです……けど?」

 アイリスの返答に、聖女様はその可愛らしい目を大きく開いた。

 ――――そして。





「おいクラフト! あのくそ女をいますぐ殺せ!!」

 物凄いしかめっ面の聖女様が叫んだ。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

たとえば勇者パーティを追放された少年が宿屋の未亡人達に恋するような物語

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。 ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。 だから、ただ見せつけられても困るだけだった。 何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。 1~2話は何時もの使いまわし。 リクエスト作品です。 今回は他作品もありますので亀更新になるかも知れません。 ※ つい調子にのって4作同時に書き始めてしまいました。   

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...