便利すぎるチュートリアルスキルで異世界ぽよんぽよん生活

御峰。

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 僕達がオアシスに着く頃には、バギロス部族は白旗を上げていて、族長や僕と戦っていた男はそこにはなく、みんなオアシスから撤退した後だった。
 できれば彼らとも話し合いたかったけど、今はまず足場をしっかり固めたいので後追いはせずに、今自分がやるべきことをやろうと思う。
 町に入ると、多くの人が不安そうな表情でこちらを見ていた。
 そんな中、スライム達が一斉に雪崩れ込んでくる。
「あはは~みんな~くすぐったいよ~」
 フウちゃんの絆の糸のおかげでスライム達の嬉しそうな気持が伝わってくる。
 ムイちゃんの見事な指揮のおかげで誰一人欠けることなく、全員が無事で本当に嬉しい。
「ムイちゃんも頑張ってくれてありがとうね」
 えっへん! とドヤ顔するムイちゃんがまた可愛らしくて、その体を優しく撫でてあげた。
「さて……これからが本番だね。みんな! 次の作戦に移るよ!」
 僕の号令に合わせてスライム達が飛び跳ねると、それぞれ四方八方に散っていく。
 スライム達に驚いた住民達だったが、彼らが何をするのかすぐにわかることになった。
 近くにいた鉄の首輪を付けられた少女に飛びついたスライムは、彼女の首輪だけを飲み込んだ。
 首輪を食べてぴょ~んと跳ねて少女の頭に乗ったスライムは、満面の笑みを浮かべる。
 少女は自分の首元を不思議そうに触り始めると、次第にその目に大きな涙を浮かべた。
 スライム達は次から次へと、奴隷扱いされていた人達の首輪を解放し始める。
「オーナー!」
 そんな中、後ろからセレナさんの声が聞こえてきた。
 慌ててこちらに駆けつけてきたセレナさんは僕の体をくるくる回りながら「ケガはありませんね……良かった」と安どの息を吐いた。
「エレナちゃんがいなかったら大ケガしたかもしれません。エレナちゃん。さっきはありがとうね」
「えへへ~」
 油断……していたのは間違いない。
 自分の中で相手をこれくらいと見積もっていたけど、その油断が仇となった。
 でも仲間がいてくれて被害もなく、スライム達もみんなで力を合わせて今日の作戦を成し遂げてくれた。
 僕は……とても優しくて心強い仲間達に囲まれているんだね。
「オーナー。どうぞ」
 セレナさんは拡声器の魔道具を僕に手渡してくれた。
「ありがとうございます」
 受け取った拡声器を住民の方々に向ける。
「えーっと! 皆さん! 初めまして! 僕はワタルと言います! こちらのスライム達が頑張ってくれる【ぽよんぽよんリラックス】というお店のオーナーをしています! 今日はびっくりさせてしまいごめんなさい! ボロモロシア大荒野ではマグナ部族さんと仲良くなって大荒野のことを知りました! ここでは水がとても不足で……バギロス部族がオアシスを占領していると知って、今日はこうしてオアシスのことで皆さんと話し合いたくて来ました!」
 多くの人が目を丸くしてこちらを見る。
「オアシスを巡って、できれば皆さんと話し合いたい! これから大荒野に住む全ての部族にも声を掛けるつもりです! できれば今の皆さんの中からも代表者を決めていただきたいんです! 敗北して奴隷のような扱いをされた部族の皆さんも、これから自由になってもらいたい! その話し合いのためにも皆さんでよく話して代表者を決めてください!」
 みんなが少しずつあたふたし始める。
 でもこれでいいのかもしれない。
 話し合いは、僕が一方的に言いつけるものではないから。
 みんな悩みながらも、より良い方向にいくためにみんなで話し合うためにも、まずはその部族ごとの言い分をまとめてお互いに知る必要があるから。
「セレナさん。実はこれから僕は別件でしばらくいなくなるので、大荒野の集会はお願いしたいです」
「かしこまりました。お任せください」
「ありがとう! エレナちゃんも来る?」
「うん! ワタルと一緒に行く!」
「じゃあ、行ってきます。できれば戦わない方向で、でも安全第一でお願いしますね」
「ふふっ。オーナーもですよ?」
「あ、あはは……はい!」
 僕が先陣を切って大荒野を巡りたかったけど……それよりも先に解決しなければならないことがある。
 僕にしかできないことを解決するために、僕はエレナちゃんやコテツ、フウちゃん、タマちゃんと一緒に一足先に【拠点帰還】で家に戻った。
 そして、すぐさま――――神界へと旅立った。

 〇

 目を開けると虹色に輝く不思議な世界が広がる。
 何度か来てるけど、神界はいつ来ても美しいね。
「いらっしゃい。ワタル」
「ガイア様! お久しぶりです!」
 出迎えてくれたガイア様だけど、表情はあまり明るくない。
 きっと、神界から僕がやっていたことを見ていてくれたんだと思う。
「わふっ!」
「ふふっ。コテツもいらっしゃい」
 ガイア様がコテツを優しく撫でてくれた。
「ガイア様。今日は話したいことがあって来ました」
「ええ。ここから見ておりました」
「……大空の女神様の罰について教えていただけませんか」
 困ったような様子のガイア様は、小さく溜息を吐いた。
「私から話すことはできませんが、向こうにいけば、会えると思います」
 ガイア様が指差した場所は、いつも過ごしている島から少し離れた島だ。
 空に浮かんでいるから一つの景色として認識していたけど、神界にはいくつもの島が浮かんでいる。
 もしかして、それぞれに女神様が住んでいるのかな……?
「ただ私から一つだけ忠告しておきます。女神はみんなが好意的なわけじゃありません。それは私も同じです。ワタルが普段頑張ってくれたおかげでこうして神界に行き来できているけれど……彼女にとってのワタルはまた違う扱いをすると思います」
「わかりました。それでも話し合いたいです」
「ええ。ワタルならきっとそう言うと思いました。向こうの島への橋は掛けておきましたので、頑張ってきてください」
「ありがとうございます! ガイア様!」
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